第48話 非常ベルにルパンは笑う


音楽談義

この話は小粒ながらもよく出来ていて、しかも随所に「ちょっとした名場面」が垣間見られるので、かなり気に入っている。
何といっても、盗みの場面を丁寧にえがいているところが、ルパンの醍醐味の一つなのではないか、と思う。

何といっても冒頭の名場面は、ルパン・次元・五右エ門がカーラジオの音楽を巡って争うシーンであろう。
ルパンはロック派。
アメリカに来ているせいか、はたまたもともとロックが好きだったのか、やけに「本場のロックはイカス!フィーバーフィーバー!」とノリノリのご様子。
まあ、「フィーバー」という言葉は今となってはかなりの死語だが(笑)。
次元はといえば、クラシック派。「ロックはガキの音楽」と言い放ち、クラシックの局へ変えてしまう。
そして案の定、五右エ門は演歌派。
争う二人からリモコンを取り上げて「歌は演歌。それしかない」と言い、問答無用で演歌が流れている局に合わせてしまう。
カーステレオから流れる都はるみの歌声…。
それを聞く満足そうな五右エ門の笑顔が印象的。それを呆れ顔で見ているルパンと次元も要チェック。
昔から五右エ門はDJファンだし、TVはあまり見そうもない。ラジオでいつも演歌を聞いているのだろう。何だかやけに古風で五右エ門らしい。

ところで余談だが、次元はクラシックファンの時と、演歌ファンと言われている時がある。
単なる気まぐれか、間違いか、それとも時期によって変わっていったのか。
この辺のことは、いずれ当サイトCkaracter考察、次元嗜好編で取り上げ考えているので、興味のある方はどうぞ。

こんなことをしながら車を飛ばす3人の元に、銭形がパトカーで追ってくる。
ルパンは「浪花節さんのお出ましだ」と余裕をかましながら逃げていく。
その日ケンタッキーダービーが行われていたため、物凄い渋滞に巻き込まれてしまう。が、勿論すべてルパンの計画のうちだ(さすがv)。
ルパンはあらかじめ、署で居眠り中の銭形の元へ電話を入れ、ケンタッキーダービーのやっている競馬場までおびき寄せたのだ。

競馬場に逃げ込まれ、ルパンたちを見失う銭形。
そこで彼が見つけたものは、ルパンたちではなく、馬の尻尾に結ばれた大胆不敵なルパンの予告状であった。
「本日ダービーの売上金、残らずちょうだい。ルパン三世」。カッコイイ〜vv

その頃、不二子はメトロポリタン銀行に現れ、そこの地下金庫に宝石を預かってもらう段取りを整えていた。
メトロポリタン銀行は、ダービーの売上金が運び込まれる銀行である。
今回の不二子は、途中で裏切ることもなく、最後までしっかりルパンと手を組んでいる。
頭取に「いい客だ」という印象をたっぷり与えた後、「後ほど、秘書に運ばせますので」と言いいったん銀行を去る不二子。
…後で一緒に現れるのは、ご承知の通り五右エ門である。「秘書」って五右エ門のことだったのだ。なんか無性にツボ。
これで、銀行への潜入する道が開けたわけだ。

ところでこの時、不二子はピシッとした和服姿で決めている。
今回の不二子の役どころは、(たぶん)アメリカで成功し、明日帰る前に父母に高価な宝石のおみやげを買った、裕福な日本の女性といったところらしい。
だからそれっぽい雰囲気を出すために和服にしたのか、それとも後から「秘書」としてやって来る五右エ門の着物姿が異様に映らないように、不二子も和服にしたのか。(五右エ門に洋装させてもいいわけだが)
妄想しはじめるとなかなか興味深い。


潜入

さて、ルパンに盗むと予告されたダービーの売上金は、厳重な警備の元、メトロポリタン銀行に運ばれていく。
その途中。売上金のつまれた車を、船に乗り橋の下で待ち構えていたルパンたち。
巨大な磁石で引き付け、輸送車を強引に止めて、船を全速力で走らせる。するとなんと橋はその磁力に耐え切れず壊れ、ルパンたちは橋ごと車を強奪することに。大胆な方法!
このシーンでは、五右エ門が大いに活躍する。
船を操縦していたかと思えば、お次は盗んだ車を斬る。
が、そこから現れたのは、銭形率いる警官隊であった。
現金はその車に最初から積まれておらず、本物は下水道を使って銀行へ運ばれていたのだった。

警官に囲まれてしまい、ルパンたちは川へ飛び込んで逃げる。
そこへ遠慮なく銃が撃ちこまれ、やがて川面には真っ赤な血が浮かび上がった……。
勿論、ルパンたちがこんなにあっさりやられてしまうはずもなく、これはすべてルパンの計画なのだ。
そう、この現金輸送車を襲って失敗したことさえも。
川に逃げ込んだルパンたちは、あらかじめ用意しておいた血のりを撒き、さらに自分たちに似せた人形を沈めておく。
こうして、銭形の目を川に釘付けにしておき、そのスキにメトロポリタン銀行に運び込まれたダービー売上金をいただこうという寸法なのだ。

川から逃れたルパンたちは、早速行動開始する。
荷物を預ける段取りをつけておいた不二子と、その秘書として(←なんだかやけにウケる。笑)五右エ門がメトロポリタン銀行へ赴く。
かなり大きな箱を台車に載せて。
支配人は、不二子のことをすっかり上客だと思い込んでおり、丁重にその荷物を地下金庫に預かるのであった。
その箱の中には、ルパンと次元が潜んでいるとも知らずに……。

今回の作戦で、ルパンはかなり銭形を意識していると思われる。
銭形をわざわざ競馬場におびき寄せて予告状を出したり、彼の目を銀行から逸らすために敢えて囮だと気付いているニセの現金輸送車を襲い、撃たれたかに見せかけているのだから。
ルパンがそうするだけあって、今回の銭形はなかなかのしぶとさを見せる。
ルパンたちを見つけようと川をさらい続けるのだが、その途中「ルパンのことだ、何を仕出かすかわからん」と言い、銀行へ向かう。
この辺の野生の勘はさすが。

だが、銀行では、頭取によってその警備の厳重さを見せ付けられる。
地下金庫の床に仕掛けられた非常ベルは、虫1匹にも反応するほどの性能。
金庫の出入り口の扉は、タイムロック式になっており、決められた時間にならなければ支配人ですら開けることは出来ないのだという。
翌日の午前7時(不二子が荷物を引き取りに来る時間)に合わせてあるため、それまでは文字通り虫1匹出入りできないことになっている。
そう支配人に説明され少しは安心したのか、銭形は川でのルパン捜索へと戻っていった。

その警備も今からルパンたちが入り込むことを想定してのこと。
荷物のフリをしてすでに入り込んでいるルパンと次元は、宝石箱から顔を出し、さっそく現金を盗みにかかるのであった。

ルパンと次元が、高性能を誇る非常ベルが仕掛けられた床に決して触れないように、大量の現金を盗んでいく過程、そしてその合間に銭形が繰り返しルパンたちの動向に気付きかけること。
それらがあいまって、なかなかスリリングな展開でかなり面白い。
何より、ルパンと次元の相棒度が高くてgood♪

不二子が預けた巨大な宝石箱から出てきたルパンは、地下金庫室の奥に位置する現金が納められた場所まで、移動しなくてはならない。
その移動手段に用いられたのは、「カポカポ」。
トイレがつまった時に使う、アレである。正式名称は「通水カップ」というそうだ。
ルパンのことだから、市販されているカポカポよりも吸引力は強いものを使っているのだろうが、それを天井にくっつけ手掛かりとし、金庫前まで伝っていくのだ。
現金を運び出す時、滑車とロープを支え続けるわけだし、今回の作戦の最重要アイテムである。


スリリング

カポカポを伝って渡っていくルパンの姿に、次元も思わず笑う。ルパンも「ホント、二枚目のするこっちゃないよな」と言ったりする。
その辺の余裕具合がまた素敵v
と、余裕をかましていると…ルパンがくしゃみをした弾みで、ハンカチが床に落ちそうに!!鳴るか?非常ベル!

その寸前で、次元がカポカポを強く投げつけ、ハンカチを向かいの壁に貼り付けた。
フーッと、見ているこちらも思わず安堵のため息が漏れる。ナイス、次元!このフォローもさすがの一言。
「気をつけろ、ルパン」「助かったぜ」。この2人のやり取りが、最高にいい(^^)。

そして、ランキングのコーナーでもちょっと触れたのだが…
五右エ門と不二子の、個人的には衝撃の問題シーン(笑)が見られるこの回。
ルパンと次元が頑張っているその頃、不二子はホテルニューヨークの一室で「ルパンたち、どうしているかしら」と思いをめぐらせる。
「もう札束をいただいた頃かしら。素敵なルパン」と、お金を入手しそうな時のルパンにはやけに好意的な不二子というのは相変わらずなのだが、問題はそれではない。
ガウン姿で髪をとかし、いかにもこれから寝るところといった不二子なのだが、その時その部屋には五右エ門もいるのである!!
不二子の問いかけというか独白に近い呟きには、何も答えなかった五右エ門だが…
この2人、同室なんでしょうか?(笑)
普通に考えれば、勿論別室のハズ。単に翌日の段取りを話し合っていたか、時々仲のいい2人なので、寝る前に一緒に一杯やっただけなのだろう。
だが…ガウン姿になった不二子の部屋に、いまだにい続ける五右エ門。
パッと見ただけだとどう見ても同室で寝そうな勢いなのだ(←変な意味じゃなく・笑)。
私の妄想が突っ走りすぎていることは重々承知しつつも、ちょっと気になるシーンである。

さて、ルパンはようやく金庫前にたどり着く。
カポカポを支えにロープで体を吊ったまま、次元からドリルを受け取るルパン。ちょっと間違えばすぐにベルが鳴り響く状況なので、見ているこちらも緊張する。
金庫に穴を開け、その穴にニトロを詰める。床に爆破した扉の破片が散らばらないようにしつつ、爆破。
開いた金庫から、ついに現金を運び始めた。

その頃、銭形は夜を徹してルパンたちを探索していた。
下流の方も探すよう指示を出すが、何も見つからない。やはり銀行の方か?とかなり迷う銭形。
ルパンが死んだとは、やはり信じていないのだろう。
ルパンたちが金を運び出しているその頃、銭形は銀行の警備室へ切々とした電話をかけ、金庫に異常がないか見てくれるよう依頼する。

ルパンたちの方はと言えば、金を入れた袋が最後の1個だというのに途中で滑車に引っかかり、苦戦。
銭形の電話のせいで警備員も来そうだし…!
こまめな場面転換で、かなりこの辺のシーンはハラハラする。
引っかかった袋を強く引っ張ると、ついにカポカポが天井から外れてしまう。再び、鳴るか?非常ベル!
が、ここでもルパンと次元が両脇からロープを引っ張り、床に落ちることをどうにか阻止。その辺の呼吸はさすが永年の相棒同士であるv

その時、銭形にしつこく依頼された警備員が覗きにやってくる。見つかる?とドキッとするが2人はすでに物陰に隠れていて、無事発見されなかった。
「誰もいませんでしたよ」という警備員の報告に、銭形は「やはり川の底か……」と、ルパンの死を覚悟し、悼んでいるような風情を見せる。
銭形の複雑な心境が、ちらりと見えて、何気に好きなポイント。

そして、ついに川底から「発見」される。
それはルパンではなく、勿論ルパンたちの人形だ。テープレコーダーが仕掛けられており、「とっつあん、一晩中ご苦労サン」の声。
スパイもののようにそのテープは3秒後に自爆(笑)。悔しがる銭形は「やはり銀行か!」と叫んで急行する。

だが時すでに遅し。
約束の朝7時に、不二子は銀行から宝石箱を受け取りにやって来て、そして去っていった。
支配人は何も気付かずに「実にいいお客様だった」とご満悦。カワイソー。
不二子と五右エ門が、箱に隠れたルパンと次元とともに車でちょうど銀行を出るその頃、非常ベルが鳴り響く。
「ルパン参上。ダービー売上金、確かに頂戴!!」というメッセージだけを後に残して。

札束に埋もれ高級車で去るご機嫌なルパンたちと、一晩中ルパンに翻弄された銭形のパトカーがすれ違う。
「安月給でよくやるよ」とルパン。
大金を手にし大成功の余韻に浸るルパンと、安月給で駆け回り悔しさをかみ締めているだろうとっつあん。
この対比が鮮やか過ぎて、ちょっと銭形が気の毒になってくるほどである。


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