第131話 二人五右ヱ門 斬鉄剣の謎


斬鉄剣の設定

五右エ門がたった一人で銀行を襲うという珍しいシーンから始まるこのお話。
斬鉄剣でシャッターや金庫を斬りまくっては5億円を盗み、しかも守衛を殺しているのでちょっとだけビックリ。
だが、題名からもわかる通り、その五右エ門は偽物だ。
二駄衛門という男が化けていたのだった。

斬鉄剣は、その設定がかなりいろいろある。
旧ルでは3本の名刀・虎徹、良兼、正宗を溶かし、打ち直したもの(5話)であり、19世紀に開発され示刀流の秘伝書全三巻にその製法が記されているという(7話)。
旧ル7話では大量生産も可能のように描かれているが、新ルでは斬鉄剣はこの世に何本もあるものではないという設定だ。

今回は、斬鉄剣と対になっている小刀の存在が明らかになる。
斬鉄剣は、300年に一度男刀と女刀を並べ「添い寝式」というものをしないと、まったく切れなくなってしまうという性質を持っているという。ちなみに右エ門の持っている方が男刀。
二駄衛門という男は、女刀の方を所有しており、斬鉄剣のその性質を利用して五右エ門の刀を奪うつもりなのだ。
五右エ門の名前を騙っての盗みも、それが目的だったのだろう。
二駄衛門の先祖は、初代石川五右衛門と争っていた盗賊で、泥棒の天下を五右衛門に奪われたと恨みに思っていたらしい。その子孫の二駄衛門に、しっかりと石 川家への恨みは受け継がれており、個人的には何の遺恨もないはずなのに、異様な執念で五右エ門を狙う。ちょっとアブナイ爺さんである。

ニセ五右エ門の凶悪強盗事件は3件、被害総額13億円にものぼっていた。
そのニュースが流れている時、ルパンはちょっと意外そうだが、楽しげですらある。罪のない守衛を殺したことだけはいただけない、とルパンらしい批判をしているが。次元は信じられないといった様子。
五右エ門は一点の曇りもない斬鉄剣をルパンに見せ、身の証とする。斬鉄剣は、人を斬るとくもりが残ってしまうものらしい。

そこへ「五右エ門から」ルパンへの挑戦状が届く。不二子が持ってきたものである。
挑戦状は、「分け前を渡す」なんて言っているが、ニセ五右エ門からの呼び出し。
この件は俺たちに任せろよ、と言ってくれる次元に対して、「己に降りかかる火の粉は己で払う」と頑なな五右エ門。
さすが日本男児、渋い!自分の始末は自分でつける。いつも変わらぬ五右エ門の生き方である。
それに対して、「わりと気取り屋なのね」とクールな不二子は、この辺の価値観がわからないのだろう。

ところで、いつもはルパンだけをひたすら追いかけ、時には「雑魚はいい」とすら言い、五右エ門にはあまり関心がなかったかに見えるとっつあんが、今回ばかりは五右エ門逮捕に血眼らしい。
被害金額も大きいし、殺人までしたとあっては、とっつあんも捕まえないわけにはいかないのだろう。勿論、あくまで最終的な狙いはルパンなのだが。


ちょっとした見所

そのとっつあんの元に、二駄衛門からタレコミ電話が入る。
五右エ門たちを呼び出しておいて、そこへ警察と鉢合わせさせるつもりなのだ。
しかも、斬鉄剣が斬れなくなるということまでとっつあんに話している。

五右エ門はまんまと呼び出された時間に現われる。
二駄衛門による「斬鉄剣が斬れなくなる」という情報を信じた警察は、五右エ門の周りを鉄の壁で囲み、生け捕り(byとっつあん)に成功しかかる。
五右エ門は、その壁を斬ろうとするがまったく歯が立たない。この時の五右エ門は、さぞ驚いただろう。愛刀が突然斬れなくなるのだから……。
そこへヘリで二駄衛門がやって来る。
巨大な磁石をヘリから吊り下げ、斬鉄剣を吸いつけ盗んでいこうとするのだが、さすがは五右エ門、決して剣から手を離そうとはしない。
二駄衛門は、共にくっついてきた五右エ門を殺そうとするが、いいタイミングで次元のヘリとルパンのモーターボートが現われ、みごとな連携プレーで五右エ門と斬鉄剣を助け出す。

ここに至って、五右エ門はようやく斬鉄剣がもともと夫婦剣だったことや、300年に一度切れ味が鈍り、そのために添い寝式が必要なことなどを思い出す。古伝書で昔読んでいたらしいが、忘れていたようだ。
「五右エ門の持ち物にしちゃ、洒落てるじゃないか」というルパンに同感(笑)。

そこへまたまたとっつあんがやって来る。アジトの小屋を上から網で覆って包囲するのだが、案の定ルパンたちは地下から逃げる。
逃げられたとっつあんはルパンに対して「サル、モンキー面、マントヒヒ!」という悪態をつく。
ちなみに、この回二駄衛門からのタレコミ電話の逆探知に失敗した部下に対して「バカ、ドジ、ノロマ!」と言うなど悪態の多い回(笑)。
どれも子供の悪態みたいに芸がなくて、新ルのとっつあんらしい。

そして、個人的に今回の見所はふたつ。
まず、とっつあんから逃げた後、レストランで腹ごしらえをしたルパンたち。(食べていたのはルパンだけのようだが)
その会計を「頼むぜ、次元」と当然の如く次元に任せているルパン。そういえば、「最後の差し入れはカップラーメン」でもお金を払っていたのは次元だったし、もしかしてルパン一家の会計係は次元?(笑)

もう一つは、ルパン・次元・五右エ門のバランスのいい関係についてである。
レストランの会計係りに化け、「峰不二子は預かった」という脅迫状を置いていった二駄衛門。
自分のためにとぱっちりを受けてさらわれてしまった不二子に対して、五右エ門は慙愧の念に堪えない様子だ。
発信機の示す場所に向けて車を走らせているとき、「拙者の関わりでひとに難をかけることは、先祖からの血が許さん」と、呟く五右エ門。
それに対してルパンは、プーッと吹き出し、「泥棒ってのはよぉ、どっちかってぇと『ひとに難をかける』ジャンルじゃないのか〜?」という具合に、五右エ門の義賊観をちゃかしてみせる。
すると、そこで次元が「押し問答はよそうぜ、ルパン」と口を挟む。何となくルパンを嗜めたようであり、揉める前に事態を収拾しようとしたようでもある。
いかにもルパン一家の長兄・次元っぽいシーンだと思う。
大したシーンではないのだが、「それぞれかなり個性的な3人は、いつもこうして誰かが雰囲気を和らげたりして、バランスを取り合って付き合っているのかもしれないなぁ」と妄想のきっかけとなるシーンなので、私のお気に入りだったりする(笑)。


末路

せっかくいい雰囲気を維持したまま、二駄衛門につけた発信機を追ってアジトの城に到着したルパンたちなのだが、この後すぐ喧嘩することになる。
原因はやっぱり不二子なのだった(笑)。

捕らえられた不二子は、巨大ルーレット盤のようなものにくくりつけられ、グルグルと派手に回される。そこへ二駄衛門は次々と手裏剣を投げつけ、「斬鉄剣を素直に渡せ」と迫る。
どうでもいい気もするが、手裏剣の腕はなかなかのものらしいし、二駄衛門も忍者の家系のようだ。

だが、それは不二子ではなく人形だった。
ここに来て、次元と五右エ門は「二駄衛門と不二子がグルなのでは」ということに思い至る。ルパンは不二子を必死に庇い、「こんな風に不二子をコケにされたらやってられねぇ」と、帰ろうとさえしてしまう。
実際不二子と二駄衛門はグルで、次元と五右エ門が正しかったわけなのだが…
不二子ちゃんさえ引っ掻き回さなければ、この3人は穏やかに仕事が出来るのに。まあ、そんな不二子がいいのだが(笑)。
それはそうと、ついさっきまで「不二子殿」と呼び、随分申し訳なさそうにしていた五右エ門だが、イキナリ「最初からあの女に謀られていた気がする」とあの女呼ばわりしているのが笑える。

だが、本当に最初から不二子は二駄衛門とグルだったのだろうか?
冒頭でルパンに「五右エ門からの挑戦状が届いているわよ」と手紙を持ってきた不二子。挑戦状が五右エ門からだと思っていたようだし、部屋に当の五右エ門がいたのにとても驚いているように見える。
二駄衛門は、警察に五右エ門を包囲させたところを、上空から斬鉄剣を奪うという計画を立てていたわけで、その中で不二子に手伝って貰う必要があることはない。
五右エ門が斬鉄剣を手放さなかったのが誤算で計画は失敗したが、この時点では不二子はグルではなかったのではないか、と私は思っている。
この計画に失敗した二駄衛門が不二子に近付き、ダイヤを条件に不二子は手を組んだのではないか…。

さて、城の中に仕掛けられたワナを潜り抜け、二駄衛門の元へ向かうルパンたち。
途中の針天井から、持ち前の反射神経と運の良さで逃れたルパンが、次元に肩を貸してもらいながら次へ進むシーンがちょっと可愛い^^
ついに辿り着いたルパンらを横目に、不二子はその時点でダイヤを持って逃げようとするが、出口を塞がれてしまう。
いずれにしても斬鉄剣を斬れないままにしておくわけにもいかないので、添い寝式を行い、それの終わる翌朝8時にどちらが早く刀を手にするか…ということで同意。
二本の斬鉄剣は、並べられると自然と重なり合う。

一晩の睨み合いの中、次元がこっそり刀に近付こうとすると、二駄衛門は床下の硫酸プールを開いて対抗する。
さすがに疲れたのか、二駄衛門はうたた寝し、ルパンたちを部屋の仕掛けで皆殺しにして、斬鉄剣を奪う夢を見る。
目を覚ました二駄衛門が慌てて時計を見ると、まだ7時半。
だが、ルパンはその瞬間五右エ門の斬鉄剣を奪い返す。すでに斬鉄剣の切れ味は戻っていた。
二駄衛門が眠っている間に、靴に仕込んであった強力な磁石で、時計の針を30分遅らせておいたのだ。

刀を奪い返したルパンたちは逃げようとするが、二駄衛門は自分の刀を振りかざしルパンに迫る。
次元は、二駄衛門が乗っていた机をマグナムで打ち砕いた。
…落ちたところは硫酸プール。骨すら残らず、二駄衛門は溶けていった。新ル史上、最も悲惨な死に方をしたうちの1人かもしれない。

そんなシーンを吹き消すように、ラストはいつもの軽いトーンだ。
二駄衛門が不二子に渡したダイヤは贋物(次元もダイヤの鑑定が出来るようだ^^)
がっかりする不二子に、ルパンは「今度もっと大きなダイヤをプレのゼントしちゃうから」と声を掛ける。
だから今夜一緒に添い寝式しよう、と続くわけだが(笑)
「バカバカ」と言って拒絶してる不二子。ルパンとのイチャつきっぷりがほのぼの系で、何だか安心できる。

ところで、二駄衛門は斬鉄剣の女刀を持ったまま硫酸プールの中へ消えていった。
当然、女刀は失われてしまったのだろう。
ということは、300年後の五右エ門の子孫は、非常に困った事態になるのではないか、とついつい今から心配したくなってしまう(笑)。


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