第124話 1999年ポップコーンの旅


ポップコーン

リアルタイムで観ていた時は遥か未来だと思っていた1999年が、すっかり過去になってしまっていることに、「思えば遠くへきたもんだ」とやけに感慨を覚えてしまったりするわけだが。
この話は別にしんみりしてしまうような類のものではない。
「1999年宇宙の旅」からタイトルをもじっているけれど、特に1999年と関係があるというわけでもない。
とにかくバカバカしい話だ(笑)もう笑うしかない。

だからといって、この場合の「バカバカしい」は決して私にとって貶し言葉ではない。
正直、子供の頃は「カッコイイルパン」愛好家だったため、この回のように力が抜けたというか、ハードな戦いも盗みもなく、「ポップコーンで月まで行こう!」という、有り得なさ200%のドタバタ話は、そんなに好みではなかった。
ポップコーンでビルが溢れるシーンでは、ただただ呆然としており、この作品の第一印象は「ポカ〜ンとした」に尽きるのだが(笑)。
今見てみると、不思議に楽しい。
単に不二子とキスしたいという理由で月を目指し、しかもポップコーンなんかを利用するっていうんだから、このスケールの大きいバカさ加減(何度も云うけど貶してません^^)は、ルパンでしか味わえない。
どうでもいいことに、楽しそうに一生懸命になってるルパンの良さは、大人になってからわかった魅力の一つだ。
…まあ、あまりにふっきれ過ぎた作品のトーンに、心の底から好みだとはいえないし、ついていけないと感じる時もあるにはあるが、でも素直に「こういう話があってもいいのかもね」と思っている。


ことの発端は、食料の乏しい貧しい村を、パンチョ教授が自らの発明品によって救おうとしたことだ。夫婦揃って、その研究に邁進してきたらしい。
わずかなトウモロコシを、ポップコーン製造機で大量に増やし、餓えた人々にまだ行き渡るようにと考えられたものだった。
実験は大成功。巨大なポップコーンが次々に溢れ出し、人々が運びきれないほどにトウモロコシは増えに増えた。
ポップコーンの放出は留まる所を知らず、製造機はついに勢い余って空へ飛び出し、姿を消してしまう。


その頃、ルパンと不二子は、砂漠の夜空を見上げながら、愛を語らっていた。
や、ホントですよ(笑)
ルパフジスキーとしては、ここのシーンはメチャ好き!!お勧めポイント。
車の座席を倒して、二人っきりで夜空を見つつ…なんて、どういった経緯でこのシチュエーションになったのか、本当に素晴らしく良いシーン。しかも台詞もお洒落だ。
浦沢義雄作品は、ぶっとんだドタバタ系の印象が強すぎて、お洒落台詞が陰に隠れがちだが、意外に名台詞が多い。

不二子「何を考えてたの?」
ルパン「柄にもなくロマンチックなこと」
な〜んて、もうっもうっっ(興奮しすぎ)一言目からトキメかせてくれる。
ムードによってつい本音が出たのか、不二子はルパンを愛していることを告白したりするのだ。やっぱりーv(嬉)
「女は隠せるものなのよ」なんて、とにかく色っぽくて可愛い!
だが、だからといってすぐにイチャくつわけじゃないところが、不二子らしい。愛してるといったそばから、キスもおあずけ。
「キスはムードでするものじゃない」のだとか。

話は逸れるが、不二子語録の中で大人になった今も実感としてよくわからないのが、
この「キスはムードでするものじゃないわ」と、パートIII・15話の「ワインは遊びのお酒だもの」の台詞。
最初の台詞はともかく、ワイン云々は今も「そういうものなんだ?」としか思えない(ガキですみません。笑)
それはともかく。ムードのないシチュエーションでキスしようとすると怒ることもあるが(例:「ルパンの大西部劇」←これはさすがにルパンが悪い!)、ムードに流されてキスしたくないというのは、不二子の(いろいろな意味での)理性的側面を表している気がする。

ムーディじゃなきゃいいのかと考えたものか(笑)、ルパンがカーステレオを音楽から天気予報に変えてみている(可愛い^^)
しかし不二子は、「月へ行くまで」おあずけだなんて言い出した。
どうして月だったのか。夜空を見てたら、ちょっと言ってみたくなっただけなのか。
いくらなんでも月なんて無理…と言いかけるルパンだったが、不二子にけしかけられてちょっとムキになってくる。
そんな時、カーステレオの天気予報が言った。
「ところによりポップコーン」、と。
途端、ルパンと不二子は、大量のポップコーンに降られることに。
例の、パンチョ教授のポップコーン製造機は、なにやら成層圏すら突破してそうな高所から、さんざんポップコーンを降らせ、ようやくその動きを止めたところであった。
ルパンは、そのポップコーンを見てひらめいたらしい。これを利用して、月に行くことに決めるのだった。
目的は勿論、不二子とのキス(^^)

ルパンのポップコーンで月へ行く計画を、なぜか素早くキャッチした銭形は、MASA(どう考えてもNASAのパロディ)の長官の元へ注意を呼びかけに赴く。
その長官、ものすごーく日本嫌いで、かつアメリカの威信を守ることに必死になっている人。
国を挙げての宇宙計画をやっているというのに、ポップコーンなんかでルパンに月へ行かれでもしたら、威信が丸つぶれというわけで、計画を阻止しようとするのだった。

そんなことも知らず、ルパンは次元、五右エ門、不二子を連れてパンチョ教授の元へ。
ルパンは「アメリカやソ連に出来たんだから、俺に出来ないはずはないでしょ」と、自信たっぷりな様子。ルパン以外にこんな台詞似合わない!素敵v
大胆すぎる(というかアバウトな。笑)ルパンの計画を聞いて、次元は何事にも不可能ってことがあるとたしなめるのだが、聞く耳持たず。
返した言葉が「俺にナポレオンの台詞を言わせたいのか?次元」。
…くくっ、カッコイイ!!(悶)
五右エ門の方は、言っても聞かないことは百も承知のようで「勝手にせい」の一言。
でも、ちゃんと最後までついてきている。五右エ門のこういうところがすごく好きだ^^


穏やかな誘拐

「教授」というからには、どこかの大学で仕事していたこともあるのだろうと想像させるのだが…パンチョ教授は、幼稚園だか小学生らしき小さな子供たちの先生をしていた。
そこへやって来るルパン。
ものすご〜く穏やかな調子で、「ポップコーン製造機を利用して月に行きたいんだけど可能か」という質問をするルパン。
それに答えるパンチョ教授も、ものすご〜く穏やかに、「いかに美味しいポップコーンを作るかだが、理論上は可能」といったような返答をする。
この動じなさ、さすが。イキナリ、ポップコーンで月にといわれても平然としているなんて、学者根性を見た気がする(違)

そこでルパンは、月旅行専用のポップコーン製造機を開発してもらうため、教授を誘拐することに。
これまた穏やか〜に、教授本人に持ちかけるのだ。
教授の方はまたまた動じず、子供たちの先生がいなくなるのが困るというのだが…代理の先生は不二子に決定。
ルパンは教授を連れて、研究所へと向かう。

子供たちに囲まれて、ワイワイやってる不二子というのは、妙に新鮮な図。
子供好きには見えないけど、ちゃんと懐かれてるし、その後しっかり先生が板についてる様子も披露するので、なかなか子供の扱いも上手なのかも。

教授は当然愛妻のパンチョ夫人を同行して、ルパンに「誘拐」され、研究に励む。
その間ルパンたちはというと、研究用のためかトウモロコシ剥きに精を出している。か、可愛いっ(笑)
作業をしながらお喋りをしていると、窓から夫人が顔を覗かせ、二人を叱り付ける。お喋りがうるさかったようだ。
教授は、静かなところじゃないと研究が進まないのだとか。うんうん、わかる←雑音嫌い
パンチョ夫人に叱られて、「ハイッ」と立ち上がるルパンと次元。やっぱり邪気のない年長の女性には敵わないらしい^^
さらには、月へ行くためのロケットを一台用意するように、と言いつけられる。
動力部分はポップコーンでいいとしても(大笑)やはりロケットは不可欠。これは簡単に手に入らないだろうと次元は渋るのだが…

そこへやってくるのは不二子のバス。子供たちに研究所を見せに来たらしい。写真撮影のとき、ルパンと次元はポーズとっている^^
続いてもう一台のバスがやって来る。
が。それは、観光バスなどではなく、銭形率いる警官隊ご一行様。(ただこれって警官隊らしく見えないのだが、MASAが送った妨害集団?)
いきなりルパンと次元に発砲、攻撃を仕掛けてくる。
弾を避ける息ピッタリの二人の動きが、これまた可愛くって楽しい!!

バスガイドに化けていた銭形が変装をとくシーンで、しっかりハイヒールを履いてるのが見える。お見事。
でもすね毛にハイヒールって似合わない〜(大笑)
銭形たち、突撃してきたはいいけれど、屋根の上でトウモロコシを剥いていた五右エ門の格好の餌食。
抜群のコントロールでトウモロコシを投げつけられ、どんどん命中。
どうでもいいけど「ん〜」という感じで狙いを定めてる五右エ門の様子が、なんだかやけに好きだったりする(笑)

その隙に、ルパンと次元はそれぞれショベルカー(?)に乗り込んで逆襲。
ショベルでポイポイと掴んでは放り投げていく。突然マシンガン連射してきた男たち相手に、平和的な反撃方法。
さすがに銭形だけは身軽でなかなかルパンも捕まえられなかったが、五右エ門のトウモロコシ一投のお陰で、無事やっつける。
ああ、牧歌的。

しかし、この騒ぎのせいで、パンチョ教授は研究がはかどらないと怒ってしまい、夫婦揃って出て行こうとする。
慌てたルパンは、静かな場所をちゃんと用意するからと、教授を宥めるのであった。


砂糖と塩

さて。銭形相手に日本への不信感をわめきたてているMASAの長官の元へ、一人の職員がルパンからの手紙を届ける。
内容は、パンチョ博士を渡すから、ロケット一台と交換しようという申し出だった。
長官は、「ポップコーンなんかで」月に行かれることを何より嫌がっているので、この申し出を了承した。教授の協力がなくては、ルパンが月など行ける訳がないと踏んだのだろう。

その時、手紙を持ってきた職員が振り返る。彼が、実はルパンだったのだ。
背中に職員の全身マスク(笑)を貼り付けていただけの簡易変装(スゴイ!)。くるりと振り向くとルパンだった、という意外なシーンは、昔からなぜかとても記憶に残るものだった。
長官の了承をじかに聞き、手回し良く相棒たちにトラックを準備させていたルパンは、ロケットを貰い受けていく。
代わりに教授夫妻を、MASAの地下12階監獄の中へ置いていくのだった。

もちろん、ルパンは教授をそのままにしておくつもりなどない。
教授ご所望の研究に適した静かな場所を提供すると同時に、絶対必要なロケットを手に入れるという、一挙両得の考えだったのだ。
当然、教授は月ロケット用ポップコーン製造機の理論が完成すれば、監獄から奪い返すハラである。
それはそうと、パンチョ教授の研究のトンデモなさといったら、とても説明できない(笑)朝鮮人参をはじめとした謎のアイテムが出てくるようだが…さすがに凡人の想像を遥かに超えている。あはは。

どうやってMASA監獄にいる教授を取り返すのかとの次元の問いに、ルパンは「ポップコーン製造機第二号を使う」と答える。どこまでもポップコーン尽くめの回なのだ(笑)
仕掛けておいたマイクで、教授の研究が完成したことを知ると、ルパンはさっそく奪還へ赴く。

バギーカーのようなモノに、製造機を積み、出力を50分の1に調節して武器化し、いざMASAへ。
そうそう、ここでいつも気になるのだが。ルパンに続いて乗り込み出発する時、次元が「俺も行くぞ」と言っているように聞こえる。
聞き取りが間違っていなければ、なんだけど。
この時点では、もう次元も開き直っていて、月へ行ってもいいくらいに「やってやるぜ」という心境になっていたのかしら…とか、どうでもいいのに妙に気になるポイントなのだった。

MASAへ正面から突入するルパンら三人。
銃を向けてくる警備員らを、ルパンは巨大ポップコーンを発射させて次々と打ち倒していく。
一応戦ってるはずなのに、平和で気が抜けること夥しい(笑)
ルパンがバンバンポップコーンを撃っている時、次元が笑っているように見えるのは気のせいだろうか。バカげた突入方法にきっとニヤニヤしていたんじゃないかと考えて、私まで楽しくなってくる^^
だがこれくらいで驚いていちゃ、いけない。この回のポップコーンはまだまだこんなものではない。
警備員たちを撃退し侵入に成功、ルパンらは無事に教授夫妻の元へ辿り着いた。
続いて逃げ出す時も、この製造機を大いに利用、今度は出力を最大に上げる。事前に、ゴムボートを準備することを忘れずに。

…まさか。そう、そのまさか。
用意してきた大量のトウモロコシを製造機に投入し、ポップコーンを作って作って作りまくる。
あっという間に、周囲はポップコーンの海。溢れても溢れても、尽きることのない無限ポップコーン。
地下12階にいた彼らは、ゴムボートに乗って上昇する海面(ポップコーン面!)に浮かび、ついには自然に地上まで運ばれていくのだった。
当然、建物の中はポップコーンで埋め尽くされている。
もはや神業。
ホントにもう、有り得なさ・馬鹿馬鹿しさここに極まるという感じなんだけど(笑)、BGMがBGMなもんだから、つい美しき荘厳なものでも見てる気になってしまいそうになる(いや、さすがに無理か)

ルパン襲撃を報告されていた長官や銭形も、押し寄せるポップコーンに流されてしまう。
この勢いは誰にも止められない。いや、ホントにいつ止まったんだろう、お気の毒に(笑)
湿気ないうちに、職員の皆さんで完食して欲しいものである。

というわけで、ついにロケットも月旅行用のポップコーン製造機の原理も揃った。
教授によると、それは塩味のポップコーンを作れば良いとの結論だった、そうだ。ああそうですか。もう何が飛び出しても驚かない(笑)
と思っていたけれど、最後にまたまた驚く出来事が!!

ルパンと不二子は、二人でしっかり宇宙服まで着込み、ロケットの中でスタンバイ。
教授夫人は夫のメモに従って、月まで行くポップコーン作りの準備を整える。
やや不安そうに「ホントに月へ行けるの?」と尋ねる不二子に、ルパンは「さあね、教授を信用するしかあるまい」。
同じ時、ロケットの打ち上げを見守る五右エ門が「月へ行っても帰って来れんではないか」と呟くと、次元は「さあね、ルパンを信用するしかあるまい」。
…浦沢脚本の、こういった台詞の遊びがとても好き^^

みんなの不安をよそに、いよいよ打ち上げ。
しかし、ロケットの様子がおかしい。宇宙へ飛んでいくどころか、真反対、地下へ潜り込んで行ってしまう…
慌てて駆け寄るパンチョ夫人が言うことには、「塩と砂糖を間違えて」しまったんだとか!
ギャフン。と思わず昭和の台詞を言ってしまうこのオチ。
イマドキ、きっとサザエさんでも砂糖と塩は間違えまい(観てないからわからないけど)
しかも、砂糖と塩を間違えたからって、正反対の結果になるなんて…トホホ。

ルパンと不二子は、コゲコゲのポップコーンと共に地中を突っ切り、地球の裏側へと行ってしまった。
この結果に、案外動じない相棒たち。もしかしたら月への迎えを覚悟していただけに、地球の反対側くらいどうってことなかったのかもしれない。
世界地理が得意だという五右エ門(!)と次元は、二人であっちだこっちだと協議し、ルパンを迎えに去って行った。
パンチョ夫妻は、これからも夫唱婦随で研究を続けていくものらしい。
ポップコーンが世界を救う日は遠くないのかもしれない(笑)


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