第10話 ニセ札作りを狙え!


ニセ札

この回登場する、かつてニセ札界の女王として君臨したウクライナの銀狐と、「ミクロの指」と呼ばれたイワノフというニセ札つくりの天才の関係が、非常に魅力的。
雪で覆われた風景、そして規則正しい時計の音と相まって、何ともいえない風情を醸し出している。
また、静かに余生を送ろうと望んでいる彼らと、まだまだ若く血気盛んなルパンや男爵との対比が興味深い。
そしてこの回は、ルパンが今後数え切れないくらいに行う銭形警部への変装を披露した、記念すべき1回目である。
冒頭、ルパンは次元と荒っぽい手口で、1台の車を襲い、現金を奪い取る。
突然車の前に飛び出し、ダイナマイトで車をふっとばし、挙句の果てには奪ったトランクの鍵もぶち壊す、という…何となく「雑」な襲い方である。

それもそのはず。今回は、挑戦し甲斐のある盗みや、際どいスリルを楽しむためにやったことではない。
ルパンたちがその車を襲い現金を奪ったのは、自分たちの利益のためではなかった。
ちゃちなニセ札を作り、「素人だけを騙そう」としている、男爵という男に対して、ルパンは反感を持っていたらしく、彼のハナを明かしてやろうと企んだことだったのである。

ルパンはニセ札に対して、「本物以上でなければならない」という信念?というか美学のようなものをもっているらしい。
飛行機で街の上空まで行き、その奪ったニセ札を派手にばら撒く。
ニセ札を作った人、ウクライナ男爵。ばらまいた人、ルパン三世と書かれたその札は、男爵への大胆な挑戦状、そして挑発である。

そしてルパンは、自分自身の手で最高のニセ札を作ろうと、コワルスキー王国へと向かう。
「ミクロの指」イワノフを手に入れるためである。 そんなことをやられた男爵の方は、当然怒り心頭。
ルパンを何とかしようと男爵が考えていると、部下のフリンチは不二子を紹介する。
なんとルパンの元相棒という扱いで(笑)。なぜだか笑ってしまったり。
この回の不二子はいたってクール。
「有利な方へつく」と言い放ち、ルパンがコワルスキー王国へ向かったことを男爵に教え、その妨害を命じられると「まかせて」と余裕たっぷりに了解する。

それはそうと。余談なのだが男爵の服装の派手なこと!(爆)。その派手さは新ルで赤ジャケット、パート3でピンクジャケットを着ることになるルパン以上。
全身赤スーツに、金髪。目が眩みそうな組み合わせである。
服装の派手な色合いでは、旧ルNO.1だろうか?
さて、不二子はさっそくルパンたちの飛行機に追いつき、何といきなり撃墜しようとしてくる。
当然ルパンたちの乗った飛行機は、まっ逆さまに落ちて行く。
やった不二子は、墜落地点で落ちた飛行機の残骸を見ながら、「あっけなさ過ぎたわね…」などと非常にアッサリとした顔つきで言っている。
前回、昔の恋人よりもルパンを選んで、ああした行動をしたとは思えないほどのドライさである。

不二子は、この程度でルパンが死ぬとは、やはり考えてもいなかったのだろうか?
ルパンと次元が、不二子の乗っていた飛行機を奪い「俺も寂しい」とルパンに声をかけられた時、びっくりした顔をしているところを見ると、まさかこれほど二人がピンピンしているとも思わなかったのかもしれないが(^^)
次元は、この時かなり服がボロボロだが、それでも怪我も特になさそう。二人は、不二子に置いてけぼりを食らわせて、再びコワルスキー王国へと向かった。


ウクライナの銀狐

それはそうと、私、銀狐とイワノフの関係、やたらと好きだったりする。
いぶし銀の渋い魅力ある二人(笑)。
単なる「主従関係」とだけ言い切るわけにもいかないほど、二人には深いモノを感じる(何となく、ですが)。
かつてはあったであろう功名心も、欲も、何もかもすべてを超えてしまい、今はただ静かで規則正しい生活を送りたいと願っているように見える二人は、私の中でやけに魅力的な存在である。
銀狐が「ご機嫌いかがですか?」とイワノフの元を訪れるシーンは、短いし、何気ないえがかれ方しかしてないのだがとても好きなシーンの一つ。
引退して以来、二人はいつもこうして暮らしていたんだろうなと思わせる。 そこへやって来るのは、男爵。
銀狐の甥ということなのだが、彼女は肉親だからといって甘い顔をするような人間ではなく、イワノフを借りたいという申し出を、キッパリと断る。
いくら尋ねられても、この城にイワノフはいないと突っぱねていた。

ほぼ同時に、銭形警部もやってくる。
この国にルパンが潜入したので、注意を促しに来たらしいのだが…勿論、これはルパンの変装。
銀狐はそんなことはとっくに見破っており、銭形のフリをしたルパンに対して「そんな名前は知らない」と言ったり、「こそ泥」だと決め付けたりして、さりげなく皮肉(?笑)を言っている。からかっていたのかもしれない。
「お礼に」と、突然銀狐は「銭形」にカラクリ時計から攻撃を仕掛ける。さすがに「銭形」ルパンは身軽に避けるが。

それにしてもルパンの変装を見破り、「坊や」扱いしてみせる銀狐は、さすがの一言。貫禄充分。
若い頃はどれだけ凄腕で、ニセ札を動かしどんな仕事をしていたのか、興味あるところである。

ルパンも、銀狐は一筋縄ではいなかいことに気付いたらしい(^^)。
個人的にはルパンの、銭形変装マスクを取り去り、不敵に「イワノフをお借りしたい」と言う辺りは、非常にカッコイイvと思ったりするのだが。
まあ、その後雪に埋もれた時計塔から滑り落ち、背中を派手にすりむいたのはご愛嬌(笑)。 そしてルパンたちの前に再び登場するのは、不二子。ホテルの、ルパンの部屋に勝手に入り込んでお酒?なんかを飲んでいる。
ついさっき、ルパンの乗った飛行機を撃墜したばかりだというのに(笑)涼しげな顔つきで「勝手にお部屋に入り込んでごめんなさい」なんて言っている。
それ以上に謝ることがあるのでは、とつい言いたくもなるのだが、この悪びれなさが不二子なのだろう。
男爵に見切りをつけたか?今度はルパンと組むつもりらしい。
不二子は、イワノフの居所を教えるから、その代わりルパンたちの仲間に入れて欲しい、という取引を申し込むのだった。

その時言った次元の台詞が最高!!不二子を仲間に入れる状態を表現した、名台詞中の名台詞である。
「爆弾抱えて火事場をウロウロするようなものだ」
た、確かに(笑)。不二子を仲間に入れるというのは、その例え通りのコトかも(笑)。ルパンにとっては、その爆弾抱えたスリルが楽しいのかもしれないが。
爆弾を抱えてハラハラする趣味のない次元は、この仕事からアッサリと降りてしまう。

一方ルパンは、興味を引かれた様子で不二子の申し出を受け入れる。
不二子の情報は、一枚の写真。銀狐の時計塔を写したもの。そこには、ごくごく小さくイワノフが写っていた。
時計の10の部分にある小窓。そこにイワノフはいた。
その情報を得たルパンは、再び銀狐の時計塔へと向かう。


爆破

勝手に探せという銀狐の言葉を受けて、男爵は部下と手分けして城中をイワノフ求めて探し続けていた。
そんな彼らを尻目に、ルパンは時計塔へと向かう。
時計の針にロープを引っ掛けて上がり、針が10のところまで動くのをひたすら待つルパン。もっとちゃんとした防寒着を着てくればいいのに(笑)なんて、余計な心配もしたくなってしまう。それくらい寒そうなシーン。
時計の長針が8にある時にルパンは針の部分に登っていたので、実際待っているのは10分くらいのものなのだが。北国の寒さはハンパではない。 イワノフの写っていた小窓から、どうにか時計台に入り込んだルパンは、時計内部のカラクリを利用してさらに上へ上がる場所を発見し、ついにイワノフの住処にたどり着く。
そこには、本物以上の素晴らしいニセ札が溢れていた。
この札に、本気で感動しているルパンの姿が、とても良い!
ルパンは、「ニセ札」という枠を超えて真に素晴らしいその「作品」の出来栄えを認め、素直に感動・興奮している。
無邪気とすら言えるような、ルパンの「優れたもの」を愛する面が垣間見られる。

イワノフは、ルパンが来ることを分かっていたようで(銀狐から聞いていたのかも)、静かに彼を迎える。
暗い顔のイワノフに対し、ルパンは自分の興奮を隠さず、「身震いするような感動を与えてくれた」とイワノフを口説き落とそうとする。
ルパンの中では、これほどの「芸術」を埋もれさせておくのが勿体なくて仕方なかったのだろう。
その「芸術作品」を世に出し、それで大きな事をしてやろうという、まだまだ若いルパン。
一方、すでにそうしたことに興味をなくして、ただ静かに余生を送りたいと望むイワノフ。
この対比が、つくづくシビレる!

自分を連れ出そうとした人間を、「何人も殺してきました」と、静かに、恫喝する様子もなく淡々と?言ってのけるイワノフには、ひどく迫力がある。
しかし、ルパンはそんなことでは引き下がろうとするはずもなく、銃を突きつけて、イワノフを連れて行こうとする。
が、イワノフの方が一枚上手。
ルパンのいる床を何度も落として(笑)、ルパンを追い払う。落とされても落とされても「また来てやるからな」と諦めないルパンは、何だか子供っぽくて可愛いような。
だが、ルパンとイワノフが会うことは、もう二度となかった。
ルパンを遥か階下へ落としたついでに、仕掛けを動かし、そこにいた男爵たちも一緒に時計塔の外へと放り出すイワノフ。
そのせいで男爵の部下たちに追われるハメになり、ルパンはそのまま時計塔へ来ることができなくなってしまったのだ…。 男爵の部下を殆ど撃退したものの、フリンチだけがルパンに追いすがり、二人は雪原で対峙する。
ルパンは丸腰になってしまったのに対し、フリンチは銃をルパンに向ける…。
そこへ現れたのが不二子。
「プロなら対等でやるべきよ」とフリンチに言い、彼の持っている銃をバラバラに撃ち砕いてしまう。
ルパンの危機を救ってあげたようにも見えるけれども…(というか、個人的趣味ではそう見たいのだけれども^^)
やっぱり二人を戦わせておいて足止めし(しかも車を使えなくしてしまうし!)、イワノフを独り占めにしようとしただけ、と見るのが正しいのかもしれない。

それにしても、相変わらず旧ル不二子のやることはよく分からない。勿論、最終目的はイワノフの作るニセ札の独り占めだったのだろうが。
男爵に味方して、ルパンの妨害をしたかと思うと、ルパンへ先にイワノフの居場所の情報を教えるし……
自分自身が潜入して、先にイワノフを連れ去ろうとは思わなかったのか。
それとも、不二子にとっては男爵もルパンも邪魔者。二組を咬み合わせて、邪魔者を一気に排除してから…と思っていたものか。
何となく要領が悪いような、慎重すぎる?ような気もするが、良いほうに解釈すれば、不二子は所謂「トリックスター」的役割を果たしているわけで。
こんな旧ル不二子も個人的にはかなり好きだったりする(^^)。 一方、男爵だけは、しぶとく時計塔にしがみついて城に残り、ついに銀狐と一緒にいるイワノフを発見、彼を連れ出そうとする。
イワノフは勿論、男爵に同行するはずもない。
さすがの銀狐も男爵に「動くな」と銃を向けられて、双眼鏡?を目に当てたまま二人の様子を見つめているしかない。
が、男爵がイワノフが自分のものにならないのなら、その指をコナゴナに、と言った瞬間、銀狐は持っていた仕掛けのある双眼鏡から、甥である男爵に躊躇なく発砲した。
イワノフを守るために。
その時、男爵も思わず銀狐に発砲。二人は、共に倒れてしまう。

このシーン、撃たれた女主人を見て、初めて声を荒げるイワノフが、またまたとても印象的。彼女も最後までイワノフを気遣っていたのが、さらにとても心に残る。
「ずっと奥様のお傍に」というイワノフに対して、「もういいのです」と静かに優しげに答えるウクライナの銀狐。
甥に撃たれるという最期だったが、唯一心を許しているイワノフに看取られて、少しは幸せだったのではないか。ウクライナの銀狐の表情は穏やかに見えた。 結局、銀狐にせっかく助けられたイワノフだったが、彼も女主人の後を追う。
時計塔に仕掛けられていた爆薬を爆発させてしまうという形で。花に囲まれ横たわる銀狐の姿を見た後、ゆっくり仕掛けを回すイワノフの姿がもの悲しい。
彼にとってはきっと、時計たちやそれに合わせて規則正しい生活を送ること、静かな余生などよりも、ずっとウクライナの銀狐が大切だったのかもしれない。
恋愛というほど激しくもなく生臭くもなく、単なる主従関係と割り切るほどにはドライでもなく。
とても深くて魅力的な二人の関係なのであった。(しみじみ)
さて、ルパンは結局、最後までフリンチと殴り合いの死闘(笑)を繰り広げ、その間に、時計塔ごと、イワノフも銀狐も本物以上の芸術作品であるニセ札も……すべて消え去ってしまっていた。
最後は助けに来たらしい次元に対して、やたらと強がりを言っている場面で終る(^^)。
飽きれつつも一応ルパンの話を聞いてやっている次元が、とにかくツボ。
それにしても次元、車で迎えに来てあげればいいのに、と思ったり(笑)

こうしてルパンは、イワノフも彼の作ったニセ札も手に入れることは出来なかったが、ルパンがあの二人の静かな生活を、直接壊す役割を果たさなくて良かったような気が、個人的にはしている。


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