第24話 友よ深く眠れ


龍方文机台

五右エ門メインの名作。
五右エ門の戦いぶり、そして悲劇的結末が印象に残る。
パート3の五右エ門の活躍を堪能したければ、格好よさはこの話がピカ1か(←独断)。
そして、五右エ門は全編に渡ってシリアスで、本当に哀しい結末になってしまうのだが、その一方でルパン、次元、銭形の台詞に時折妙に可愛く、言い回しが絶妙で、ツボをつきまくってくるモノが多い。
今回やけに呑気なルパンと次元の台詞は全部ツボといえばツボなのだが、その中でも個人的に特に好きなモノは太字表記します(笑)。
興味のある方はチェックを(笑)。

日中友好目的の美術展に出品されるため、日本へと運ばれようとしている、古代中国王朝の秘宝・龍方文机台が、今回のルパンのターゲット。(龍方文机台、こういう字なんですね。パート3DVD−BOX解説書より)
それが船に運び込まれる時、美術展の大物・谷山から、ルパンはそれを盗み出そうと試みる。
銭形警部が、ルパンがそれを狙っていると聞きつけて警備にやって来るのだが、谷山はまるで相手にしようともしない。
ミスターXの声をはじめ、ルパン界で名悪役を演じている滝口順平さんの声が、谷山にピッタリで、見るからに腹の黒そうな悪役振りがとても良い。
一方で、銭形警部は「ルパン逮捕」という仕事のため(そして生きがい。笑)にしている行動なのに、こうして邪険にされることが多く、考えてみれば本当に損な役目だなと、何だか無性に労わってあげたい気分になるこの頃(^^)。

そこへ、五右エ門が奇襲をかけ、龍方文机台の入ったコンテナーを海に落とした。
ルパンがそれを海中で開けて引き上げ、待機している次元のボートで逃げる、という段取りだったようだ。

谷山の物騒な部下たちに囲まれる五右エ門だが、そのボスである谷山を盾に取り、部下たちに銃器類を捨てさせると、ルパンのいる海中へと飛び込んで逃げていく。
もう初っ端から五右エ門のカッコよさ、満開!!
まったく声を荒げることもなく、冷静に谷山を人質に取る辺り、個人的に非常に好みの行動。
ここまではルパンの計画通り上手く行ったのだが…次元の待つボートへ二人が戻ったとき、そこに立ちはだかる男がいた。
青龍。
次元が、気配すら感じ取れなかったことから、かなりの使い手だとわかる男。
どうやら五右エ門と縁のあった人間らしい。彼は、谷山に雇われて龍方文机台を守る役目を担っているようだった。
次元を制して、五右エ門は青龍と戦い始める。
この時戦う二人、とにかくカッコイイ〜♪(何だかこんな台詞ばっかりになりそうな予感^^;)

緊迫したムードで戦う二人とはうって変わって、それを見ているルパンと次元は、いたって呑気な感想。
ルパン「漫画みたい」
次元「ああ…漫画だ」


銭形がボートで追いかけてきたのを見計らって、青龍は一旦戦いから手を引いて去っていく。
決着をつける日時を決めようとする五右エ門に対し、ルパンたちが龍方文机台を狙っている限り、また会うと言う青龍。
ルパンが今、手に入れたと思っていた龍方文机台は偽物だったのだ。その代わりに入っていたのは、「古い手」である爆弾!
青龍は、ルパンが手に入れたものが偽物だと知っていながら追ってきた。次元が「てめー!知ってて何で取り返しにきたんだ」と言うのももっともである。
五右エ門と手合わせしたかったからか。それとも、五右エ門を爆弾などで死なせたくなかったからか?
この後で谷山に「ガッカリしたぞ」と言われているところを見ると、どうも谷山の邪魔になるルパンたちを消せと言われていたのではないか、とも推察できるのだが。

そこへ、「な〜にのんびりしとるんだ、お前らは」
と言いながらボートで迫ってくる銭形。ルパンは銭形のボートの方へ向けてその爆弾を放り投げ、逃げていく。
こうして、ルパンたちは日本の美術展で改めて龍方文机台を狙うことになる。


青龍と谷山

銭形警部指揮の元、日本で行われる美術展の警備は厳重そのものである。
その厳重さは、次元に銭形の物量作戦は嫌いだと言わせるほど。一見、容易には忍び込めそうにないのだが、ルパンは次元と五右エ門をおだてるくらい、何となく気楽そうな様子でもある。
だが五右エ門は、青龍のことが気にかかり、ルパンの話も上の空であった。
一方青龍は、谷山について日本へやって来ていた。勿論、龍方文机台を守るためである。
その青龍、一族を日本人に皆殺されたという過去を持っていた。
その「仇」を探すため、谷山のような胡散臭いヤツに雇われていたのだろうか。中国人の青龍では、なかなか日本人である仇について情報が集められなかったのかもしれない。
谷山はこの件が片付いたら(龍方文机台を守り遂せたら)、敵を探すために手を貸そう、と鷹揚に青龍に言い渡す。

しかし、青龍の一族を殺したのは、その谷山当人なのである。
それがバレることを恐れるように見える共犯の側近の男とは違い、谷山の腹黒さは相当なもの。
ルパンから龍方文机台を守ってもらえれば、その後用済みになる青龍までも、殺してしまおうと企んでいたのだった。

それにしても、この辺の事情については、あまり多く触れられていないので、わからない部分が多い。
どうして、谷山は青龍の一族を皆殺しにしたのか。両者にはどんな関わりがあったのだろうか。
唯一生き残り、一族の仇を探そうとしている青龍に、谷山はまるでシッポをつかませなかったのだから、彼の一族と谷山の間に「表立った」対立や怨讐があったとは思えない。あれば、青龍にもすぐ容疑者として谷山が浮かんできただろうから。
だが「一族」を皆殺しにするのだから、よっぽど深い事情があったようにも思えるが…。

谷山は最初から、いずれ青龍も殺そうと狙っていたからこそ、彼を用心棒に雇い入れて身近に置いたのだろう。
青龍の腕は、五右エ門でも易々と勝てないほどのものだから、物騒な仕事もしていそうな谷山にとって、また今回ルパンたちを撃退するためにも彼の利用価値はあっただろうし…。
そこまでして、一族根絶やしにしなくてはならない理由。考えていくとすごい事情がありそうで恐ろしい気もするが、谷山のような冷血で残酷な人間のことだから、案外他愛のない理由(一族ごと殺すこともないのでは、と思える程度の理由)である可能性も考えられる。

そしてもう一つ気になるのは、五右エ門と青龍の関係である。
密教系の南山寺で、共に唐忍法を学んでいたという二人。この作品のタイトルからすれば、五右エ門にとって青龍は「友」と呼べる人間だったのだろう。
が、どうもそれだけではなさそうな?
後に五右エ門と青龍が対決する際、青龍が「運命(さだめ)だよ」と言う。
すべては神の定めた運命という宗教的諦念というか、その手の意味合いの台詞だったのかもしれないが、「いつかは戦わなくてはならなかった」と言いたげな、互いに戦うことを予期していたような意味にも取れる。(妄想しすぎ?)
そういう意味だとしたら、友・兄弟弟子という関係以上に、いずれ決着をつけねばならなかったほどに、実力が伯仲していたライバル同士という面が強かったのだろう。
五右エ門が己に「勝てるか」と問うていることから察しても、そんな様子が伺える。

さらに考えると、青龍の方は、傷だらけになった五右エ門に自らの手で止めを刺そうとしているし(そうした方が五右エ門にとっても良いと思っていたのだろう が)、その時の表情に悲しみも迷いもない(ように見える)ので、友と呼べる時期はかなり前に過ぎ去ってしまっていたようにも思える。少なくとも、青龍に とっては。
共に修行していた時期の最後には、ライバルとしての意識の方が強すぎ、敵対でもしていたのだろうか??
それとも、これもすべて谷山の力を借り自分の一族を殺した犯人を探し出すため、だったのだろうか。

などと、この話には、きっちりと言葉で説明されていない過去の部分が多く、それがまた妄想を誘い(笑)、非常に奥深い魅力のある作品になっていると思ったりする。


空中戦

さて、今回は不二子もルパン一味として協力。
今回の不二子、それほど目立っていないような気もするが、谷山のところに潜り込んで、青龍一族殺しの話をシッカリ盗み聞きしており、それをルパンたち(勿論五右エ門含む)に話して聞かせるなど、さり気なくこの話の重要なキーマンだったりする。
そしてルパンと二人で、日中友好美術展に忍び込む。
不二子は司会者、そしてルパンは「ヤンソウリン」?という中国人のマジシャンに変装して現れる。
そして金粉蝶の舞というマジックを披露し、次々と会場の人たちを眠らせていく。そして、その隙に龍方文机台を戴こうという寸法なのだ。
余談だが、この時のチャイナ服不二子と、中国人マジシャンの格好をしたルパンがえらく可愛い(^^)。

上手くいったかに見えたが、さすがルパンとは長い付き合いの銭形。ルパンの変装や手口もお見通しである。ルパンに「マンネリ」と言われようともルパンと不二子を檻?に閉じ込めることに成功する。
しかしルパンもさすが。そうなることもあると読んでいたか、ビルの窓の外には予め五右エ門が待機しており、ルパンから龍方文机台を受け取ると、グライダーで飛び去っていく。
そのままビルの死角に入り、銭形の部下たちからは逃げられたものの、そこにはやはり青龍が待ち構えていた…。
銭形に捕まってしまったルパンと不二子だが、ルパンのお尻に仕込んでおいた仕掛け(笑)のお陰で、どうにかビルの屋上まで脱出する。
(この時の「ポンポン痛い」はルパンスキーとして悶絶。爆)
ヘリコプターで迎えに来る次元と、そして予定ではあのままグライダーで来るはずの五右エ門と、そこで合流するはずだったのだ。

が、次元も五右エ門も、まだそこに現れてはいなかった。
それもそのはず。五右エ門は青龍と、高層ビルの谷間に張り巡らされた細く強い糸という危うい足場で戦うことになっていたのだ。
まさに空中戦。
このシーン、こんな五右エ門が見たかったんだ!と心底思うほどに、斬鉄剣で「戦う」五右エ門はカッコイイ!
そして五右エ門を苦戦させる青龍も、すっごくいい男である。
こんな足場に不慣れだったか、それとも本質的に友と戦うことに向いていなそうな、非情に徹することが出来ない五右エ門の気質のためか、腕はやはり青龍が上だったのか……
五右エ門はついに破れてしまう。
青龍の読み通り(←落とす場所まで読んでるあたりがスゴイ)あるビルの屋上のプールに落ちる五右エ門。
一方青龍は、五右エ門から龍方文机台を奪い、そこで待ち構えていた谷山に返す。

五右エ門は、谷山の正体、そして彼の企みを知っていた。ゆえに、何とかして青龍に真実を伝えようとする。
彼の探していた一族の仇は、谷山であると。
それを聞いた青龍は、まるで信じようとしない。が、彼は背後から谷山の側近に撃たれるに至り、ようやくそれが真相だと知る。
谷山は、五右エ門と青龍二人まとめて殺そうと、部下に二人めがけて一斉に発砲させる。

だが、谷山に騙され利用されていたと知った青龍は、身をもってその銃弾の嵐から五右エ門を庇うのだ。
…もうダメ。この辺、見てられない(涙)。と言いつつ、つい見てしまうのだが。

余計な台詞が一切ない分、この青龍の行動には本気で泣ける。
そこへ、ようやくヘリコプターで次元登場。
谷山の部下たちを追い払い、傷だらけの五右エ門を拾うと、ルパンと不二子の待つビルの屋上へと向かう。
その頃ルパンと不二子は銭形たち警官隊と銃撃戦の真っ最中で、しかも弾数が尽きてしまうという大ピンチであったのだ。
やって来るのが遅い次元に対して、ルパンが「次元の、バカァ」と文句を言っているちょうどその時、現れる次元のヘリ。
次元「一人で帰ってもいいんだぜ」
ルパン「次元さん、次元さん」

…ツボすぎ(笑)。
しかもこの時の、銭形警部の「次元!…しばらく出てないんで、忘れとった」という言い回しもとぼけていて妙に面白い。

こうして何とか無事脱出したルパンたち。
ヘリの中での「遅かったじゃないかよォ」「警察のヘリを誰が片付けたのか知ってるのか?!」「次元さんで〜す」という、ルパンと次元の、場違いなジャレ合いは、言うまでもなく大好き(笑)。

だが次元の言うとおり、それどころではないのだ。
五右エ門は大怪我を負っていた。しかも、目の前でたった今、かつて一緒に修行した友を、そして自分を庇ってくれた友を、失ったばかりなのである。

その後、どれくらいの時間がたったのか?
五右エ門の頬の傷がまだ多少生々しいので、それほど長い時間がたったわけではないだろう。

谷山は、うまくルパンを追い払ったと悦に入り、龍方文机台を抱えて車の中でニヤついている。これは誰にも渡さない、と。
雨の中その車の前に、立ちふさがるのは……五右エ門。
何も言わず、何も言わさず、ただ一太刀。車ごと、谷山に浴びせかける。
車は、爆発炎上した。
五右エ門は背後を一切振り返らず、そして最後まで何も言葉を漏らさずに、ただ静かに立ち去るのみである。

余計なお涙頂戴的な台詞や、青龍との過去の回想もまったくない。
五右エ門は、自分の心境を何も語らない。青龍との思い出も、結局私たち視聴者には見せられることがない。ただ、プールの中に血まみれで浮かんだ、青龍の亡骸がよぎるだけである。
エンディングのこのシーン、見せ方が、すごくシビレる。余計に哀しい。痛ましい。
そして、いかにも五右エ門メインの作品らしい雰囲気だと思う。


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