第13話 タイムマシンに気をつけろ!


タイムパラドックス

真面目に解説しようとすると、とにかく難しいこの作品。
タイムマシンが登場する小説にほぼ必ずつきものの、タイムパラドックスが関わってくるからなのだが…。
タイムパラドックスについては、私はSFに弱いので詳しい人に聞いてみてください(笑)。
が、SFが苦手な私がちょっと考えただけでも、かなり不思議な現象が起きている。

魔毛なる怪人は、ルパンに自分の言っていることを信じさせるために、あるいはルパンに死の恐怖を味あわせるために、幾度もルパンの目の前から物や人を消していく。
魔毛によると、過去にタイムトラベルして、その物の作者を消しているから、この世から消えてしまったのだという。
ルパンはこうして次第に追いつめられていくのだが…

ん?
過去に行って、その制作物(黄金像や古城の)作者を殺してきたのなら、その作品は、この世界が始まって以来、最初から影も形もなかったということになったはず。
一度たりとも、この世に存在していなかったということになるのだ。そういう風に、世界を魔毛が変えたのだから。
だとしたら、ルパンや次元がどうして盗めたのか。「消えた」と認識できたのか。
歴史に魔毛が介入した時点で、その物はこの世に最初からなかった、と修正されるはずなのだから、ルパンたちに(というか世界中の人にとって)城も像も、もともと存在しないものなのだ。
故にそんな物の「記憶」も、あってはならないと思うのだが?

いかがでしょう。ちょっとでも深く考え始めると、おかしくなりそうになるような?(バカな私だけ?笑)
というわけで、この話はあまり深く、時間軸の性質や、タイムパラドックスについては考えたりせずに、話を単純に楽しんだ方が良いと思われる(^^)。 ある日突然、魔毛はルパンの前に現れる。
眩い光。不気味な「予言」。忽然と姿を消すその手並み…。
彼は、ルパンに対して「あと4日後に、この世から消える」と告げるのだ。それは、ルパンを殺すとの宣言、彼への挑戦に他ならない。
なかなかの強敵現る、という雰囲気なのだが、最初ルパンはそれほど気にした様子はない。
待ち合わせ場所で次元と合流し、その事を相棒に話すのだが、単なる殺し屋がまた自分の命を狙いに現れたんだろうと、気楽に構えていた。
そんなことよりも、その夜の仕事の方へと、ルパンの気持ちは向かっていたのだ。

ところでルパンと待ち合わせしている次元、トレンチコートがキマっててカッコイイ!(^^)
この話ではこのコート姿以外にも、ルパンと色違いの仕事着(?)や、女中姿・お百姓姿の変装が見られ、次元ファンには贅沢な回かもしれない(笑)。

さて、この夜ルパンはある黄金像を狙い、すでに予告状を出していたらしい。
ルパンを待ち構えるのは、勿論銭形警部。
が、今回の出番はここだけ。
まんまと女中次元の物音におびき出され、警部が黄金像の部屋から出た隙に、邸の主がルパンに、警備員すべてがルパンの部下にとすりかわっていた。
黄金像は、ルパンに奪い去られる。

ちなみに、ルパンの部下という存在は、アニメでは旧ルならでは。
1話でその存在が語られる、ルパンシンジケート、ルパン帝国の雰囲気が漂い、ちょっと貴重。

黄金像を首尾よく盗み出し、ご機嫌なルパンと次元。
古城の前に車を止めて、二人で今日の獲物を眺めつつ大いに笑う。
が、その瞬間、黄金像が消えた……

突然目の前から像が消えた、とは信じられないルパンは「落ちたんだろ」などと言って探すが、どこにも見当たらない。
像を消したのは、魔毛狂介である。
先ほどと同様、魔毛は唐突に出現した。
タイムマシンで過去へとさかのぼり、その黄金像の作者を殺してきた、だから黄金像は消えたのだ、と告げる。
そして彼がルパンを狙う理由も説明する。……魔毛の子孫が2874年にルパン13世によって殺される、その事への復讐なのだと。
勿論、そんな話をすぐに信じるルパンではない。
魔毛を怒鳴りつけて帰ってきてしまうのだが…(この時の「4世だって、この俺がまだタネも仕込んじゃいないのよ!」という台詞、すごく好きだったりする^^)

次元と、そしてアジトにいた五右エ門には、魔毛狂介という名前に聞き覚えがあったらしい。
本の山に囲まれて、二人は魔毛について調べ始めた。


魔毛狂介

次の仕事にもかかれないルパンは、ふてくされたようにうたた寝をする。
その時、ルパンの夢の中にまで魔毛は現れる。
そこで彼は、恨み言とともになぜか自分の生年月日(1932年11月18日)もルパンに教えて、去っていく。
極めて不思議なシーンである。
魔毛は、まあタイムマシンなど発明してしまうほどの人物だから、何かしら奇妙な手段を使って眠っているルパンの意識の中へ侵入したのかもしれないが、それにしても何となくこの辺のプロットが、とても不自然というか不思議な感じがする。

調べ物をしていた次元と五右エ門は、ついに魔毛について書かれている書物を発見。ルパンに知らせに来る。
その本によると、魔毛は科学者であり、ヒューゴー賞までとったSF作家でもある。
天才と何とかは紙一重の言葉通りの人だったらしく、ついに発狂してしまい、その後病院でタイムマシンを発明(!)。現在、時間旅行をしているという。
そこでルパンが、彼の誕生日を聞くと、それはまさにさきほどルパン自身が見た夢の中で告げられた日付と同じだった。
魔毛狂介は、本物のタイムトラベラーだと、気付かされるのである。
(ここでルパンが、魔毛の言っていることを信用するキッカケとして、さっきの生年月日のエピソードが使われるわけだけれども…個人的にはなぜかいまひとつ。何がひっかかるんだろ??^^;)

魔毛が自分で言っている通り、まさに四次元を征服した男。
そんな男が相手では、ルパンは確かに分が悪い。
直接対決を望んで、黄金像を消された場所まで赴くが、魔毛はルパンと戦うことなどに同意しない。
過去へ行き、ルパンの先祖となる男を消せば、ルパンはこの世に存在しなくなるのだから、戦うことなど無駄だと魔毛は言う。
そしてルパンの目の前から、古城を消し、自分の力を見せつけてルパンを追いつめていくのであった。

次元と五右エ門の前では、妙に明るく笑い飛ばしていたが、相棒たちにはお見通しであった。
ルパンは、かつてないほど追いつめられていることに。

そこへふらりとやって来た不二子に、剣を投げつけてしまうあたり、ルパンが相当殺気立ち、きわめて焦っていることが分かる。
だがルパンは何事もないような顔をしてみせ、不二子を連れ出し、デートして気晴らしをしようとする。
それでも、行く先々に魔毛の悪意が待ち構えている。さすがに子孫が殺されたなどという未来の対して、「4日間」の猶予を与え、精神的な面でもダメージを与えようとするだけあって、魔毛のやり口は陰湿であり、じわじわと恐怖感が募るように仕組まれている。

競馬をすればルパンの賭けている馬が消えるし、車を飛ばせば対向車の運転手が消えてしまう……
どこへ行っても逃げ場はない。この時のルパンの焦りが、こちらにまでひしひしと伝わってきて痛々しい;;。

相棒の前ではずっと強がりを言っていたルパンだったが、不二子の前では弱気な部分を見せたりする。
そして、あと2日の命だがどうしても不二子と結婚したいと言い、真剣な面持ちでプロポーズするのだった。
不二子も、何と「OK」する!ルパンの真剣さに打たれたのだろうか。
不二子のOKを取りつけた途端に、明るく「その教会でやろうぜ」と浮かれるルパン。その時「あの人、本当にあたしのこと愛しているのかしら」と、呟く辺りすごく女の子らしくて、不二子が今までにない可愛らしさを見せてくれる。

早速、二人の結婚式。(ルパフジスキーには嬉しいシーン^^)
しかし、案の定もう少しで式が終るその時、不二子も消えてしまった!勿論、魔毛の仕業である。
ルパンが不二子と結婚して、彼自身が消されてしまっても「ルパン」の名を残してくれることを期待しているとを、魔毛は見抜いていたのだった。
それを阻止するため、不二子は、魔毛によって過去の世界へ連れ去られてしまったのだ。
この時のルパンは、不二子をあまり心配せず、「しまった、もう少しだったのに」と、ルパンの名を残すことの方に気持ちが行っているようだ。(ちょっとヒドイ?笑)
そう考えると、さっきの弱気も、そして真摯なプロポーズも、ルパンの名を残すための芝居だったのだろう。(それほど大事な「ルパン家」の名を残すための相手なのだから、当然誰でもいいわけじゃなく、不二子ならばというルパンの思いも当然あったろうけれど)
さすがルパン。不二子の立場だと、ちょっと悲しいものはあるが(笑)、ルパンがそう簡単に弱音を吐いたり諦めたりしないのは、ファンとしては嬉しい限り。


タイムマシン

だが最後の手段…せめてルパンの名前だけでも残そうという希望も絶たれてしまい、ルパンはついに相棒に「形見」を残したりする。
愛銃・ワルサーP38。「時々は俺を思い出してくれよな」との言葉とともに…
その時、ついにルパンまでが消えてしまった。

魔毛にやられ、ついにルパンが消されたのだと思った次元と五右エ門。
ルパンの消えたショックのあまりか、次元は五右エ門に「どうして何もしてやらなかった」と、八つ当たり気味。二人の初喧嘩シーンは必見(^^)。
ルパンの死に泣き崩れる次元。その次元に「泣くな」と言い、涙を見せずに「敵は俺がとる」と宣言する五右エ門。
悲しみの表現、態度は異なるものの、二人のルパンへの思いや、それぞれの性格がよくわかる名場面。
ちなみに後の新ル32話でルパンが死んだと思い込んだ時の二人は、泣きながら器物破損(笑)に及ぶ。二人の反応が似てきている辺り、興味深い。

敵をとると言う五右エ門に対して、次元はまたまた辛らつな発言をする。「せいぜい江戸時代のお前に何が出来る!」
その時……ルパンが再び二人の前に姿を現した。
ルパンは単に水槽の陰に隠れていただけだったのだ。ルパンが死んだら、悲しんでくれるか気になったかららしいが。
このTPOをわきまえないお茶目ぶりが、何ともルパンスキーの心をくすぐる。もう〜ワガママなんだから(笑)
が、そのお陰で、ルパンは魔毛打倒のアイディアを思いつくのであった。

魔毛をおびき出すため、教会に祈っているふりをするルパン。どこかで必ず魔毛が見ていることもお見通しだったのだろう。
すぐに、魔毛はルパンの前に姿を現す。
ルパンはすっかり観念したような従順な態度を示し、そして魔毛に2つのお願いをするのだった。
一つは、自分と顔立ちがよく似ているという「川向こうの次郎吉」という先祖と共に消えたいということ。二つ目は、もう一度不二子に会いたいということ。
魔毛はどちらも承諾する。
ルパン曰く「バカなヤツ」。た、確かに(笑)。ルパン三世相手に油断しすぎだというものである。

魔毛が不二子を連れて戻ると、そこはルパンのいた教会ではなく、のどかな田園風景が広がっていた。
そこで働く農民に時代を尋ねると、「嘉永三年」。タイムマシンの計算を間違えたかと、魔毛は呟く。
その時、「川向こうの次郎吉よ!」と呼びかける声が聞こえる。(このお百姓さん姿の次元、またその口調が絶妙にイイ!)
なんでも次郎吉は、ミレーヌ・ルパンというフランスの娘と婚礼を控えた身なのだという。
魔毛の前にいるのは、ルパンが共に消して欲しいと願った、ルパンの先祖に間違いない。
不二子ともう一度会わせるとの約束を破り、魔毛はその場で次郎吉を殺そうと、銃を向けた。

が、その時そっと寄ってくる武士。そして農機具を手に、ジリジリと近づく次郎吉と百姓姿の男。
あっと言う間に、魔毛の銃やマント、そして服が切り裂かれた。
三人は、言うまでもなくルパンたちの変装。田園風景などの大道具が倒れると、そこはまさに昭和46年の日本。
すべてルパンの策略であったのである。
ルパンたちは、丸腰になった魔毛の目の前で、タイムマシンを完全に壊しきった。

自分を四次元の征服者、時空間を超越した男にしていたタイムマシンがなくなってしまうと、魔毛は滑稽なほど脆かった。
ルパンに怖い顔つきをされただけで、悲鳴を上げて逃げていってしまったのだ。何とも平和的な大団円である。
その後、目を覚ました不二子が、ルパンとすっかり結婚する気で、ルパンを追いかけ、しかもルパンの方は「まだ一人でいたいんだ」と不二子から逃げるという、きわめて珍しいシーンで終る。
このシーンも不二子が可愛くて印象的。

それにしても気になるのは、魔毛の行方である。原作ではしっかり殺されていたのに、アニメではソフト路線に転向しつつあったためか、魔毛は突然弱弱しい道化者となって、ただ去っていくのみであった。
もう一度、魔毛がタイムマシンを完成させてやってきたらどうするのだろう、と私のような小心者はつい心配してしまうのだが。
タイムマシンを壊された時点で、またしても魔毛はおかしくなってしまったのだろうか。
そして、二度とタイムマシンを作れないだろうと、ルパンは判断したのか。

それとも…ルパンと同様、魔毛も子孫を残し2874年までその一族の命脈が続くと定められている。
ルパンは魔毛と違い、歴史に介入することを嫌ったのだろうか。
何にせよ、ルパン、次元、五右エ門が肩を組んで、魔毛が逃げていくのを見ながら大笑いしているところは、子供が悪戯に成功したような無邪気さがあって、微笑ましい。確かに後味はこの方がいいのかもしれない。
そうそう、この話は難しいことを考えずに見ると決めたんでした(笑)。


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