第32話 ルパンは二度死ぬ


初の「ルパン死す」

最近のテレスペでも多用されてしまったため、いい加減マンネリ感の強くなってしまった「ルパン死す」のネタだが(汗)、この話を最初に見た時は相当なインパクトがあったものだった。
旧ル13話で、一瞬だけルパンが相棒達に対して「魔毛に消された」フリをするが、ここまで長いことルパンが自らの死を演出した話は、この回が初めてなのではないだろうか。
ルパンが死んだ?というシーンが、延々と細かく描かれ、かなりの衝撃度。
さすがに子供だった私でも「主人公は死なないはず(最終回以外は)」「ましてやルパンが死ぬはずはない」と思っていたが、それにしたってどうやって助かっているのか?と、かなりドキドキした記憶がある。(まだ初々しかった私←自分で言うな)
ルパンが死んだと思わされた時の、次元・五右エ門・銭形の態度がとにかく必見。つくづく、ルパンは愛されているな〜と実感してしまう。
新ルの「ルパン対殺し屋」シリーズ?第一弾でもある。
マイアミでドライブ中のルパンと次元を、いつものコトながらパトカーが追いかける。
そこに乗っているのは、お馴染みの銭形。そして、助手席にはナント不二子の姿が!
不二子の姿を発見した時の、次元のうろたえ方や、ルパンとの気楽そうなやり取りは、かなりのツボ(^^)。
どーでもいいことだが「とっつあんの隣にカワイ子ちゃんでも」というルパンに、「当たり〜」と答える次元。やっぱり本当は不二子が「カワイコちゃん」なことは認めてるわけですね(笑)

パトカーに乗ってルパンを追いかけてくる不二子を見れば、次元の台詞ではないけれど、またしても「不二子が(ルパンたちを)売った」としか思えない。ついついそう考えてしまうのは、不二子の普段の行いがあまりにも極悪だからだけど。
だが今回、不二子が何としてでもルパンを捕えようとしたのは、要人暗殺のプロフェッショナル・ピューマが、ルパンの命を狙っていたからなのだった。
そう。不二子が、警察に協力してまでルパン逮捕をしようとしたのは、ルパンの命を守るためだったのだ。愛だわ〜v

ちなみに、不二子はちゃんと制服も与えられているし、他の警官・上司も不二子に対して怪訝な顔をしていない。
どうやら不二子は、「ICPOの甘い罠」の時のように、何かしら警察と取引・協力する術を、持っていると思われる。銭形経由で、結構トップの方へのコネがあるのではないだろうか?

「ルパンのようにトリックを使うヤツには正攻法が一番」というような台詞を銭形は言い、言葉通りルパンを車のバリケードで囲むという正攻法で捕えようとするが、不二子はそんな銭形にちょっと冷めた調子。
案外よく裏取引をする二人だが、それほど仲が良い様子もなく、何となく面白い。
銭形は、ルパン逮捕のためならば不二子と取引もするだろうが、本来は犯罪者である彼女と手を組みたいはずもないし、また不二子の方も、銭形と手を組む時は何かしら裏がある時で、基本的に銭形は敵の立場であるわけだから、そんなに好感を持ち合っていなくて当然か。
この回に限っては、銭形は「ルパン逮捕」という宿願を果たすことよりも、やや「ルパンの命をピューマから守る」という方に重きを置いているようで、ルパンの愛され方がわかろうと言うもの(笑)

警察の車に囲まれ、追いつめられたかに見えたルパンだが、相変わらずの余裕ぶり。
不二子への「だって、愛しちゃってるンだも〜〜ん」という台詞は、山田節炸裂の名調子で、私は聞くたび思わずヘラヘラと顔をニヤつかせてしまう(笑)
ルパンならずとも、こんな不二子の行動を見れば、ルパンを愛しているのだと思うだろうv
が、不二子は相変わらず素直に認めようとしない。端から見ると、かなりのイチャつきっぷりで(笑)見ていて微笑ましいほど。

銭形はそんな二人の間に割って入り、ルパンの腕に手錠を掛ける。
だが、正攻法にはやはりトリック使いの方が有利なのか(笑)、ルパンはお約束ともいえる「偽の腕」で手錠をするりとかわし、車に仕込んであった脱出装置で、次元と共に空へと逃げていく。
警察の中へ逃げ込んで、命を守ってもらおうなどという気は、ルパンにはさらさらないのであった。

ちなみに、空へ逃げた二人をヘリコプターで回収したのは、五右エ門。
この回の五右エ門は、ヘリコプターやモーターボートを運転するという、比較的レアな姿を披露してくれるので、地味ながらも五右エ門マニアには必見の回か。


ピューマ

さて、不二子や銭形が大騒ぎするほどの殺し屋・ピューマなのだが、さすがになかなか手強そうな相手。
ルパンの車には、暗黒街の情報をインプットしてある(らしい)コンピューターが設置されており(この時代としては、かなりすごいかも)、それによると、ピューマは1960年代のアフリカや南米で活動、要人暗殺のプロフェッショナルとして名を成した殺し屋。
それ以外、ピューマの顔さえも、ハッキリとはわからない得体の知れない人物なのであった。
ルパンも、彼については伝え聞いていたらしく、一度手合わせしたいと思っていた、などと言っている。

海沿いのアジトでピューマを迎え撃とうとするルパン。次元に「お前だったらどこから狙う?」と聞くところが、何だか無性にツボだったりする(何でだろう?笑)
時々こうして、ルパンが次元に「お前ならどうする?」的質問をするのは、次元のプロフェッショナルぶりを信頼しているからなんだろうとか、相棒との会話を 通じて考えをまとめたり、ひらめきを得たり、一人で企みを巡らせたり(笑)しているのだろう、などなど私の妄想が刺激されるからなのかもしれない。

そんなことはさておき。夜になると、ピューマの方から仕掛けてくる。
船の上から、窓越しに立つルパンを狙い、一発で仕留めて見せた。
次元の言っていた通り、夜になれば明るい部屋を狙うことなどプロには容易いのかもしれない。
だが勿論、そうカンタンにやられてしまうようなルパンではなく、窓辺に人形を立たせて、ピューマの出方を伺っていたのだ。
次元はアジトからマシンガンで反撃、同時に五右エ門はモーターボートで、ピューマの船へと乗り込んだ。
しかし、五右エ門が来ることを予測していたものか?、船には爆薬が仕掛けられており、すでにピューマは逃げ出した後。危うく五右エ門も爆発に巻き込まれるところであった。

次の日、一転してピューマは朝っぱらからガンガンに攻撃してくる。ピューマの居場所がわからず、防戦一方のルパン。
チラリとでもルパンが姿を見せようものなら、どこからともなく銃弾の雨霰。
お陰で次元と五右エ門たちと同じテーブルで食事も取れず、部屋の中からこっそりと「ワインくれよ」と手を伸ばさなくてはならない有様。
そんな風に、チラッと伸ばされたルパンの手にまで、容赦なくピューマの銃弾は襲い掛かり、落ち着かないことこの上ない。
というか、いくら「ルパン以外を狙わない」とわかったからって、次元も五右エ門も外で呑気に食事なんぞしなくたっていいのに(笑)。
そうやって、相手に顔すら見せずに付け狙うピューマをおびき出すべく、挑発しているのかもしれないが。流れ弾でも当たったらどーするつもりなんだ。

またしても余談だが、こんな状況でも、ワインを飲みたがるルパンが素敵(やっぱり西洋の習慣が身についているせいか、朝からでもワインなんですねv)
そして!何よりこの時次元が食べている肉!!
これぞ「マンガの肉」そのもの(爆笑)!子供の頃から、やたらと美味しそうに見える「マンガの肉」を食べている次元が、妙に羨ましい。

さて。コソコソとしているのに嫌気が差したルパンは、突然葬儀屋に電話をして自分の棺桶と墓石を注文し始める。
そして、正面からピューマと戦うと決めたルパンは、一人で飛び出していくのだった。
まるで死を覚悟しているのかようなルパン。
誇り高い彼にしてみれば、コソコソ隠れて命を長引かせることなど、己の美学に反することなのだろう。
(勿論、ルパンが「当たって砕けろ」という勢いだけの単細胞でないことは、皆様ご承知の通りなのだけどv)
銃のホルスターをかけ、ジャケットを羽織るシーンが、とにかくカッコイイ(惚)。「射殺命令!!」でも、ホルスターを身につけるルパンはカッコ良かったしv(←シャツ姿好き)
箪笥の中には、もう一着赤ジャケがあった他、いろいろな色のジャケットがあり、ルパンのワードローブの一部が見られて、これまた至福。
…!ああ…また本筋から反れてしまった。スンマセン。

ルパンが一人ピューマを探し飛び出して行くと、どこからともなくピューマの声が聞こえてくる。
彼は、暗殺の依頼者すらも生かしておかない殺し屋で、徹底的に顔を隠したまま…
何と、土の中から現れて(!)ルパンに銃弾を浴びせるのであった。
体中に弾を受け、ルパンは海の中へと落ちていく……。

それにしてもなぜそんなにピューマは顔を見られるのを嫌がるのか。殺し屋の顔が割れていないほうが、当然仕事はしやすいのだろうという気はするけれど。
依頼人まで生かしては置かないような殺し屋、いくら確実性があるからと言って、よく仕事を頼む人間がいるものだ。
これから殺す人間からも、執拗に姿を隠すピューマは、どこか不気味であり、また病的に神経質で用心深く、誰も信頼できぬ性分を顕にしているようである。

この時点では、実はまだルパンは無事だと思っていた私。
だが、次のシーンで次元と五右エ門がルパンを必死に探しにやって来て、海の中からルパンを引き上げて見ると…
ルパンは死んでいた。真っ青な顔をして…まるで動かぬルパン。かなりドキッとするシーンである。

医者を呼んでも、まるで手の施しようがないとサジを投げられてしまう。弾がルパンの心臓を貫通しているというのだ!
そんな折、葬儀屋が棺桶を運んでくる。
ルパンが注文していた棺桶。その中に、ルパンその人を入れねばならないのだ。
なぜならルパンは死んだのだから……。棺桶を見てその事実を突きつけられた相棒二人は、狂ったように外へ飛び出し、ピューマを求めて荒れ狂う。

泣きながら街灯を撃ち抜き、あるいは街路樹を切り倒す。
号泣。まさに号泣の男泣き。
なりふり構わず泣き叫ぶその姿は、ルパンへの気持ちがこれでもかと表されていて、何度見てもグッと来てしまう。
旧ル13話で、ルパンが消えたと思った時、次元は同じように泣いたものだが、当時五右エ門は一見冷静だった。
その胸のうちには「自分がルパンの仇をとる」という決意があっただろうし、当然悲しんでもいたのだろうが、表面的には乱れることなく次元に「泣くな」と言っていた五右エ門。
だが、やはり付き合いが長くなり、ルパンとの関係ももっと深くなっていたせいか、はたまた五右エ門自身が素直に感情を表せる人間になってきていたためか、この回では五右エ門も次元と同様に涙を流す。
それが、とても印象的である。
この二人の様子を、ピューマが人影からこっそりと笑いながら見ているのが、憎ッたらしい。


なあんちゃって

そこへ駆けつけてくる銭形と不二子(まだ警察にいるらしい)。
ルパンが死んだということを聞いても、当然銭形は信じようとはしない。「私に対する冒涜です!」とまで言い切る。
どうせまたルパンのトリックに違いないと決め付け、何が飛び出してくるか、「いざお手並み拝見」と張り切って迎え撃とうしていた銭形。
無邪気なまでにルパンの死を信じず、「御用だ」と棺桶の周りで言っている銭形の様子にも、思わず涙を誘われてしまう。
だが、そこにはいつまでたってもピクリとも動かないルパンが横たわっているばかり。
ルパンが本当に死んだのかと、ようやく気付いた銭形は、次元たちと同じように男泣きに泣く。
「お前は俺の生き甲斐だった。いや、最愛の友だった!」
ルパンが生きている限りは、決して聞けないだろう銭形の本心が、またしても胸に響く。

次元たちだけでなく、なんと銭形までピューマはどこだと拳銃を振りかざして出て行ってしまう。
「みんなクレイジーだ!」と地元の警察の人間は叫ぶが、ホント、ご尤も(笑)。
その間、一緒に来ていた不二子はといえば、葬儀屋に何やら耳打ちをされていた。銭形がワーワー言っているその脇で、さり気な〜く伏線が張られていたわけである。

警官にあるまじき暴走をしたためか、銭形も次元たちと同じ留置所に入れられる。
そこで銭形は、次元に食って掛かる。「お前らそれでもルパンの相棒か!」などと。
ルパンに死なれて辛いのは、次元も五右エ門も同様なのに。銭形の言葉はちょっとあんまりという気もするけれども、それくらい銭形の悲しみと絶望が強く、次元たちの思いにまで気がまわらないほど、彼自身の感情で手一杯の状態だったのだろう。
次元を責める以外、その時の気持ちを誰にどうぶつけていいのか、銭形は分からなかったのだろう。
また、次元が責められるままになっているのも、胸が痛む。
ルパンに何もしてやれなかった、助けてやれなかったと、忸怩たる思いを抱えて、己をも責めていたであろう次元は、銭形になされるがままになっていた。
あああ、ルパンよ、なんと罪な男だ(笑)

そしていよいよルパンの葬儀。
ここへ来て、幼かった私はハラハラし始めた。「えっ、地中に埋めちゃうの?!」と。どうやって助かったことになるのか、気が気でなかった。
さすがに用心深いピューマも、土の中へと葬り去られたルパンを見て、ようやく彼の死を信じたらしい。
参列していた喪服姿の不二子が「ルパン、安心なさいね。すべてわかっているわ」という台詞が、またとても良い。
不二子にだけは本当のことを明かし、後を託していたルパン。普段裏切り続ける不二子だが、こういう面ではとても深く信頼しているのだろう。
それにしても、敵を欺くにはまず味方からとはいえ、次元と五右エ門の気持ちを考えると、彼らにナイショにしていたのはあまりにも水臭いという気がしてしまう(笑)

ルパンは勿論死んでいなかった。
弾は防弾チョッキで防ぎ、人工皮膚?で本当に撃たれた身体のように見せかけ、そして何と「仮死剤」を飲んで死んだフリをしていたのだ。
葬儀屋も一枚噛んでおり、その協力のもと、己の死を演出していたのである。
「ルパン三世ここに眠る。峰不二子への愛とともに。なあんちゃって」と墓石に刻まれていた通り(ルパンに「なんちゃって」と刻むつもりはなかったが。笑)、まさに「なぁんちゃって」の死だったのだ。
それにしても、ルパンはつくづく「生か死か」の瀬戸際で生きているのだと感じる。
この作戦に当然自信はあったのだろうが、撃たれたふりをして海へ落ち、仮死薬なんて得体の知れないものを飲み、地の底に葬られるなんて、想像しただけでも私なら恐ろしい。
どこかで一つでも手違いがあれば、本当に死んでしまうのに。
コソコソ隠れて長生きするよりも、トリックを使い一か八かに賭けることを選ぶのは、いかにもルパンらしいやり方・生き様である。

留置所から相棒を取り返し、生きていたことを明かすルパン。
この時の二人の驚きようはスゴイ(笑)。本当に心底ルパンは死んだと信じてしまっていたのだろう。お気の毒。
次元の「何で生き返りやがったんだ!」という言い方が何とも好き。ルパンの生還はとても嬉しくホッとしたはずだけど、ホッとしたせいでとにかく腹が立ってどうしようもなかったんだろうな、という感じが伝わってくる。
それにしてもまあ、五右エ門でなくとも「斬る」と言いたくなるというものだ。よくも騙してくれた、と。あんなに悲しみ苦しんだ気持ちをどうしてくれると言いたいだろう(笑)
そんな怒りをぶつけられるのも、生きていてくれたからこそだと、嬉しくもあるだろうが。

ピューマの使っていたボートから、彼の居場所を見つけ出したルパンは、彼の元へと乗り込む。ルパンの手には、火のついたダイナマイト…。
死んだはずのルパン登場に怯えたようなピューマ。ルパンは彼に「ゆっくりお休み。ルパンの愛とともに」と皮肉に優しげにも聞こえる声で言い、それを爆発させる。
一人爆発から脱出し、モーターボートを走らせるルパンの横顔は、シビアでクール。いつものルパンとは違う一面のようにも見える。
ルパンは、自分の命を狙った人間に対しては、徹底的に容赦なく、ルパンらしいやり方で確実に報いる。
ルパンの、こんな面も非常に魅力的だと思う。


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