イミテーションは夜の幻

銃声が響く。一発、二発――
頭上に放たれた網の根元をマグナムの銃弾が断ち切った。と同時に沸き起こった煙が警官たちの視界を遮ってゆく。
投げ手錠をすり抜けたルパンが、相棒と合流して首をすくめる。
「うひょ〜、あ〜っぶねぇ危ねぇ」
「ったく世話ぁ焼かせやがって」
煙幕のせいで、追っ手のライトがぼやけて浮かび上がる。囲まれた光景は幻想的だが逃げているのではサマにならない。
「おいおい…銭形のやつ、まぁだ追ってきやがるぜぇ」
次元の呆れ声に後ろを向けば、帽子とトレンチコートの見厭きた影が煙に透ける。
「待てぇー、ルパーン!」
「…だってよ。どうするルパン?」
緊張感のない問いかけに応え、ルパンがごそごそとポケットを探った。
「んじゃ〜せっかくだから、コイツにも活躍してもらうとすっかぁ?」
取り出したダイヤを覗き込んでニヤリと笑う。次元も背後を窺いながら愉快そうに白い歯をみせた。
「そいつぁいい。あの見上げた根性に報いてやらなきゃな」
「とっつあんにはちぃーっと勿体ないけっどもな」
言うが早いか大きく腕を振りかぶる。
「とっつあーん、やるよー。受け取れぇ〜」
「な・なにぃ!? コラ待て、ルパン!」
放物線を描いて近づく光、反対に遠ざかる二人、銭形の視線が宙に迷う。
が、この混乱の中で盗難品を捨ておけるはずもなくあたふたと手を伸ばし――
ひとまずダイヤを確保してルパンに向き直る。途端、黒い煙が銭形を包んだ。
「ま・待てルパ…ゲホゲホ、逃がさん…ぞ…ゴホゴホゴホッ」
「それじゃぁね〜、お疲れさーん」
咳き込みつつも必死に周囲を見回す銭形、ひらひらと手を振るルパン。その姿はすでに互いの視界から消えていた。

「一体どーいうコトなんだ、ルパン」
二人の乗ったベンツは川沿いの一本道に出たところだ。逃げ切ったらしいと警戒を緩めた次元が、平たい口調で切りだした。
「頼まれて襲った金庫はカラッポ、おまけににとっつあんまでお待ちかね、どう考えたって罠だぜぇ。…ひょっとして、この話を持ってきたのは」
「そっ、峰不二子ちゃんだよん」
「ったくお前ぇってヤツぁ――うわっ?」
前触れもなく車が派手にバウンドした。ちょうど身を起こした次元が投げ出されかけたほどだ。唐突に始まった振動はどうみても路面のせいではなく。
「なななんだ、なにごとだぁ次元!?」
「いいいからなんとかしろルパン!」
「いや俺もなーんとかしたいんだけっどもがな…」
蛇行する車を制御しようにもハンドルもブレーキもロクな反応を示さない。ガードレールが目前に迫る。
「あらららだぁめだぁ〜〜突っ込むぞぉっ」
「うへェッ」
外灯だけは辛うじてかわし、ベンツは分解しながら川へとダイブした。

アジトで瞑目していた五右衛門は、全身から水を滴らせた二人を一瞥するや黙って腰を上げた。
「…またあの女の口車に乗せられやがって」
次元のぼやきも毎度のことなら、ルパンの応えも変わりはしない。
「しゃーねーでしょ〜。あのダイヤ盗ってきてくれたらアタシなーんでもしてあげちゃうわルパァン、な〜んて言ってくれちゃうんだも〜ん」
「けッ、挙句に車まで細工されてこのザマかよッ」
「わぁかってるよ…そうがみがみ言うなって――は〜っくしょぃ!」
「で、これからどうするのだ、ルパン」
二人にバスタオルを放りながら五右衛門が尋ねる。
「もっちろん、このまま黙って引っ込んでいられるかーってんだ。借りは返さねえっとなぁ次元よ」
「お前ぇとはもう組まねえ」
「冷ーめてぇコト言うなよぉ、次元ちゃぁん」
ルパンが猫なで声を出したとき、細いヒールの音とともに扉が開いた。誰が来たのか見なくてもわかる。
「ハーイルパン、お元気?」
悪びれる様子もなく、不二子は陽気に部屋の中へと入ってきた。
「元気なワケないでしょ〜が。まぁだ川の水冷たいんだから――ふぇーくしょぃ!」
「不二子、てめーどのツラ下げて来やがった」
次元が濡れそぼった上着を摘んで不機嫌に言い放つ。
「あら、なんのことよ次元」
「おめーの持ってきた話が散々だって言ってるんだよっ」
「あたしは罠だなんて知らなかったわ。だから心配して来たんじゃないの。まぁ大丈夫?ルパン」
不二子はルパンに近寄ると、細い指で頬を包んだ。途端にルパンの顔がでれっと崩れる。
「優しいんだぁ〜不ぅ二子ちゃんってば。ンじゃ早速あっためてもらっちゃったりなんかして――」
濡れた服をものともせずに脱ぎ捨てる。が、伸ばした腕は虚しく空中で交差した。
「ええ、そう思ってブランデーを持ってきたのよ。すぐにあっためてあげるから待っててね」
「あらぁ……」
手にした紙袋を掲げてみせ、肩越しにウインクを残してキッチンに消えてゆく不二子を、ルパンは床とキスしそうな格好のまま見送った。
「残念だったな、ルパン」
相棒の澄ました口調が、裸の背中に追い討ちをかける。
「ちぇーっ、お楽しみは後に取っとくさぁ」
「相変わらず食えねぇ女だ。まぁた何か企んでやがるに決まってら」
「なぁに、不二子もアテが外れたんだろうぜ。保険金の山分けを狙ってたんだろうけっどもな」
さらりと出たルパンの言葉に、次元が弾かれたような声を返した。
「なンだと、保険金って…あのダイヤのか?」
「そうともよ。俺に贋物を盗ませておいて、ダイヤに加えて保険金をがーっぽりせしめようって寸法さ」
「贋物だとォ? だが金庫は空だったじゃねぇか。どういうこった」
「間に割り込んでおいしいトコかっさらおうって悪〜い奴がいるワケ――は〜っくしょぃ!」
「ふむ、それは不二子殿…ではないようでござるな」
黙ってやりとりを見ていた五右衛門が顎を撫で、次元もそれに同調する。
「だろうなぁ。ダイヤを手に入れたんならわざわざ来るはずがねぇや」
「そーゆーコト。するとだ、不二子にこの話を持ちかけた奴がアヤシイだろうぜ。なぁ不二子?」
いつの間にか戻っていた不二子が、返事の代わりに湯気の立つカップを掲げて微笑む。
ヌフフフとルパンが楽しげな笑いを響かせる。次元は大げさに肩をすくめ、五右衛門は諦め気味に瞼を閉じた。

『昨夜、銭形警部が社長のところに来ましたぞ!』
『…ここにも来た。まぁ落ち着きなさい』
『落ち着いていられますか。ダイヤは盗まれたんじゃない、最初から無かったようだと社長に言ったんですよ! もし社長の隠しているほうが贋物だと知られたらどうします!?』
『なんのためにルパンを使ったと思うのかね。そのときはこう言えばいい――ルパンがいつの間にか本物とすり替えたに違いない、とね。ルパンならやりかねんと誰もが思うだろう?』
『な・なるほど。ですが……』
『あんたは最も社長の信頼を得ている秘書、私は二十年も顧問をしている会計士だよ。証拠がない以上、社長は一警部の戯言より我々を信じるに決まっている』
『……本当に証拠が見つかることはないのでしょうな』
『むろん、一番安全な場所に隠してあるとも。あんたが取り乱してはかえって疑われる。あとは私に任せて堂々としていなさい』
しばらく愚痴まじりの密談めいたやりとりが続いた後、ドアの閉まる音がした。秘書が会計士の事務所を出て行ったらしい。
向かいのビルの空き室で受信機を囲む四人が、顔を見合わす。
「お前ぇの変装にそそのかされて早速動いたな。盗聴器もいい感度じゃねぇか」
ほとんど寝そべりそうな格好で壁に凭れている次元が、煙草を咥えたまま声を出した。だが呼びかけられたルパンは、何も聞こえなくなった受信機にまだ耳を当てている。
「秘書と会計士の組み合わせか。社長本人はダイヤの持ち主のくせに蚊帳の外みてぇだな」
無言のルパンに構わず言葉を続ける。それに、憤懣やるかたない様子で仁王立ちしている不二子が答えた。
「社長も噛んではいるのよ。ルパンに偽のダイヤを盗ませて保険金を騙し取る――ってところまでは。まさか自分が隠してるのが贋物だなんて思ってもいないでしょうどね」
「すると偽ダイヤは社長の手にあると。それゆえ金庫が空だったのでござるな」
五右衛門は常の如く真直ぐな姿勢で座している。それに頷きを返して
「本物は会計士のカンターが持ってるはずよ。この計画はみんな彼が立てたの。その上帳簿も操作してるから、保険金も大部分は手中にするでしょうね。外面は穏やかで人の良さそうな男だからみんな騙されてるけど、大した悪党だわ」
「なるほど。 お前サンまで騙されて、手玉に取るつもりがしてやられたってかい」
ざまぁみろとばかりに冷やかされ、不二子はつんとそっぽを向く。それを宥めるように
「まぁまぁ、せっかくご指名に預かったんだ。筋書き通り本物を頂戴してやろうじゃないの」
ようやく受信機から離れたルパンが、伸びをしながら立ち上がった。
「素敵よ、ルパン。ダイヤはカンターの事務所のどこかにあるわ」
「どうしてわかる」
次元があからさまな不審を示した。しかし不二子は意に介しもせず両手を広げ、
「あの男、奥さんに頭が上がらないもの。万が一見つかったらそれこそ独り占めされちゃうわ。彼にとっては事務所が一番安全な場所よ」
呆れ返ると言いたげにさらりと告げた。男三人は視線を交わして叱られたように首をすくめる。
「しかし…そう広くない事務所とはいえ、あてずっぽうに家捜しすれば朝までかかりかねんぞ」
「その通りだ。奴の自信からしてきっと妙なところに隠していやがるぜ」
「なによ、二人とも引き下がる気なの?」
「またおめーに振り回されんのはゴメンだからなァ」
「あたしがいつ振り回したって言うのよっ」
「…一番安全な場所…ねぇ」
周囲の喧騒を尻目に、ルパンが考え込む様子で呟いた。三人の注目を集めると――やがて楽しげに唇を歪める。
「ンじゃ、さっそく今晩お邪魔すっか、次元」
「あいよ」
次元は口調と同じほどの身軽さでひょろりと立った。無言の五右衛門も笑みを浮かべて腰を上げた。

そろそろ深夜になろうかという時刻。
会計士カンターの事務所にはまだ明かりがついている。仕事熱心というのは表向きで自宅に帰りたくないのだとは不二子の弁だが、裏帳簿を操作するにも夜のほうが都合がいいだろう。実際、カンターは机に帳簿を広げているようだった。
「よーぉ、会計士のおっさん。精が出るねぇ」
「ル・ルパン!?」
侵入者に気づかなかったらしい。ルパンたちを目にしたカンターは飛び上がらんばかりの反応を示した。それに嘲笑を返しながら
「驚くこたぁねっだろぉ。お望みどおり本物のダイヤを戴きにきてやったんじゃねーのよ。そのつもりだったんだろ?」
歩み寄って片手を机に置き、もう一方の手で天板の裏から盗聴器を外して見せてやる。
「おいルパン、こいつはどうやら普通の帳簿みたいだぜ」
銃を突きつけつつ机上を覗き込んだ次元が言った。途端にカンターは薄笑いを浮かべる。
「もちろん普通の帳簿に決まっているよ。なにを期待して来たか知らんが、君には客人がお待ちかねだ」
「客人?」
突如背後で物音が響き、ルパンの手首に手錠が嵌る。振り返ると、ロッカーの扉が開いて銭形が姿を現していた。
「ルパーン、やっぱり現れたな。今度こそ召し捕ったぞっ」
「あらまとっつあん。よ〜くココがわかったなぁ」
「馬鹿め、お前が俺に変装して現れたコトなんざお見通しなんだよ」
事務所の入口からも十数人の警官がわらわらと入ってきて三人を取り囲む。
カンターは勝ち誇った笑みでペンを持ち直すと
「銭形警部、さっさとこのコソ泥を連行してくださらんか。私にはまだ仕事があるのでね」
用は終わったとばかりに帳簿に向き直る。
「や、これは失礼。ご協力感謝いたします」
「おいおい、自分を騙してる男に敬礼するこたぁねっだろぉ」
ルパンが背筋を正す銭形を揶揄する。途端に手錠が乱暴に引っ張られた。
「うるさい、言い逃れも負け惜しみもワシゃ聞かんぞ」
「どーして俺が会計事務所なんかに来ると思うのよ。なぁカンターのおっさんよ、銭形警部は目の前にいる悪党をみすみす逃すほど甘い男じゃねぇぜ」
挑発的な瞳をひらめかし、カンターと銭形を交互に見遣る。しかしカンターは鼻で笑って余裕をみせる。
「なんのことかわからんが、警部がお前のようなコソ泥の言い訳を聞くとでも――」
「ここにとっつあんを呼ぶたぁよっぽど自信があるようだがな、二度も俺様を騙せると思ってんのか? ダイヤの隠し場所も知らねーでノコノコやってきやしねぇンだよ」
ルパンは五右衛門に目配せするとカンターの後ろに廻り込んだ。途端にその顔が強張ったのを銭形は見逃さない。
「け・警部、私は市民としての義務を果たしましたぞ。これ以上の迷惑は――」
「ご心配はいりませんぞ、カンターさん。あやつが何と言おうと、証拠がなければご迷惑はかけませんからな」
応えるようにルパンがニヤリと笑う。それをギロリと睨み返し、逃がさないとばかりに銭形は手錠の片方を左手に嵌めた。
「さぁて、秘書が帰った後だ。絨毯の上を軽く引きずる音がしたのよねぇ。そう、こぉんな音だろうな」
ルパンはカンターが座ったままのキャスター付きの椅子を脇へ押しやる。それを五右衛門が引き受ける。カンターが明らかに青ざめた。
お次は絨毯をめくる音、それから板がぶつかる音…と言いながら、次元と二人で椅子の直下にあたる格子状の床板を剥がしていく。
「見ろよルパン、こんなところに取っ手があるぜ」
「おやまぁ…なんでしょうねぇ、開けてみちゃいましょうかねぇ」
「や、やめろ…」
腰を浮かせたカンターを五右衛門が引き戻す。
案の定、床下には十数冊もの分厚い帳簿が積まれていた。更に奥深くの小箱から現れたのは目当てのダイヤ。
「本物か?」
「あぁ、間違いねぇ」
ルパンと次元は満足げに笑い合う。と、ルパンはその目を銭形へと向けた。
「コイツには盗難届けと保険金の申請が出てるって知ってるよなぁ、とっつあん」
「む……、ん?」
ルパンは指の間にダイヤを摘み、光を反射させるように手首を軽く捻ってみせる。そこにあるはずの手錠は…ない。
「おのれ、ルパン! 逃がさんぞ」
再び銭形の右手が動くのに合わせ、ルパンはカンターの背後へと身を翻す。硬直している会計士の首に投げ手錠が見事にかかる。
「それとコイツも証拠品。奴の始末は任せたぜっ」
言うが早いか銭形へ裏帳簿の山を見舞う。マグナムが天井のライトを撃ち抜き斬鉄剣が閃く。暗闇の中で降りそそぐ本や斬られた棚の残骸。
混乱する警官たちをかわして事務所を躍り出る。背後に響く銭形の怒号。
「ここは引き受けた。先に行け」
五右衛門が追いすがってくる警官たちに向き直って足を止めた。振り返りざまにルパンが叫ぶ。
「五右衛門ちゃ〜ん、奴らの車も頼まぁ。とくにカンターのはケチョンケチョンに斬っていいかンなっ」
「心得た」
返答は笑いを含んでいる。それを次元が引き受けて
「ルパンよぉ、どうせカンターはムショ行きだぜぇ」
「うるへー、 俺様の車に細工しやがったんだ。気が済まねぇや」
「やれやれ」
苦笑いもそこそこに、二人の影は闇に消えた。

「ルパァン、遅かったじゃない。心配したのよ」
ワンブロック先にあるビルの死角、フィアットの運転席から滑り降りた不二子が、満面の笑みでルパンに抱きつく。
とろけるように相好を崩したルパンだが、両手は抜け目なく細腰から豊かなヒップラインへと回った。
「うひょ〜、嬉しい歓迎だこと」
「カンターはどうしたの?」
「裏帳簿と一緒にとっつあんにプレゼントしちまったよ。それから五右衛門が奴の車をケチョンケチョンにぶった斬ってくるけんど、まぁだ足りなかったかしらん」
「いいのよ、あたしもあの男の浮気を調べ上げて、奥さんにみ〜んな告げ口しちゃったもの」
「…怖いねぇ」
「んふ、ルパンだって、浮気したら承知しないわよ」
流し目と、甘い囁き。ジャケットの下に滑り込んだ指がルパンの胸元を突付く。
「しないしない。俺が不二子ちゃん以外の女に目をくれるわけないでしょーが」
「嘘つきね」
「なぁに呑気に遊んでるんだ。早いとこ五右衛門を拾ってずらからねぇと、とっつあんが復活して来ちまうぞ」
いつまでも抱き合っている二人へ苦々しげに次元が水を差す。その言葉に、ルパンより先に不二子が反応した。
「あら…それじゃゆっくりしてもいられないわね」
名残惜しそうに身体を離す。途端、手の中から白い霧が噴き出し、二人は慌てて口元を庇って飛び退いた。もちろんその隙に不二子は運転席だ。
「ふ・不二子、おまえぇ〜〜」
「ありがと、ルパン。バァーイ」
走り出したフィアットの窓から、不二子はダイヤの光る手をひらひらと振ってみせる。その姿はみるみる遠ざかり、夜霧にまぎれてあっという間に見えなくなった。
深夜のオフィス街は静かなものだ。エンジン音が去ったために、静寂が一層耳に痛い。
「やっぱりな。これだから不二子と組むのは嫌なんだ」
静けさを破って次元がぼやく。が、ルパンはさほど悔しそうでもない。
「あ〜あ…こんなことならパトカー一台失敬してくりゃよかったな」
「…なに?」
「しょーがねぇ、俺たちもとっつあんが来る前に退散しようぜ」
からりと言って走り出す。一瞬遅れて並んだ相棒は怪訝な表情を浮かべたが、
「まさかお前ぇ…最初から不二子にやっちまうつもりだったんじゃねぇだろうなっ」
険しさを帯びた声にルパンは俯いて肩を震わせる。と、どこに隠していたのか、おもむろにダイヤを取り出しかざして見せた。
周囲の街灯と同様に、夜霧のせいで反射光はぼんやりと柔らかい。
次元は目をぱちぱちさせると、車の去った方角に顔を向けた。
「…じゃ…あれは例のヤツか?」
「そ。カンターを脅かしてやるつもりだったけんど、銭形が来ちまって同じ手は使えねーし、今日は出番なしかと思ったのになぁ」
聞き終わるより早く、次元は痛快極まりない笑い声をたてて帽子に手を乗せた。今度こそ本物のダイヤを挟んで視線を交わす。ルパンも得意げに片目を瞑る。
やがて黒い煙に包まれる不二子を想像すれば、余計に笑いが止まらない。
「かわいそーになぁ、不〜二子ちゃん」
「いい気味じゃねぇか、ハッハッハ!」
笑いながら走っている二人に追いついた五右衛門は、さすがに驚いた様相をみせた。
「お主ら、何ゆえ走っておる? 車はどうしたのだ」
「そ〜れが不二子に逃げられちまってさぁ〜」
「? それで何ゆえ笑っておるのだ?」
ひとり腑に落ちない五右衛門を尻目に、二人の高笑いが静かな街に響き渡った。

ふふふ、すごいでしょう?まさにパースリ風!ですよねvv
実は以前うちのキリ番66666をkonさんに取っていただきまして、
戴いたリクエストは「パースリのルパンと次元」でした。
その時描かせてもらったあの絵をイメージして、この度konさんが書いてくださったものなんですv
パースリっぽく軽妙に楽しそうに、ということだけを考えていた私の絵なんかから、
こんなに痛快なパースリ話を書いていただけるとは!!
テキストで、パースリらしさを表現できるなんて、凄すぎます(惚)

このお話、パースリをまだ見ていないという方にも、勿論とっても楽しい作品なんですが、
パースリを知れば知るほど「おおっ、パースリっぽい」と随所でニヤリとできるんじゃないでしょうか?(^^)
それでいて、konさん独自の洒脱さが素敵〜!!
パースリ好きのkonさんの、奥が深いテキストならではですよねv

konさん、素晴らしい作品を、ありがとうございましたvv

konさんのサイト「Fellows

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