第1話 ルパンは燃えているか‥‥?!


さり気ない始まり

1971年から現在まで続くアニメ「ルパン三世」のまさに記念すべき第1回。
だが、ルパンの登場は至ってさり気ない。素っ気ないとさえ思えるほどにアッサリしたものだった。
新ルにハマって、旧ルを見始めたわたしにとって、この登場は少々拍子抜けだった。

場所はヒダスピードウェイ。
ルパンはレーサーとして大会に出場しようとしている。
が、その大会は、世界的犯罪シンジケート「スコーピオン」が、傘下に入ろうとしないルパンを殺そうと仕組まれたものだった。
総工費50億ドル。そんな大金をかけてまで、事故に見せかけてルパンを殺そうとしているスコーピオンコミッショナー・ミスターX。
この後新ルで2度も、性懲りもなく現われるのでどうぞお見知りおきを(笑)。

スピードウェイのピットで、挙動不審な男があるマシンに近づく……。
その男の肩をポンポンと叩き「そんな缶持ってどうするの?」
そうして現われたのがルパンだ。
挙動不審な男(言うまでもなくスコーピオンの回し者)をクールに追い払う。
いたって静かに、華々しいBGMもなく、派手な効果もなく、ルパンは現われた。
いかにも「主役ですっ」という意味のないドアップのカットや、華々しいBGMなどもなく、当たり前のように画面に登場してくるルパン……。

子供心に拍子抜けしたこの登場も、今見てみるととってもカッコイイのだ。
今この瞬間から「ルパン三世」が始まりますよ〜という高揚感を強引に誘うことなく、シャレてクールなスタートだ。
ルパンたちにとってはこれが「最初」の冒険でも何でもない。
緊張感とスリルに満ちた、だがルパンたちにとっては日常のひとコマ。
この第一話が始まるずっと前から、いつもルパンたちは、こうした命懸けの冒険を楽しんでいるんだろうな、とごく自然に感じさせてくれる。


名台詞と名場面

ルパン登場の後、これからのレギュラー陣も同様のさり気なさで登場していく。
さり気ないのだが、印象に残る台詞や場面がこの回にはとても多いような気がする。

ルパンとトランシーバーで連絡を取る相棒の次元大介。
これからルパンと入れ替わり、見事銭形を出し抜こうとしているはずなのに、次元の姿には緊張感は感じられない。
ゆっくりとタバコをくゆらせ、寝そべりながらこう言う。
「小鳥がピーチク鳴いてるぜ」
このどこか気だるげな、だが決して虚無的ではない「余裕」。ほんと、カッコイイのである(こればっか(笑))。
そしてルパンと次元の会話から、スコーピオンに潜入している「ルパンの恋人」峰不二子登場となる。
もっとも次元にはこの「恋人」という表現には大いに異論がありそうなのだが……。

第1回の名場面と言えば何と言っても、スコーピオンを探りにホテル・ミラクルに潜入し捕まってしまった不二子への拷問シーンだろう。
かの有名な「山あり谷ありそして思わぬところに落とし穴あり」というミスターX屈指のの名言(笑)。
そして不二子の服が引き裂かれるシーン等、あまりにもインパクトのある場面の目白押しだ。
不二子への拷問(ですよね?あれは)に使われた「コチョコチョ棒」、孫の手がちょっと無気味になった感じのヤツだけど、あれもかなり長いことわたしの頭の中で印象に残っていた。

登場時の不二子の服装は黒いシャツ、タイトなジーンズ、赤い小さなスカーフ。今見ても非常にオシャレな不二子のスタイル。
だが、案の定すぐに捕まってしまう。
その不二子は、拷問台の上で身動きが取れない状態でコミッショナーからルパン抹殺の計画を知らされる。
それでも不二子は不敵に艶然と微笑み、「ルパンは不死身よ」と言い放つ。
この美貌、色気、そして捕まって尚この不敵さ。まさに「峰不二子」である。

そしてルパンの宿命のライバル銭形警部。
同じくレースに参加してルパンを追う。レースの途中まで、ルパンと変わらぬスピードと運転テクニックでピタリとルパンに張り付く。
その時の独白。「ルパン、こうして貴様を追い続けて何年になるだろう。血が、宿命が。貴様がアルセーヌ・ルパンの孫でなかったら、俺が銭形平次の子孫でなかったら……」
かなり説明的だが、カッコイイ台詞。
いかにもルパンを追い続ける宿命を背負ったライバルであり、何やら一筋縄ではいかない感じが漂ってくるではないか。
この回の終わりの方でも、銭形警部は「ルパンが盗んだのはスピードだけだったのか?」「自由であることが、何より得がたい財産というわけだ」などの名台詞があって、この頃は今よりかなり渋いいい役だったのだ。
ルパンのライバルなのだから、これくらいの渋さはぜひ欲しいところ!


ルパンの魅力

囚われた不二子を救うため、そしてルパン抹殺などを企む輩を滅ぼすため、ルパンは敵地ホテル・ミラクルに乗り込む。
勿論そう簡単な手段は使わない。宿命のライバル銭形警部がルパンの後をピッタリついて走っているのだ。
ルパンはレースの真っ最中、大胆な手段で次元と入れ替わる。
そうして「ルパン」はヒダスピードウェイでレースをしながら、同時にホテル・ミラクルに現われ不二子を救うという「ミラクル」を演じる。
ルパンの細工によって、ホテル・ミラクルに大量の水が溢れ出す。そしてそこに投げ込まれた電流によってスコーピオンの一味は壊滅する……。
さらに50億ドルかけて作られたヒダスピードウェイは、ルパン抹殺の目的を果たせなったばかりか、ルパンによって徹底的に破壊されてしまう。
それにしても、スコーピオン、情けないにも程がある。事故に見せようだの派手に殺そうだの、欲を張るから失敗するのだ。
この台詞はミスターX登場ごとに言ってしまうだろう(笑)。

すべてルパンの思い通りにことが進んだと思いきや。
やっぱり裏切る峰不二子。
たった今、ルパンに助けてもらったばかりだというのに……。
銭形と手を組み、自分の逮捕状を無効にする代わりにルパンを売っていたのだった。

ルパンのアリバイを証明するはずだった次元は、ルパンとまったく同じレーサー姿で捕まってしまっており、ルパンがいくらとぼけようとしてもムダだった。
不二子、謎の女ぶり炸裂といったこの第1話である。ルパンは「俺の恋人」だというし、相棒次元は「あの女」呼ばわり。コミッショナーに対して不二子は「ルパンは不死身」と味方のようなことを言うかと思えば、実は初めから銭形警部と組んでいたのだ。
確かにこの時代、アニメを見るような年代に到底受けるとは思えないキャラクター設定である。
だが、それ故にこれだけ時間がたっても色褪せずいつまでも不二子は魅力的だ。
そして、その不二この裏切りを楽しむ余裕のあるルパンも。

不二子に売られ、手錠をかけられはしたものの、あっさり車を身代わりに(笑)銭形警部の元を逃げ出したルパンは、不二子の車の中に突如現われる神出鬼没ぶりを見せつける。
「裏切り者を消しに来たってわけ?」という不二子に対してるパンはこう答えた。
「裏切りは女のアクセサリーのようなものさ」
カッコよすぎる〜っ!(壊)
こんな台詞を言えるほど自信と魅力に溢れたルパンに惹かれないはずはない。
第1話の冒頭で、あまりにもあっさりしたルパンの登場に気抜けしていたわたしだが、見終わった頃にはすっかり旧ルの大ファンになる予感がしていた気がする。

余談だが、この回にのみ「ルパン帝国」という言葉が出てくる。
スコーピオンの商売敵で、大泥棒のルパンが総帥なのだから、当然犯罪組織なのだろう。
原作ではおなじみの設定である。
だが、アニメではあまり組織の影は見えない。時々旧ルでは次元、五右エ門以外の仲間というか手下が出てくる回があるものの、ルパン帝国に言及する回はない。
新ルに至っては、そんな組織はないものと設定されているらしい。
TVSP「ナポレオンの辞書を奪え」では、ルパン一世によって作られたものの、すぐに消滅したことになっている。

世界規模の謎の犯罪組織・ルパン帝国の支配者というルパン像も魅力的ではあるが、やはり組織力に頼らず、己の腕と才覚で大きなヤマを張る少数精鋭のルパンたちの方が個人的には好みである。


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