第33話 オリオンの王冠は誰のもの


隠れた名作

気のせいか、ファンの間であまり話題に上ることの少ないように思われる作品なのだが…
最近になって、個人的には、地味だけどかなり良作の一つのような気がしている。(絵だけちょっと残念気味)

決して派手なトリックが使われていたり、キャラクターの劇的なエピソードがあったりするわけではなく、あまりにもまっとうに、ルパンたちの「仕事」の様子を描いたものなのだが、それが最近たまらなく好きだったりする。
不二子が、ルパンにとってライバルであり、不確定因子のトラブルメーカーであり、また時に協力する味方のような存在になったりするあたりが、特に良い。
それに、次元と五右エ門が単独で、それぞれに敵の中へ潜り込んでおり、敵を巧みに操る辺りも見所の一つかと思う。

今回のターゲットは、中東のある国から盗み出された「オリオンの王冠」。
それを盗み出したのは、盗賊であるジャガーという男。
彼は、ルパンのようにスリルと挑戦を求めて盗みをしているわけではなく、盗んだものを売りさばいて生計を立てる?タイプの泥棒らしい。(そっちがフツウなのかもしれないが。^^)
ジャガーは「オリオンの王冠」を本物だと証明するために、競りに参加する人々の前で、裏世界の宝石鑑定人を呼び調べさせる。
鑑定人が本物だと証明し、さらには昔からの得意先であるらしい、竜巻という日本人が太鼓判を押したお陰で、本物だと証明でき、競りが始まるのだが…

ジャガー一味に次元が、竜巻一味の中には五右エ門が、それぞれ用心棒として入り込んでいる。
ルパンは宝石鑑定人に成りすまし、不二子はルパンたちとは別に、競りに参加しているというちょっと複雑な状況。
そんな中、ルパン扮する宝石鑑定人が、竜巻に失礼なことを言ったとか言わないとか、そんな些細なきっかけだったのだが(笑)、見せしめに宝石鑑定人を痛めつける場面がある。
その時「やれ」と指名されたのが、次元「キラー」と、五右エ門「スミレ」なのだ。
次元と五右エ門が、思いきりルパンをひねくり回したり、水槽に顔をつけたりする場面は必見なのだが、それより何より!
次元のコードネーム(?)キラーはいいとしても、五右エ門、なぜにスミレ?(爆笑)
新ルDVDBOXの解説によると、五右エ門は「新入り」と呼ばれているという話なのだが、何度聞きなおしても、どう聞きなおしても「スミレ」と聞こえてしまう!!
ソラミミストなのは分かってはいるのだけど(笑)、スミレだなんて相性がついてたら楽しかったのになぁと考えて、無駄にニヤニヤしてしまうポイントでうる。

それはさておき。宝石鑑定人(ルパン)からみの、こんな些細なトラブルはあったものの、どうにか競りが開始される。
競りは、殆ど不二子と竜巻の一騎打ちである。どんどん値を吊り上げる不二子。竜巻は意地になって自分の持ち合わせよりも多額の競り値250万ドルをつけてしまう。
それを見て不二子は密かに笑った。彼女の目的は、王冠を競り落とすことではなく、競り値を引き上げることであったらしい。
結局、王冠を落としたのは竜巻。
しかし、不二子のせいで値を吊り上げすぎ、現金が足りなくなってしまったため、それを用意する間、ジャガーから竜巻への王冠の引渡しがが延期されることになってしまったのだった。


キツネとタヌキ

本物の宝石鑑定人の家へ戻り、彼を解放しようとしていたルパンの元へ、その不二子がやって来る。
どうやら敵情視察といったご様子。
不二子は、自分が競りに参加して値を釣り上げ、王冠だけでなくその現金の方まで奪うつもりなのだという。
ルパンはこっそりと「女ってモンは際限なく欲張りなんだから」と呟くが…不二子は特別欲張りって気もするんですけど(笑)。
一方不二子のそうした行動のお陰で、ルパンたちの当初の予定は狂ってしまっていた。
ルパンは、王冠が日本へ運び出される船で王冠を盗む段取りをつけていたらしいのだが、取引が伸びるなどの変更があったため、用心深い竜巻は同じ輸送手段を使わなくなってしまうのだ。
それをシッカリと見通している不二子。
ルパンの計画を狂わせることも、不二子の予定のうちに入っていたとしたら、オミゴトとしかいいようがない。
ここまでは、たかが競りに参加しただけなのに!さすが女ルパン、といったところである。

ルパンも不二子も、お互いを出し抜こうとしながらも、表面的には「愛してる」とか「私も好きよ」などと甘い言葉を掛け合ったりする。
ルパン曰く、キツネとタヌキの化かし合い。言い得て妙である(^^)。しかもちょっと楽しそう。
「ライバルを愛しちゃうなんて」とルパンが独り言を言っている通り、今回の不二子は単独で、ルパンたちを利用しつつ巧妙に動き回っており、まさに「ライバル」という言葉に相応しい。
宝石鑑定人の次は、床屋に変装し、次元や五右エ門と連絡を取るルパン。
次元が「ヒゲをあたってくれ」と言いつつやって来て、ルパンがニコやかに対応しつつも、前日痛めつけてくれた「お礼」にと、次元に乱暴にアワをつけて剃刀を向けるシーンは見もの(笑)。
しかし、次元の方も好き好んでルパンを痛めつけたわけではなく、ああしなければ次元自身が疑われる立場だったのだ。実際、次元には見張りがついていた。
次元から、ジャガーとその腹心のブラックキャットの様子を聞きだすルパン。

状況は五右エ門の方も同じである。新入りの哀しさで(^^;、釣りをしていても五右エ門を常に見張っている人間がいる。
その見張りに気付かれないよう、ルパンは釣り糸を引っ張って五右エ門を池に引っ張り込み、水の中で足の裏をくすぐったりする。
コンタクトの取り方もお茶目なんだから(笑)
五右エ門からも竜巻の様子を聞きだすと、ルパンは今夜の取引現場を襲い、王冠を奪うことに決めたようだった。
その夜屋敷の中で、無事ジャガーと竜巻の取引が完了しようとしていた、その時。突然、銭形警部率いる警官隊が現れた。
「手入れだ」と言って慌てるジャガーたち。警官隊と派手に打ち合いが始まる。
それ以上に慌てたのは、屋敷に侵入しようと、壁に張り付いていたルパンだっただろう。
次元が警官隊のサーチライトを撃ち抜いたのは、さりげないルパンへのサポートだったような気がするが、それでもルパンは銭形に見つかり、危うく警官隊から撃たれそうになってしまう。

そんなルパンを助けたのは、不二子だった。
「いつも助けてもらっているお礼」なんて、わりと可愛いことを言う不二子。
しかし、銭形にこの取引を密告していたのは、不二子だったのだ。銭形がやって来るこのドサクサに、王冠と現金を戴くつもりだったらしい。
またしても、結果的にルパンの計画を引っ掻き回すのは不二子なのだった。
が、急遽ルパンと不二子は手を組むことに。だが、すかさず「さっき助けてあげたから」と、分け前を7:3と主張するのはさすが不二子といったところ。お礼じゃなかったの?(笑)。

銃撃戦のドサクサで、王冠と現金を盗む計画は、しかし失敗してしまった。
ルパンはジャガーの義手に仕込んである針から、結果的に身を守ることになった20万ドルの札束1つを懐に入れているところで見つかってしまい、それ以外のものは手に入れられずじまいだった…


混戦

この話の面白いところは、ルパンの計画通りになかなか進まず、また、一つの出来事が連鎖的に次の展開へ結びついているところ。
不二子が競り値を引き上げたせいで、王冠の輸送手段が変わってしまったり、不二子が銭形に密告したせいでルパンが無事に王冠を盗み出せず、そして今度はその時ルパンが懐に入れてしまった20万ドルのせいで、また新たな展開を見るのである。
取引の最中に、20万ドルの現金がなくなったせいで、ジャガーと竜巻の間に亀裂が生じる。
ジャガーの方は、なくなった分も含めて250万ドル払えと要求し、一方竜巻の方は取引はすでに終了していたのだから、金の管理はジャガー側の責任だとしてさらに20万ドルを払うことを拒否するのだ。

ルパンはそこに目をつけ、次元と五右エ門に指示を出す。
ちなみに、ルパン・次元・五右エ門がこの情報を交換しあったのは、例の床屋である。
顔を泡だらけにしながら喋る次元と五右エ門は、かなり可愛い(^^)。
ルパンが出した指示は、次のようなものだった。
まず次元と五右エ門はジャガー、竜巻に、表面的に仲直りをし、もう一度取引をするように勧める。
そしてその上で、それぞれに偽物を相手に掴ませればいいと、進言するのだ。「あんなヤツには偽物(偽札)で充分だ」と。
ルパンは、互いに偽物を用意させ、それを取引の途中で暴露し、ジャガーと竜巻が互いに争っている間に、ガラ空きになったそれぞれのアジトから、本物の王冠と札束を盗むつもりなのだった。
が、ルパンはその時意味ありげに店に入って来ていた、一匹の子犬に気付かない…!

ルパンに言われた通りジャガーと竜巻に話を持ちかける次元と五右エ門。
「一発ぶっぱなしますから」などと次元が敬語を使う、というのも珍しいのだが、言葉巧みに竜巻を説得する五右エ門の姿もなかなかレア。
二人ともさすがルパンの相棒を長年務めるだけあって、本当は演技も上手いし言葉も巧みなのだ。

竜巻とジャガーは、見事説得され、ルパンの思惑通りそれぞれ偽王冠と偽札を用意して、再度取引に臨むことになったのだった。
さて、取引現場では表面的に何事もなく、王冠と現金の受け渡しが終ろうとしていた。
が、そこにルパン扮する宝石鑑定人が現れ、王冠と札束が偽物であることを暴露すると、ジャガー一味と竜巻一味はルパンの計画通りに戦いを始める。

暗闇の大混戦の中、ルパンはさっさと本物の王冠と札束のある場所へと向かう。
この時、一応まだ一味に入っているフリをしなくてはいけなかったからか、次元と五右エ門もそれぞれに敵と戦うのだが、特に次元の肉弾戦が見られるのが嬉しい。
次元は銃の腕だけでなく、結構喧嘩の腕っ節も強くて、カッコイイ(旧ル8話でも強さを見せてましたよね^^)。

こんな具合に、すべてルパンの計画通りかと思いきや。
ルパンが向かった先に、すでに本物の王冠も、札束も、なくなっていた。
子犬に盗聴器を仕掛け、床屋でのルパンたちの会話をすべて聞いていた不二子に、奪われた後だったのだ。彼女にまんまと出し抜かれてしまう結果となって……。

今回は不二子の圧勝に終るのかと見えたが、この話、そう簡単には終らない。
ジャガーと竜巻一味を一網打尽に逮捕させようと、ルパンは予め銭形に取引現場を教えていたのだ。そういう意味では、ルパンも抜かりなく、不二子に負けてはいない。
そのため現場へやって来た銭形に、すべてを手に入れて逃げようとしていた不二子は姿を見られてしまう。
「不二子ある所にルパンあり」と信じている銭形は、不二子のボートを追い、転覆させるという荒々しい手段に出る。
ルパンが用意していたのか?、ルパンに見せかけた爆弾付人形のせいで、銭形は撃退したものの。
現金も、王冠もすべて海の底に沈んでしまったのだった。

不二子の元へやって来て、諦めないさいよというルパンに対し、不二子は頑として諦めず、海に潜っていくガッツを見せる。不二子の欲深さの本領発揮である(笑)。諦めの悪い不二子も結構可愛くて好きだったりする。

結局、王冠は、不二子が連れていた子犬が頭に乗せたまま泳いでいるシーンで終る。
現金は多分、見つからないだろうけれども、さて、犬の頭から王冠が落ちてしまう前に、この犬を最初に発見するのは誰になるのだろうか(^^)。


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