第128話 老婆とルパンの泥棒合戦


ゲヨゲヨ

浦沢氏脚本の所謂「ブロードウェイ」シリーズものの一作。
「いつものルパン」を期待して力を入れて観ると、ちょっと脱力するノリなのだが(笑)たまにはこういうお遊び系があってもいいのかも。
そう思えたのは実はわりと大人になってからで、子供の頃毎週「ルパン」の放映を(そして何より、最後にビシッとキメるルパンの活躍を!)ひたすら心待ちにしていた私にとって、浦沢氏脚本作品というのは、非常に戸惑いを誘う存在であったのだ。
どう観ても「バカバカしい」としか思えない事件で30分ルパンたちが振り回される…ということに驚き、「何でたまにこういうヘンな話が混じるんだろう」(失礼。子供の頃の戯言なので)と思っていたりした。
ルパンたちが普段と少し違う「可愛い」面を見せてくれるという点では、妙に嬉しかったりもしたのだが^^
この話も、ラストが「GEYOGEYO……」だったりして、当時の私にはこのノリがまったく理解できず「結局何だったんだろう」とポカンとした記憶が蘇る(笑)
まあ今も「ホントに理解出来てるの?」と聞かれれば、「まるで自信ありません」と答えるしかないわけで、その辺は私にセンスが欠けているからなんでしょうというわけで、ご容赦願いたいところ。


さて。ブロードウェイを舞台にして始まるドタバタは、街頭に張られたミュージカルポスターの前に集う人々のシーンから。
この人々の中に、それまで「ブロードウェイシリーズ」に登場した、106話のバッキー&ブッチャー、117話のバッキンガムがいる。ちゃんと「ルパン」を続けて観ている人には分るお遊び・ニヤリポイントなわけだけど、迂闊な私は、リアルタイム時にはまるっっきり気づかなかった。
そこに現れた銭形がルパンの指名手配ポスターを貼り、逮捕協力を呼びかける。
このシーンはその後ルパンにまんま繰り返され、銭形の指名手配ポスター(ルパンの偽造なのだろう。笑)を貼り返す。

そのシーンのどちらにも登場し、指名手配ポスターをはがして持ち去る人物が、ベンソン・「ゲヨゲヨ」・ドコンジョ・ジュニア(笑)である。
見た目以上に頭の中身もカボチャのようで、人に言われたことを鵜呑みにしてそのまんま行動するタイプらしい(ある意味素直?)。
ただ実行力だけはかなりある。
酒場の片隅で一人ビリヤードをしていたルパンの元に(←カッコイイシチュエーションだわ〜vv)、自動三輪を飛び込ませ、「逮捕」しようとしている。
当然、ルパンの敵ではなく、ビリヤードの球で面白いように撃退されてしまったが。

その後ルパンによる偽造ポスターと100万ドルの懸賞金を真に受けて、銭形のところにも突っ込むベンソン。
ちなみにこの時の銭形はまさに食事しようとするところで、そのメニューは意外に豪華。普段、誰かからご馳走になる場合にはステーキを食べる銭形だが、この回では一人で食事している様子、ラーメンでないのが珍しいので、興味ある方はチェックを(^^)
銭形はルパンと違ってベンソンに捕まり袋詰めに。食事も取られてしまう有様。

銭形を捕まえたから、約束通り賞金をせしめようと、ルパンを追い回すベンソン。ルパンは逃げ回りながらも「本気にしやがって」とちょっとしてやったり気味なのだが、こんなヤツそもそも相手にしなきゃいいのに…と思ってしまう。
どうも昔から、私はベンソンというキャラがそんなに好きではない。カボチャのような見た目と、「ゲヨゲヨ」連呼で普通のコミュニケーションが困難っぽいこ と、頭悪そうなところ(笑)、どこをとっても私の苦手ポイントばかりで、昔は「出てこなくていいよ、アンタ」と思っていた。
ただ今は、「コメディ作品中のキャラとしては」面白いとも思う。
今回見返して思ったのだが、ベンソンが100万ドル欲しさにルパンの周りをうろうろしていたのは、母の新聞社が経営のピンチだったから、それを救いたくて、なのだろうか。
だとしたら、母思いで少し見直しちゃうかも??…と一瞬思ったが、それらの行動もすべて「母の指示通りに動いてるだけ」という可能性が高いような気もするので、あまり褒めないでおこうっと(笑)


デイリードコンジョ

ルパンが、ベンソンから身を隠したところは、街の新聞屋(こんな表現でいいんだっけ?)。そこに翌日の朝刊が投げ込まれる。
それを何気なしに見てみると…ナンとルパンが宝石を盗んだことになっているのだ。
街頭のミュージカルポスターの前にたむろする人々が噂していた、ティファニーから借りたホンモノのダイヤである。

まるで身に覚えのないルパンは、不二子の寝込みを襲う。かつてこんなに下心のない不二子襲撃シーンがあっただろうか(笑)!
「キャーッ」と悲鳴を上げさせるほどの勢いでドアを開け、不二子をたたき起こして、ルパンの名を騙り宝石を盗んだかどうかを問い詰める。
否定されるとすぐに不二子に関心をなくした様子で、乱暴に枕を顔に叩きつけるようにして不二子を再度眠らせる。もしかして不二子気絶したんじゃないか?ってくらい乱暴(笑)
しかもネグリジェがまくれあがって不二子のパンツ見えてるのに、ルパンはピクリとも反応せず(笑)、ものすごーーくぞんざいに布団をかけてあげると(下半身隠れてないし!爆笑)さっさと立ち去るのだった。こういうルパンもたまにはいいなぁ^^
まあ、ルパンの名を騙られることをことのほか嫌うルパンだから、「犯人」を突き止めることに夢中になっていたのだろう。

続いてルパンは次元と五右エ門の寝込みを襲う。不二子と同じく「キャーッ」と悲鳴を上げる二人。
この二人の悲鳴、かなりオツなので、必見というか必聴(笑)真っ赤になる五右エ門の可愛いこと!また次元のナイトキャップ&ナイトシャツ姿もイイ。
バツの悪い二人、「悪い夢を見たようだ」と呟く。
まあこの辺は、「指名手配ポスター貼られる→ベンソン襲撃」に続き、「ルパン襲撃→寝てる人悲鳴」という繰り返しのお遊びポイントだから、深追いせずに素直に笑っておきましょう。

当然のことながら二人がルパンの名を騙って盗みを働いた様子はなく、ルパンは手がかりを求めて、新聞によると「現場」とされる劇場へ車を走らせる。
それにしても「不二子、五右エ門、次元でもないとすると」との呟きは、ルパンにとっての疑わしい順だったのかしら(笑)

劇場では警備員が酒に盛られた睡眠薬で眠っていた。ルパン曰く「古典的な手」。
続いて金庫室に入ると、そこには警備員が殴り倒されており、奥で一人の老婆がドリルで金庫を強引に開けていた。
途中、警備員が気絶から冷め老婆に拳銃を向けるのだが、ルパンによって阻止される。老婆は金庫攻略に必死で、それに気づく様子もない。
ルパンは彼女が完全な素人だと見抜き、様子を伺っていると…素人の手口だけにあまりに抜けてて、とんでもなく危なっかしい。放っておけずこっそりと警報装置を切ってあげたり、天井裏の爆破装置を壊してあげたりと、ついつい手を出してしまっていた。
そのドタバタで、天井を突き破って老婆の元へ落ちてくるルパン。
老婆はルパンの登場にとても冷静、彼なら来ると最初から確信していたのだろう。
どうにか盗み出した指輪を、老婆はルパンに押し付ける(後に「貴方には似合わない」と川へ捨ててしまうが;)。
訳を聞こうとするルパンに、老婆は「すべてデイリー・ドコンジョ紙」の売り上げを伸ばすためだと告げるのだった。
彼女こそが、マダム・ドコンジョである(ベンソンの母親なのだが、それをルパンが知るのはもう少し先)

要は、自作自演で事件を起こし、それをスクープ記事にしようという魂胆。
↑こう書くと、妙にイヤなババアのように聞こえてしまうけど(笑)、女の細腕(しかも老婆)で新聞作りと販売を切り盛りしている様子を、コメディタッチで説明されると、何となく憎めなくなってくるから不思議なところ。
ルパンに目をつけたのは、多分ネームバリューがあり、彼の事件を独占記事に出来れば、かなりの売り上げが見込めたからなのだろう。
ルパンにとっては迷惑そのものだし、本来「ルパンの名を騙った人間」を許さないはずなのだけれども、こんな小さな婆さんに目の前で自殺までされそうになったら、何となく同情してしまうのはわからなくはない。(かなりの確率で、自殺は狂言なんだろうけど^^;)
まあルパンは元々「むやみに好奇心旺盛」なところがあるわけだから(旧ルより)、同情だけでなく、ちょっとした暇つぶし、興味本位と遊び感覚で、ドコンジョ婆さんに付き合う気になったのかもしれない。
というわけで、ドコンジョ新聞の売り上げを伸ばすために、彼女の書いたシナリオ(記事)通りに、ルパンたちは事件を起こしていくことになる。


ドタバタ

ルパンは納得しているからいいようなものの、それに付き合わされる次元、五右エ門、不二子はたまったものではないだろう。
一応はルパンについて来ているが、ものすごく不満そうな様子で車に乗ってる三人。この様子は、本当に可愛いったらありゃしない。
三人がふてくされるのも当然。ただでさえ「誰かの為に」盗みを働くことを好まなそうな彼らなのに、よりによって盗まなくてはならないのが、街中に干してある「オムツカバー」なのだから!くっだらな〜い(笑)
この時、四人が肩車している順がなかなか面白い。一番下が次元、次いで五右エ門、ここまでは納得できるとして、次が不二子なのだ。その上にルパン。ルパンを肩に乗せたりして、不二子大変そう(とはいえ意外に力ありそうだから、平気かな。笑)
記事の都合でどうしても「ルパンの手で」取らなくてはいけなかったのだろうか。
盗み終わった後もブスッとしてる三人だが、ルパンだけは「泥棒の原点に返ったみたいでいい気分」とご満悦の様子。ま、ルパンが楽しければ、いいということにしよう(笑)

ここまでは翌日の新聞記事になる。そんなくだらない事件なのに、かなり売れたことが伺われる。街のあちこちで話題になっている。
オムツカバーなんぞを盗んだことから「ついに子供ができたか?」「誰に生ませたんだ?」など、話題沸騰。
どうでもいい余談だけど、子供の頃の私にとって、この「誰に生ませたんだ」という台詞が、えらく生々しかった…ような記憶がある。

さて、オムツカバーを盗み終えたルパンたちを、ベンソン率いる暴走族グループがバイクで取り囲む。
一戦交えそうな雰囲気だったが、「人質」としてドコンジヨ婆さんが連れて来られたことから、ルパンは武器を捨ててしまう…ベンソンがドコンジョ婆さんの息子だとも知らずに!!相手が老婆だから、ちょっとほだされちゃったのだろうなぁ;;
こうして、ルパンたち四人は、囚われの身になる。そしてなんと、零下50℃の冷凍庫の中に入れられてしまうのだった。
冷凍庫の中でようやく彼らが親子だと知って、「世界一薄汚いドコンジョ親子」と罵るが、相手の面の皮は相当厚く、気にする様子もない。
「頭を冷やして脱出方法でも考えるんだね」と言い放って冷凍庫に水をぶちまけるドコンジョ婆さんは、ちょっと凄みすらあって、「私は人質〜」なんて弱々しいフリをしている時より、よっぽど魅力がある。

ただでさえ凍えそうな中に水までぶっ掛けられ(ついでに次元はおニューのスーツだったというのに!)、このままでは凍死間違いなしの大ピンチなのだが、どこもかしこもカチンコチンに凍らせられたことで、逆に道が開ける。
固まった体を壁にぶつけて割り、また氷柱でロープを切る。さらには、氷の棒をいい具合に舐め溶かし、それで鍵まで開けてしまうルパン(さすがv)
「そんなバカな」感はあるが、その場にあるモノ臨機応変に対応する、頭の瞬発力も良いルパンっぽさの感じられる脱出シーンだ。

扉が開いた途端、真っ先に飛び出していくのは怒り心頭の次元(笑)
「このババア!!」と言ってドコンジョを締め上げる勢い。
ちなみに、次元の憎らしそうな「ババア」発言はこの作品に三度あり、一度目はオムツカバーを盗む際(「ドコンジョとかいうババア」)、二度目はおニューの スーツに水をぶっ掛けられた時(「あのババア!」)、三度目は今回で、次第に「ババア」のトーンが勢いよくなっていくような気がするので、ぜひ聞き比べて ください^^

次元が怒りに任せて首根っこ捕まえても、ドコンジョはビクともせずに(お見事!)逆に、奪っておいたマグナムを突きつける余裕っぷり。
ルパンが脱出してくることはあらかじめお見通し。
彼女にとっては、ルパンらを殺すことが目的などではなく、彼女自身がきっぱり言い切るとおり「おもしろい記事が書ければそれでいい」のである。
婆さんの記者根性に何かしら感じるところがあったようで(個人的にはかな〜り間違った記者根性だとは思うけど^^;)、さらにはベンソンらに捕まりっぱなしで済ませるのもルパンたちの流儀ではなかったからだろう。ルパンは「もっと面白くしてやるよ」とみずから志願。
無線で「脱出に成功した」とベンソンらを挑発して、記事に大きな盛り上がりを加えようとする。

ベンソンらと対決するために、バイク&サイドカーに乗って、出て行く四人。(←このシーン、メチャ素敵!!)
が。「記事を面白くするため」ドコンジョにガソリンを抜かれていたのだった…
ここでようやく、次元が「ババア」でなく「あの婆さん」と呼び、笑いながら「気に入ったぜ」と続ける。なんか次元の余裕がカッコイイ!
どうでもいいけど、やっぱり次元って「少し手ごわい女」が好きっぽい(笑)

「待つしかない」との五右エ門の言葉通り、その場で待っていると、ベンソンらがやって来る。
その後はひたすらドタバタの乱闘シーン。まるで舞台のよう。監督ドコンジョの指示に従って、みんながひたすら戦い、派手に盛り上げる。
ドコンジョが笛を吹くと、みんながピタリと止まって、指示通りにする…という、ありえなさ極まるシーン(笑)
突然現れた銭形すら、ドコンジョの言いなりになるようなコメディトーンなので、考えずに鑑賞するが吉。
戦闘シーンのはずなのだが、音楽に乗ってなんだかみんな楽しげ。特に不二子が可愛らしい。
…これらのシーンに、野暮な説明は不要でしょう。この独特のノリは、ぜひご自分の目で。

もちろん勝負は、ルパン一味の勝ち。
だが、ベンソンのバイクが、脇で記事を書き続けていたドコンジョ婆さんの元へ突っ込んでしまい、その危ういところをルパンが救う。
婆さんを助けるだけで精一杯で、せっかく書いた記事もタイプライターもバイクと共に炎上してしまうのだった。

で。翌日のデイリー・ドコンジョは、全面ひたすら「GEYOGEYO」でうめつくされている。
ここでEND。当然といえば当然だけど、きっと次の記事は間に合わなかったんだろう。
今観ても「あ、もう終わりだっけ」とちょっと拍子抜けする終わり方なのだけど(笑)、変にハートウォーミング路線で着地せず、ドタバタに終始し、ルパンを利用しようとしても結局上手くいかなかったこの結末、私は好きである。
ドコンジョ新聞がどうなったのか……
気になるところだが、この婆さんのことだから、きっと逞しく頑張っているに違いない。そんな気がする。


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