第109話 ルパン史上最大の苦戦


殺し屋タイガー

当サイトのRanking等でも言ってるけれども、この話は子供の頃の私に強烈な印象を残した話であり、「熱烈なルパンファン」になるための「きっかけ」となった話の一つであるので、個人的にやや思い入れがある。
大人になった今観ると、正直それほどずば抜けた傑作だとは思わない。比較的ありがちなトリックなのかもしれない。
が、新ルをリアルタイムで観ていた子供の頃の私にとって、「双子」「ミラーハウス」といった道具立ては限りなく魅力的であり、またルパンの苦戦ぶりが忘れられぬ一作であったのだ。
こんな具合に、ややこの作品贔屓な私からみると、今作は正直「史上最大の苦戦」という、きわめて大袈裟なタイトルのせいで、損してるのではないかと思う。
こんなタイトルがついていちゃ、誰もが魔毛・マモーばりの敵が出てきて、ルパンが苦戦するのを期待してしまうわけであって・・・
そういう意味で「な〜んだ」と思われ、評価が下がるのではないかという気がする。
といっても、メタメタに批判されてるところを見たことがあるわけではないのだが(笑)

この作品で注目して欲しいのは、敵役タイガーを倒すルパンのトリックそのものもであるが、その根底に流れる「ルパンらしさ」である。


始まりは、ルパンが何者かに呼び出されたこと。
どうやらルパンは、誰が呼び出したのかもわからないまま、とりあえずやって来たらしい。無用心というか自信家というか。
そこに現れたのが、今回の敵・タイガー(この時点では名前さえ名乗ってないのだが。無礼者め!笑)。
荒野で二人が対峙する雰囲気は結構好き。
タイガーは、ルパンに「プレゼントがある」と言いバラの花を投げると、その隙に突然銃を向けて発砲。ルパンの額のど真ん中を撃ち抜くのであった。
目を閉じて倒れていくルパンが可愛いv・・・ではなく。
なかなか衝撃的な始まり方だ。
突然額を撃たれ血を流して倒れるのだから、ほんの一瞬とはいえ「だ、大丈夫なの?」と子供心にドキッとしたものである。

当然ルパンがそうやすやすと倒されてしまうわけもなく、タイガーが放ったのは「ケチャップ弾」だった、というオチなのだが。
これをルパンが屈辱に感じないはずがない。タイガーは殺そうと思えば、ルパンを仕留められたはずなのだ。いくら、この時のルパンがまるで状況を把握しておらず、多少の油断があったかもしれないにせよ。
それにしても見知らぬ怪しい男と対面している時に、こんな隙を見せてしまうなんて、ルパンったら〜と物足りない気もするが、まあ話の導入部だし、衝撃的なオープニングという意味ではいいのかもしれない。(と、大人な見方をしてみたり←笑)

いきなり呼び出され、唐突に発砲され、しかもそれがケチャップ弾だったなどというやり方でコケにされたら、さぞ怒り心頭したことだろう。
気絶からさめたルパンの前に現れたのは、オールマイティという太った禿げという、新ル典型の悪役タイプのルックスを持つ男であった。タイガーは彼に雇われている殺し屋なのだそうだ。
今回の話の大元は、このオールマイティが「さるご婦人」と賭けをしたことに始まるという。
「世界一強いルパンを倒せるか」という賭けなのだとか…そのご婦人とは、もちろんもうおわかりですね(笑)
あーあ。またしても不二子ちゃん…(やや涙)

オールマイティと賭けをして、ルパンとタイガーが戦い、ルパンが勝てば不二子には5000カラットのダイヤの原石が手に入る。
逆にルパンが敗れれば、彼女はオールマイティの言うことを聞く、ということになったのだとか。
どうやらオールマイティに専属的に雇われているらしいタイガーはいいとしても、あまりにもルパンの意思を無視したヒドイやり口である。
ルパンは当然そんな賭けのために命を張ることなど断るのだが、タイガーは問答無用に襲い掛かってくる。
ルパンは逃げ出さざるを得なくなった。

「地獄へルパンを道連れ」などでもそうであったが、不二子は本当にルパンが世界最強であり、不死身ともいえるほどの存在だと、本気で信じているように見える。
ルパンの強さを利用し自分の手は汚さぬままに儲けようとしているようで、何だかイヤな感じがするのだが、こうまで明るく「頑張ってルパン〜」と応援している様子からは、無邪気な信頼さえ感じてしまうほど。
こうした一連の新ル不二子のやり方は、心地良いとは到底いえないのだが、ルパンを最強の男だと本気で信じているのだろうという一点においてのみ、わずかに可愛いと言えないこともない…(ちょっと無理?笑)

さて。このオールマイティ。詳しいことは作中で語られないが、単なる金持ちならば、殺し屋を雇ったりしていないだろうから、どの道暗黒街筋の人間だったのだろう。
そしてタイガー。
具体的なことが非常に想像しにくい男である。ハゲあがってしまった前頭部と、白いロングヘアが印象に残る。白い髪は、もしかしたら銀髪という設定なのか。
若いのか、年寄りなのか、見た目からはなかなかつかめない。
暗黒街の人間に詳しい次元ですらタイガーの名前は聞いたことがなかったようなので、売り出し中の若手殺し屋(笑)なのかもしれないと思ってみたりもするが、実際のところはどうなのだろうか。


双子

タイガーに追われ逃げまくるルパン。ルパンは車なのに対して、タイガーは武装ヘリで追いかけてくるのだからたまらない。
車が炎上さたりしつつも、どうにかこうにか必死にアジトへ逃げ帰り、次元に助けを求める……のだが、次元の様子がおかしい。
「殺し屋に追われてる」というルパンに対し、次元は奇妙に落ち着き払って、答える。
「お前を追っている殺し屋というのは……こんな顔じゃなかったかい?」
ギャーッ!のっぺらぼう!!
ではなくって。
そこから現れたのは、ルパンを「後ろから」追っていたはずのタイガーの顔。次元に変装し、「先回り」して待ち構えていたのだ。(ホントは違うんだけど)
ルパンにしてみれば、かなり驚いただろうと思う。
さらに驚きはそれだけでは済まなかった。
逃げても逃げても、タイガーは信じられない神出鬼没さで、ルパンの前に先回りし、彼を狙う。
この時点で、タイガーが双子だなどと夢にも思っていないルパンは、相当混乱していたようだ。それも当然だろう。

タイガーの銃の腕前は、実は大したことないのか?というほど、至近距離でも外しているが(笑)、この場合はルパンの常人離れした身のこなしだからこそ逃げられたのだと思いたい。
あまりにルパンがすばしっこかったからか、それとも余裕を見せ付けたかったからか、タイガーは挑戦的なメッセージをテープに残し、アジトから去る。
お約束のようにそのテープは爆発し、ルパンはドリフのコントのようにボロボロに。その後、全身包帯人間になってしまうのだった(^^;
ちなみにボロボロになった時ズボンの破れ目から見えるのは、珍しく白いパンツだったりする(笑)


そしてようやく本物の(笑)次元と、五右エ門登場。
ルパンは二人にタイガーとの顛末を話すが、次元も名前を知らない殺し屋であり、攻略の糸口はまだつかめない。
この時「トリックかもしれん」と言うのが五右エ門であることが、ちょっとしたツボ。
有り得ないほど「先回り」してくるタイガーを、ルパンが「忍者じゃあるまいし」と言ったのを受けてのことだろうか。忍者の修行をしているはずの五右エ門には、そうしたことが出来るとすればトリックを使うしかないということが、よくわかっていたのかもしれない。
「それを見破らぬ限り、勝ち目はない」と言い切る五右エ門。実際、トリックがわからない時点でのルパンは、まったく手も足も出ないのだから、五右エ門の「勘」は当たったことになるだろう。

ルパンはここで「虎穴に入らずんば虎児を得ず」の心意気で、タイガーに決闘を申し込むことを決める。
キッカケが不二子のくだらない賭けだったとしても、降りかかってきた火の粉は払わずにはいられないし、何よりルパンの気性を考えれば、やられっぱなしで逃げ出すことなど、有り得ない。
そんなルパンの気質まで読んだ上での賭けだったとしたら、この回の不二子ちゃんがますます憎たらしくなってしまうけれども(笑)。

決闘は、丈の高い草の生えた見晴らしのいい場所で行われる。
もっと見通しのいい場所でやっていたら、タイガーも双子のトリックを使いにくかったろうと思うのだが、まあこの時点ではルパンにそれはわからなかったことだし、仕方ないことだろう。
この決闘はかなりシリアスな雰囲気で、ルパンが額に汗して苦戦するのが、たまらない(いや、変な意味でなくね。笑)
BGMの「デンジャラスゾーン」がますますピンチっぽい場面を盛り上げる。(この曲がかかると反射的に手に汗握ってしまう猿のよう私…)
ルパンをあざ笑いうのように、タイガーは突然姿を消しては、まるで別方向から現れることを繰り返す。
ルパンが「気配」すら見失うのだから、射撃の腕前は大したことはなくとも、気配消しだけは間違いなく兄弟揃って上手に違いない。
タイガーに翻弄され続けた結果、弾切れとなり、ルパンは崖へ追い詰められてしまう。タイガーの弾丸を胸に受け崖から落ちていくルパン。

それを見届けると、タイガーは安心したのか、その場でネタばらしを行う。彼らは双子だということに。神出鬼没が演出できるはずである。
もちろんルパンは死んでなどいない。防弾チョッキを着ていたのだろうし、崖の下に待機していた次元と五右エ門にちゃんとキャッチされていたのだった。
この時、五右エ門が崖から身代わりに落とすルパン人形、よ〜く見ると顔からヒゲらしきものが飛び出しているのだが…
これは相棒二人のちょっとした遊び?(笑)


ミラーハウス

ルパンが死んだという報告を、オールマイティと共に受けた不二子。その様子は、本当に信じられない…という雰囲気だ。
そして自分の女になれと迫るオールマイティに困惑しつつも、どこか哀しげに伏せ目がちな不二子。
今更だけど、後悔しているのか。哀しんでいるのか。というか、そうであって欲しい(笑)

その時銭形が強引に部屋に押しかけてくる。用件は、ルパンからダイヤの原石を盗むとの予告が入った、というもの。
てっきりルパンは死んだと思い込んでいたところへ、ルパン本人から挑戦の電話がかかってくる。タイミングが絶妙。
電話の後、「このわしに挑戦してきおった」な〜んて偉そうに言ってるオールマイティを観るたびに、「このわしってどのわしだよ。そもそもあんた何してる人間なのよ?」と心の中で突っ込まずにはいられない(笑)

さてさて。いよいよルパンの反撃開始。トリックさえ見抜いてしまえば、それを逆手に取るのはルパンの得意技である。
オールマイティ宅へ挑発的に車で乗り込み、タイガーをとある場所へとおびき出す。深夜の遊園地へと。
今度こそルパンの息の根を止めようとタイガー(兄)はルパンにぴったりくっついていく。そしてルパンの読み通りタイガーの片割れも、ハイウェイ下の道をぴったりとくっついて来ていた。

遊園地へ向けてハイウェイを走っている際、銭形が追いかけてくるのであるが、この回それほど重要な役のではない銭形の「今度という今度は逃がさんぞ」などという定番の台詞は、なぜか空虚に聞こえてしまったりする。
案の定、ルパンも今回とっつあんはあまり眼中にないようで、次元に「ポイ!なんてしちゃってくれる?」とあしらわれてしまっている。
ヘリから巨大磁石で銭形を吊り上げ、海に「ポイ」しちゃう次元の独り言もいかにも「らしく」ていい感じである。

ルパンを追い、タイガーも無人の遊園地の中へ。そんなタイガーの目の前に双子の弟が二人、登場することに。
だが、タイガー兄弟はテレパシーで通じ合っている双子だそうで、片割れに変装したルパンはあっさりと見破られてしまう。
ルパンはそれほど深く「しまった」と思っている様子はないし、ミラーハウスの中へ“逃げていく”というよりは誘い込んでいくわけで、この変装はダメモト、あるいはちょっとしたおちょくりなのだろうと思う。
それはそうと!この時、変装を取ったばかりのルパンが、とにかくカッコイイのである!!
チロ胸&黒シャツ、チンピラっぽいスーツ姿もなかなかレアだし。とにかくツボすぎる。お見逃しなきよう。

ミラーハウスでは、今までルパンがタイガーにやられてきた通りのことが、そっくりそのまま繰り返される。
周囲を鏡で囲まれ、実像と鏡像の区別がつかなくなったタイガー兄弟は二人とも、挑発的に姿を現すルパンに翻弄され続け、鏡ばかりを撃ってしまう。
まさに「前に見えれば後ろ、右なら左」とルパンがいう通り、なのだった。(この台詞の言い回しがまた絶品で大好きv)
それを何度も繰り返しているうちに、タイガー兄弟は混乱し、次第に焦りを募らせていく。

そして兄弟の真正面に同時にルパンが見えた。追い詰められているのに不敵に笑ったルパンが…
これまで幾度も「目の前に見えいるのは実は鏡像」を繰り返されたせいか、はたまたテレパシーで通じていることが裏目に出、「二人同時に正面にルパンが見えているということは、本物は真後ろにいる」という推測が成り立ったからなのか。
タイガー兄弟は同時に後ろを振り返り、発砲する。鏡が割れる、そして。
そこにルパンはおらず、鏡越しに互いの額を撃ちぬいた、己と同じ顔をした兄弟がいるのであった。

二人の目の前に見えていた「ルパン」はそれぞれ実体だったのだ。もちろん、もう一人のルパンは次元の変装。
ルパンは次元と、テレパシーで通じてる双子並のコンビネーションを発揮して、タイガーを倒したのであった。
「俺たちも双子になればこんなもんだ」という次元の台詞がいい!ルパンと次元ほどに息のあった二人だからこそ成功した作戦だろう。
(どうでもいいことですが、次元にルパンの赤ジャケって似合わない〜笑)

同時に、これはいかにもルパンらしいやり方なのである。
自分が翻弄された通り、実際は「二人いる」ということを気づかせぬままに、「二人のルパン」で相手を惑わせる。そっくり同じやり方を、一枚上手に使い、やり返したのだ。
さらには、偶然なのか、タイガーがお互いを撃ち合ったのは、冒頭でルパンがケチャップ弾で撃たれたのと同じ場所、額の真ん中なのであった。
やられたらやり返す。やられたのと同じやり方で……というのは、ルパンのきわめてよく使う手段であり、そこにルパンらしさ、ルパンのポリシーが見え隠れするようで、こんなルパン、個人的にとても好きなのである。


その後、今回の騒ぎの元凶・不二子のモノになるはずのダイヤの原石を、ルパンはとっつぁんを「ポイ」する時に使った巨大磁石で盗み去った。
不二子は宝石への執念で(笑)飛んでいくヘリにぶさらがる。
が、さすがにルパンも今回は不二子に甘くなく、宝石を横取りした挙句に、ぶら下がり続ける不二子を助けることなく笑っている。まあ当然の処置。
ちなみにこの時、ヘリの助手席(?)でニヤっと笑っている五右エ門の顔も忘れられない。
彼も、ルパンの処置に「いい気味だ」と思っていたのかもしれない(笑)


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