銭形流「ルパン逮捕作戦」分析



ルパンを追い続けて幾年月。
神出鬼没のルパンを捕えるために、銭形警部はさまざまな手段を用いてルパン逮捕に臨んでいる。
ここでは、そんな銭形流の逮捕術を考えて行こうと思う。
取り上げるのは、主なアニメ作品のみということにするので、ご了承の程を。勿論ここに挙げた以外にも、いろいろなルパン逮捕作戦が取られている。
(尚、原作銭さんと、アニメのとっつあんでは、どうもルパン逮捕へのアプローチ方法がまったく違うように思え、一括して論じることは難しいため、原作は割愛する)

物量作戦

銭形警部のよく使う手として、この物量作戦が挙げられる。
大勢の警官隊を率い、どんなに多くても4人でしか行動しないルパンたちを、数にモノを言わせて捕えようとする作戦である。
(こう書くと、何かイヤ〜な感じですが。笑)
次元にも「銭形の物量作戦は嫌いだ」と言わしめるほどだから(PARTIII・24「友よ深く眠れ」)、相当よく使う手であるのと同時に、なかなかウンザリさせるほど厳重でもあるのだろう。

ルパンを逮捕できそうな場面というのは、ルパンが盗みの予告状を出し、それに対して銭形が待ち受けるという場合が多い。
銭形にとってはルパン逮捕が至上目的であろうが、それと同時にルパンが盗むと宣言したお宝を守らなくてはならない。
それを考えれば、盗みにやって来たルパンたちが侵入出来ぬよう、あるいは抜け出すことが出来ぬよう、各処に人員を配置し守りを固めなくてはならないのも仕方がないことである。
相手がルパンでさえなければ、この作戦、本来最も効果的なのだとは思う。

しかし、ルパンは変幻自在の変装の名人である。物量作戦では、実はルパンの思うつぼ。
多く警官を配置したばかりに、ルパンたちがその中の警官に成りすまし潜り込むことを容易にしてしまっている。

勿論、銭形も毎回ルパンたちの思うままに警官に成りすまさせてばかりではない。
ルパンたちがそうして忍び込むことを予め想定して、警官たちの靴の裏に、番号をつけておいたことがある(新ル111「インベーダー金庫は開いたか?」)。
点呼の時、番号を叫ぶと同時に靴の裏を見せていくのである。
そんなことを知らずに、警官に変装していたルパンたちは、当然靴の裏に番号を振っておいたはずもなく…(笑)
かなり慌てて、結局逃げ出さざるを得なくなった。
いつもこの作戦をとれば、かなりルパンたちの侵入を制限できるだろうに…とふと思ったが、同じ手に二度と引っかからないのがルパンなので、やはりこの作戦を繰り返しでは意味がないのだろう。

また、物量作戦といって思い出すのは、ルパンたちを押しつぶさんばかりに一斉に飛び掛る警官隊の光景である。
何も一気にあんなに飛び掛って、ルパンたちを押しつぶさなくても…と思ってしまうが(笑)。
普通は、こんな大量の人間に押しつぶされたら、逃げ出すことはまず不可能。単純で馬鹿馬鹿しい作戦のようで(失礼!)実は結構有効なのかもしれない。
だがこれも、結局ルパンたちにとって功を奏す場合が多い。

旧ル23「黄金の大勝負」では、ルパンのアジトを大勢で取り囲むところまでは、銭形有利であった。
が、ルパンたちの立てこもる部屋にまで大人数で踏み込んだのが非常にまずかった。
ドアをぶち破って侵入した際、勢いあまって警官隊が将棋倒しになったそのドサクサで、ルパンたちはその中に潜り込み、鑑識官として難なく脱出してしまう。

このパターンは非常に多く繰り返される。
ルパンたちの上に銭形を含む多くの警官が飛び掛って乱闘している間に、ダンゴ状態になっている警官たちの合間からそっと逃げていく……この光景はとてもよく見かける気がする。新ル9話「浮世絵ブルースはいかが」や145話「死の翼アルバトロス」など。
あるいは、ルパン本人だと思って大勢で飛び掛ったら、実は人形(爆弾付)というパターンもある(PART・III49話「父っつあんが養子になった日」など)。
いい加減、大勢の警官隊で一気にルパンたちを捕まえる作戦に見切りをつければ良さそうなものなのだが(笑)、案外成功しかかることも多いので、なかなか止められないのであろうか。

新ル145「死の翼アルバトロス」では、何と銭形が不二子に化けてルパンと次元を罠にハメ、その後隠れていた大勢の警官たちが二人の上に圧し掛かって捕えることに成功している。
この場合、場所が海の上、というのが何より良かったのだろう。
さすがのルパンも、海に浮かんだ小さなボートの上の、溢れんばかりの警官隊からは逃れることが出来なかった。
(勿論、その後陸地へ移動させられた後、隠していたカツラ武器で脱出するが^^)

物量作戦の要は、ルパンたちがこっそりと抜け出すことが出来ないような「場所」を選ぶこと、なのである。


史上最も大掛かりな物量作戦といえば、何と言っても新ル134「ルパン逮捕頂上作戦」であろう。
銭形は周到に計画を練り、ルパンたち3人の乗った飛行機を、銭形が選んだ山頂へとまんまと導く。
そしてその周囲を、各国から派遣された警官たちで埋め尽くすのである。
さらには、戦車隊まで出動させ、徹底的に攻撃を仕掛ける。
ルパンたちには手持ちの武器以外、何一つなく、脱出しようにも飛行機の燃料もなければ、山の下には蟻一匹這い出る隙すらも残されていない。
警官に化けて紛れ込むことも、当然出来ない。
次第に包囲網は狭められ、容赦なくミサイル攻撃を受けて、身を隠している飛行機もボロボロになっていく……

構想10年というだけあって、かなり徹底的で念のいった作戦である。銭形一世一代の大作戦だったと思われる。
だが、やはりこの時も成功することはなかった。
ここでも要となるのは「場所」。
もしもこの時銭形がルパンたちを誘導した場所が、山頂でなく、窪地のようなちょっと周囲よりも低い場所であったら、この作戦は間違いなく成功していたはずだ。
トランス・サルピン号の運転を止めておかなかったこと以上に、ルパンとの決戦の地を「山頂」にしてしまった――そこがこの作戦失敗の最大の要因だった。

いにしえの兵法を持ち出すまでもなく、戦う際は、通常高い場所に陣取った方が有利である。
だからこそ、ルパンたちはたった3人であれだけの時間を持ちこたえられたわけだし(山肌を登ってくる警官の一人を転がり落とせば、雪崩をうって次々と大量の警官たちが落ちて行き、時間を稼ぐことが出来ている)、結局最後はルパンの奇策で「空」へと逃げることが可能となった。
さらにはあの時間3人が持ちこたえられたからこそ、結果的に戦車などが燃料切れになって、追撃されることもなく完全に逃げ切ることが出来たのだ。

取り囲んだ警官隊たちよりも、低い位置にルパンたちがいたら、ルパンのあの作戦は使えなかったし、戦車など持ち出すまでもなく、もっと早くに3人を捕まえられただろう。

この物量作戦の徹底ぶりは素晴らしいが、銭形の選んだ場所が悪く、さらには最後の押しがまたしても足りず(燃料切れ。笑)、ルパンの前に敗れ去ることとなった。
銭形の、最後の詰めの甘さ。これが何よりも残念でならない。

逮捕グッズ

銭形は、結構凝り性である。
それはルパンを逮捕すべく、さまざまな道具を開発していることから察せられる。
シンプルな、時に大掛かりな物量作戦で押してくる銭形は、また時としてさまざまなルパン逮捕グッズを開発して、奇抜な作戦を取るルパンに対抗している。

まずは、手錠。
ルパンには、普通の手錠ではまったく効果がないので(笑)、やはり凝らざるを得ないのだろう。
旧ル1「ルパンは燃えているか……?!」で、それはすでに明らかになっている。
ルパンは不二子の裏切りで銭形に手錠を掛けられるが、あっさりと外していつの間にか壊れた車に手錠を掛けなおして消えてしまっている。
そうと分かっているはずなのに、銭形は普通の手錠をルパンに掛けてしまい、スルリと逃げられてしまうのだ(新ル5「金塊の運び方教えます」等多数)。

そしてついに新しい手錠が開発される。
新ル22「バラとピストル」では、銭形のコートの裏には、大小さまざまな手錠がビッシリ!
ありとあらゆるルパンの関節すべてに掛けていく手錠のようだ。
よくよく考えると(考えなくても?)、わりと的を射た新型手錠である。
色々な関節が自由自在に動くルパンだからこそ、外されてしまう。ならばその関節すべての自由を奪ってやれば…と考えるのは極めて妥当に思える。
大量の手錠でがんじがらめになったルパンは、さすがビックリしていた(それでも外していけるところがルパンのすごさだが)。
一つ一つの手錠は外すために大した苦労がなくても、こう全身あちこちに掛けられては、ルパンでもたまったものではないだろう。

また、巨大な手錠も登場(新ル45「殺しはワインの匂い」)。
これが掛けられた時のルパンの驚きは相当なものだったと思う(笑)。
手錠の左右にルパンと、そして車ががっしりと捕えられるほどに巨大な手錠なのだから。
さすがのルパンもすぐには抜け出せず、五右エ門がいなかったら、もしかしたら危ないところだったのかもしれない。…と思いつつも、その時ルパンは縄で縛られていたので、なかなか抜け出せなかったということも考えられるが。
TVSP「燃えよ斬鉄剣」に登場した、「ルパンキャッチャー」もこの巨大手錠のノリである。しかし、手錠よりも抜け出しやすそうな形状だし、実際すぐに逃げ出されている。

「殺しはワインの匂い」にはまた、3〜4つの手錠が連なったタイプの手錠も登場した。ルパンの両腕にそれらを一斉に掛けるのである。
手錠の数からいったら「バラとピストル」の時よりは少ないのだが、ここでの注目点は、走る車から乗り出した銭形が、同じく走る車に乗るルパンへと、正確に手錠を掛けられる腕前を披露すること。確かにルパンの言う通り、「腕をあげた」のだろう。
結局これも外すために通常の手錠よりも多少の時間が掛かったものの、ニセの足をつけて銭形に返す辺り、まだまだルパンの余裕が感じられる。

変則型手錠としては、新ル143「マイアミ銀行襲撃記念日」に登場した、タコ手錠(手錠?)が印象的。
旧ル2「魔術師と呼ばれた男」で描かれた通り、ルパンはジンマシンが出来るほどのかなりのタコ嫌いである。
新ル84「復讐はルパンにまかせろ」でも自ら「嫌い」と言っているほどだ。
多分銭形は、そこに目をつけてタコ手錠を考え出したのだろう。
だがルパンは旧ル時代から考えると、どんどんタコアレルギーを克服してきており、タコ手錠で頭をつかまれても特に過敏な反応も示すことはなく、結局また逃げられている。

さらには、こちらは最早定番とも言える銭形の手錠の1つだが、ワイヤー手錠。
ごく一般的な、犯罪者の両手に掛ける手錠ではなく、左右の手錠と手錠の間が長いワイヤー(あるいは長いロープ)となっているタイプのものである。
これならば、ルパンがかなり遠くにいても捕えることが可能だ。
それの変則バージョン?としては、手首でなく、首に掛けるタイプのものもある(新ル98「父っつあんのいない日」、143「マイアミ銀行襲撃記念日」等)
勿論、この手錠が有効なのは、銭形のずば抜けた投げ手錠のコントロールがあってこそだと思う。
拳銃には好・不調の波が見られる銭形だが、それに比べるとこの投げ手錠は、めったなことでは狙いを外さない。

残念なのは、そうしてルパンの手首・足首・首を手錠で捕えたとしても、ルパンの手に掛かれば、アッサリと外されてしまうことである。
ルパンには、どうもなかなか有効な手錠というものは難しそうな気もしてくる。
より複雑に外しにくいものを開発するか、あるいは外そうとすると爆発する等、仕掛けのあるものを作ったら、効力があるかもしれない。
(尤も、銭形は爆発する仕掛けがあるタイプの危険な手錠など、ルパンに掛けることを望まないのかもしれないけれど)

ただ銭形の手錠は、彼の「生け捕り術」と切っても切れない関係にあり、銭形が本気にさえなればルパンたち3人を生け捕ることすら可能なのである(新ル97「ルパン1世の秘宝を探せ」)
もう少し手錠を外しにくくしさえすれば、まわりくどい変な作戦を使うよりも(またまた失礼!)、銭形の生け捕り術と投げ手錠は、よっぽどルパン逮捕への可能性を感じさせる手段である。
何より、「逮捕」は手錠じゃなくてはなるまい。法的根拠云々という前に、銭形の心理として。
ルパンの手首に手錠を掛ける、その時の音を聞くために日々奮闘しているのだろうから。

手錠があまり有効でないことに加え、ルパン逮捕を困難にさせているものに、何と言ってもルパンの「変装」が挙げられる。
どんな人間にでも、そして、動物にさえも変装可能なルパン。神出鬼没なはずである。
ルパンの変装さえ防ぐことが出来れば、ルパンの最も有効な武器の一つを封じたことになり、かなり銭形が有利になれる。

そこで考えられたのが、新ル14「カリブ海の大冒険」に登場する「変装用マスクはぎ取り機」である。
……。うーむ。こんな機械を使わずに、手で抓っちゃ、ダメなのか(←禁句?笑)
しかも変装していなかった場合、この機械に掛けられた人は顔の皮膚がやたらと引っ張られて、痛そうなことこの上ない。
こんな失礼なモノを使われたら、一般人ですらかなり腹を立てることは間違いない。
それがVIPなら尚更である。VIPだったら、こんな機械に掛けられることすらも拒否するだろう。
というわけで、ルパンとすればそういうタイプの人間に変装してもぐり込めばいいことで(笑)、あまり有効な手段とはなりえなかった。

しばらくは手で抓って、変装用のマスクかどうかを確かめるという方法が取られていたようが(新ル44「ミサイルジャック作戦」等多数)、結局これも機械こそ使わないものの、実際のところは同じで、権威ある人間などの顔を抓るわけにもいかず、なかなかルパンの変装を見破ることは難しい。

そしてPARTIII・13「悪のり変奏曲」で登場した「変装防止ボックス」。
ただそのボックス内を通過するだけで、変装マスクが透けて、きちんと素顔が見えるという優れものである。
これこそ本来、ルパンの変装防止には最も有効な道具のようにも思える。
ただ、「変装防止ボックス」を通過すると当然洋服も透けてしまい、裸を警官に見られてしまうことになる。このことが知れ渡ると、特に女性は嫌がるだろうという気はする(笑)。
なので、警備上最も有効と考えられるポイントに、その変装防止ボックスを「密かに」設置すると良いかもしれない。
まあ、ルパンのことだから、同じ手にはそう容易く引っかかってはくれないだろうが。
ただこっそりこんなモノを設置し、ルパンとは無関係な人々も通過させたりしたら、法的にはどうなのだろうか(笑)

またそれ以外には、ルパンの素早い行動を阻止するために開発された、トリモチ方法がいくつかある。
新ル59「マダムXの不思議な世界」では、「ベタモチ作戦」と名付けられたルパン逮捕方法が取られる。
要は道にベタベタするものをぶちまけておき、ルパンの車を足止めするという作戦である。…ノリとしてはゴキブリホイホイに近いか(笑)
だが、ルパンの車には多種多様な仕掛けがしてあるために、そのベタモチからもアッサリと逃げられてしまう。

また、新ル122「珍発見ナポレオンの財宝」では、ECCが開発した「パイ投げ機」というアイテムも登場する。
この機械から投げられるパイは、一度くっつくとなかなか取れない特殊なもので、取るためにはそれ専用のスプレーがいるほど強力なもの。
そのパイを連続して投げられる機械だったわけなのだが、これもまたそれほどの威力は発揮できなかった。
ルパンの動きを拘束するという意味では、考え方としては、手錠の延長線上に位置するアイテムか。
それらで一度しっかりとルパンの身体を捕えることが出来れば、手錠よりも抜け出されることはなさそうにも思えるが、すばしっこく隙のないルパンに命中させることそのものがかなりやっかいだと言えよう。

名・珍作戦

銭形の作戦の中には、待ち伏せ作戦、そしてそれを発展させた(?)おびき寄せ作戦がある。
もともと銭形はルパンの狙うお宝を警備する…という受身的・防戦的立場に置かれる事が多いのだが、おびき寄せ作戦の場合は普通に現場の指揮を取ってルパンを待ち受けるわけではなく、予想外の場所から登場する――いわば積極的な防戦である(なんのこっちゃ^^;)
待ち受ける場所は、金庫の中ということが多い(新ル89「ドロボウ交響曲を鳴らせ」、143「マイアミ銀行襲撃記念日」)。
金庫を開けた瞬間というのは、やはりルパンもホッとするだろうし、さらにはその中にお宝でなく天敵の銭形が入っているとも思わないだろうから(笑)、ルパンの隙をつけるという意味ではある程度有効か。

待ち伏せ作戦の中で最も凄まじかったのは、新ル44「消えた特別装甲車」。
難攻不落のその車の中に、銭形は入り込みルパンを待った。ルパンなら絶対に来ると確信していたのだろう。
だがその中で酸欠となり、銭形は危うく命を落とすところであった。
命知らずなことを仕出かしてばかりいる銭形だが、この時の苦しそうな様子は印象的。次元でなくとも助けてあげたくなる。
この時、ルパンも次元に同意し盗みを諦めているので、眠れる獅子像を守りぬけたという点では大成功である。それにしても銭形以外絶対にしないであろう、無謀で危ない作戦である。


おびき寄せ作戦系には、PARTIII・10「秘宝は陰謀の匂い」等が挙げられる。
ルパンが飛びつきそうな獲物をちらつかせ、おびき寄せるのである。
特にこの回は、ルパン一世所縁のお宝であるから、ルパンが乗ってくるのはまず間違いなかった。
ルパンの嗜好を知り尽くしている銭形だから可能な作戦である。
おびき寄せ作戦の利点は、銭形に有利な状況を、より作り出しやすいところにあるだろうか。前もって罠も仕掛けやすいし、逮捕器具にも凝れる。

新ル151「ルパン逮捕ハイウェイ作戦」は、多少ニュアンスは違うものの、大雑把に分ければおびき寄せ系に分類されかもしれない。
逮捕道具が最も大掛かりだったものの1つである。
ICPO開発の「ルパン逮捕機」は、ルパンの人形の形をしており、ハイウェイ途中にあるX橋と連動している。
ルパンの車が、X橋の一点に差し掛かった時にその人形の首を引きちぎると、橋が二つに割れ、その下で待ち受ける刑務所直行便の牢屋船にルパンはまっ逆さま、という仕掛け。
落下させる地点を「デス・ポイント」と呼び、ルパン人形の「首をちぎって」起動させる等、ルパンへの怨念が感じられる作品である(笑)。
これもまたルパンの身軽さの前に失敗することとなった。
ただこの時の銭形が、あまりにも余裕の態度を取りすぎたのが、ルパンに勘付かせるキッカケになってしまったので、アニメの銭形はポーカーフェイスの練習も必要かもしれない(個人的にはわかりやすいとっつあん、とても愛しいんですが^^)。

銭形はこうしたもの以外にも、ちょっと変わった作戦を実行している。
だが変り種の作戦の大半は、銭形本人の考えではなく、ICPO等の上役が考えた作戦であることが多い。

ルパンたち4人を一度は見事捕えるに至ったのは、新ル「ICPOマル秘指令」の浪花節作戦だ。考えたのはジャスミン局長。
この時銭形は、ジャスミン局長と共にルパンたちにも気付かれないほどの見事な変装ぶりを披露する。
そしてお涙頂戴的なラブロマンス(笑)を展開してみせる。
情け深い五右エ門はともかく、普段クールな不二子ですら騙される、銭形の演技力にも注目したいところ。
その作戦の優れたところは、逮捕した後ルパンたちが脱出出来ないように、ルパン用の特殊な檻を用意しておいたところにもある。
不二子の特大ブラジャーがなければ、ルパンも危ないところだった。

また「ルパンの行動を予知する」ために用いられたコンピューター作戦(旧ル22「先手必勝!コンピューター作戦」)や「アストロジー作戦」(新ル77「星占いでルパンを逮捕」)というものもある。
文字通り、コンピュータを使って、もしくは星占いでルパンの行動を予知し、それに予め備えてルパンを逮捕しようという作戦である。
ルパンのやっかいなところは、その奇抜で大胆な発想に基づく作戦。そのIQ300の頭脳から考え出される作戦を、前もってすべて知ることさえ出来れば、逮捕も夢ではなくなる(と上層部は考えたのだろう)。
上層部が頼ったのが、コンピューターや占いなど、人間の頭脳以上の機能のあるもの、または人智を超えたものである点が、何となく笑える。

この二つの作戦に対して、最初銭形がひどく懐疑的で嫌そうにしていたのが、いかにも彼らしい。
わけのわからない機械や、胡散臭く非科学的な占いなどに、ルパンのことがわかってたまるかという、そしてルパンを逮捕できるのは自分なのだという銭形の自信と信念の現れのようでもある。
実際どちらの作戦も失敗しているわけで…
やはりルパンのすべてを知り尽くし、命懸けで地の果てまでも追い続ける銭形以外にルパン逮捕出来るものは存在しないのではないだろうか。

それにしても気になるのは、ルパンには次元・五右エ門というどこまでも信頼できる相棒がいるのに対し、銭形は結局のところあくまでも独りであるという点である。
もしも銭形に、彼と同じくらいの能力を持った部下がわずかでもいれば…と考えてみると、ルパンたちはかなりの苦戦を毎回強いられるのではないかと思える。
実際のところ、ルパンを寸でのところまで追いつめたことなら、きちんと逮捕した回数以上に、かなりの数になるのだ。
が、ルパンには二人の腕の立つ相棒がいて、ギリギリのところでルパンを救っていくことも多く、銭形はまた煮え湯を飲まされることになる。

大勢の警官隊を投入する物量作戦に頼らざるを得ないのも、国家権力を持っているからというのもあるにせよ、銭形には「少数精鋭」作戦を取りたくても、絶対的に信頼でき、かつルパンと対抗できるほどの実力を兼ね備えた部下に恵まれていないということなのではないだろうか。

そんな不利な状況の中でも、銭形はルパンを研究しつくし、また直感を磨き上げ、ルパンを日々追い続ける。
しかもルパンの走る車にしがみつくのなんか朝飯前。飛行機にぶら下がったり、潜水艦にしがみついたりと、とにかく命を惜しむ様子すらなく、常人離れした根性でルパン逮捕に邁進する。
もしも追うのが銭形でなかったら、あのルパンになど手錠の1回も掛けることなど出来ないかもしれない。
そう考えれば、銭形がかつて幾度もルパンを逮捕しているのは、もっと評価されてしかるべきだし、さすが銭形はルパンが唯一認めたライバルに相応しい実力の持ち主なのだと思う。
時に多少のツメの甘さがあるにせよ、ルパンが真実天才的だからこそ、結果として逃げられてしまうわけで、決して銭形が「無能」だからではないと、改めてちょっと強調しておきたい(笑)。

(2002.10.5)


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