人間関係考察・対ルパン編

「ルパンのいくところ次元あり」 

(原作第23話「氷山の一角」より)



ルパンに対する次元の、名台詞中の名台詞といえばコレ。
二人の関係を、というよりも、次元のスタンスをよく表している言葉だと思う。
実際次元は、この言葉通りルパンの赴くところ、殆どどこへでもついて行くのである。
新ルにおいては、宇宙へまでも助けに行くのだから!(新ル53話「狂気のファントマ・マークV」)

不二子絡みの仕事で意見が対立することはよくあることで、幾度も仕事を降りると言いつつも、結局ルパンを助けにやって来る。
稀にだが、裏切る不二子とは無関係に、ルパンに協力せず(新ル133話「熱いお宝に手を出すな」)、原作新「特盗」)、ルパンの意に背くようなことをする時もあるにはある。
が、それはルパンがやや人道的でなかったり(笑)する場合で、ごく限られており、次元にルパンを裏切ったり出し抜いたりして「己の利益」を得ようとすることは、一切ない。
常にルパンに寄り添い、この天才的相棒の影となって働くのである。

原作初期や、旧ル初期において、ルパンへの次元の愛情は極めて大らかに表現される。
愛情という言葉を使ったのは、何も邪な意味合いのつもりは毛頭ない(笑)。次元本人がそう言ってるのである。

「しかしきょうほど、おめェを愛したことはねェぜ」(原作「アノ蒼白き城をを見よ」)、と。絶体絶命の場面をルパンに救われた時に言ったのが、この台詞であった。
それ以外にも、
「カン違いするな。やつがこわいんじゃねェ。オレはやつがすきなんだよ。フフフ」(原作第20話「俺はタダイマ盗っと修行中」)や、
「ルパンを狙うのだけは許せねェんだ……許せねェ……」(原作新31「グレート・マウス」)

など、次元がルパンへの思いを口にする場面は意外に多い。
「さすがルパン…」といったルパンを賞賛する言葉もしばしば使用する(新ル12「大統領ヘの贈り物」等)。
ルパンが、めったなことでは次元への信頼や思い、あるいはガンマンとしての能力の賞賛を、ストレートに表現することがないのとは、正反対である(次元の機嫌取りでは時々言うが^^)。

確かに次元は、長いこと身近に接してきたルパンの恐ろしさを、誰よりも知っている。(実際上でも引用した原作20話の同じ場面で、「ルパンがこわいのか」と尋ねる銭形に対して、「こわいとも」という言葉を返している。笑いながらではあるが)
それゆえ、もしもルパンを裏切ればどうなるのか、考えるまでもなく分かっている。
だが、次元が相棒を裏切らないのはそんなこととはまったく無関係である。
ただルパンが好きだから。ルパンの才能や、ルパンのしでかすことの大きさ・面白さに魅せられたから。
そんないたって単純で、純粋な理由で、次元はルパンと共にあるのではないだろうか。



「次元大介という強い相棒がいなければ、お前なんか今頃生きちゃいないぜ」

(旧ル第3話「さらば愛しき魔女」より)

「一人じゃ何も出来ないんだからな」

(旧ル第6話「雨の午後はヤバイぜ」より)



次元は時として、こういう発言をすることがある。
ルパンは放っておくと危なっかしくて見ていられない。そんなニュアンスが、これらの言葉からは感じられる。
次元自身、特に旧ル初期においては、自分をルパンの保護者的存在のように思っていたフシがある。

確かに若い時のルパンは、やや無茶なところがあり(旧ル16において不二子も言っている)、周囲にいる者をハラハラさせることも多かったはずだ。
あれこれと不測の事態に備えていたり、事件の先やウラを読んでいることも多いルパンだが、時々びっくりするほど無防備(に見える)なことも多いし、また頭の回転が良い者にありがちな、おっちょこちょいぶりも披露する(^^)。

しかも、女にはとことん目がないルパン。
その女好きが災いして(ルパン本人は楽しんでやっていることだろろうが)、裏切りにあったり窮地に立ったり…。
そんなルパンを傍で見ている次元は、「危なくて見ていられない」と感じることも多いだろうし、どうしても保護者的感覚になってしまうのも分かる気がする。
どうも次元はルパンよりも年齢が上らしいし、もともとかなり面倒見のいいタイプなので、ますますルパンに対して上記のような台詞を言いたくなるのであろう。

だが次元は、ルパンの面倒を見ることを決して嫌がってはいないし、むしろそれを望んでいるような部分もある。
旧ル9「殺し屋はブルースを歌う」において、アジトでルパンの連絡を次元はイライラしながら待つ。
そしてついにルパンから次元に「お前の助けが必要だ」と言われた時の、嬉しそうな「そう来なくちゃ!」という台詞。
これから見ても、次元はルパンに必要とされることをかなり喜んでいるとわかる。

そしてまた、「寂しがり屋め」(旧ル5「十三代五エ門登場」)という、次元がルパンに対して言った名台詞もある。(個人的にこの台詞、大好き^^)
次元にしか言えないだろう、この言葉!
普段の、明るく軽妙で大胆不敵なルパンの態度だけを見ていると、どこが寂しがり?という印象なのだが、実際ルパンは結構寂しがり屋の面もある。
旧ル13「タイムマシンに気をつけろ!」で、ルパンはわざと消えてみせて、次元と五右エ門の反応を探ったりする。
自分が死んだら、悲しんでくれるかどうかが知りたかったらしい(笑)。
いかにもルパンらしい茶目っ気ある悪戯だと思うと同時に、この辺が寂しがり屋と次元が言う所以だろう。
相棒以外には、絶対に見せないであろうルパンの一面。旧ル5話の時点では次元が、理解していたものと思われる。

勿論、次元はルパンを頼りないとばかり思っているわけでは決してない。



「お前の魅力はでっかいコトをやるところにあるんだぜ」

(旧ル第6話「雨の午後はヤバイぜ」より)


時として手の掛かるルパンではあるが(笑)、盗みをさせれば世界一である。
盗みや変装のテクニック自体もそうだが、何よりルパンの奇抜で大胆な発想が、超一級品、いや天才的なのである(誉めすぎじゃないですよね?笑)。
そんなルパンの才能に、次元は最も魅力を感じているのだろう。
それを非常に良く表しているのが、上記の台詞である。
原作にも「ハデに盗んでくれなきゃ」と、次元がルパンに対して言う場面もある。(この後、「このマンガもつまらねェ」とメタな台詞が続くのだが^^)

「一文にもならない小汚ねェ仕事」と、6話の不二子の依頼を貶し、ルパンを諌める。
ルパンよりも、わりと仕事の「利益」を重要視する次元らしい台詞であると同時に、次元がルパンに望んでいること・期待していることがよくわかる。
ルパン三世という世紀の大泥棒に、次元は強く惹かれているのである。
普段どれだけ世話が焼けようが、女ったらしだろうが、そんなことはルパンの才能の前には、多分どうでも良いのである。(というか、先も述べたがルパンの世話が焼ける部分も決してイヤではないのだとは思うが)

途方もないことを仕出かすスケールの大きさ、退屈することのないスリルと挑戦の日々が、ルパンと共にある。
次元が殺し屋から足を洗ったのも、ルパンとのこういう生き方が面白いと感じたからではないだろうか。

実際不二子絡み以外で、次元がルパンの仕事に反対する時は、大抵それが「ルパンらしくない」仕事だからと考えている時ではないだろうか?(あまりにも危険すぎる場合、嫌な予感がする場合、要はルパンの身を気遣って反対する時もあるが)
例えば「熱いお宝に手を出すな」の時も「何も貧しい農民の宝を奪うことはない」という反対の仕方をしている。
別にルパンを義賊扱いしているわけではない。
貧乏で無力な農民(と、この時点では次元も五右エ門もクオレ島の人間をそう思っていた)から、世界一の大泥棒がモノを盗んだところで、自慢にも何もなりはしない。
常にスケールの大きい、粋で、大胆な仕事を……ルパン三世の名に相応しいやり甲斐のある仕事をして欲しいと、次元は思っているのではないだろうか。

そして、ルパンの才能だけでなく、次元はルパン自身も勿論信頼している。
決して次元を見捨てたり裏切ったりしないということを。
旧ル8「全員集合トランプ作戦」で、不二子と二人篭城することになった次元の元へ、五右エ門が助けにやって来る。
そしてその時、まだ仲間になって間もない五右エ門は、ルパンの言葉を真に受けて「信じたくねェだろうが、ルパンはお前たちを見捨てたぞ」と言うのだが、次元は全然そんなことは本気にしない。
ルパンが何もせずただ自分たちを見捨てて一人逃げてしまうことなど、絶対にないと確信しているのである。
次元がいつも結局ルパンを助けに行くように、ルパンも次元を見捨てることなど、あり得ないのである。

こんな風に信頼し合う相棒同士なのであるが、いつも次元がルパンを誉めたりしているわけでは当然ない(笑)。
時に「一度思いきりぶん殴ってみたかったんだ」(新ル139「ルパンのすべてを盗め」)と真顔で言ってみたり、「おっちょこちょいで、女ったらしの取り柄のないヤツ」と貶したりする(新ル128「地獄へルパンを道連れ」)。
さらには、ルパンに俺を倒したいという気持ちがあるのではないかと問われると(新ル62「ルパンを呼ぶ悪魔の鐘の音」)こう答える。
「ああ、そう言われてみれば自分でも気がつかねぇうちにそんな気があったのかもしれねぇな」
そんなハズがないのは、自分でよく知っているだろうにわざとそんな台詞を言ってみたりする。(実際その直後、大慌てで「冗談だよ」と言いながらルパンの後を追っている)
また、ちょっとしたことで次元はすぐに短気を起こし、ルパンに「絶交」宣言をしたりする(笑)(旧ル9「殺し屋はブルースを歌う」、新ル42「花嫁になったルパン」、新ル93「万里の長城インベーダー作戦)

相棒歴の長くなったパートIIIの時期では、「お前とはもう組まねぇ!」という台詞もよく言っている(PARTIII・39「ライバルに黄金を」、49「父っつあんが養子になった日」等)。
相棒としてのかなりの貫禄(笑)。本気じゃないくせに、あるいはその場の勢いでそう思ったにしても、結局組まずにいられないことを、言われるルパンも、そして次元自身、よく知っているからこその台詞だろう。

こんな風に軽口を叩き合い、時にちょっとした喧嘩もしたりする……。
ごく自然な仲の良さが、またまた二人の魅力なのである。

「夢ってのは女のことか?」

(劇場版「ルパンVS複製人間」より)


こんなことを言ってしまっては反感を買いそうで、非常にビクつきながら書こうとしているのだけれども…
でも一度、Reviewコーナーの「ルパンVS複製人間」でも同じ内容を書いてしまっているので、今更といえば今更なのだが…(前置き長)

誰よりもルパンに近しい次元だが、ルパンの考えていることの深奥部は、決して共有し得ないのではないかと、最近思っている。
ルパンの最も深い部分が分からないのは、次元だけに限らない。
五右エ門も、不二子も、銭形も、誰もがそうなのだとは思う。
「天才という言葉を惜しみなく送れるのは、お前だけだった」と、宿敵銭形にすらそう言われるルパン。
その真の天才の考えていることをすべて把握するのは、どんなに近いところにいる幼馴染であり相棒である次元にも、やはりなかなか難しいのだと思う。

ちなみに時々ルパンが、「今俺が何を考えているかわかるか?」と聞くことがあり、それに対して次元は「わからんな」と答えているが(新ル29「電撃ハトポッポ作戦」、99「荒野に散ったコンバット・マグナム」)、まあそれは当然といえば当然で(笑)、長年連れ添った夫婦だってそんな風に唐突に質問されては、相手の考えていることなどわかるはずもない。
このような問いかけは、ルパンが自分の考えていることを話し始める時のクセらしいので、こういうノリの場合についてはあまり考えに入れないことにする。(「電撃〜」の時は、さすが相棒、きっちりルパンが考えていることを的中させているけれど^^)

ただ、ルパンが彼本来の天才性を発揮して真剣に考えている時、あるいは極限状態の時に考えることには、やはり時々ついていけていないことがある。
旧ル4「脱獄のチャンスは一度」において、一年間ルパンを信じて待ち続けた次元ではあったが(これだけでも誰よりもルパンを充分理解しているが)、さすがの彼にも、あと30分で死刑執行という土壇場でもルパンが何一つ武器も持たずに独房にいて、「何も企んじゃいないさ」と涼しげな顔をしている時には、ルパンがこれからどうするつもりなのか、わからなかったであろう。
また、上記の台詞「夢ってのは、女のことか?」とルパンに尋ねた時、次元にはルパンがどうしてマモーの元へと行かねばならないのか、本当のところはわからなかったのかもしれない。
ルパンは、そんな次元を「クラシック」と評するだけで、「女のことか?」という質問には肯定も否定もしていないけれども…
ルパンのこの答え方からして、不二子のためだけに一人でマモーの元へ乗り込んだわけではないように思われる。

こんな風に、次元にはルパンの考えていることをどうしても把握しきれない時もある。
次元は言葉で、あるいは理屈では「ルパンはこう考えていてこう脱獄するに違いない」とか「この考えの下にルパンはマモーと戦わねばならないのだ」とは、言えなかったかもしれない。
しかし。しかし、である。
次元は、理屈ではハッキリとわからない、把握しきれない、そんなルパンという男を、誰よりも「理解」はしているのである。
理屈で、ではなく、感性の部分……言葉にしづらいフィーリングのような部分で。

たとえ、そんな時のルパンの思考を具体的に言葉で説明できなかったとしても、また、次元自身ならばそうはしないと感じていたとしても、それでも尚、次元は「それがルパン三世という男なのである」と感覚的に理解し、常に結局は彼の意志を尊重するのである。

ルパンが誰よりも誇り高い人間だとわかっている故に。後には引かないヤツだと、「知って」いる故に。

理論派でなく、どちらかというばフィーリング人間である次元は、天才である相棒ルパンを感覚的にとらえ、理屈ぬきに信じ、かつ受け入れているのではないだろうか。

さて、勿論、普段のちょっとしたことならば、ルパンと次元のツーカー度はきわめて高い。
思い出せる限りでざっとあげてみても、結構いろいろな場面がある(^^)。
旧ル3「さらば愛しき魔女」の、島に上陸する際のキラー・イン・キラーズとの戦いでは、「ルパン」「次元」と互いの名前を呼ぶだけで通じ合っている様子だし、
旧ル15「ルパンを捕まえてヨーロッパへ行こう」では、ルパンの作戦を先読みし、穴掘りの準備だけでなくトラックの運転手の帽子まで用意してあり、気のきく相棒ぶりを見せている(^^)。
新ル26「バラとピストル」では、コインをお互いに撃ち合うだけで、言葉もなく相手をきちんと認め、しかもその後の作戦(死んだフリ)まで言葉を交わさずに実行するのである。
新ル112「五右エ門危機一髪」では、ルパンの脱出作戦を「アレを用意してくれや」との言葉だけで次元はわかっていた。
また、新ル21では、自分のことで頭が一杯になってしまっていた五右エ門には、ルパンが呑気に釣りをしているように見えていたその態度も、実はルパンが猛烈に頭を働かせている証拠であると、次元の方はきちんと理解していた。

いずれにしても、ルパン三世という男をこれほどまでに理解し、彼の傍にいる人間は他にいないだろう。

(2002.6.12)
(2005.12.13若干修正・追記)

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