第11話 7番目の橋が落ちるとき


舞台

この回は、警視庁の銭形が捜査のために「派遣」されていることや、ニュースの際アナウンサーの背後にある地図、鐘のなる街の雰囲気などからして、ヨーロッパの街のように感じられる。
水の都・ヴェネツィア風をイメージしたのかとも考えられるが、現実のヴェネツィアに特に忠実な風景というわけでもない。
また今回の登場人物のボルボ(作中に名前は登場しないが)や、リーサといった名前一つ取ってみても、それほど特定の土地柄を感じさせるものではない。

どこでもない、ただの「ここ」。あるいはここではない「どこか」。
それがものすごく「ルパン」には似合う。と、個人的には思う。
新ルやパースリのように、明確に実在の都市を舞台にした話ももちろん好きではあるが、どうとでも取れる漠然とした、いい意味で曖昧な舞台設定の中でこそ、ルパンたちのような突出したキャラクターは、違和感もなく時代錯誤にもならずに、溶け込んでいけるのではないかと、最近はふと思ったりもする。

まあ、そんなことはどうでもいいか(笑)。この回を見ていて、何となく思ってしまったもので。
とにかくこの回は(というかこの回も)、どことも知れない街に事件が起こるのである。

次々と、街の橋が爆破されていく。そんな事件。
銭形の警備をものともせずに、ついに予告通り5番目の橋が落とされたのである。
これらの犯行は、ルパンの名を騙って行われていた。
だが5番目の橋が落ちた日に、ルパンと次元はようやくこの街に到着していたわけで、濡れ衣もいいところなのである。

「ルパン」の名を汚した者に対しては、(特に原作で)徹底的に厳しい態度を取るルパンだが、このニュースを聞いたとき、そしてテレビ越しに銭形から怒鳴られた時も、自分の名前を騙っているヤツに対しての怒りを表すこともなく、かなり冷静に頭を働かせている。

次元が関心を持って調べていた、街の中央銀行が月に一度行う現金輸送。
そして、橋の爆破事件。この二つから見えてくる事件の模様。
適当に橋を爆破していっているように見えて、実はこの街の中央銀行の現金輸送車が通る道を、1つにしようと試みている、と。
このようにルパンは、たちまちこの犯人の意図を見破るのだ。

素敵〜vv(笑)ルパンはこうでなくっちゃ!!
この回、全体的にとにかくルパンが冷静でとても頭が切れるので、ルパンスキーとしてはひたすら嬉しい。
しかもこの推理を披露している時のルパンは、ジャケットを着ておらず、黒シャツ姿!ウヒ〜(笑)黒シャツフェチの私にはたまらんです、ハイ。

さて、ルパンの考えで行くと、次に爆破されるであろう橋がおのずと見えてくる。
ルパンと次元は、その橋へと変装して赴くことにした。
ちなみにこの時の「行くぜ次元」と言って、ジャケットを肩に掛けるルパンも最高にカッコイイ。

そういうわけで。ルパンは白髪の老人に化けながら、次に犯人が狙う6番目の橋を見張っている。
この老人姿もかなりgood。特にコートが好み。
次元を河にもぐらせて、橋に仕掛けられているであろう爆発物を見つけさせた。
それを確かめると、ルパンはそれが爆発しないよう手を施した後、寒そうにしている次元を再び河に追いやり(笑)、爆発物を元の場所に戻すよう命じる。

この時の二人の力関係具合が、最高にツボ!
自分の推理どおりであるかどうかを次元に確かめさせ(この回の次元ちゃんは徹底して肉体労働役なんですな。笑)、そして次元が寒さに震えているのもお構いナシに(「寒いか?」と尋ねているにも関わらず!)河に突っ込む。
もう〜、暴君ルパンったら、ラブvv(←間違ってます)
次元の「ひでぇや」というボヤきのトーンも、とってもいい感じである。

全体的にこの回のルパンは、誇り高く、次元にはやや強めのリーダーシップを取り、それでいていい具合に脱力していたり、また優しかったりするので、とにかくルパンスキーにはたまらない回かとも思う。


爆破魔

ルパンのお陰で、その夜爆破事件は起きなかった。
ルパンと次元は、船の上で橋を見張りながら夜を明かした模様。
夜が明けた時、次元は服を着替えていたので、無事にシャワーを浴びることが出来たと考えていいのだろうか(笑)。
この時次元が着ているマドロス風(?)の服が、これまた良い。…今回はこんな風に些細なツボが満載だったりする。

さて。
ルパンの予想通り、橋が爆破しなかったことを訝しく思った犯人が、橋の下に現れる。
一見釣り人(しかも餌を魚に取られて釣り糸が切れてしまうような、ドジな釣り人)を装って現れ、橋を警備している警官たちや次元までも騙されるけれども、ルパンだけはその正体をしっかりと見抜いていた(ウフフv)
ルパンの指摘で、切れたはずの浮が不自然に移動していくのを見、ようやく犯人の意図がわかった次元は、素早くその浮の後をつけ、それを拾う人物を突き止める。
爆発物を回収しているその人物こそが、ルパンの名を騙り橋を落としているヤツなのだ。

発見するや、ルパンたちはその人物の後をつける。
ルパンたちが乗っている小型の船が、ちっとも速くなく、次元でなくとも「見失っちゃう。早くしろ〜!」とハラハラしてしまう(笑)
この時も、ルパンがちっとも焦らず冷静だったのが光る。
その犯人(以下ボルボと表記)の姿は、大きな城の中へと消えて行った。
そこが、ボルボの屋敷なのである。
それを見届けたルパンと次元は、二手に分かれてその屋敷の潜入するが、二人ともまんまと檻の中に捕まってしまう。
それもそのはず、すべてはルパンをおびき寄せるための、罠だったのだから。

ボルボは、現金輸送車を襲撃するという自分の計画を、ルパンにやって欲しいと言う。
要は、すべての罪をルパンになすりつけ、現金だけは自分の懐に入れようというわけだ。
当然、ルパンが同意するわけもない。
余談だが、捕まった時の「このルパン一生の不覚」や、この時の「俺を甘く見るんじゃねぇ」などのルパンの台詞が、どこか若い感じがしてかなり好きだったりする。

ボルボも、ルパンがあっさり同意するわけもないということをわかっていたのだろう。
一人の囚われた美少女をルパンの前に連れて来る。
そして、ルパンの目の前で、その少女を回転ノコギリが頭上から落ちてくる仕掛けの椅子に座らせるのだ。(ご丁寧にその前にはわざわざ人形で、そのノコギリの威力を見せつけてみせたりする!)

その少女は、ルパンが言うとおり彼には何の関わりもない人間である。
本当に冷酷な人間であったなら、目の前で無関係な少女が殺されたところで、平然としていられたかもしれない。そんな脅迫は無視して、自分だけ逃げ出してしまえたかもしれない。
だが、人間であるからにはそう割り切れるものではないだろう。やはりルパンもそうではなかった。
ルパンの冷酷さは、自分に敵対する人間には容赦なく発揮されるけれども、常に何に対しても動かされない無感動で無機質な心の持ち主ではないのである。
根本的には、ルパンは残酷な人間ではない。(そうだとはいえ個人的には、ルパンの本質は、無節操に万人に優しい「王子様ルパン」でもないと思っているが)

結局、あわや少女の頭がノコギリに…という瞬間、ルパンはボルボの要求をのむことにしたのである。

ボルボは、わざわざ街の精巧なジオラマを作り(さらには可動式の車まで)、しかも自分はそれを俯瞰する位置に座って、悦に入って自分の計画を明かす。
彼の計画は、輸送車を、ゴースト街と称される、道が細く入り組んだ一角へと導きいれる。そして、その時街中の橋を片っ端から落とす。その混乱の中、輸送車を奪うのである。

……。ホントにもう。何と「無駄に」大掛かりなヤツなんだろう。
たかが。たかがトランク2つ分の現金を奪うだけなのに、街中の橋をぶっ壊し、無関係な人間を大勢殺し……。
しかもそれに喜びすら感じているような偏執狂的なボルボ。
見ているだけでウンザリしてくる。
そんな野暮な計画をルパンが実行するはずもなく。「拳銃一丁でやれるぜ」とあっさり請け合い、彼のやり方でやることを了承させる。
旧ルルパンの名台詞の一つ「イキにやろうぜ、イキによ」が、本当に光る1シーンである。

それにしても。
ボルボは、ルパンの名を騙って彼をおびき出し罠にかけ、現金輸送車を襲わせてその罪をなすりつけようとしているわけだが…
こんなに大きな城のような屋敷に住み、マニアックにもこの街のジオラマ(しかも可動式)を作ったりも出来るほど、金と暇はあり余っているようにも見受けられる。
それなのに、たかだかトランク2つ分の現金のために、一人の罪もない少女を誘拐したり、あのルパンをおびき寄せたり、街中の橋を爆破しようとしたり。
犯罪組織の一員という雰囲気もないし、この辺がボルボの気味の悪いところだ。
マニアックで、残忍で、無駄にコトを大きくして、世の中を騒がせて喜ぶ歪んだ自己顕示欲を持つ愉快犯(しかもルパンにそれ罪をなすりつけ自分は罪から逃れようとしている卑怯さ!)

よくよく考えてみれば日頃のルパンの犯罪も、予告状を出したりするなど愉快犯的側面があることは否定できないのだが、そうであればあるほど、ボルボの無駄な残酷さや手際の悪さと比べ、ルパンの「粋」なやり方が際立ってくる。


リーサ

「7番目の橋が落ちるとき」といえば、クラリスの原型になったとも言われる美少女・リーサが印象的なゲストキャラである。
どうしてボルボが目をつけたのかはわからないが、不運にも(本来無関係であるはずのなに)この事件に巻き込まれ、翻弄される役柄。
最後の最後で、銭形に対して「ルパンさんじゃありません!」と叫ぶシーンを見ると、彼女の芯の強さが感じられる。
…ただ、昔はルパンスキーとして嫉妬しちゃってましたね〜(リーサにもか。爆笑)
だって、ルパンの手からコーヒーを飲ませてもらえるんですよ?しかもあんなに優しい目で見られちゃって!ク〜ッ。
今も、ちょっと羨ましい(まだ?)。
もちろんリーサが「嫌い」なわけでは決してないのだが、個人的にこーゆー儚げな、守ってあげたい系の美少女キャラというのは、論じにくくて困る(笑)。
よって、リーサに関してはこれくらいにしておこう。

作戦決行当日。
実行するルパンと次元は、この上なくリラックスして煙草を吹かしているというのに、ボルボは現金輸送車が次々にポイントを通過していく毎に、声を張り上げる。
無線から聞こえてくるそのボルボの興奮しきった声に対し、次元が冷めた調子で「ひとりで張り切ってやがる」というのを聞くと、思わず毎回笑ってしまう(笑)
ルパンと次元はいざ動き出す段になってもその余裕を失わず、興奮しまくるボルボと比べ、ごく自然に「軽く一仕事」という雰囲気なのがえらくカッコイイ。

ゴースト街に入ってきた輸送車を、行き止まりの風景を描いた絵を使って別の道へと誘導、そこへ次元が拳銃で発砲し、輸送車を襲ったように見せる。
慌てて逃げる輸送車は、ルパンが用意した罠―道が続いているように描かれたこれまたニセの風景―へと突っ込んでいく。
輸送車が絵を突き破るとそこは運河。ルパンが船を用意して、落ちてくるのを待ち構える。
「一丁上がり」と、ルパンはすました調子。
ボルボなんぞには大仕事であっても、ルパンにかかればこのくらい、何てことない仕事なのだろう。
ルパンと次元は、本当に拳銃一丁と、そして大きな絵だけを使って、見事現金輸送車を強奪してみせた。

ボルボとの待ち合わせ場所へ行く時に、次元は「このまま現金を持ってトンズラしよう」というようなことをルパンに持ちかける。
確かに次元の意見ももっともだと思う。
正直、何の義理もない女の子のために、ただ働きすることはないと次元が考えても当然だろう(二人は「泥棒」であり、別に正義の味方ではないのだから)。
しかも取引相手は、まるで信用のならないボルボなのだから、現金を持っていっても証人である少女を返すとは考えにくい。だったらこちらだけがバカ正直に約束を守っても…と。
だがルパンは「俺の言うとおりにすればいいんだよ」と次元を一蹴(素敵v←笑)。
自分の名を騙られ、野暮の骨頂のような爆破事件を起こされ、挙句の果てには無関係な少女まで巻き込まれてしまっている。
ルパンとしては、これっぽっちの現金を持って逃げたところで、気がおさまらなかったのかもしれない。
少女をも救ってこそ、ルパンとしてこの事件のけりをつけたことになると考えていたのかもしれない。

そして、いざ人質と現金の交換という段になっても、やはりボルボは卑劣だった。
リーサと見せかけた人形を木に縛って残して行き、自分は現金と、本物のリーサを連れてボートで逃走。
しかも善良な市民面して銭形を呼び、ルパンを逮捕させてしまう。

だがリーサの「ルパンさんじゃありません!犯人はこの男です」という叫びのお陰で、銭形はルパンに手錠を掛けていたものの一瞬戸惑う。
あまりにも後ろ暗いところの多すぎるボルボは(笑)、なりふり構わず逃げ出した。
次の瞬間、ルパンや銭形の立っていた細い桟橋が、(水中の次元によって)ボルボのモーターボートにつながれていたロープで引っ張られたことによって崩れ(ルパンが次元を水中に待機させておいたということは、こんなことになるだろうということを、予想していたんですね^^)……
そしてかの有名なシーンへと移っていくわけである。

手錠をかけられた姿のまま、ルパンは水上スキーをこなすように巧みに板を乗りこなし、そしてボルボへワルサーP38を向け、撃つ。
この作品中多分一番の盛り上がりであるはずの1シーンが、スローモーションで、しかもBGMも物静かなエンディングテーマの口笛バージョン。
この見せ方、何度見てもつくづくカッコよくて痺れる。ルパンの引き締まった表情も絶品で!
忘れることの出来ない、印象的なシーンである。

野暮な悪党ボルボは、こうして撃たれ水中へと消えて行く。
安心したのもつかの間、操縦者を失ったモーターボートは陸へ乗り上げ、そこで待ち構えていた警官たちが、一斉にルパンを包囲しようとする。
ルパンとリーサは、見つめ合うもののゆっくりと言葉を交わすことすら出来なかった。
「あばよ、リーサちゃん」
ルパンがリーサに言ったのは、ただそれだけであった。だが、二人の間にはきっと言葉はなくとも通い合ったものがあったのではなかったか。
長々とした二人の会話や、大袈裟な別れのシーンや感情過多なアップシーンがなくとも、見ている側には伝わってくるもの・感じるものが確かにある。
やっぱり旧ルの作りは粋である。

次元のモーターボートに乗り、無事に警察から逃げ出せたルパン。
銭形はただ悔しそうに見送るばかりである。
だがこの後、銭形はきっとリーサから今回の事件の真相を聞くことになるだろう。
…そういえば冒頭の5番目の橋の爆発に巻き込まれて腕を怪我していた銭形だが、これだけ動けるところを見るとすぐに回復していたようだ。さすが。

リーサを「いい子だったなぁ」と思い出すルパンに対し、「残ってもいいんだぜ」と次元はルパンをボートから振り落とそうとする。
この軽めの終わり方もいいなぁと、毎回思う。

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