第2話 魔術師と呼ばれた男


魔性の女

第1話のラストでルパンを警察に売り渡した不二子。
今回も敵か味方か、相変わらずよくわからない魔性の女ぶりをめいいっぱい発揮してくれる。
色っぽさもかなりのものだ。個人的に旧ル不二子の魅力的な話ベスト3をあげるとすれば、今回、第5話そして第9話である。

それにしても、わたしが次元だったら同じように思うだろう。
どうしてルパンは毎回毎回裏切る不二子を助けたりするのかと。
ルパンに忠告したところで聞きゃしないし、だが自分はルパンと離れがたいしと、次元の葛藤というか苛立ちがものすごく分かる気がする。
今回、次元が「現われ方がよくなかった」というだけあって、不二子がルパンのもとに転がり込んできた状況もただごとではない。
炎の中、なぜだかボロボロになって、なかば気を失うようにルパンの元に現われた不二子。
そして明けて朝、朝食を作りつつ口ずさむ歌も不吉な雰囲気だ。
「傷つけて」
この歌、全文引用するのは省略するが、一体どういう意味なのだろう?わけがわからないものの、無性に記憶に残る、忘れがたい歌である。
だが、次元の「嫌な歌だぜ」という気持ちに大いに同感だ。どこか不安を誘う歌詞、メロディー……。
わたしも同じ立場だったらそう呟くに違いない。

次元の不安は的中した。
突然一人の男が、不二子を取り戻しにルパンのアジトに乗り込んできた。
体のどこを狙っても銃類がまったくきかず、指先からは炎を噴出し、その上宙に浮かぶ男。
彼こそが暗黒街の魔術師、パイカルであった。


魔術師パイカル

印象的で個性溢れるゲストキャラが多い旧ルの中でも、パイカルは1,2を争う名キャラクターではないだろうか。
旧ルにおいて、ルパンを苦しめたキャラクターとして、第13話の魔毛狂介と双璧。
片目を隠した細面の顔。白いスーツを着こなし、無口で、クール。そしてどんな武器も効かない無敵の体を持つ男。
宙に浮き、指先から炎を噴出す……暗黒街の魔術師。
不二子やルパンから「坊や」と呼ばれているところから、(目元の皺にも関わらず)まだ若いと考えられるが、その魔術によってルパンに弱音を吐かせたり、不二子を滝につるして拷問するなどという名場面(笑)も演じ、非常にインパクトのあるキャラである。
大して口をきいていないはずなのだが、その存在感は大きい。
「俺が勝つ。世界で一番強い男はひとりだけだ」
クールな無表情の下で、自負心に燃えるパイカルの素顔が窺える台詞だ。

この話には2つのテーマがある。
うち1つはルパンと不二子、不二子とパイカル、そしてルパンとパイカルという男女の駆け引き、戦い、愛情といった人間関係だが、もう1つは、このパイカルの魔術のトリックと、その争奪戦である。
宙に浮いていたのは硬質ガラスの上に乗っていたからだし、指先から炎が出せたのは液体燃料を使った小型火炎放射器というトリックのためだ。
ここまではルパンもすぐにそのトリックを見破るが、残り1つが問題だった。
パイカルの、レッドアイ・ガンランチャーすら受け付けない不死身の肉体の秘密を解かなければ勝ち目はない。
それがわかっているルパンは珍しく弱気に「勝てないよ……」などと呟いたりする。
こんな時のルパンは、まだとても若い感じがする。

パイカルの無敵の体の理由は、「超硬質液体」にあった。
そしてその製法を記したフィルムを、不二子が我が物にしようとしていることから、この回の事件のすべては起こっているのだ。
冷静に考えてみると、パイカルがルパンを襲ったのも、ルパンがパイカルと戦わなくてはならなくなったのも、みんな不二子のせいなのだ。
不二子が色仕掛けでパイカルからフィルムを奪い、パイカルから逃げてルパンのもとに身を寄せる。
それが発端となって、自分のアジトから不二子を奪われたルパンは、不二子のため、そして己の自尊心をかけてパイカルと戦わなくてはならなくなっている。
パイカルと対面すること3度目。
フィルムの謎を解き、パイカルと同じ「超硬質液体」を作り上げ、さにらはその弱点……長い時間効果がもたないということを見抜いた上で、絶妙なタイミングで攻撃をしかけたルパンが勝利する。
パイカルは、不二子を吊るし拷問していたあのエンマの滝の中へ落ちて消えていった。
パイカルと同じ「超硬質液体」で身を守り、パイカルにやられたのとまったく同じ火炎放射器の仕掛けを使って倒す。
やられたらやり返す、ルパンらしい勝利である。



ルパンの魅力

今回の不二子が魅力的だと思うのは、打算だけで動いているようでいて、クールに徹しきれていない、揺れる女心(ふるい表現?笑)のようなものを感じさせるところにある。
勿論彼女の目的は、パイカルの持つ不死身の秘密である。

その為にパイカルに近づき、彼を篭絡してフィルムを手に入れている。そして、間違いなく追ってくるだろうパイカルからフィルムを守るため、ルパンのもとに逃げ込んだ。
ルパンならパイカルから自分を守る防波堤になってくれると思っていたのかもしれない。
また、ルパンの頭脳を利用してフィルムの謎を解かせようともしていたかもしれない。
さらにルパンが破れてしまった時のことを考え、パイカルを自分の魅力で手なずけるのも忘れない。
こう見ると、非常に自分の利益のことだけを考えて二人の男のを手玉に取っているようにも見える。実際はそうするつもりでいたのだろう。
だが、それだけではないような気がするのだ。

打算で近づいたパイカルを、自分でも言っているように本当に愛してしまったのではないだろうか。
不二子のそんな言葉を信じずに、ただパイカルにも思わせぶりをして保身を図っていると見ることも出来るのだが……そうとは言い切れまい。
まだ若かった不二子が、自分で思っているほど冷たい利己的な悪女になり切れず、はからずもパイカルに情を移してしまった。
勿論、ルパンのことも愛している(不二子なりに)……。
二人の男の間で、そして自分の目的と愛情の狭間で揺れる不二子。
その揺らぎが、ルパンをパイカルと戦わせまいとしたり、パイカルにルパンがやって来ることを教えるなど、多少混乱のある行動となって現われてしまったのだ。不二子としては、二人の男を手玉にとってフィルムを手に入れるためにしていたつもりの行動かもしれないが、結局目的のフィルムは灰と化すわけだし…不二子としては失敗なのだ。
不二子は、珍しく人に情かけ利益を追うことに失敗した。そう考えた方が、この話はおもしろいような気がする。

また、不二子がマゾヒスティックな心理からパイカルに惹かれた説もあるようだが、それはなんだか違うような気がする。
そういうシュミには縁がなくてわからないが(笑)、不二子のような性格および行動をする女がマゾだとはとても思えない。
惹かれたのは、やはりパイカルの独特の雰囲気なのではないだろうか。あの孤独、そして魔術のような方法を使って殺し屋をする奇才ぶり……。
この辺の不二子の異性の好みについては別項で改めて考えてみたい。

余談だが、ルパンのタコ嫌いという設定はこの回に描かれている。
ルパンのタコ嫌いにはものすごく共感!わたしもあの吸盤の部分を見ると全身総毛立つ。まさにデビル・フィッシュ。あの姿はまちがいなく悪魔だ(笑)
さすがにわたしはジンマシンまではできないけど(笑)。


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