第82話 とっつあん人質救出作戦


馴れ合い

新ルに「とっつあん」がタイトルに付く話は、確か三つほどあったと思うが(他に「とっつあんの惚れた女」「とっつあんのいない日」)
これらはどの話も好きなものばかりである。
この中では、当82話は一番他愛ない話のような気がするが(笑)それでも、まるで退屈することなく、スルッと楽しく鑑賞できてしまう作品だと感じている。
また、ルパン一味と銭形の微妙な関係が見られる回は個人的にとても好みなのである。


舞台はパリ。
ナポレオン帝国を復興させようという狂信的テロ組織が、天下のICPO本部へ乱入するシーンから始まる。
テロリストの目的は、ICPO地下の特別牢に捕まっているナポレオン11世を取り戻すことだった。
手段を選ばないテロリストの前に、ICPOの警官らも傷つき、建物への侵入まで許してしまう始末。
そこに立ちふさがったのが、銭形警部。堂々たる名乗りを上げての登場の仕方は勇ましくてカッコイイのだが、あっさりとテロリストにやられるしまう(ガッカリ;)。
そんな銭形を人質にして、ICPOとの交渉に使おうと目論むのだが、それは失敗に終わる。
銭形は、テロリストに連れ去られることになる…

それらをテレビのニュースで見ていたルパンたち四人。
テロリストは相当手荒い集団で通ってるらしく、次元・不二子・五右エ門はすでに諦めモード。すっかり銭形はもう殺されてしまう、という雰囲気だった。
五右エ門にいたっては同じ日本男児として「殉職も本懐」などと言っている。
だがルパンだけは違った。静かに何かを考えている様子。
「扉のない金庫から盗んでも、ちっとも面白かねぇんだ」
この台詞の言い回しが、とにかく好き!!たまにしか聞けないルパンの本音にグッとくる。
厄介な敵という以上に、いつも極上のスリルを与えるのに一役買ってくれる銭形、めったにいない「好敵手」である彼は、欠かせない存在なのだろう。
ルパンにとって、銭形は純粋な「敵」としてだけ存在しているのではない、ということがわかるシーンである。

ルパンが銭形を助け出そうと考えていることを知り、あきれる不二子。危険ばかりで得るものがない、とあっさりと降りる。
一方五右エ門は即座にルパンに共鳴、行動を共にすることを宣言。
残る次元はというと…サイコロを取り出し「出た目が奇数なら手を組む」ことに。出たのは、「半」(by五右エ門)。奇数だ。

ここでツボなのは、不二子があっさりと次元のイカサマサイコロに気づいているところ。
次元は、それぞれ奇数と偶数しかないサイコロ二つを振っていたのだ。
最初から、素直にルパンに賛同していてもいいのに、素直じゃない次元(^^)。とはいえ、不二子はじめ他の面々にも見破られることもわかっててやったのだろう。
内心銭形を見殺しにしたくなくとも、助け出すのが本来は敵であるはずの銭形だから、素直に助けるとは言いがたいものがあったのかもしれない。
また、物好きすぎるルパンの行動にあきれつつも、ノッてやることは次元の中では最初から決まっていたが、ちょっと勿体つけてみたかったのかもしれず。
その点五右エ門は真っ正直な態度で賛同していて、いかにも「らしい」。
不二子は「馴れ合いもそこまでいけば立派だわ」とちょっとあきれた様子。

このように、ルパンたちの銭形への感情は、決して冷たいものではない。
むしろ本来の立場からすると不二子のように「馴れ合い」と受け取られるかもしれないが(不二子のこの言葉は、ルパンと次元の「馴れ合い」とも、ルパンらと銭形との「馴れ合い」のようにも取れる)
個人的には、ルパンと銭形の「立場を超えた微妙な共感・親愛感情」のようなものも、非常に好きなので、私は彼らの行動に違和感は感じない。
基本は厳然たる敵同士であっても、それ「だけ」でないところが、彼らの関係の最大の魅力だと思っている。

それにしても次元はいつもこんなイカサマサイコロを持っているのだろうか(笑)。
アジトで暇つぶしに遊ぶ時、次元もルパンも色んなアイテムを隠し持っているんだろうなぁ(妄想一直線)…五右エ門は人一倍鋭い勘が武器ってことで(笑)

さらに余談だが、この回のルパンのアジトは「文学青年」(byルパン「射殺命令!!」)っぽい雰囲気満点で、非常に好きなアジトだ。
人様の本棚が気になるのは読書好きの性、というわけで、ルパンの本棚で確認できるものを挙げてみる。
「犯罪哲学」「石川達三全集」「サルトル」「カミュ」「ゴヤ」「マーク・トウェイン」「ランボー」「マザーグース」等等。
ルパンたちにとっての実用書から、文学、哲学、美術まで揃っている。あ〜いいわvv(笑)


ナポレオン11世

こうして、男三人で銭形を助け出すことになり、早速彼らはICPOへ。
テロリストと同じ、派手なやり方でICPOに乗り込む。自首するのが目的だというのに、この手段。やはり結果は同じでも大人しく捕まるタイプじゃないようだ。
このシーンでひとつ気になるのは…
やたらと何度も何度も同じカット(ルパンたち三人を下から映すカメラワーク)が使われていること。
一度ならカッコよかったのに。あまりに繰り返されるので、仕舞いには「何かあるの??」と勘ぐって、スロー再生までしてしまったじゃないか!(笑)
どうでもいいことなのだが、正直見るたびに「あれ?」と思ってしまう。

一般の牢獄に入れられることを拒否し、地下の特別監獄を望むルパンたち。
自首の目的がその地下牢に入っているナポレオン11世であることなど気づかないICPO側は、彼らの要望を聞き入れる。まあ、ルパンたちが特別な牢に入れられることは、彼らの格からいって当然か。

上から降りてきた鉄格子に囲まれた三人は、そのまま地下まで下ろされていき、そこで、ナポレオン11世と対面を果たす。
この人物、あまりテロリストの親玉といった感じはない(笑)
ルパンに自分のことを「皇帝陛下と呼びたまえ!」と言う辺りだけがそれっぽいが、なんと彼は「三時間しか起きていられない眠り病」という奇病にかかっており、世界征服を企んだのも、世間があまりに騒々しくてよく眠れないからだという。
……ある意味、すごい大物かも(笑)
こういう人物なので、静かな地下牢は彼の理想の環境だったらしく、ルパンたちが脱獄を申し出ても気乗りしない様子だ。
それにどうせ逃げられないと諦めている様子も見られる。
だがルパンはそこでナポレオン11世に一言。「ルパンの辞書に不可能という文字はありません」
ルパンの方がずっとずっと「英雄」っぽい^^

脱獄に気乗りしなそうな「皇帝陛下」だが、彼の希望を聞いている場合ではない。とっつあんの命がかかっているのだ。
ルパンたちは監視カメラから目をそらすため、肩を組んで「ラ・マルセイエーズ」を熱唱しながら(ここの三人が笑える)、鑢で鉄格子を断ち切り、自由の身に。
さらにはルパンの靴に仕込んであるリモコンで、装甲車を呼び寄せるのだ。
手荒い脱獄方法!
またまた襲撃されたICPOの長官が「なぜICPOばかり」と嘆くのもよくわかる(笑)
侵入した装甲車から麻酔弾を放ち、警官たちを眠らせると、マスクで準備万端だったルパンたちは、あっさりと脱獄を果たすのだった。

それはそうと。ルパンがナポレオン11世に対し、わざとらしいほどに恭しい態度を取り「ははぁ、皇帝陛下!」と呼びかけたり、珍しいことに次元ですら敬語を使って「眠らんでくださいよ」という辺り、無性に面白い。
別に本気で敬っているわけもないのだが、ナポレオンのノリに合わせて遊んでるようで、ニヤニヤしてしまう。
またこのナポレオン11世が、本当にかのナポレオン・ボナパルトの血を引いているのか定かでないが、もしもそうだとすれば、ナポレオン好きのルパンとしては、その子孫にはあまり悪感情を抱かなかったのかもしれない。

ナポレオン11世がルパン一味に連れ去られたニュースを、今度はテロリストたちがテレビで観ていた。
ここで銭形が、自分とルパンを共に「男の中の男」というところが、印象に残る。(ルパンの場合は「悪を愛する」と、自分と正反対に表現しているところが、銭形の評価っぽい)
銭形はナポレオンが連れ去られてしまったとあっては、もはやICPOと交渉する術もないので、自分は釈放されると思ったらしい。
が、銭形の楽観は見事に外れ、テロリストは「用なし」になった銭形を消そうとする…

オレも好きよ

そこへいいタイミングでルパンからの連絡が入る。いつの間に仕掛けたのか、テレビを通じての交渉だ。
アジトで酒を飲みつつ、ふんぞり返ってテレビに映るルパンが、らしくって好きv(そんでもって腕まくりしながらテレビマンになってる次元もv)
ルパンは、人質交換の立会人になってやろうと申し出る。
もちろんテロリストは、銭形とルパンが敵同士であること、ICPOが人質交換を拒否したことを挙げて「罠だ」と警戒する。
……ICPO、銭形見殺しを選んだのね(涙)。確かにこの回登場する長官(?)と銭形はあまりうまくいってなさそうだし、テロリストのボスと一警部の交換では、無理があったのかもしれないけれど。
銭形自身、ICPOに見捨てられたことを認めたがらない様子。
実際銭形の気持ちはわからないでもないし、新ルでは滑稽な役回りが多くなっている銭形ではあるが、基本的にはルパンを逮捕できる能力のある敏腕なわけだから、自信を持つのも当然なのだけれど…
この回では冒頭から自信満々な様子が表れすぎ、それにしては現実とかみ合ってないように演出されているので、どうも銭形は哀れなのである;

銭形はよりによってルパンに助けられるなど屈辱だと感じたか、「死んだ方がマシ」とまで言い放つ。
んもー、わからずやなんだから。五右エ門が言うとおり、ホントに「親の心子知らず」といった具合。(微妙なたとえ方だが。笑)
まあ、銭形だって本来敵である立場のルパンに助けられるなど、不本意に思うのはよ〜くわかるんだけど。
そんな銭形の意思は無視する形で、ルパンとテロリストは人質交換について合意。取引場所と時間を決めるのだった。
取引場所がベルサイユ宮殿というところが、ベルばら好きとしては胸躍る(笑)

銭形は、「オレをコケにする取引」と怒り、ダイナマイトを火に投じて死のうとするのだが、それは本物のダイナマイトではなく、試みは失敗に終わる。
「何をやってもドジばかり。死ぬことも出来んのか」と悔しそうな銭形は、可哀想っちゃ可哀想…なのだが。どうしてもこの回の銭形は三枚目の役回りなので、ちょっと滑稽でもある(大らかな感情表現をし、頑固で融通の利かないこんな銭形も好きなんですけどね^^)。

銭形がごねているとあって、人質交換に手こずると見たルパンたちは策略をめぐらす。
ナポレオン11世をルパンに化けさせ、ルパンがナポレオン11世に変装するのだ。
が、ナポレオンは例の奇病のせいで起きていられず、肝心の交換の時にもスヤスヤと寝てしまう有様。仕方なくルパンは、目を開いたルパンのマスクを用意して、ナポレオン11世にかぶせた。
目を開いたまま鼻ちょうちん出して寝ている様子が、可愛い〜(や、中身ルパンじゃないんだけど)

いよいよ人質交換の場。
対峙したルパンらとテロリストは、人質同士をゆっくりと歩かせ、交換を始める。
ナポレオンに扮するルパンが、銭形とすれ違う際、小声で取引を申し出る。「ルパンをその手で逮捕してみないか」と。
銭形は即座にその案に乗り、ナポレオンを体当たりで茂みに突き飛ばす。気色ばむテロリスト。
ルパン@ナポレオンが無事を告げると、テロリストたちは「ルパン」たちに襲い掛かる。
本物のナポレオンを含めた三人はヘリコプターに乗り込み、テロリストとしばし戦った末、逃走。
実際はテロリストによる攻撃でダメージなど受けてないのだが、わざと黒煙をあげたフリをして、ヘリを降下させる。
そして眠ってるナポレオン共々脱出した後、次元は手榴弾でヘリを爆破する(この時の次元が一瞬、すごく楽しげな顔をしてる^^)

それを遠くから見ていた銭形は、ルパンを乗せたヘリコプターが爆破したと思い込む。
変装中のルパンは「嬉しくないのかね」と問いかけるが、当然銭形が喜ぶはずもなく…
「惜しい男を死なせてしまった」と男泣きに泣く。「生きているならもう一度、俺と男の勝負をしよう!」と吠える銭形がやけに愛しい。傍に本物のルパンがいるとも知らないで!(笑)
とどめは「立場は違っても、俺はお前が好きだったんだ」と、直球もド直球な心境を吐露する。
ルパンが生きている間は決して吐けない銭形の本音である。

それをこっそり聞いていたルパンは、人が悪いというか、いかにもルパンっぽいというか(笑)
そして…ルパンも心ひそかに呟くのだ。「俺も好きよ」と。
この台詞の絶妙な言い回し!!大好き〜〜!!(←興奮しすぎ)
個人的に、「とっつあん人質救出作戦」は、ルパンのこの台詞を聞くためだけに鑑賞しているといっても過言ではない。

…そうして銭形が泣き崩れていると、爆発で異変を察知したか、警察のサイレンが近づいてくる。パトカーが来る前に、ルパンは本物のナポレオンと入れ替わり、そっと姿を消すのだった。
この時、眠っているナポレオン(次元と五右エ門がルパンの傍まで運んできたんだろう。ご苦労様〜^^)に帽子をかぶせたり、ご先祖様のおなじみのポーズを取らせたりするルパンの遊び心がとってもいいv

テロリストたちはやって来た警察によってすべて逮捕されたようだ。ナポレオン11世も理想の地であった地下牢で静かに満足しながら暮らせることだろう。
で。銭形は結局この回、冒頭で勇ましく登場した以外これといって何もしていないのだが(笑)、なぜかこの件はすべて銭形のお手柄だと受け取られた。
今回の件はテロリストを一網打尽にしようとして、ルパンを利用した銭形の作戦である、と。
勘ぐってみるならば、見捨てた銭形が無事に戻ってきたので、本来は気まずくなりそうなところだが、腹黒そうな長官は先回りして銭形に花を持たせてやり、それを回避したのか?という気もする。
手柄を立てたことになったというのに、ルパンが死んだと思っている銭形は冴えない。
が、ヘリから死体が出てこなかったことから、ルパンたちの無事を知り、喜びを隠せない。長官にとがめだてされるほどに(笑)
この時自分をさして言った「ルパンと闘うために生まれてきたような男」という台詞がちょっとカッコイイ。
ルパンにとっても銭形が欠かせないように、銭形にとってもルパンは欠かせない存在なのだろう。

銭形を助けて去っていくルパンたち三人は、すがすがしく楽しそう。
これから再び、銭形との追いつ追われつが始まるのだ。


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