第91話 時を駆ける少女


イアンヌ

えーと。まず最初にお断りしておきます。私、この回のゲストキャラ・イアンヌが苦手です。ごめんなさい;でもこればかりは……
子供の頃ほどではなくなったものの、今でも苦手であることには変わりません。
気分を害されては申し訳ないので、「イアンヌ大好き!」な方は、以下の文章読まないほうが良いかと思います。
読んでしまってからの苦情は受け付けませんので、よろしくお願いします。




これまたいかにも新ルチックな話。
古代ペルシア帝国と、タイムカプセルってどういうつながり?!と、その唐突さでは群を抜いているもののひとつ。
まずはタイトルありきで考えられた話なのでは?と推測してしまいたくなる。

その辺はまあ、何でもありの「ルパン」ではあるし、新ル贔屓の私としては、あまり文句を言うつもりもなく、サラッと見てしまえるわけなのだが…
やはり個人的ネックはどーしてもイアンヌ(苦笑)。
や、大人視点で見直してみると、子供の頃強く感じていた苛立ちや憤り(←感じてたのか。笑)は、少なくなっていた。
実際、記憶喪失で現代に放り出されていたら、パニックになるだろうし、心細いのもよくわかる。イアンヌの境遇はとても気の毒である。

だけど…ルパンスキーとしてはどーにも面白くない。心狭くてごめんなさい(笑)
あまりにもルパンにすがりつきすぎでしょー??!と、思ってしまうわけで。
子供の頃は、イアンヌが「助けて!私を助けて!」と言ってすがりつくたびに「ウガーッ」と頭にきて(笑)、「人にばっかり頼って、少しは自分でも何とかしようって気概だけでも持てないわけ?」とイライラしていたものだ。
今は流石に「二千年以上昔の人間で、しかもお姫様育ちで、さらには記憶喪失の女の子にそこまで求めちゃ酷」とは思っているけれど。
まあ、そんな思い出話はそれくらいにして、本題に移る。

冒頭、不二子は崖っぷちに追いつめられている。旧ル9話を彷彿とさせるシーンである(崖下は海ではないけど)
だが、不二子と向かい合ってるのは、プーンのような渋みのあるいい男ではなく、欲深くて残酷な、典型的敵キャラ。犯罪組織・レッドスパイダーのボス、ギラニーなのであった。
ギラニーと組んでペルシア帝国の秘宝について探っていたようだが、「女は口が軽い」というわけでギラニーに足元をすくわれた形の不二子。当然彼女は死んだわけでなく、のちに怪我一つなく登場する。ご安心を(^^)
多分銃弾は当たってないのだろうが、崖下へ墜落して、よく無事に済んだものだ。良かった、良かった。

ところでこのギラニー。可愛くなくて意地悪そうな猫をずっと抱いている。どうしてルパン界の悪役は、猫を飼っているのだろうか。
旧ルのキャサリンもそうだし(「悪役」とはニュアンスが違うかもしれないが)、「殺しはワインの匂い」のムリガンも、「エマニエルは天使のささやき」のエマニエルもそうだ。犬を飼ってるより、猫のほうがどことなく雰囲気に合うからなのか。ちょっと不思議。

さて、不二子がそんな危機に陥ってるとは知らず、ルパンは不二子に待ちぼうけをくわされている。
次元や五右エ門は「またかつがれたのだ」と言ってるけど、「かつぐ」という言葉が出るからには、不二子の呼び出しにはやはりペルシア帝国の秘宝についての 思わせぶりでもしていたものと推測される(具体的にどこのどんな宝か、は言ってないだろうが、儲け話があるという感じだったのでは)
その場所に、突然現れるのがイアンヌ。登場早々助けを求めている(^^;
ギラニーたちに追われていたようだ。
女の子が助けを求めていたら、見捨てられないのがルパン。まー腕っ節に自信があって、多少なりとも人間的な心があれば、みるからにか弱い女の子が、物騒な男共に追われていたら、手を差し伸べずにはいられないだろう。

ギラニーたちを振り払い、イアンヌを助けたルパン。
彼女が完全な記憶喪失状態と知り、最初は「警察に」と言ってるのだが、イアンヌにすがりつかれ「助けて、あなた!」と名指し(苦笑)されてしまうと、どう にも女好きの性で、イアンヌに関わっていくことになる。次元も五右エ門も、さすがに放り出すのは不憫だと思ってか、わりと素直に認めているようだ。
ちなみにこの時点で彼女は自分の名前すらも思い出せずにおり、うわ言のように「イアンヌ」だと名乗るのは、CM明けの後半になってからなのである。
話は多少ズレるが……昔は、この子なんでこんなにルパンにばかりベタベタするのか?と思っていたが、イアンヌは無意識のうちにも「帝国を継ぐ能力のある英雄」を探していたわけで、多分その辺のレーダーに反応し(笑)、ルパンにやたらとくっつくことになったのだろう。


古代ペルシア

翌朝、ルパンの猛勉強の成果フロイトの心理学に基づき、イアンヌに催眠術をかけてみることに。
催眠術をかけ、どんどん時間をさかのぼっていくわけだが「五年前」「十年前」と言っても、イアンヌは何も思い出さない。
それはそうだろう、実際彼女は、二千年以上昔に生まれ、最近までずっとタイムカプセルで眠っていたのだから…
そんなことを知らないルパンは、イアンヌに一気に「赤ちゃんの頃」を思い出させようとするのだが、漫画のお約束通りルパン本人が催眠術に掛かってしまう。
次元じゃないけど「なんてこった」という感じ。でも、ルパンが可愛いからヨシ!(←いつもコレ。笑)

これで思い出せなかったとしても、仕方がないことだし、イアンヌ的にかなり不安というか、半ばパニック状態だったのだろうから、可哀想ではあるんだけど・・・
それにしても、何でこんなに「助けて、助けて」を連呼するのか。
世の男性陣はこんなタイプが好きなのかしら。同じように典型的「守ってあげたいタイプ」でも、たとえば、不安を押し殺しながら無理に笑おうとしているけなげな少女とか、「見せ方」にやりようがあるって気がしてならないんだけど。
まーそう思ってるのは私くらいなもので(^^;、ルパンは戸惑いながらも守る気継続中である。
というか、後半になればなるほど、イアンヌに情が移っていったらしく、最初は「わ、わかったから」みたいなノリだったルパンが、どんどんイアンヌを助けたい気持ちが盛り上がって行ってるのがわかる;
ルパンは「可愛げのある女性」が好きなわけだし、頼られることも嫌がらない性質だし、現代ではここまで無力な女性というのも珍しいくらいだから、かえって新鮮だったのかもしれない。

ルパンはここで銭形を利用することを考える。FBIとかICPOの家出人情報を駆使してイアンヌの身元を捜そうというのだ。
仮にもルパンなんだから、銭形に変装して潜入し、自分で調べてみたら…とも思うのだが、不安がるイアンヌがへばりついていて、単独行動がままならなかったのかもしれない(苦)
だが銭形と交渉する時の「タダで、とは言わないからさぁ」なんて言い回しなど絶品なので、まあよしとしよう(笑)
銭形も、胡散臭いルパンの申し出(笑)を信じたものか、わりとスムーズに言うことを聞いてあげている。
しかし結果は空振り。まーそりゃそうだ。
どうでもいいけどFBIのコンピューター技師がはじき出した占いの「ガニマタ座」ってナンだよ(大笑)

警察でも探し出せないとあって、ルパンは困っていたが、その時カップに描かれたラクダの絵を見ていたイアンヌが、唐突に古代ペルシア文字を壁に書き出す。
自分で書いておきながら「わからない」と途方にくれるイアンヌ。「ンもーしっかりしてよ!」というのは子供の頃の私の台詞(笑)。
今はこの辺のイアンヌ、ちょっと可哀想だ。

古代ペルシア文字を書けたということは、ペルシア人に違いないと、ルパンたちは早速ペルシアへと赴く(といっても「ペルシア」などという国はもうないから、正確にはイラン周辺なのだが)
空港にまでとっつあんが追いかけてきて、離陸する飛行機に飛び移ろうと無謀な試みをする。もちろん失敗に終わるのであるが…
なぜだかこのシーンだけは妙に印象的で、私の中で「銭形の無茶な行動」というと、ここもわりとすぐ頭に浮かんでくるシーンの一つである(「時を駆ける少女」からのシーンだということは、今回再見するまで忘れてたのだが)
無事旅立ったルパンだが、同じ飛行機にギラニーの部下らしき男たちが乗り込んでいることには気づかないのであった。

ペルシアで、ルパンは占い師の元へ赴いている。水晶玉を前にしたちょっと胡散臭い男である。
一見、合理的なルパンだとはあまり思えない行動だが、これだけ「大金」を払っているところを見ると、この人物は占い師風を装っているけれども、実は裏の世界での「情報屋」なのかもしれない、と想像している。
だが占い師は買収されており、ルパンたちを現地警察に売るのである。
さらにはその現地警察でギラニーに賄賂をつかまされているようだ。これはイアンヌを手に入れるために、邪魔なルパンたちを片付けようという寸法。
警察に襲い掛かられ、あっという間に囲まれてしまうルパンたち。この時イアンヌを守ろうとするルパンの切羽詰り方が、どうにも嫉妬心をくすぐる(大爆)
思い出せそうになったイアンヌを気遣うあまり、殆ど抵抗も出来ず仕舞い。次元と五右エ門もいいところなしで、あっさり捕まってしまうのだった。
イアンヌだけはギラニーが連れて行ってしまい、ルパンたちは彼女といったん別々になる。


永遠の虹

ギラニーに連れて行かれたイアンヌは、なにやら大仰な装置にかけられる。どうやら、記憶を取り戻させる機械らしい。
…うーん。この機械もどうも唐突に登場するなぁという印象が強い。それはこの際置いておくが。
その装置によって、イアンヌは自分自身の素性を明らかにする。彼女は、ペルシア帝国皇帝ダリウスの娘であり、帝国再興のためタイムカプセルに入れられ、英雄が現れるのを待ち続けている、というのである。
………うううーむ。改めて書いてみると、やっぱりすごい設定。
まあ、旧ルですでに「タイムマシン」が出てくるわけだし、何でもありってことでいいんですけどね。

ギラニーが狙っているのは、イアンヌと共に隠された、帝国再興のための莫大な秘宝。
戻った記憶により、隠し場所は「サンサーラ」であることが判明する。(余談だが、サンサーラとはサンスクリット語で「輪廻」を意味する言葉。この響きの美しい言葉を選んだセンスがとても好きである)
ギラニーと同じく、まだ秘宝を狙う不二子は、踊り子の格好で潜入、イアンヌの思い出した言葉をちゃっかり盗み聞きしている。
この時の踊り子の格好、ものすごーく色っぽい。「オイルダラーを狙え」でも踊り子の格好はするが、シースルーのゆったりしたパンツルックであるこの回の格好のほうが、ちょっとドキッとするような気がする。

それはそうと、イアンヌに関する歴史背景に、多少の混乱が感じられる。
前半ギラニーが古文書を鑑定させるシーンで、この話に登場するダリウス(イアンヌの父)を「ダリウス大王」としているが、それは間違いではなかろうか。
アレクサンドロス大王に攻め込まれた、帝国滅亡時の皇帝は、ダリウス三世。こちらは通常「大王」と呼ばれることはない。古代ペルシア皇帝の中で「大王」と呼ばれるのは、北インドまで領土を広げたダリウス一世の方である。
イアンヌは帝国が滅亡する際の姫のようであるから、父はダリウス三世なのだと推測できる。
…といっても、この辺は、「ルパン」の面白さを損なうものではないから、はっきりいってどうでもいいのだが、ちょっとした参考までに。


一方、警察に捕らえられたルパンたちは、脱出を試みる。ルパンが次元に肩車してもらい、高いところにある窓をのぞこうとしているシーンは、ちょっとしたツボ(^^)。五右エ門が我関せずの雰囲気なのもらしくてイイ。
その時、不二子がルパンたちを助けにやってくる。
警察に多額のワイロを握らせたらしい。ワイロ次第でギラニーにも不二子にも従うこの国の警察って一体…(笑)
そのお陰でルパンが助かったので、文句はないけど。
不二子はルパンに、イアンヌの取り戻した記憶について教え、一緒にサンサーラへと向かう。
一人でレッドスパイダーを相手にするのは無理だと思い、ルパンを連れて行くことにしたのだろう。

サンサーラに着いたはいいが、一面の砂漠が広がるばかりで、宝のありかがわからない。苛立つギラニー(悪役ってホント短気…)
そうしている間に、追いついてきたルパンたちと、ギラニー一味の戦いが始まる。
次元がマグナムでなくライフルっぽい銃で闘っているのが珍しい。
銃撃戦の均衡を破るのは、ルパン一家の斬り込み隊長・五右エ門。うーん、カッコイイv
戦いの中で、ギラニーは役に立たないイアンヌを、なんと撃ってしまうのである。ヒドすぎるよ、この親父;
その時、ものすごい砂嵐が一同を襲う。

吹き飛ばされそうなほど激しい砂嵐。ルパンが庇っているのは、今回やはりイアンヌ。まー仕方ない(笑)
で、次元は珍しく不二子を庇ってあげている。
個人的には、このシーンはわりと納得で…というのも、この回の不二子はルパンたちを自腹を切ってまで助けてくれているわけで(不二子なりの目的はあったに せよ)、次元だっていつもいつも不二子と険悪なばかりではないし、「仲間」状態の不二子ならば、緊急時に近くにいた場合には庇ってあげて当然かと。

大きな砂嵐が去ると、そこには宝が隠されているサンサーラの塔が現れる。
生き残ったギラニー一味は我先にと塔に侵入。不二子、次元、五右エ門も後を追う。
ルパンだけは、宝なんかどうでも良さそうで、怪我したイアンヌを気遣いながら塔へと進む。だがイアンヌは、「永遠の虹」という宝石が、塔の中にある棺から外されない限り、どんな怪我をしても死なない身体なのだそうだ。

ギラニーたちとルパンたちとの戦う最中あれこれあって(笑)、結局永遠の虹はルパンが取り返す。
これらのシーンでツボなのは二箇所。ルパンが塔の上にギラニーを追う際、次元に「援護してくれよ」というあたりと、塔の上から落ちかけたルパンを、五右エ門が助けてあげるシーンである。

イアンヌのため、「永遠の虹」を棺に再びはめ込もうとするのだが、イアンヌはそれを拒否し、ついに見つけた「英雄」であるルパンに、と手渡す。
ルパンに、「私を后にして」とプロポーズ(!)しながら死に行くイアンヌ。
時を越えて生きなくてはならなくて…というか、「ペルシアの復興」などという、現代から見たらあまり意味のない目的の為に「生かされていた」イアンヌは、ついに最後までそのことばかりに終始していたのだなぁと思うと、とても気の毒である。
「もういいの」という雰囲気からして、彼女自身、永く永く生き続けることが望ましくなかったのだろう、という気がする。
あまりに永い生涯を終えたようやくイアンヌは、ルパンからの別れのキスとともに棺へ葬られる。
塔も崩壊し、すべては砂の中に。宝を持って逃げたと見えていたギラニーらは、竜巻に巻き込まれ、ヘリの爆発で倒れた。
ルパンに残された「永遠の虹」でさえも、手の中で本当の虹になって消えて行ってしまう。
イアンヌが生かされ続けたタイムカプセルといい、不思議な生命維持装置のような(?)、結局はイアンヌと一緒に消えてしまう「永遠の虹」といい、あまりに謎の多い設定だ。
だが、すべてが砂塵に帰し、消えてしまうという終わり方は、詩情があっていいなと思う。
「英雄」を見つけ、ようやく死ねたイアンヌも安らいでいることだろう。

そこで終わってもいいのだが、そうはいかないのが新ルっぽいところ。
追ってきた銭形と警官らから、ラクダを奪い去っていくルパンたち。銭形は徒歩で追う(笑)
最後は「月の砂漠」を五人で合唱しながら、夜の砂漠を進み続けるのであった。


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