第26話 バラとピストル


リンダ

この話もかなりのお気に入り作品。やっぱりルパンと次元の、典型的な「言葉はいらない相棒」関係が垣間見られるので、私にとってその良さは格別。
新ル初期の中では、かなり渋い方に分類されるのではないだろうか。初の次元メイン作品でもある。
それでいて、今回話の本筋にあまり絡まない五右エ門と銭さんの、ちょっとしたコミカルな見所もあったりして、とても楽しめる。
何より、この回の次元はとても若い感じがして…微笑ましいというよりも何だか痛ましいほどなのだが(結末が結末だし)、次元スキーには必見の自信溢れる台詞も聞ける。
さらには、音楽の使い方が印象的だと個人的には思う。


マドリード空港に降り立った銭形は、今までの彼と一味違っていた。
新たに開発した大小様々な手錠をコートの裏に隠し、今度こそそれでルパンを逮捕すると血気盛んにスペインの地にやって来る。
自分の手腕を見せ付けるためか、マドリード警察のホセ所長の親指に目にも止まらぬ速さで手錠をかけ、慌てるホセを見てほくそ笑んだりする。
その腕前は、やはりさすがの一言で、こっそりと銭形の様子を伺っていたルパンも感心するほどなのだが、マドリード警察からしてみれば、頼もしいんだけど、ちょっとイヤなヤツかも(笑)
まあ結局自分の足首にも掛けてしまってすっ転ぶというドジぶりも見せてしまう辺りが、いかにも新ルのとっつあんらしい。

今回ルパンたちがどういう目的でスペインに来ていたのかは分からないが、特に仕事でもなさそうだし、ちょっとした骨休みだったのかもしれない。
平和そうな様子で、ルパンと次元は、屋根の上に座り込んでいる五右エ門を食事に誘う。
ルパンの台詞、「ご飯ですよ〜」は明らかに某食品メーカーのCMからだろう。
だが、五右エ門は味噌汁とタクアンがなくては飯も咽喉に通らないそうで、ルパンたちと共に食事に行くこともなく、ただ独りアジトの屋根の上に残るのであった。
よっぽどスペイン料理が口に合わなかったとしか思えないほどの強情ぶり(笑)。
ごく稀にだがちゃんと洋食も食べている五右エ門なのだが、今回は一切食事をせずにずっと腹を空かしたまま過ごしていたようなので、相当イヤだったと思われる。

もしかしたら、来て早々パエリアでも食べちゃったのかしら。あれはなぁ〜(苦笑)。
味だけは魚介の出汁がきいていてとっっでも美味しいと思うんだけど、日本の米の炊き方に慣れている人間には、あの米の感じにちょっと違和感を覚えるかもし れない。表面がベタッとしているクセに、ちょっと芯があるような炊き方、私もスペインで二回食べたけど、個人的にはそれほど絶品とは思わなかった(たまた ま入った店が悪かったのかもしれませんが^^;)。

閑話休題。
五右エ門を残して食事に出たルパンと次元は、フラメンコ鑑賞しつつ酒を飲んでいた。
次元の方は舞台の袖に潜んでいる誰か(銭形)の存在に気付き、「嫌な予感」をルパンに訴えかけるのだが、フラメンコダンサーにすっかり夢中になっているルパンの耳に、その声はまるで届いていない。
この時「ウシ〜」というルパンに対して、「ウシがどうかしたの?」という次元の言い方がツボ(笑)。

踊り続けるフラメンコダンサーの方から、ルパンたちの方へウィンクを送ってくる。当然ルパンは自分へだと勘違いて大喜び。そして次元もルパンへのウィンクだと思っていたフシがある。
だがダンサー(名前はまだ出てこないけど、コレがリンダなので、以下リンダ)は、「お猿サンは嫌いなの」とルパンを振り、そして改めて次元へ向けてウィンクをしてくるのである。
ウヌボレ屋のルパンが「まさか」と言うのは分かるが、次元も自分で「まさか」と言っている!何て自信なさげな!
今まで、ルパンの影にいてそんなにモテなかったのだろうか?そんなハズはないとも思うのだが…
そしてリンダは、髪につけていた赤い薔薇を次元に向けて投げ掛けるのだった。
途端に、次元の様子が一転する(笑)。前から言おうと思っていたのだが、と前置きしつつ、ルパンに対して「俺の方がハンサム」宣言!!
この態度の急変振りと、そして後のリンダと一緒にいる時の自信満々な台詞の数々、恋に舞い上がっているような雰囲気が感じられて、可愛らしい。
こうしてルパンと次元がリンダに注目している間に、舞台裏の銭形は、ルパンの指に手錠を掛ける。

それもルパンに気付かれない間にしっかり指に掛かってるのだから、結構スゴイ。ルパンは空港でその技と手錠を知っていたというのに。
もしかしたら、この後マイヤー一味が催眠ガスを投げ込んで、店に乱入しなかったら、ルパンも危なかったのかもしれない(?)。


変装の名人

乱入して来たマイヤーたちは、舞台の上で倒れたリンダを連れ去る。
投げ込まれた催眠ガスに素早く対応していたルパンと次元は、その様子を見ており、後を追おうとするのだが、ルパンは指に掛かった手錠に手こずり、すぐに行 動出来ないでいた。この時の二人の「モゴモゴ」、何と言ってるのか非常に気になる。…そういいつつ薄々想像がつくところがまた良かったりも(笑)
結局次元ひとりでマイヤーたちの車を追う。この時の車は、ルパンと乗ってきたものではないので、誰かのを勝手に使っていたのだろう。
ルパンが後から追って来られるようにか、それともちゃんとルパンが車でアジトに戻れるようにだろうか。
この辺の気遣いが、またまたニクイv←思い込みすぎ

次元に追われているマイヤーは、車の中で「ついてきているか」と部下に尋ねている。明らかに次元のことである。
この辺からすでにかなりきな臭い。
マイヤーのアジトでは、マシンガン乱射で次元を迎えるが、そんなことは次元にはお見通し。即座に反撃した次元は、マイヤーに銃を突きつけ、リンダを彼の元から奪い返す。
どうもマイヤーとは以前からの顔見知りのようで、彼は金になることなら何でもやる汚い男であるようだ。
リンダはマイヤーの部下だったのだが、組織を抜けたため追われていたという話なのだが…
リンダを奪い返して「どうする気だ」と訊かれた次元が、「デートするんだよ」という台詞、次元の余裕を表しつつもちょっと本音っぽくていい感じ。

次元の車の中で意識を取り戻したリンダは、マイヤーの元から助け出されて喜んでいるように見える。実際、腹黒い女だよなぁ(^^;。
彼女に対して次元は、本当に俺にバラをくれたのかと尋ねたり、どうしてだと訊いてみたり。この辺が、ともすれば野暮な台詞であり、何となく恋愛に慣れてい なくて、若いなと感じる箇所なのだが、経験豊富な男性(←勝手な推定)でも突然こんなにウブに舞い上がらせてしまう恋というのは、やはりあるのであろう か。

「男らしくてハンサムで、強そうだったから」と、バラを投げた理由を語るリンダに対して、次元は
「見かけだけじゃない。中身もそうなんだ」
と、次元の数々の名台詞の中でも、印象深さでは屈指の、自信溢れる台詞を放つ。
素敵!というリンダにキスされ、ちょっと照れた様子が見られるのも貴重!キスの音からして、相当何回もされていそう。

その頃、ルパンは銭形に掛けられ、なぜか鍵が見つからなかった小指の手錠を外すのに苦戦していた。
苦戦…のように見えるが、実際その後五右エ門に対して右の小指から左の小指へと移して見せたりしているので、もしかしたら単に遊んでいただけなのかもしれないが(^^)。
傍で見ていてじれったくなったものか、五右エ門が「指を出せ」と迫る。そして結局斬ってもらった(斬られた?)ルパンは、手錠だけでなく指まで斬られたフリをして、五右エ門を驚かせたりしている。
この辺の二人のジャレ合いも、やたらと好きな1シーンである。
ちなみにこの回の五右エ門の一人称は「俺」。好みだ(笑)!

そこへ現れたのが不二子人形。ホンモノの不二子は、五右エ門のお願いにより、日本へ味噌とタクアンを買いに行っていていないはずなのである。
二人が見つめる中、その不二子人形は破裂し、その後人形の下半身から(笑)カメラが現れ、そこにはマイヤーの姿が映し出されるのだった。
マイヤーは幾度もルパンに煮え湯を飲まされた過去があるらしく、今回復讐するために現れたということらしい。
飛行機に乗るところだった不二子を捕え人質にした挙句、ルパンをバルセロナへと呼び出し、聖家族寺院で決闘を申し込むのであった。


同じ頃、次元もリンダに連れられて、バルセロナに来ていた。相変わらず次元の胸元とには、リンダのくれた赤いバラがあった。
聖家族寺院を見学し、その後海沿いのレストランで食事。いかにもデートという感じである(^^)。
マイヤーがこのまま黙っているはずがないと不安を訴えるリンダに対して、俺がついていると請合う次元。
コバキヨボイスに思わずクラッとくるほど、ちょっと気障な言い回しが素敵v
これがリンダにわずかなりとも真実があれば、いいシーンなんだけど…(苦)。
その時リンダが外にマイヤーを見たと怯え、次元は店の外へ飛び出していくが、人影にはすぐに逃げられ、再びリンダの元に戻る。
と、そんなちょっとした隙に、リンダは咽喉元にナイフを突きつけられた上、後ろ手に縛られていた。リンダはマイヤーの伝言を伝える。
聖家族寺院で待つと……。そう。ルパンが呼び出された場所と同じである。
その上、リンダはきちんと伏線を張ることも忘れない。「マイヤーは変装の名人だ」と。これでルパンと正面から向き合っても、次元は変装だと思ってしまうという作戦である。


1枚のコイン

ルパンが決闘に赴く前にも、五右エ門とのちょっとしたシーンがあって、またまた見モノ。
どうも五右エ門はルパンに「バルセロナなら日本料理屋がある」と言われたためについて来たらしい。
だがこの当時バルセロナには日本料理店がなかったのか。せっかくわざわざ来たというのに五右エ門は日本食にありつけず、不機嫌なままであった。
「食い物の恨みは恐ろしい」なんて言ってるけど…別にルパンのせいじゃないのでは?子供っぽいな〜五右エ門ちゃん(笑)。相当おなか空いていたのだろう。
そして五右エ門は流れ星を斬ってみせる。
この時の「うそだ、そりゃうそだ」というルパンのメタな台詞についニヤリ。
結局五右エ門はルパンについて来ることはなく、アジトですきっ腹を抱えたままお留守番。
ルパンはひとりで聖家族寺院へと向かった。


こうしてルパンと次元は、お互いをマイヤーだと思い込まされ、戦うことになるのだった。
あのルパンと次元が真剣勝負!勿論互いに「マイヤー」だと思っている状況だからこそありえた決闘なのだが、興奮せずにはいられない!
互いに手加減する理由もない状況下、まさに真剣に相手を殺そうとしている。知らぬこととはいえ、相手は大切な相棒だというのに。キャー(違)
顔を見ても、マイヤーの変装だと思わされているから始末が悪い。

やはり二人の腕は五分なのか、なかなか決着はつかない(つかれちゃ困るんだけど)
やがてルパンは、あまりにも「変装したマイヤー」の腕が立ちすぎることを不審に思い始める。「ハメられたのかもしれない」と。だが、次元は聞く耳を持たない。
そして、ルパンが取り出したのは1枚のコイン。
「もしお前がホンモノの次元なら」
それだけ言って、ルパンはコインを二人の間に投げ、そして巧みにコインを撃って回転させて見せる。
同じように次元も、狙いたがわず正確にコインを撃つ。交互にコインを撃ち合う二人。
…もう言葉なんかいらない(^^)!それだけで通じ合えるルパンと次元!←盛り上がってます(笑)
どこかで二人が殺しあう様子を見ているはずのマイヤーには、彼らが何をしているのかまるでわからなかったであろう。さすがv
お互いを「本物の相棒」だと認め合った二人は、さらに息のあったところを見せる。
血のり入りの弾を装備し、それを互いの心臓部に命中させ、死んだフリをするのである。
血のり弾丸を装備する時、弾にキスする次元に、悶絶した方も多いかと推察する(勝手に^^)。キザだな〜次元(笑)。でも死ぬほどカッコイイ!!
弾や銃にキスする次元のルーツは、このシーンであろうか。

ようやくここで姿を現すマイヤー、そしてリンダ。リンダは最初から、マイヤーの愛人(多分)で部下でしかなかったのである。
二人を亡き者にするためだけに、次元に近付いたに過ぎないのだ。
どっちも手強いルパンと次元を、互いに殺し合わせようだなんて、かなり陰険だけど、成功していればなかなかスルドイ作戦であったかもしれない。
二人の絆を甘く見たのが敗因でしょう(←ちょっと嬉しそうに。笑)
「最後まで私のあげたバラを信じて死んだわ」という、リンダの台詞の憎いこと!
だが、わずかな憐憫の情すら浮かべないその顔は、いっそ見事なまでの悪女ぶりであった。

さすがのルパンも、リンダのことは気付かなかったらしく(一緒に行動していなかったのだから当然かも知れないが)、「あの女が一枚噛んでいたとは意外だったな」と漏らす。
だが次の瞬間、その女に騙されていた次元に気付き、ルパンは「ア」と、不用意な自分の発言にしまったというような態度を見せる。
女に騙されることには慣れっこ(笑)だし、それを「可愛い」とすら思えてしまう自分とは違い、ロマンチストな次元だったら、やはりショックを受けただろうと、ルパンは思ったのではないだろうか。
それでも次元の方は、ポーカーフェイスを保っている。
ルパンは、それ以上敢えて何も言わず、ただ「行くぞ、次元」と言うばかりである。
どこへ行くのか、何をしに行くのか、二人はそれも言葉なしでわかっていた。

二人はマイヤーの後を追う。当然、命を狙った者を許して置けるはずがない。
次元はマイヤーたちの乗った車に銃を向ける。一瞬、リンダの面影が過ぎるが……次元は正確に発砲、彼らの車を崖から落とすのであった。
ようやく胸元のバラを捨て去り、さらにはそれを撃ち抜く次元。
リンダによる裏切りが発覚して以来、何も言葉を発せずポーカーフェイスの次元だが、この行動が次元の思いを非常に良く表しているようで、興味深いところ。

最後はいかにも新ルらしく、「スペイン」と言えばまず思い出すような「闘牛」のシーンでエンディングである。
開発してきた手錠でルパンをがんじがらめにする銭形。それからあっさり逃げるルパン。闘牛場でも二人の追いかけっこは変わらない。
腕にかけられた手錠を、ルパンはちゃっかり牛の角に掛けて、銭形をからかう余裕すら見せた。

それにしても闘牛って燃えます。この作品を見ると、またスペインに行ってみたくなるのでした(^^)。


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