第64話 クリスマスは女神の手に


ティファニー宝石店

客観的に観てこの話がどうなのか、正直もうわからなくなるほど(笑)、この話の「ちょっとしたシーン」を溺愛している。
子供の頃の印象を振り返れば、それほど好きだとも思っていなかったので、大人になればなるほど「細かいネタ」で愛情を深めていったらしく。また、某オフ会で色んな点に気づかせてもらったことも、この話をより好きになった一因だと思う。
…頑張って冷静になれば、やや散漫な印象があるいうか、電光接着光線だけがあまりに唐突なアイテムのようにも思うが。まあそれは新ルによくあることだし、やっぱり個人的には好きな話である。

この話にはルパンたちの飲酒シーンがとにかくたくさん出てくる。←それが好き(笑)
話に直接関係ないのに、これだけ「飲酒シーン」が登場する話は他にないはず。新ル1と断言していいだろう。
(登場した「酒の量」では、12話と45話が双璧だと思うが。12話の方がリードしているかな?)
酒シーン好きの方は、ぜひチェックしながら見て頂きたい。


さて。ニューヨークでクリスマスを過ごそうとやって来たルパンたち。かの有名なティファニー宝石店にやって来ていた。
ルパンも不二子も、第一印象はそれほど「すごい店」とは思わなかったらしく、「どうってことない」「わりとつらんないお店」と辛口批評している。
が、置いてある宝石の質はさすがのものらしい。
さすがなのはそれだけでなく、ショーウィンドウを初めとした店の堅牢な造りも、一流であった。
「そんなに泥棒が怖いんなら、宝石なんか売るなっての」と、ルパンはムチャなことを呟いたりもしている(笑)なぜかあまりティファニーに好意的じゃない感じ。

とはいえ、この時はあくまで休暇でアメリカにやって来ているルパンたち。
次元の「ティファニーから全部宝石を盗み出すってのはどうだい?」という言葉も、冗談だったのだろう。
いずれやるかもしれないにしても、あくまで今回の予定にはなかったはずだ。

その時、三人の背後から現れた女性は「それでは盗んでみてはどう?」と挑発する。
彼女はマルグリット・ティファニー、通称マギー。ティファニー宝石店の経営者であり、テレビキャスターも務める才色兼備風。
三人を店の中に案内し、ルパンに煙草に火をつけてもらいながら、自己紹介するのだった。


彼女の狙いは、自分の番組の高視聴率。
クリスマス、ルパンがティファニーから宝石を盗む…という話題を作り、その生中継を放送するつもりなのだ。
放送局の上司は、最初反対するものの、盗ませる店の経営者自らがOKしているとなっては、「ジョークとしていいかもしれん」と放送企画を通すのだった。
マギーにしてみれば、自分の店の堅固な警備体制を信じきって宝石が盗まれるとは考えなかったろうし、ルパンを利用して高視聴率を稼ぐいいチャンスに思えたことだろう。
その番組でいい視聴率が取れれば、自分の店のいい宣伝にもなって、経営者・キャスターの両立場から一挙両得だったのだ。

才女はなかなか抜け目なく…というか、話題にならなくては始まらないので当たり前の手段だとも思えるが…ルパンの同意を得る前に、マスコミに情報を流した。
結果、ルパンの滞在するホテルに大挙して取材陣が押しかけることになる。
「これだけ話題になってしまえば、面子の問題からしても大泥棒ルパンは断れない」と、マギーが読んでいたのなら、大したもの。
ルパンは、あくまで今回遊びに来ただけだと否定するのだが…
取材陣と一緒に現れたマギーが、「クリスマスの夜、ティファニー宝石店を襲うことに決定したのよ」と、断言。
「誰が決めたんだい」と反論すると、「あたくしよ」とウィンク。ルパンも唖然とするしかない。女王様気質のマギー。

それはそうと、この時ルパンと次元が泊まっている「GREAT HOTEL」。
次元のかつての常宿だったらしく、ここにとまると決めたのも彼のようなのだが、10年前は(次元曰く)一流だったはずのホテルも、この時かなりガタが来ており、ちょっと歩いただけで階段に穴が開いて転がり落ちるハメになる。
この時ルパンは、無意識なのか意図的なのか、落下する時次元の腕を掴み、一緒になって転がり落ちている。か、かわいいっ(笑)
どうでもいいけど、このホテル。10年前一流だったとはとても思えないのだが…ただ、その当時若い殺し屋をやってた次元にとっては、一流に感じられたいい宿だったのかもしれない。(ホテルの中に静かそうなバーがあり、その辺がお気に入りだったかも?←妄想)


ルパンがうんと言わないので、続いてマギーは豪華な条件・報酬をちらつかせる。
彼らが滞在中のホテルとは雲泥の差の、真の一流のホテル「PLAZA HOTEL」を滞在場所として用意する。
そうそう。このシーンで、私の大好きな小ネタシーンがある。
マギーに「(ホテルに)入って」と促されたルパンと次元。

ルパン:「はいれって言うんだから、『はい』ってはいってみっか?」
次元:「はい」

掛け合いダジャレ(大笑)!
ルパンのダジャレはよくあることだけど、次元も加わっての駄目押しがホントおかしい(淡々と言ってる次元の声がイイ!)

で。入ってみると豪華なスペシャルスイート風の部屋。室内にカウンターバーまで用意されている。
見回す不二子は、どことなく最初から敵意むき出し。
「タキシード着たハンフリー・ボガートでも出てきそうな雰囲気ね。ま、あたしはゴメンだけど」と皮肉る。
アラン・ドロンはデートするくらい好きだけど、ボガートはイマイチ趣味じゃないのかしら?(だとしたら次元と好み合わないのね。笑)
まあ、マギーへの敵愾心がこうした憎まれ口を叩かせているんだろうけど。

さらにマギーは、必要経費として10万ドル、そして出演料・成功報酬として、金額の書いてない無制限の小切手を用意していた。
しかしルパンは、マギーの豊かな胸元に鼻の下を伸ばすものの、ちらつかされた金銭的条件にはまるで見向きもせず、空欄の小切手もあっさりと破り捨ててしまうのだった。
カッコイイ〜〜!!
ルパンにとっては、金なんか問題じゃないのだ。興味がわけば一銭の得にもならない仕事や挑戦をやってのけるし、気が乗らなければどれだけお金を積まれても動きはしない。
次元もそんな相棒に同感の様子で、パナマ行きの飛行機に間に合わなくなると言って、二人でさっさと部屋を後にするのだった。


女の戦い

男二人が金で動かないカッコ良さを見せるのと対照的に、女二人はやや即物的だ。
最初からマギーに好感を持ってなかった不二子は、彼女が断られたのを面白く思ってるのが透けて見えるような台詞を言い放つ。
「現生を見せると誰でも飛びつくと思っているんだから」と、この時のマギーにはややイタイお言葉。
しかし、マギーも負けてはいない。
プラザホテルに二、三泊しようかと言ってる不二子に対し、「メイドに間違われるのがオチよ」と捨て台詞を吐いて去っていく。
ものすご〜く悔しがる不二子…まさに女の戦い!(こういうの好きだわ。大笑)

少し前まで、不二子は仕事上メイド役も上手くこなせるくらいの芸達者ではあるけれど、(かなり個人的希望を込めて)普通に過ごしている時には、「不二子オーラ」があるんだから、立派に客に見えるのに、と思っていた。
だから、不二子が悔しがってムキになる必要もないし、あんなに愚かしい浪費をすることもないのに…と、もどかしい気分だった。
しかし、今はこのシーン、かなり興味深くて嫌いじゃない。
深読み解釈がお好みの場合は、不二子の、マギーに対する反感――若干コンプレックスも混じった反感か?とすら思わせる棘のある言葉と過剰な反応に、想像力(&妄想力)を働かせるのもいいし。
逆に、あっさり流すのであれば、不二子のややスノッブな、でも女としてプライドを傷つけられたら意地にならずにはいられない、そんな単純で可愛らしい一面を楽しむもよし。
私もイロイロと楽しく観てます(笑)

マギーの方は、すでに銭形とも連絡を取り呼び寄せていたようで、ルパンに断られたことを報告していた。
が、その時店にやってきた不二子の姿を確認し、何か感じるところがあったのだろう(笑)、銭形にクリスマスまでニューヨークに滞在するようにと告げる。

店内では、不二子が宝石を買いにやってきていた。わざわざティファニーで。もー負けず嫌いなんだから(笑)
「メイドに間違われると大変だから」とあくまで根に持つ不二子。
マギーに進められるままに、ダイヤを一つお買い上げ。値段はなんと「10万ドル」。値段に一瞬ギョッとする不二子が可愛い。
「小切手を切る楽しみを覚えましたのよ」なんて言いながら、10万ドルを小切手で支払うが、「0が一つ足りない」屈辱的な痛恨のミスを。
マギーはまたしても「小切手も使い慣れないとなかなか…」なんて、嫌味を忘れない。女の戦い第二ラウンド。
やっぱりマギーの方が優勢っぽく、今で言う「セレブ」の貫禄満点である。
…不二子にもセレブな一面があって欲しいから負けて欲しくないんだけど、でもたまにはこんな不二子も可愛いかも。


一方その頃のルパンと次元は、パナマの海で釣りを楽しんでいる。
カジキマグロの豪快な一本釣り。次元は缶ビールを飲んだりして、いかにもバカンスという感じ。
そこで二人が出会うのが、インチキ科学者のゲボビー。
「スター・ウォーズ」の「ライトサーベル」を発明したのは、実は彼なんだとか(特許を取り忘れて相変わらず貧乏…ってやっぱインチキくさいなぁ!笑)
そのゲボビー、電気工学を利用した、電光接着光線で魚を捕らえるという方法で釣りを始める。
結局、銃の部分が熱くなりすぎて爆発してしまうが…ここでの出会いが、後半の盗みのパートで活かされる事になる。

さてさて、不二子は相変わらずムキになって買い物を続けていた。小切手を切ること切ること。
画面で確認できただけでも、毛皮のコートに、ハンドバッグ、ピンクのロールスロイスに、ペットとして大型犬(血統書付のはず)まで。
マギーのところでの失敗が相当効いてたのか、コートを買うときは思わずゼロを一つ多くつけてしまうほどの勢い。

その結果、ルパンの元に不二子からSOSの電報が届く。あまりに小切手乱用しすぎ、ルパンにお金の無心である。
バーテンからそんな電報を受け取り、どうしようと次元に問いかけると、「ルパン、あの女に惚れているのはお前だろう。俺に聞くな」と素っ気ない。いからも彼らっぽいやりとり!
ちなみに、このシーンはGREAT HOTEL内のバーであり、あっさり終わってしまう短いシーンだが、なかなかいいムードである。

不二子の泊まってるプラザホテルに駆けつけると、不二子は優雅にシャンペン風のものを飲みつつ、犬を撫でたりしていたが、ルパンを見るや「怒らないでね」を連呼して甘え、しなだれかかる。
ここでルパンは絶対「怒らないから」とは言わず、「いいから言ってみなよ」と促している。やっぱりルパンは用心深いわ。
不二子は、銀行から100万ドル(!)の支払いの催促が来てしまったので、マギーから例の小切手を勝手に受け取ってしまっていたのだった。
たった数日で100万ドルを使い切るってのもすごいが、それを「愛してるなら怒らないでね」で済ませてしまうのもすごい。
結局、ルパンは不二子の尻拭いをする格好となり、クリスマスの晩にティファニーを襲撃することになってしまった。

あれだけマギーに敵対心を燃やしていたのに、どんな様子で小切手をもらいに行ったのだろう。
まあ不二子のことだから、「私からルパンがティファニーを襲うように言ってあげてもいいわよ」とか、上からの物言いをしたのだろうと想像できる(笑)
マギーでは動かせなかったルパンを、自分なら簡単に動かせるというところを見せつけることが出来、きっと不二子の傷つけられたプライドも修復したのではないだろうか(穿った見方しすぎかな?)

不二子のせいで、一緒に盗むことになる次元も五右エ門もご苦労なことだが…
考えてみれば最初のシーンで、冗談だろうとも「ティファニーの宝石を残らず盗むか」なんて言っていたくらいだから、それなりにこの仕事に興味は持っていたのだろう。


宝石釣り

マギーの番組では、大々的にルパンの襲撃模様を放送することに。準備は着々と整っていた。
カメラは設置され、店内の警備も厳重。銭形も自信満々に「クリスマスの主役は俺だ」と、ルパン逮捕を確信しているのだった。
虫一匹すら入り込めないように張り巡らされた赤外線に加え、煙草一本の重さにも反応する床の警報装置。銭形が自信を持つのも当然だったか。
同様に、マギーも自信ありげだ。

それを下見しに来たルパンたちは、難攻不落に見えるティファニーの前で、ちょっと冴えない表情だった。
あ、そういえば五右エ門のこの回初登場は、この下見のシーン。実にさり気ない登場。

そこへ通りかかるのは、ピンクのロールスロイスに乗った不二子。
贅沢三昧で買いまくった品々の代金は、ルパンたちにまかせて、一人涼しげな様子でドライブしている。
ルパンが怒るのも無理ないくらいのあっさりした態度だ。ちょっと調子良すぎ?(でもそれが許されるのが不二子ちゃんなのだと思う^^)

その時、ティファニーの下を、地下鉄が通っていることに気づいたルパン、何か思いついたようだ。


クリスマス前日、ルパンたちは地下鉄の少し上の辺りで穴掘りに励んでいた。掘った穴には滑車をつけワイヤーを通す。
クリスマスにモグラの真似なんてと、次元がぼやくだけあって地味な作業だが、でもやっぱり面白いから一緒にやっているんだろう。
ルパンの準備は、決行直前まで続いている。
パナマでの釣りで知り合ったゲボビーを呼び寄せ、電光接着銃の整備に余念がない。
マギーに用意された例の部屋で、次元と五右エ門はそれぞれ好みのお酒を飲んで、それを待つ。(よく飲むね〜)
この時、もうすぐクリスマス当日だぞの意味で、次元が「おっつけジングルベルだ」と言うのだが、それが無性にツボだったりする。

銭形もティファニーの警備にだけ頼らず、ニューヨーク警察にも協力を依頼したり、活動的に過ごしているのだが…
署長は不思議なくらいやる気がなく…というか、ティファニーの堅牢ぶりを知っているせいか安心しきっており、家族でのクリスマスパーティのため、早く帰りたくて仕方ない様子。
警官を待機させず、警報装置がなってからの出動でいいと判断してしまう。呑気すぎ。

いよいよ決行の十二時。
まずは、隣の高いビルからクレーンでリフトを下ろし、その上に乗った五右エ門が、ティファニーのビルにぐるりと切り込みを入れていく。
五右エ門がたすき掛けしているところから、彼の力の入り具合がわかるような気もする。たすきをかけたのは、新ル5話以来だったか(未確認)
そして、地下鉄に吸盤を張り付け、そこから伸ばされたワイヤーは掘っておいた穴の中をスルスルと延びていき…
五右エ門の切り込みと、地下鉄が進む力で、ワイヤーの結びついていた先であるティファニーのビルは、ずるずると引っ張り出されることになる。
ちょうど現場に駆けつけた銭形が目をむく光景。
堅牢なビルが途中からぶった切られ、店の中はまるで引き出しででもあるかのように無造作に引き出され、内部を空に晒されることになったのだ。

正攻法しか頭になかった「普通の」警報装置なんか、根本的に意味をなくしてしまうような、馬鹿馬鹿しいほど大胆で荒っぽい方法!
銭形を光線銃で気絶させ大人しくさせて後は、もうルパンたちの独壇場。
「一匹残らず釣っちまいな!」の台詞が最高にカッコイイ〜〜!!!
釣り上げることの出来なかった大物の魚の代わりでもあるかのように、一流の宝石を豪快に釣って釣って、釣りまくる。
不二子も、ゲボビーも、もちろんルパンもとっても楽しそう。
BGMの「ルパン音頭」が妙にハマってて、そのムードを盛り上げる。

ルパンにとって、この盗みは「休日の遊び」だったのだ。
巧妙に警備をかいくぐる楽しみでなく、あくまでこの休日で満喫したかった豪快な釣りの楽しみを求め、場所と品を変えてやってみたのだろう。

ルパンたちが去った後、店内には何一つ残っていなかった。マギーが認めたように彼女の「負け」だったのだ。
残されたメッセージの粋なこと!
「メリークリスマス!宝石は自由の女神の手に」
銭形が悔しがるくらい、心憎いばかりにカッコイイv←ルパンスキー発言(笑)

ルパンが勝ったのだから、宝石は持って行っても良かったはず。
マギーとの「契約」にそれが入ってなかったから、ゲームが終わった今律儀に宝石を返したのだろうか。
それともやはり、あれはマギーへのクリスマスプレゼントだったのだろうか。
いずれにしても、自由の女神を溢れるほどの宝石で飾るなんて、この粋な計らいが素敵すぎるv
NYっ子にとっても、忘れられない美しいクリスマスプレゼントになったことだろう。

結局ルパンは、殆ど金銭的に利するところがなかったはず(マギーから必要経費の10万ドルを受け取ったのかも定かではないし。受け取っていたにしても、大掛かりな仕掛けや、ゲボビーへの特許料の支払いでそれほど残らなかったのでは。と、こんな計算してしまう野暮な私。)
だが、何度も言うようにルパンにとって、お金などどうだっていいのだ。
楽しければそれでOK、ルパンたちのそんな一面がよく見える話だから私はこの話が好きなのだろう。
この回のゲスト・マギーの、ビジネスライクで割り切った態度も、わりと好みだ。

ラストシーンで、四人が飛行機の中で豪華にクリスマスを祝って乾杯している様子が、これまた非常に素敵なのである。


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