第10話 秘宝は陰謀の匂い


隠し文

これも大好きな一作。
まず、ルパンの顔がとにかく好みの回。シーンによって多少のブレはあるものの、全体的にパースリ初期らしく顔立ちが整っており、かつ表情豊かで、眼福な事この上ない。五右ェ門も男前である。
次元は妙にだるそうな目つきと、やけにとがった鼻に描かれているが、それがまた可愛い(笑)
また、ルパンらの食事シーンマニアとしては、この回は非常にオイシイ。必見である。
不二子は登場しない回なのだが、作中の「彼女が登場しない理由」がまた最高^^
そういう趣味に走りすぎた視点を覗いたとしても、この回はルパンの盗み・大臣との騙し合いがメインであり、オーソドックスかつ充実の作品になっていると思う。


物語は、ルパンたちののどかな昼の風景から始まる。
五右ェ門が、斬鉄剣で斬ったものは…各種缶詰や瓶の口。ものすごーくつまらぬもののオンパレードだ(笑)
ルパンにうまいこと乗せられて、ついやってしまったらしい。そんな自分の未熟さを恥じてか、肩を落とす五右ェ門。
まんまと乗せたルパンは、明るく礼を言い、「すーぐ昼飯作ってやっかンね」とご機嫌だ。
どうしてこんなことになったかというと、缶切が見つからなかったというつまらぬ理由から(しかも「次元が買うのを忘れた」せいらしい・笑)

ここで、ルパンの「斬鉄剣も使いようによっちゃ便利なものだぜ」との台詞や、五右ェ門がルパンにうまく乗せられてしまう、というのは、いい伏線だなぁと思う。
何気ない日常風景を描き、この手のシーンに目のないファン(私だ)をニヤニヤさせておいて、後のストーリー的には無駄じゃないなんて。
ルパンはこのことがあったから、すぐに五右ェ門に液体火薬で満たされた玉を切らせようと思い立ったのだろうし、五右ェ門がなぜか文句も言わずに必死に修行しているのも、ルパンに言葉巧みにあっちこっちを刺激され、奮起したためなんだろう、とスムーズに想像・納得できる。

そのルパン、せっかくコック帽子をかぶって張り切っていたのだが、料理を披露してくれることはなかった。
傍で新聞を読んでいた次元が、そこに出ていたメッセージ「ルパンの馬鹿野郎」を読み上げると、真顔で新聞を見つめだす。そしてそのまま部屋を出て行ってしまったのだ。
「馬鹿野郎」の文字は普通の活字とは違った、飾り文字。
次元は当初物好きもいるもんだ、としか考えてなかったが、様子の変わったルパンを見て、何かあると気づいたらしい。

ルパンは一人、薄暗い部屋にこもって、いろいろな仕掛けを作っていた。
そこに入ってきた次元は、何気ない調子であのメッセージについて問う。この辺、サラッと一人になってたルパンの世界に入り込めるのが、長年の相棒のなせる技だな〜と思ったり(笑)

ルパンによると、あれはルパン家に伝わる隠し文、なのだとか。
単なる悪口にしか見えないものでも、それを知るものが読めば、伝言だけでなく、日時や場所までわかるようになっているのだという。
が、今はもう、それを知っているのは、ルパン一人しかいないはずなのに…と、訝しがる。
隠し文に記されたメッセージに加え、もう誰も知るはずのない連絡方法を使われたことが、先ほどルパンを真顔にしたのだろう。
(ルパン家の隠し文を知る者は、もうルパンしか残っていない、とか、ルパンを研究し尽くした銭形だからこそそれを知っていた、とか、この辺の設定は原作が元ネタだけに、非常に非常に魅力的!)

書かれていたメッセージは、「法務大臣リンチ・ワイロー邸にて、一世の秘宝が発見された。鑑定されたし」。
ルパン一世の形見であり、ルパン家にとっては宝ともいえるものが、法務大臣の屋敷にあるのだという。
次元も、そしてルパンも「罠だ」と判っているのだが、それでもルパンとしては無視するわけにはいかない。
爺様の形見、というだけでなく、さらには隠し文という秘密の方法で連絡を取ってこられたとあっては…
「乗らねぇわけにはいくまい」と言うルパン。その表情が、とっってもカッコイイ!!
いずれにしても、一世の秘宝といい、隠し文のことといい、ルパンのことをよーーーく知っているものでしか、考えられない呼び出し方法。ルパン家の問題を放置することはできないし、また意味深な呼び出しに、彼の好奇心が刺激されていたに違いない。

ルパンは一人、法務大臣邸へと向かう。「ルパン家の問題」の時は、まず一人で乗り込むことを良しとするのは、旧ルの頃からあまり変わっていないのかも。
次元は「付き合いのいいこった」と、淡々と見送る。変わったのはどちらかといえば次元のほうで、旧ル7話では「ルパン家の誇りの問題なんだ」と一人で行ってしまうルパンに、「俺を置いていくのか!?」と連れて行って欲しそうだったけど、今回はクールに静観の構えだ。
罠だと承知で乗り込むのなら、ルパンがそう易々と引っかかることはないと信じているからだろうし、一人で行きたいルパンにはそうさせるのが一番だと、もうわかってるのだろう(妄想)。

崖の先端に位置する大臣邸に、車で乗り付けるルパン。が、その姿は、銭形のものに変わっていた。
罠だと判っているところに、真正面から乗り込むつもりはなかったらしい。
だが、そんな様子を、大臣と共に、本物の銭形が窓からしっかりと見ていた。
二人の会話から、今回はルパンを逮捕ではなく、秘宝を鑑定させるのが目的であることがわかる。銭形としては目の前にルパンがやってくるのに、逮捕できないなんて考えられないことだろうが、大臣から強く戒められるのだった。

ばれているとも知らず、銭形として大臣と面会するルパン。だが大臣がその変装を称えると、ゆっくりと素顔をあらわにしていく。
この時の表情もまたまたツボ。銭形のマスクをつけたままなのに、とってもルパンっぽい顔つきをしている箇所とか、絶品。
そうして正体を現したルパン、大臣が隠し文で呼んだのかと一応尋ねてみるが、そうでないことはすでに承知、部屋に飛び込んできた銭形を見ても驚くそぶりも見せない。「引っかかっちゃったんだわ〜」と言っているが、余裕の態度だ。
ルパンのことを研究し、知り尽くした者、となれば、銭形しかいないと察していたのだ。
ルパン家の秘密まで調べ上げている銭形というのが、妙にカッコイイ!のだが、このシーンの銭形のテンションがやけに高いのが、ちょっぴり残念。権力によっ てルパン逮捕を止められているのだから、渋めの顔つきで現れてくれたらいいのに、なんて思ってしまう(こういう銭形が好みだってだけの話ですが^^)。

大臣は、ルパンに一世の秘宝が本物かどうかを鑑定して欲しいと依頼する。ルパンは、どうせ贋物だろうけど…と言いつつも、鑑定することに同意する。
銭形はあくまでルパンを捕らえようとするが、大臣からまたしても一喝され、ルパンには手出しできぬまま秘宝を守るために同席することになる。

秘宝は、大臣邸の地下30メートルのところにある、金庫室の中だ。接近する方法は、監視カメラつきのエレベーターのみ。
その上、秘宝は丸い透明な玉の中に入れられており、これがクセモノ。玉には液体火薬が満たされており、少しでもショックを与えても、また台座から外しても、爆発するという仕組みになっている。
ルパンは、直接秘宝に触れることなく、鑑定することになった。
取り出した特殊なペンライト状のものを宝石に当てると、まばゆい光が周囲に反射、さらにはルパン一世の姿が壁に映し出されるのだった。
間違いなく、これは本物の一世の秘宝。ルパンは、「まさかこんなところで爺様の形見にお目にかかれるとは思ってなかった」と、シリアスな表情で呟くのだった。


クソグモ

それが本物の秘宝だとわかったが、ルパンはそのまま帰ろうとする。
と、大臣が彼を引きとめ、盗まないのか?と軽くジャブ。負けず嫌いのルパン、ましてや祖父の形見にはことさら愛着を見せる彼のこと、言われるまでもなく、欲しかったに違いない。
だが手持ちの手段では液体火薬攻略が思いつかなかったルパンとしては、「いずれ頂きに来るサ」と言って帰るしかなかったのに…
大臣は、ルパンに賭けをしないかと持ちかけた。
一週間以内にルパンがこの秘宝を盗み出せるかどうか。もしルパンが負けたら、一生牢獄の中で暮らす。もし大臣が負けたら、法務大臣を辞める。
「いかなルパンでも無理かな」とさらに挑発を続ける。
すると、ルパンはそれに乗ってくる。お気に入りの言葉「ルパン様の辞書には不可能の文字はねぇんだ!」と啖呵を切って。
大臣が、全世界に向けてこの賭けの内容を発表する、と言った時に、その顔は少し戸惑いに曇るが、またしても大臣が「条件が厳しすぎたかな」と一言。この大臣、ルパン操縦のツボをなかなか心得ている。
ルパンは挑発に顔を引きつらせ(これがまた可愛い^^)、賭けの全内容を受けて立つのだった。
(どうでもいいけど、このシーンに「約束していいかなー」「いいともー」と、日本人なら誰もが知ってる長寿番組の合言葉が使われている・笑)
…こうしてまんまと大臣は当初の思惑通り、ルパンと賭けを成立させ、彼が去って言った後、満足そうに高笑いするのだった。


その後大臣は、マスコミに大々的に報告。全世界がこの賭けを知ることになる。
次元は「チェ、ばかばかしい」と相変わらずクールな態度だ。
なんでも、法務大臣は次の大統領選挙に出馬予定であり、このルパンとの賭けは、それに利用されているだけなのだ、と。
ルパンもそれはもうわかっていたようだが、こうなってしまっては後に引けるはずがない。

彼らのいるアジト近くの野原の下のほうでは、五右ェ門が必死に斬鉄剣を振るっていた。
彼が斬っているのは、水を入れた風船。それをロープにつるしたものだ。
気合を込めて斬るものの、風船が割れると同時に、中の水は派手にぶちまけられてしまう。(これで当然なんだけどね^^;)
五右ェ門に対して、ルパンは「未熟者!」と一喝、竹刀でペシッと叩いたりする(←このルパン、楽しんでる気がしません?笑)。「そんな斬り方なら、俺でも出来ンの!」と、容赦がない。
一体、五右ェ門をどうやって乗せたのだろうか。世界一の剣豪の誇りや、五右ェ門の中にある求道心を、うまいこと突っついたのではないか、と推測するが^^
いずれにしても五右ェ門は、叩かれても「未熟者」を連呼されても言い返すことなく、ただただ修行に励むのだった。
それを見ていた次元は、まるで根性モノだな、というけど、ノリはまさにそんな感じ(笑)でも五右ェ門には、けっこう向いているのかも。

修行する五右ェ門を一人にし、ルパンと次元は車に乗ってお出かけ。
その道中で、秘宝が大臣の手に渡ったいきさつが明らかにされる。
ルパン一世は、かつて女に騙され、宝石を持ち逃げされたことがあるのだとか。その時の女が、法務大臣の母親で、今その息子の手にあるのだという。
話を聞いた次元は、まるでルパンと不二子のようだと笑う。
ルパンは「不二子はそんな女じゃねえよ」と、いつものように彼女をかばい、すねた顔をさてみせるのだが。ここからがサイコー!
そういえば…と、次元は不二子が最近姿を見せないことに気づいた(「あの欲張り女」呼ばわりしてます。大笑)
ルパンの説明によると、中国の奥地に美容に効く魔法の温泉があるそうで、そこへ行ってるのだとか。
その“情報”を流したのは、ナントルパン!今回だけは、不二子に邪魔されたくなかったから、だそうで(笑)
不二子はそんな女じゃないと庇ったそばから!!結局、ルパンも不二子を「そういう信じ方」はしていないのだ(笑)
それを聞いた次元は大爆笑、咳き込むほど笑い転げている。運転大丈夫かい?と心配になるほどの爆笑っぷりに、こちらもつられてしまう。ホントこのシーンは、いろんな意味で最高だ^^


一方、その頃の大臣は…意味ありげに「クソグモ」という男の書類を眺めており、そこへ一人の男が入ってくる。囚人服を着たその男、彼こそが後半のキーマン・クソグモである。

ルパンらが赴いたのは、ジム。そこで仕事の話をしながら、二人は汗を流す。
ルパンが液体火薬攻略のために目をつけたのが、クソグモという男。「指先の魔術師」と異名をとる人物で、なんでも東洋の心霊術じみた力がその指先には宿っていて、金庫でも何でも、鍵を開かずに、扉を指が素通りし、中の者を取り出す能力を持っているのだとか。
彼がいれば、この賭けに勝てる、とルパンは考えていたのだ。
彼は今、とある刑務所の中にいる。協力させるには、脱獄させるしかないのだった。

それはそうと、このジムのシーンもなかなかのインパクト。次元はきちんとジムで運動するための服に着替えている(レオタードっぽい!?)。
ルパンも自転車こぐ等ちょっと付き合ってるが、どう見ても次元の方が熱心にトレーニングしていた。
その後、次元はカフェテラスでハンバーガーをパクパクと食べまくっている。ルパンの注文は飲み物だけっぽいのに。
あまりの食べっぷりに「胃拡張じゃねえの?」と呆れるルパンだが、次元は「運動すりゃ腹が空くのは当たり前、健康の証拠」と平然としている。
次元から「健康」という言葉を聞くと、非常に不思議な気分になる。その前に酒と煙草を控えたら?という気もするし(笑)、また次元ってどうも横着モノで、やや捨て鉢なところがあるイメージがあったので…。
とはいえ、新ル18話でも「毎日サーキットで鍛えている」と肉体自慢をしていたし(笑)、身体を鍛えていなければ、ルパン一味として活動することも、ガンマンとしての腕を維持することも、出来ないのだろう。健康が目的というよりは、身体作りが目的ならわかる。
暇な時はアジトで寝そべっているイメージが強いけれど、実際こういう地味な鍛錬を欠かさないのかもしれない。

ルパンは、例のクソグモのいる刑務所に忍び込み、彼に話しを持ちかける。ここを出してやる代わりに、俺の仕事に協力してくれ、と。
クソグモは同意し、ルパンと共に脱獄する。
が、この脱獄。裏がありそう。監視カメラが二人の姿を捕らえているのに、警備員は意味ありげに笑っているだけで手出ししようとしない。仕組まれた脱獄劇なのだ。
戻ってきた二人を乗せて、次元が車を走らせながら、「簡単にいきすぎ」と訝しがるが、ルパンはあまり頓着しない。
その二人の会話に、地味に反応しているのが、クソグモ。いかにも怪しい(笑)

大臣のもとに、ルパンがクソグモを脱獄させた旨、報告が入る。やはり大臣が絡んでいたのだ。
報告を聞くと、ルパンがクソグモの手を借りなければ、秘宝を盗み出せないことがハッキリしたと、自分の勝ちを確信して満足げな大臣なのだった。

その頃、五右ェ門は孤独な修行を続けていた。
ついに、その努力が実るときが来た。彼が水入り風船を斬ると、中の水がわずかの間、空中で形をとどめたままの状態を保つ。
手ごたえを感じた五右ェ門は、薄く笑みを浮かべた。

ルパンのアジトに一緒に戻ってきたクソグモは、夜中に不審な行動をとる。眠っているルパンの部屋をもどかしげに覗いていたのだ。
彼の正体は、銭形。大臣の計画通りにことを進めるよう厳命されており、彼はクソグモに化けるハメになり、さらにはルパンとこれだけ接近しても逮捕せずに我慢するしかないのだった。
銭形としては相当不本意だろうが、大臣はなかなかずる賢い。真っ当なやり方で逮捕しようとしても、ルパンをそう簡単に捕まえられないことは明らかだ。さらに、せっかく捕まえたところで、これまでのようにすぐに脱獄されては意味がない。
たまたま所有していたルパン一世の秘宝という、相手にとっては無視できない重要なものをちらつかせ、賭けに乗せ、マスコミに発表することで後に引けなくす る。唯一の手段(と思われた)クソグモを先回りして押さえることで、ルパンを負かし、その結果として一生牢獄に閉じ込めようというのだから…。
「警察の親玉」(by次元)として、あのルパン三世を捕らえたとなれば、世間的評価は急上昇するだろうし、大統領選も有利になるだろう。

そんなことも知らない(?)ルパンは、翌朝クソグモ銭形に仕事内容を説明し、頼んだぜとウィンクしたりする。


秘剣風船返し

その時、アジトにふらふらになった五右ェ門が帰ってきた。
あまりの弱り方に、駆け寄ったルパンと次元は「誰にやられた?」と、心配するのだが。五右ェ門は、ただただひたすらに腹を減らしていただけだったのだ(笑)
飲まず食わずであの修行を続けていたのだろう。涙ぐましいほどにストイックな努力家、五右ェ門。
久しぶりの食事、五右ェ門らしからぬがっつきぶりと、それを向かいの席で見守るルパンが微笑ましくってツボだ^^
ルパンが「武士は食わねど高楊枝、でしょうが〜」と言うと、「腹が減っては戦は出来ぬ、でござる」とことわざで返す五右ェ門。
その言葉に、ルパンは「じゃあ戦が出来るんだな?」と喜ぶ。準備は、整ったのだった。(ここで不敵なルパンの表情もまた素敵v)

話は逸れるが、このシーン。
五右ェ門が使ってる食器がえらく可愛い。ヒヨコとブタとカエル模様のお茶碗なのだ。
誰のチョイス!?と、注目せずにはいられない(笑)
また、この食事は和食っぽい(おかずはチクワくらいしか判別できないが)。五右ェ門をねぎらって、この間作りそびれた昼食の代わりにルパンが作ったのかも…と妄想をしては、勝手に楽しんでいる。


というわけで、いよいよルパンとクソグモは大臣邸に向けて出発した。
ルパンが「出かける時は〜忘れずに〜」と、当時のアメリカ○エキスプレスカードCM風に言っていくのだが、それに対して次元は、ごく淡々と「いいから。行けよ」と返す。ここの呼吸(二人の口調のコントラスト)がなぜだか妙におかしくって、ついつい笑ってしまう。
大臣の屋敷は、かなり厳しい警備がされていたが、ルパンは見つかることなく内部へ侵入。見事な綱渡りの技を見せてくれる(クソグモ銭形は、ロープにしがみつく形で渡ってる)

金庫ではなく、大臣の部屋へ直行したルパンは、彼を人質にとって秘宝の元まで一緒に連れて行くことにする。
「大臣は預かってる」ということで、監視カメラの向こうの警備員に手出し出来ぬようにしてから、金庫室へ入る三人。
秘宝を前に、クソグモに取り出してもらえば俺の勝ち…というルパンに、大臣は突然笑い出す。賭けに負けるのは君だよ、と。
ここでクソグモが、その正体――銭形の素顔をあらわにする。本物のクソグモは、すでに別の刑務所に移されていたのだ。
秘宝を取り出す手段を失い、「そんな…」と焦る(ように見える)ルパン。
彼は、「一生刑務所の中なんてイヤだ〜〜」と見苦しい態度を見せ、大臣をさらに勝ち誇らせる。銭形は、抑えた表情で手錠をかざし、「潔くお縄につけ」と近づいてくる。(こういうトーンの銭形好き^^)
「俺が悪かったよ…」と、ルパンが弱音を吐く……わけはなく。まさに「なーーんちゃって」の名演技なのだった。

ルパンは最初から、銭形がクソグモに変装していたことを承知していた。
それだけではない。そもそもの初めから、ルパンは大臣の手を読んでいた。あの液体火薬の中から秘宝を取り出すには、クソグモという特殊能力者を利用するしかないと、大臣は考えるだろうと。
だから、敢えてその手に乗ったように見せかけるため、彼を(銭形だったが)脱獄させたわけだが、最初から彼を使う気なんか、ルパンにはなかったのだ。クソグモの話題を(次元との間に)出す前から、五右ェ門に厳しい修行を積ませ、“ある技”を習得させていたのだから。
銭形まで巻き込んで、自分の出世のために利用する…そんな悪徳大臣に、わざと騙されたふりして、懲らしめてやろうとルパンは思っていたのだった。
このシーンでのルパンの「付き合っただけだ〜よ」という言い方もとても好き^^

すべてルパンにはお見通しだった、と気づかされたが、大臣は、玉の中から秘宝を取り出せなければお前の負けだ、と賭けの続行を宣言。ルパンに勝算があるとは、あまり想像できなかったのか、それとも破れかぶれだったのか。
当然、ルパンもそのつもり。
彼が「ごえも〜〜ん」と呼ぶと、外の壁を斬りきざんで五右ェ門が金庫室に現れた。「石川五右ェ門、推参」。
ルパンじゃなくても「待ってました、大統領!」と言いたくなる、颯爽とした登場だ。
大臣邸が、海に面した崖の上に立っている、その立地を利用した侵入方法。屋敷から30メートル下の地下金庫室は、断崖絶壁の途中に当たる。次元と五右ェ門は、そこに海上からヘリで近づいていたのだ。

五右ェ門はここで、修行の成果――神業を見せつける。
例の玉を、液体火薬をまったく揺らすことなく斬り、中の宝石だけを刃先で取り出して見せたのだ。
大臣が思わず「すごい!」と言ってしまうほど、圧倒的なスゴ業。名づけて「秘剣・風船返し」。

ルパンと五右ェ門は、秘法を手に入れるとすぐに、次元の待つヘリへ乗り込む。
ルパンが銭形に忠告した通り、秘宝を入れてあった「タマタマ(byルパン)」が爆発を起こした。間一髪のところで、銭形と大臣は海に飛び込んで逃れる。
引き起こされた大爆発は相当な大きさで、大臣の屋敷を崖ごと海中に沈めてしまうほどの威力だった。
(新ル89話でも似たようなことを思ったけど、いくら泥棒に盗まれないためとはいえ、自分ちにこれだけ凄まじい爆薬を仕掛けておく、というのはスゴイな。よっぽど自信があったのだろう)

「賭けは俺の勝ちだ」と宣言して、ヘリコプターで去っていくルパン(この辺りも可愛い&カッコイイ!)
大臣は、大臣の椅子が〜大統領の夢が〜と、滝のような漫画涙を溢れさせて嘆いていた。この辺のギャグ化はいかにもパースリなのだが、まあワイロー大臣は前半からコメディっぽいトーンも見られたし、これくらいならそんなにチグハグ感はない(かも)。

そして、ようやく大臣の「回りくどい」作戦から離れ、ルパンを追っていける身になった銭形は、とても嬉しそう。
空に逃げたルパンを追って、「逮捕だ〜!」と泳いでいくのだった。
…銭形自らも大掛かりな作戦を立てたり(新ル134等)、回りくどい作戦に加担したりもするが(旧ル22、新ル85等)、基本的には真っ向から勝負し、ルパンの姿を見つけるや即手錠!の方法を好んでいるのだな…とわかるエピソードだ。

それにしても。万が一、百万が一にもルパンが賭けに負けていたとしたら。
ルパンは約束を守って牢獄に居続けたのだろうか。それとも…。なかなか興味深くて、想像が尽きないネタである(笑)


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