第61話 空飛ぶ斬鉄剣


ややこしい名前

なぜか不思議なくらい一般(特別「ルパン」ファンではない人たち)からの認知度が高いように感じられるエピソードだ。
あの無敵の斬鉄剣の弱点は、こんにゃくである…という、トンデモ系(笑)の話。
ムチャクチャなのに(だからこそ?)、アニメにそれほど関心がない私の友人などにも、このエピソードだけ知ってる人間がいたりするから驚きである。
もっと知っていて欲しいエピソードは他にたくさんあるのになぁと残念に思いながらも、私としてはそれほどこの話が嫌いではなく、むしろ非常にB級的楽しみ方が出来る話として、ある意味では気に入っていたりするので、特に気にならない。
だが、「斬鉄剣がこんにゃくに弱い」というのは、位置付けとしては152話「次元と帽子と拳銃と」と同様に、一回限りの特別設定と考えたい(希望。笑)

…それにしても、152話ほどは、このハチャメチャ設定が気に障らないのが我ながら不思議である。
多分こんにゃくなんか斬れなかったとしても、常日頃の斬鉄剣の活躍には何の支障も出て来ない(包丁じゃないし!)が、「次元と〜」の、いつもの帽子がない と拳銃の腕前がガタ落ちという次元では、キャラクターの魅力が激減というレベルを超え、「名ガンマン」というキャラが根本から覆されてしまいかねない危う い設定だったからだろう。
斬鉄剣が特殊な硬さを有するから無敵なのではなく、他ならぬ五右エ門がふるうからこそ最大の威力を発揮しうるのだという設定だと、より嬉しい…と勝手な個人的願望もあるけど、それは脇においておくとして。
とんでもない設定ではあるものの、「(柔らかい)ブヨブヨしているモノが斬れない」というのって、ちょっと面白い皮肉のようで、個人的にはわりとすんなり 受け入れてしまいがちなのである。(要するに、柔らかくしなる柳の枝の方がポッキリと折れにくい…というイメージ?こじつけが苦しいか^^;)

さて。ルパンたち三人は、シカゴにてシンジケートの人間からひと気のない倉庫街?のようなところに呼び出される。
呼び出したのは、マフィアのボス、アル・カモネ。
どちらもアル・カポネをもじっていることから、68話「とっつあんの惚れた女」に登場するアル・カバネと非ッッッ常に紛らわしいキャラクターだ。
元々マフィアのボス系のキャラクターを覚えることが苦手な私、「カモネってどっちに出てくる方だっけ?」と混乱しがちなのだが(笑)、区別するコツは、両 作中どちらでも、ルパンがカモネとカバネにひっかけたダジャレを言っているので、そのシーンを思い出すのが一番てっとりばやい。
ちなみに当作品では、後にテレビに映る斬鉄剣を発見するシーンで、「シャーロックと手を組んだカモネ」と言っている。

話を元に戻そう。
ルパンとカモネはそれぞれ距離をとって相手と対峙する。
車のライトを点滅させて、相手を認識するのが、何となく暗黒街の人間っぽくて(あくまで雰囲気^^)カッコイイ。が、そんなことを言ってる場合じゃないくらい、とんでもないものがルパンたちの前にいきなり出現する。
現れたのは、なんと戦車。
ルパンと次元の、拳銃での反撃も当然虚しい。戦車二台に挟まれた格好の彼らは絶体絶命。
しかし、五右エ門は冷静に「ここは拙者に任せて」と言ってルパンと次元を逃がすのだった。
この時、ワルサーで無駄なあがきをして次元に止められたり、五右エ門に任せて去る際もかなり悔しそうなルパンの様子が、ちょっと微笑ましい^^

五右エ門は、斬鉄剣で見事戦車を切り裂き、その場を切り抜ける。去り際の余裕の笑みが男前である。
だが、この一幕を仕掛けたアル・カモネと、兵器工場を経営するシャーロックにとっては、ルパンらの抹殺を試みたわけではない。
戦車すらバラバラに出来るという斬鉄剣の威力を確かめることが目的だったのだ。
その切れ味に納得したシャーロックは、斬鉄剣を手に入れ、そして中央アフリカの暫定的平和を壊そうとしていた。戦争を引き起こすことによって、平気の需要が高まるからだ。
シャーロックは、かつてのベトナム戦争時の景気の良さを取り戻したくて、このような作戦を立てたものらしい。…うう、生理的に合わない悪役;;


睡眠薬入りバーボン

五右エ門から斬鉄剣を奪うべく現れたのは、例によって不二子ちゃん。アル・カモネから100万ドルで買い取ると持ちかけられた模様。
戦車から逃げ出すために、川(海?)に飛び込んだルパンと次元は、いまだ冷え切った身体を毛布で温めているところだった(か、可愛いv)
そんな格好について尋ねられても、「最新のパリモード」と減らず口で答えるルパンがツボ!
それまで寒そうにガチガチとふるえていた次元だが、不二子の持ってきた差し入れ…最上級のバーボンを見た途端、ふるえも止まり(大笑)、起き上がってさっそく飲み始める。その飲みっぷりのイイこと。バーボンをグラスで一気飲みしたら、さぞ身体が温まることだろう。
ついでルパンも飲み始める。かなり美味しい酒のようだ。

最初「日本酒しか飲まない。洋酒は薬臭い」と言って手を伸ばそうとしなかった五右エ門だが、「薬だと思って」としきりに勧めるルパンと次元の、あまりに美味しそうな様子に心惹かれたか(きっと五右エ門、基本的にお酒好きなのだろう^^)、恐る恐る飲み始める。
飲んだら相当美味しかったようで、すぐにおかわりを申し出る(笑)つられたようにルパンと次元も!
…どーでもいいが、この辺の彼らは、何だかいちいち可愛くって仕方ない(笑)
…これまたどーでもいいが、問題のバーボンに絡めて「薬臭い」「薬だと思って」「よく効くのよ」と薬つながりの言葉遊びがちょっとしたお気に入りだったり。

「勘違いしないで、ウェイトレスじゃないんだから」と当然の如くお酌させられることに、一応反論してみせる不二子だったが、腹に一物状態だったわけだから、結局お酌してあげていた。妖し〜く微笑みながら。
ルパンが「ウェイトレスだったらもーちっと色っぽいや」と言い返してるのもいい感じ(不二子に無節操にデレデレしてしまわないルパンが時に見られると、嬉しくなる^^)
そうこうしているうちに、彼らは酒に混ぜられた睡眠薬のせいで、ぐっすりと寝入ってしまう。
眠っていても、なかなか斬鉄剣を放そうとしない五右エ門だったが、どうにかもぎ取って代わりにホウキを持たせておく不二子。
ホウキを持つ手も小指が立ってるところが、いかにも新ルチック。

こうして盗み出した斬鉄剣を、カモネに売った不二子だが、そのままお金をもらっただけで大人しくはしていない。
カモネの様子を伺い続け、彼がシャーロックと組んで何か企んでいることを嗅ぎつけるのだった。


目覚めた五右エ門は、手がつけられない状態になっていた。ロープに首を突っ込む、次元から奪ったらしい(いつの間に!)マグナムで頭を撃ち抜こうとするで、大騒ぎ。
「武士の魂」をまんまと盗まれてしまった不覚に、耐えられなかったのだ。
懸命に自殺を思いとどまらせようとしながら、酒に関しては「俺が無理に勧めたから」と、五右エ門から負担を減らしてやろうとするルパンの心遣いがニクイ。
五右エ門を自殺できない安全な状態にしておくために、ルパンは銭形を自らホテルに呼び寄せるという奥の手まで使う。逮捕されていれば、武器もない部屋に隔離して置けるわけだ。
部屋に飛び込んできた銭形の前で、「死なせてくれ」と錯乱する五右エ門の様子は、ギャグっぽいのだけれど、ちょっと哀れ(涙)

その頃、カモネとシャーロックは、超小型の飛行機(?)のようなものに、斬鉄剣を取り付け、それを中央アフリカの休戦ラインを飛ばそうとしていた。
リモコンで動く「空飛ぶ斬鉄剣」は、休戦ラインを飛び回り、東西ナイル国に被害を及ぼし、双方がそれぞれ休戦条約を破ったと信じるように仕向けるのだった。
彼らの思惑通り、戦争が再び起ころうとしていた……

それをテレビのニュースで見つけるルパンと次元。
戦争を引き起こすために、盗まれた斬鉄剣が利用されている。というより、戦争を起こすために斬鉄剣が盗まれたのだと気づいたルパンは、戦争によって利益を得る人物・死の商人であるシャーロックとアル・カモネが組んでいたことを見抜く。
斬鉄剣が中央アフリカにあると判明したことを受け、早速五右エ門を牢から出すことに。

捕まってからの一週間、五右エ門は何一つ口にしようとせずに、銭形を手こずらせていた。断食して死ぬつもりだったのだろう。
何とか食事させようと、わざわざ日本食まで取り寄せている銭形の心づくしがちょっと泣かせる(笑)。げっそりやつれても食事に関心を示そうとしない五右エ門の強情っぷりも天晴れな感じ。
そこへ看守に化けたルパン登場。ニセの囚人移送命令書を銭形に見せている隙に、五右エ門を牢から出し、代わりに銭形をそこに放り込んでまんまと逃げ出す。
さすがに銭形を閉じ込めっぱなしにするつもりはないらしく、牢の鍵束は頑張れば届きそうな微妙な位置に(笑)放り投げて、去っていく。
…この回、わりといいようにルパンに利用されちゃってる銭形。だが、カモネを逮捕することが出来たようだし、ただ無駄に動かされたわけではない…だろうから、いいか(ルパン専任捜査官の銭形が、他の犯罪者を逮捕することが、どれほどの手柄になるかが判然としないけれども)


こんにゃくおでん車

中央アフリカに渡った三人。五右エ門は自分で竹光を作れるほどに回復していた。あれからある程度ちゃんと食事をとったのだろう。
次元にそんなものどうすると尋ねられても、五右エ門は黙々と削り続けている。
次元が「どうもわからねぇ、サムライというヤツは」とボヤく気持ちが、何となく分る(笑)が、一方で竹光であろうとも刀を持たずにはいられない五右エ門の気持ちも、理解できる(ような気になる^^)

その中央アフリカには、着実に戦争の影が迫っており、シャーロック兵器工場には、発注が次々に飛び込んできていた。彼の思惑通りに。
そんな様子を見つめる不二子。
彼女は、これほどのお金を動かす大元になった斬鉄剣を手に入れたわりに、100万ドルだけでは安すぎると考え、彼らの計画全貌をカメラに収め、シャーロックとカモネを強請ることを思いつく。
うわぁ、すごい欲張り(大笑)
だが、なぜかこんな不二子はそれほど嫌いではない。一匹狼っぽく独自に動き回る活動的な不二子が、基本的に好みなのだ^^

さて、斬鉄剣を探し回るルパンたちを先に発見したのは、リモコン操縦役のアル・カモネ。
さっそく空飛ぶ斬鉄剣で彼らを襲撃する。
勝手に利用されている斬鉄剣を見た時の、五右エ門の「斬鉄剣…!」という言い方の重みが効いている。あまり顔には出さないが、心中大いに思うところがあったはずだ。
慌てる二人に対して、「空の上ではどうにもならない」とそっけない五右エ門。無敵な道具が敵側に渡ると、つくづく始末が悪い。
セスナの翼を斬られ、無残にも墜落していく…

この時。ルパンが次元にしがみついて、こんな会話をしている。
「次元ちゃん、コワイ」「よせよ」
……かっっ可愛いーーー!!(爆)←この回、特にこればっかりだ(笑)
結構なピンチの時でも、こんな風にふざけてるルパンも可愛いし、次元の口調もツボ!!
前半のバーボン絡みのシーンといい、このシーンといい、こんにゃく作りのシーンといい、この話は話の本筋以外で楽しめるB級グルメ的ポイントに事欠かない。こういうのが好きな人にはお勧め^^

不時着したルパンたちを、さらに執拗に空飛ぶ斬鉄剣が襲う。
拳銃で応戦しようにも、前方に取り付けられた斬鉄剣を立てて回転させ、弾丸をことごとく弾き飛ばされてしまう。
五右エ門は、竹光でそれに立ち向かう。無駄だと知りつつ。誰よりも斬鉄剣の威力を知りつつ。
結果からいえば、間に合わせで作った刀では、太刀打ちできるはずもなかった。あっという間にバラバラにされてしまう。
だがここで、敵方の手に渡ってしまった己の刀に対して、適わぬまでも向かい討たずにはいられなかった五右エ門の男気が、私はかなり好きである。

武器を失ってしまった五右エ門は肩を落とすが、ルパンが腕を引いてジャングルの方へ逃げる。
ちょうど日が落ちてきたことに助けられ、アル・カモネの攻撃はやんだ。命拾いしたルパンたち。
そしてそんな様子を、こっそりカメラに収め続ける不二子。アル・カモネと空飛ぶ斬鉄剣のつながりを明らかにする証拠写真を撮り終え、続いては戦場の被害状況を押さえるとか。ガッツあるな〜。


ジャングルの中で、夜を明かす三人。寝袋姿がまたまた可愛い(笑)
このままでは斬鉄剣を取り戻すことは叶わない。次元の「弱点か何かないのかよ」との問いに、最初「斬鉄剣に限ってそのようなモノはない」と言い切っていた五右エ門だが、ふとあることに気づく。
…こんにゃく。
斬鉄剣は、こんにゃくを斬ることができなかったと。
どうやらあのブヨンブヨンした手応えが、決め手らしい。過去、なぜ五右エ門がこんにゃくを斬ろうと試みたのか、その経緯が非常に気になるところではあるが(笑)、よくぞその弱点を発見しておいてくれたというところだろう。

「こんにゃくっておでんのアレか?」というルパンの質問の仕方とか、「ジャングルにおでん屋ないしなぁ」という言い方が、笑える。ルパンにとっては、こんにゃくイコールおでんの様子。
しかもルパンは、こんにゃくがイモから作られることを知らなかった。外国に、こんにゃくってないんでしたっけ?
一方で、次元が案外こんにゃくに通じているのも興味深い。ジャングルを掘ればイモくらいあるかも…という発案に続き、冷えると固まるとか、何気にこんにゃく製法を知っていることが窺える。

こうして、三人はイモを掘り、皮をむき(五右エ門のナイフさばきが良い^^)、つぶし、煮る。ジャングルの中で唐突なこんにゃく作りを展開していく。
見ようによってはバカバカしいのだが、斬鉄剣に勝つにはこれしか方法がないのだから必死である。そんなところが、可愛いのだv(可愛いはもういい?)
出来た熱々のこんにゃくを、翼を斬られたセスナに塗りつけ終わると、いずれにしても準備できることは何もない。彼らは朝までぐっすりと眠った。

翌日、その「こんにゃくおでん車」(命名ルパン)でカモネに再び戦いを挑む。
当然斬鉄剣が空から襲い掛かってくる。身を守るものがよりによってこんにゃくなのだから(笑)五右エ門の言葉を信じているにしたって、生きた心地がしなかったのではないかと思われる。
が、斬鉄剣はこんにゃくを斬ることが出来なかった!!!(真面目)
斬れないならば串刺しにというわけで、今度は真上から襲い掛かる斬鉄剣。
だがやっぱり、ちょっと刺さっただけでこんにゃくを貫通することが出来なかったのだ!!!(大真面目)
カモネは「文明を否定する悪夢だ」と呆然。
「ザマーミロ!」とはしゃぐルパン。カモネ相手の時は、ちょっとヤンチャな感じがする今回のルパンである。
こうして、斬鉄剣は五右エ門の手に戻ってきた。

続いての攻撃目標は、斬鉄剣強奪実行犯(笑)の不二子である。彼女の処罰は、五右エ門に一任された。
五右エ門の与えた罰というのは、三人お手製、味のまったく保証できないこんにゃくを、無理やり食べさせることだった。
不二子の顔からすると(ものすごいヘンな表情してる!)、相当不味いシロモノだったようだが、それにしてもこれだけで許してあげるなんて、結構五右エ門も優しい。
カモネの後をつけて撃退されていた不二子の様子から、彼女はこの計画にあまり深くかかわっていなかったことを察しての、処置だったのか。

さて、残すは一番の悪人、死の商人・シャーロックである。
彼は、カモネよりもタチが悪く、アフリカに戦争を起こしたくせに、(多分)一度もアフリカへ降り立つこともなくひたすら武器を売り続け、儲けていた男。戦地の惨さを知ることなく、「わが社の戦車同士が戦うのだから、誰の迷惑にもならない」と嘯く男だ。
不二子の撮った証拠写真と、銭形に捕まったアル・カモネがすべて白状したことから、シャーロックも警察に捕まる寸前ではあったのだ。
しかし、五右エ門はそれを許そうとはしなかった。
シャーロックの乗っていた車を一刀両断。車はそのまま爆破炎上した。よっぽどの運がない限り、シャーロックは助からなかっただろう。

斬鉄剣とて基本的には武器である。それによって人を斬ることもある。
だが、決して一方的な大量破壊の道具などではない。それを、五右エ門が許すはずがない。
常に己の命を懸け、相手がどんな武器を向けようとも、それだけを手にして生き抜く五右エ門の、「魂」といえる存在なのだから。

最後に余談だが。五右エ門が敵の車を斬って、無言で立ち去るシーン、パートIII・24話「友よ深く眠れ」を思い出されるなーと思っていたら、脚本家が同じ人(大久保昌一良氏)だった。道理で!


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