人間関係考察(対次元編)

ここは、ルパン視線で次元への感情や、二人の関係を考えていくコーナー。
アニメ・原作をひっくるめて考察することの無理は、百も承知で(笑)、ちょっとやってみたいと思います。

「次元大介、俺の相棒。早撃ち0.3秒のプロフェッショナル。クールなガンマン。
その上義理堅く、頼りになる男」

(旧ルオープニングより)



この言葉が、ルパンの次元に対する思いを一番端的に表していると思う。
何より「義理堅く、頼りになる男」というのは、ルパンにとって見れば最上級の、そして多分無二の誉め言葉なのではないだろうか。
基本的にルパンは、そう易々と人を信用するタイプではないし、かなり用心深い人間である。
そのルパンが「俺の相棒」と呼び、「頼りになる」との言葉を与える…、その重みを考えると、ルパンの次元への信頼度がわかるというものである。
ルパンは、めったなことでは他人を「頼りに」したりするような男ではないからだ。

次元と組む以前、ルパンは基本的には一匹狼として動いていたと思われるが(「カリ城」、新ル54「半七刑事十年目の約束」、新ル50「私の愛したルパン」等)、まれに別の人間と組んで仕事をしていたことがある。
有名なのはTVSP「ワルサーP38」のドクターであろう。
ご承知の通り、ルパンは彼にまんまと裏切られてしまうのだが。
ルパンのように、己を頼むところが強く、非常な自信家であり用心深い男が、いくら若気の至りとは言っても、組んだ相手に裏切られたわけなのだから、そのショックは如何ばかりかと思う。
「ドクターに」裏切られたからとか、彼が大切だったからという意味合いではなく、裏切りをするような人間と組んでしまった、そして、まんまと出し抜かれてしまった、そんな不覚を取った自分への怒りが強かったのではないかとも、想像する。

そんな体験をしたルパン、しかも非常に誇り高いルパンが、よくもまあ新たに相棒を持とうという気になったと、感心してしまうのである。ルパンなら、そのまま相棒ナシで活躍することも充分あり得たのではないか。
やはり、相手が次元だったから……、ということに尽きると思う。

原作では、ルパンは次元について「だからヤツを相棒なんかにしたかねェんだ」、「かってに相棒なんかになりやがって」と、言っている。(第19話「ナサケ無用」)
勿論、この言葉をすべて真に受けるつもりはないけれど(特にこの時は、次元が時間に遅れているという、ルパンにしてみればイライラする状況下で発せられた言葉であるから尚更)、どちらかといえば、二人が再会した後次元が「押しかけ相棒」となったのではないか、という気がしないでもない。
あのルパンから積極的に組みたがったというよりも、ルパンの才能に心酔した次元から……と考えた方が、しっくり来るようにも思える。
まあこの二人のことだから、特に言葉もないまま、気付いたらいつの間にか組んでいた、というパターンも有力である。むしろこっちの方が彼ららしいか。

五右エ門の場合、「押しかけ相棒」となっていることから考えて(特に原作)、組むに際して積極的に働きかけたのはどちらか、と“敢えて”考えるならば、やはり次元の方に思えてしまう。

勿論、ルパンはいくら押しかけられても、気に入らなければ断固として拒否できる。
相棒として相応しくない人間なら、決して受け入れることはなかったであろう。

「ガキのころはよくケンカしたっけな……」

(原作ルパン三世 11話「健在ルパン帝国」より)



幼馴染であるということが、ルパンにとって次元を相棒とした非常に大きな要因の一つだと思われる。
子供の頃のお互いをよく知っていて、しかも喧嘩できるほどに遠慮のない存在。
ルパンにとって、そういう間柄の人間は、次元以外、殆どいなかったのではないだろうか。

原作でのルパンは、子供の頃から泥棒の英才教育をされていたらしい。
当然、周囲にいるのはクセの強そうな大人や、色っぽい女性だったりする(しかも裸で侍らせてるし!)。
学生服を着ていたので、もしかしたら「ジャリ時代」(笑)学校に行っていたこともあるのかもしれないが……。
あまりにもルパンは早熟な天才であり、とても普通とは言いがたい環境で育っている。
そんなルパンに、同世代の「友達」がたくさんいたような雰囲気は、感じられない。(次元以外では、原作新「だんまり」のネズミ吉三くらいか?)
そういう環境の中、「喧嘩」が出来るほど親しい間柄だった次元は、ルパンにとって大きな存在だったのではないだろうか。

ルパンの命を狙う殺し屋として再会した次元(原作設定)だが、それも次元の妹が人質に取られているという、苦しい立場がそうさせたものであり、以後、ルパンの相棒となってからの次元は、決してルパンを裏切ることなく、むしろ次元自身の古い友人を(苦しみつつも)、敢えて手に掛けてまでルパンを守ろうとするくらい、忠実な相棒であり続けるのである。
そして、ルパンもそんな次元を誰よりも信頼し続けるのだ。

「命令は俺が出す!」

(旧ル16話 「宝石横取り作戦」より)



旧ル時代、まだルパンが若かった頃。ルパンは時としてこういう台詞を吐く。
ボスは自分だと、断言してみせるのである。
せっかくルパンのことを思って、もしくは仕事の成功のために、次元は忠言しているはずで、きっとその事はルパンだってわかっているだろうに、わざと次元の助言を無視してみせるのだ。
まあ16話の時は、不二子の挑発に対してムキになっていたわけだが。
個人的には、この手のルパンの台詞は、次元との間の上下関係の表れだとは、決して思わない。
むしろ、ルパンの次元への信頼・甘えのちょっとした表れなのではないかと思ったりする(妄想しすぎ?)

普段は次元の忠告を気かないくせに、旧ル6「雨の午後はヤバイぜ」で、次元が「行ってやれよ」と、ルパンの望んでいるだろう行動を先回りしてそう促すと、ルパンは「いいのか?」と問い返したりする。
この辺からも、ルパンが次元に対してむやみとボス面したいわけでも、歴然とした上下関係があるわけでもないことが分かる。

新ル時代になっても、不二子の持ってきた胡散臭い仕事に対して、いつも次元は忠告・助言を繰り返す。
しかしルパンはその助言に従ったことは殆どない。
どれほど次元が「怪しい」と言っても、軽くあしらうか、無視するか、「不二子を侮辱するのか?」などと怒ったりするかのいずれかである。
もともとルパンには、天邪鬼気質が強い上、帝国支配者の三代目として人に命令することに極めて慣れている分、誰かの言葉に従うのが不慣れだということもあるだろう。
何より、ルパンは仕事をした結果の獲物の「金銭的価値」よりも、主に「挑戦し甲斐」や「冒険の面白さ」に多分魅力を感じているので、不二子が一枚噛むことにより彼の作戦が安定感を欠く事を、厭うていないのだが、次元はその辺をなかなか理解しない(理解しないのではなく、単に不満なのかもしれないが^^)。
まあ、表面的にはどう見てもルパンの単なるスケベな下心以外なにものでもないように見えるし、実際そういう面も多々あるだろうから(笑)、個人的には次元の心配の方に共感してしまうが。

結局、ルパンは自分の意を通してしまうのである。時として、かなり強引に。
そしてよっぽどの場合を除いて、次元は、文句を言いつつもルパンについて行くし、例え「降りた」と宣言していたとしても、ルパンを見捨てることが出来ずに、常にどこへでも助けに行くのである(「ルパンVS複製人間」、新ル151話等多数)。
ルパンはきっと、相棒にそうされることに非常に慣れてしまっているのだろう。

自分を決して裏切らない相棒・次元への信頼は、ルパンの場合、時にこうしたワガママ(笑)となって表れるのである。

「ハジキなんか、目をつぶっていたって組み立てられる男さ」

(新ル99話「荒野に散ったコンバット・マグナム」より)

「お前は言わないさ」

(新ル148話「ターゲットは555M」より)



ルパンの、次元に対する信頼は厚い。
射撃の腕に対して、そして人柄に対して。

「荒野に散ったコンバット・マグナム」では、普通に考えればあまりにも無茶な試練を(笑)、次元に与える。
いくら国境までの道のりを次元が知らないからと言って。次元を見捨てるつもりがないからといって。自分たちはブランコ総統の戦闘機に追われているからといって。
……よりにもよって、次元が戦う際何より大切な、肝心要の拳銃を、バラして道しるべとするのである。
次元が言う通り、道しるべには金貨だって構わなかったように思えるのだが。

この辺の詳細は、Storyコーナーで新ル99話で述べたが、とにかくこの回のルパンは全体的に何となく次元に冷たい。
五右エ門が次元の「果し合い」に対して、不思議なほどしゃしゃり出るのとは正反対である。

このルパンの態度は、勿論、次元の腕前への絶大な信頼があってこそだと思う。
1対1の果し合いなどで、自分の相棒が負けるとはハナから思いもしていなかったのだろうし、次元ならあの程度のハンデ(拳銃ナシ^^;)があってちょうど良い、くらいに考えていたのだという気がする。

が、それ以上に、この回のルパンは、やや悪戯心を出したのでは、という気もする。
ルパンの仕事以上に、自分の過去の因縁に思いが行ってしまっている相棒に対して……。いつも一緒に仕事をしている次元という存在が、あまりにも当たり前になっていたものか。
ルパンはお宝ではなく、拳銃をバラして道しるべにしてみせる。
「お前ならこれくらい、軽くクリアできるよなぁ?」とでも言いたげな(←勝手な思い込み)、悪戯心溢れる、次元にしてみればかなり迷惑な(笑)信頼感の表れだったのではないか。

また、「ターゲットは555M」の冒頭のやり取りからも、かなりルパンの信頼感が読み取れる。
あれほど困難な仕事を、平然と言い渡す。わざと「出来るか?」と聞いてみたりするけれども、最初から次元が断るはずがないと確信している。
その時の「お前は言わないさ」の台詞からは、その確信が溢れている。
悪条件の中であろうとも、次元なら555M先のたった1点に弾を命中させ続る腕前を持っていることも。
次元が、決してルパンの期待を裏切らず、どれほど困難なヤマだろうと、乗ってくるだろうということも。
ルパンは、次元という人間をとてもよく知り尽くしているのである。




こうして書いてきてふと気付くと、ルパンが次元に甘え、または助けられているところばかりクローズアップしすぎてしまったような気がするので(笑)、補足も少々。 常に迷惑をかけているのは、一方的にルパンばかりでは、決してない。
そもそも旧ル1「ルパンは燃えているか……?!」で、次元が不二子に頭を殴られた上に捕まってしまい、ルパンの見せたせっかくの「ミラクル」のタネを、銭形に明らかにしてしまう結果となっている(ルパンのアリバイをぶち壊したのは、まあ次元のヘマではなく不二子の裏切りといえるのだが)
また旧ル6「雨の午後はヤバイぜ」で、不二子側に捕えられてしまった次元をルパンは救っているし、新ル58「国境は別れの顔」では、ルパンはギリギリのところできっちりと次元を助けにやって来る。
その上、ちょっと文句は言うものの、次元がオーロラの雫をモニカに与えてしまっても見過ごしている。
また新ル84「復讐はルパンにまかせろ」で、ルパンは次元のために転送機なんて得体の知れないモノに入るし(“思い入れたっぷり”の復讐のため!)、新ル76「シェークスピアを知っているかい」では、全面的に次元に協力している。

さらに、パートIII・28話「アラスカの星は地獄への報酬」では、「相手に情けをかける分だけ、次元が不利だ」と、クーガーと次元の立会いを冷静に見つめ、次元のプライドを傷つけないよう、ごくさり気ない形で相棒を助けているのである。
ロコツな助太刀ではない辺り、次元の気質を呑み込んでいるルパンにだけ可能な、さり気なく、粋で、愛情の感じられるナイスフォローなのである。

ルパンの方がのびのびと、次元のルパンに対する心酔(または友情・愛情というか。笑)に甘えて自由に、泥棒家業を楽しんでいるように見える。
実際そんな面も大いにあるのだが、次元もルパンに適当に迷惑をかけたりしている。
力関係は、ルパンの方がかなり強そうではあるが(時にルパンが機嫌を取ることもあるが、基本的に追いかけるのは次元だし)、一方的に次元が尽くしているわけでも面倒を見ているわけでも当然なく、お互いに誰よりも信頼し、フォローし合い、上手にバランスを取り、適度な距離感を保ちつつ、永く、永く付き合っているのである。
そんなところが、この二人の魅力であろう。

(2002.6.4)


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