ルパンVS複製人間


記念すべき劇場版第一作であると同時に、間違いなく「ルパン」の最高傑作である(断言)。
テーマの斬新さ(今でこそクローン人間ネタはありふれているが)、奥深さ、キャラクターの魅力。
どれをとっても、この作品以上のものはないと、個人的には思っている。
何より、非常に「ルパン」らしいのだ。どこをとっても。これがとにかくズシリと胸に響く。

銭形警部

ストーリーの本筋に直接的に絡むわけではないのだが、その存在感は忘れがたい。
ルパンが死んだ、という衝撃的な出来事をただ一人信じようとしない男・銭形。
そしてルパンの墓で生きているルパンに会った時の、彼の台詞。
「貴様が死なんなら俺も死なん。こうなったら終わりはないぞ…」の台詞は、ルパンを追い続けるという銭形の宿命、というか、業のようなものさえ感じさせる、迫力あるものである。

マモーによって引き起こされた、世界的危機というヤツも、銭形には関係がない。
ひたすら、ルパンを追い、逮捕する。それ以外のことは無意味だと言わんばかりに、警視総監の説得も振り切り、再びルパンを追い始める。
あれだけわけの分からない騒動に巻き込まれ、命カラガラ、ハワード・ロックウッド島から逃れてきたばかりだというのに。
「個人の力でルパンめを追います!」
彼にとっては、もう警察官だからとか、ルパン専任だからとか、そういった理屈でルパンを追っているのではないのであろう。
勿論、銭形の正義感では、ルパンという稀代の泥棒を放置しておくことを許させない、という部分もあると思う。
しかしそれ以上に、理屈ではない。ひたすら、ルパンを捕らえずには置かないという壮絶な執念が、銭形を動かしているように思われる。

ルパンがどこに行くのかも、銭形にはあまり関心がなかったのかもしれない。
ルパンが、マモーの発掘した古代遺跡への険しい道を登っている間も、ろくな装備すらなく銭形は追い続けていた。

そして、ようやくラストで、ルパンの足に手錠をかけることに成功し、ルパンと奇妙なほど息の合った二人三脚を披露するのだ(笑)。
不二子を「仲のいいこと」と微笑ませるほどの息の合い方。
やはり銭形とルパンは、単に「宿敵」と一言では言い表せない関係なのだ。
重く、深い作品のラストが、こういう具合にコミカルかつお約束的な場面で(しかもBGMはあの「ルパン音頭」!)終るというセンスも、素晴らしいと思う(^^)。

この作品で特筆すべきは、銭形警部の名前と、トシコちゃんの存在だろう。
いつもは銭形幸一と設定されていることが多いのだが、この話では銭形平次とされている。先祖とまったく同じ名前。五右エ門と同パターンである。
個人的には、幸一の方が好きだったり(笑)。

また、「トシコちゃん」は、警視総監の手つきからすると、「大きくなっただろう」と言いつつも、年齢的にはそれほどでもなさそうである。
いいところ3歳くらいか?(勝手な推測)
と、なると当然奥さんもいるんだろう。奥さんどんな人なんでしょうね?
この話に限った設定らしいが、妙に気になるところである。


五右ェ門

凛々しい。今回(02.2.22)再びこの作品を見て、とにかくそう思った。
潔癖で堅物。まさに剣一筋の日本男児。いかにも剣客といった、多少殺気立った雰囲気に、とにかくシビレる。
これぞ、石川五右エ門の真の姿だと思う!(声を大にして)

出番はそれほど多くないものの、四六時中無駄に壁や金庫を切ることなく(笑)、要所要所で斬鉄剣を振るい、ルパンたちの切り札的存在として活躍してくれる。
地下でヘリコプターを一刀両断、また、フリンチとの死闘。どれも、とても印象に残る。
剣を振う回数が少ないからこそ、「またつまらぬものを斬ったか」という台詞が、キマるのだ。

特に、ルパンや次元との距離感が、まだ少し遠いのが良い!
ルパンをたしなめるという点で、意見が一致することの多い次元と五右エ門だが、この話で二人は派手に喧嘩したりする。
そんな二人をルパンがなだめるという、かなりレアな、ファン心くすぐるシーンになっている(笑)。

また何より、ルパンとの距離感が旧ルを髣髴とさせる。
ルパンの、不二子への下心を容赦なく責め、ルパンが女を取ろうとすると、斬鉄剣に手をやったりする。
一瞬、本当に斬ろうか迷ったのではないだろうか。かなりの逡巡が見られる。
が、五右エ門にはルパンは斬れなかった。まったく理解できないし、こんな危機の中でも下心で行動する(ように見える)ルパンに怒りもしていたのだろうが…
それでも、斬れない。ルパンに惹かれる部分は、不思議と五右エ門の中にあり続けたのだろう。
彼は、「長い付き合いだった」と去っていくのみ。次元よりも早くルパンの元を立ち去る辺り、まだまだ相棒としてのキャリアの短さがうかがえる。

しかし結局、五右エ門も、ルパンを助けるために次元と行動を共にし、カリブ海へと向かう。
その船の中で次元に「何だかんだ言ってもやっぱりルパンが…」という趣旨のことを言われると、五右エ門は「他人にルパンを殺させたくないだけだ」と答える。
「他人には」ということは、いずれ自分が、ということだろう。勿論、この台詞は照れ隠しに違いないのだが。
ルパンを超えたい、という意識が、まだこの時の五右エ門にはほんの少しだけあったのではないだろうか。
元は、命を賭けて戦った敵同士。
そんな緊張感が微かに残るルパンと五右エ門の関係も、魅力的だと思う。

五右エ門の性格を非常によく現しているのが、フリンチとの死闘の後、である。
合金チョッキのせいで、斬鉄剣を折られてしまった五右エ門は、己の腕の未熟さを責める。
そして、五右エ門は「しばらく会いたくない」と言って、ルパンの元を去っていってしまうのである。
まあ確かにあの時点では、次元がマモーを撃ち、敵の本拠地もアメリカなどによって攻撃されて壊滅したのだから、もう終ったと思っても不思議ではない。
戦いが続いているとわかっていれば、まだルパンの元に留まったのかもしれないが…
自分の未熟さを痛感した時に、自分の内に閉じこもりがちとなり、人を遠ざける。本質的に孤独な男。
五右エ門の性格がよく表れているし、またよく五右エ門が、ルパンたちと別れて単独行動をしている理由の一端が見えるような気がする。

そしてラストシーン。
五右エ門も一応、ルパンを助けにあそこまで来たんですかね?それとも、たまたまあの人気のない場所で修行していただけなんでしょうか?(笑)


次元

ルパンとの相棒度がきわめて高く、見所満載となっている。
すべてのキャラクターに関して言えることだが、この作品ではルパンとの関係がとても深く、魅力的。
個人的には、この作品でのルパン&次元の関係は理想である(^^)。

ピラミッドへ賢者の石を盗みに行くのも、当初次元は渋っていたらしいが(ルパン談)、結局同行している。
そして赤外線を抜けるときの息の合ったコンビネーション、そしてバイクを二人乗りしての逃走劇は、とにかく良い♪の一言。
周囲が赤外線だらけの緊迫した中で、「ルパンが処刑された」という話を、何気なくしている辺り、二人の余裕が感じられてカッコイイ。

何だかんだと言ったところで、結局のところルパンを信用している次元は、賢者の石を盗み出すのにも協力したし、どれだけひどい目にあってもルパンを見捨てたりはしない。
アジトがボロボロにされていた時は、さすがの次元も怒り心頭、女と別れろ!とルパンに迫るが。
しかし、すべてパーになったと思われていたアジトから、缶詰やミネラルウォーターが発見された途端、もうケロッとしてルパンに水をかけて、戯れたりしている(笑)
どうも次元は長い間ルパンに腹を立て続けることが出来ないようだ。

不二子がアジトに転がり込んできた時も、ルパンが不二子を見捨てないと分かると、五右エ門はすぐに立ち去ってしまう。
一方、次元は結構長いこと立ち止まっている。
ルパンが意地を張って、何度も「行けッたら!」というので、仕方なく離れて行ったように見える。
相棒が意地を張り始めたら、なかなか後に引かない性格なのを知り尽くしているので、とりあえず離れていったとしか思えない。次元自身は、ルパンから離れたくなど、なかったのだろう。
不二子が何やら企んでいるのは明白であったし(その奥にある意図は次元には当然分からなかっただろうし)。
実際、五右エ門はそのままルパンから去っていったのに、次元は道を引き返してきている。
この辺の絆の深さが、ルパン&次元ファンの私にはたまらない(^^)。

何と言っても、ルパン&次元の最高の名場面といったら、ルパンがマモーに最後の戦いを挑みに行く前の、二人の会話であろう。
マモーの力を目の当たりにした次元は、ルパンを引き止める。
相棒に、銃を向けさえして……。
「行くな、ルパン!」
「俺は夢、盗まれたからな。取り返しに行かにゃあ」
「夢ってのは、女のことか?」
「実際、クラシックだよ。お前ってヤツは」

そう、次元は非常にクラシックな人間なのである。(この辺の事は、また改めてCharacterコーナーで取り上げたいと思っている)
ルパンとは、違う。ルパンとは自我のあり方が違っているように思える。
次元は理屈の人ではない。どちらかといえば、感性の人である。その辺がまた、決定的にルパンと違うのだ。
普通の人間の枠の中において、次元はとても優れた技術やタフな精神を持っている、ずば抜けた存在ではあるかもしれない。が、マモーに「神か白痴の意識」の持ち主と言わしめた、真の天才のルパンを、理屈で理解できることは、たぶんないであろう。
ルパンの言った「夢」を女だと思ったし、どうしてルパンが是が非でも行かねばならないのか、本当のところはわからないままであったかもしれない…。
もし次元にわかるとしたら、多分言葉で説明できるような理屈としてではなく、感覚というか、とにかく感性の部分で共感したりして理解するという形だったのではないだろうか。

マモーの起こした様々な現象の受け取り方も、ルパンと次元では大いに異なる。
ルパンは、すべてをトリックで説明できると言い、そんなルパンを次元は「理屈だ!」とはねつける。
「今回は絶対行かないぞ」と、次元が同行を拒絶した時、ルパンは「信心深いヤツには、向かない仕事だ」と、次元を強引に連れて行くことはしなかった。
次元は、「バビロンの黄金伝説」などで無神論者らしき言動をしていたような覚えがあるが(←曖昧^^;)、この時ルパンには信心深いと評されている。
確かに、次元にはルパンよりもよほど、超絶的なモノの存在を認めているような態度を取る時も多い。
そこがまた、次元を感性の人だと思う所以だったりもするのだが。

だが、ルパンのように超現実主義者の天才と付き合えるのは、次元のような人間なんだろうなと、つくづく思ったりする。
結局「絶対に行かねぇ」と言っていたにも関わらず、次元はルパンを助けに飛行機を飛ばしてくるわけで。
最高の相棒とはまさに次元のこと!ですよね(^^)

長くなったので、ルパン&不二子、マモーの項は、次のページへ!(笑)


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