第125話 オイルダラーの大謀略


王冠

心からはスカッとできない話である。
根っからのルパンスキーゆえ、どうしてもルパンに極度に肩入れして見てしまい、そのためにルパンが完全に騙され利用された、というだけで反射的に癪に障ってしまう傾向にあることは自覚しているのだが。
それを差っぴいても、「ギアーナちゃん(あるいは不二子)、やるなぁ」と微笑みながら感心することは、私には出来ない。
と、これは後に述べるので置いておくとして。
だが本筋以外のちょっとしたルパンたちの行動や表情が可愛くて、そういう意味では結構好きな話でもある(←またこの見方・笑)


冒頭、ルパンは「哀愁」風の恋愛映画に夢中になっている。主役の男性と同じく煙草を吹かしつつ、前傾姿勢になりながらの観賞。
その後電話に「はい、ロバート・テイラー」なんて具合に出ているところから見ても、かなり作品に入り込んでいたようだ。
そんな様子が可愛らしい^^
53話の次元とのチャンネル争奪戦と合わせて考えると、新ル時期のルパンはメロドラマ好きだったようで、何となくほのぼのとしてしまう。

熱心にドラマ鑑賞中に、次元が電話だと告げに来るのだが。
その時の次元は、Yシャツを腕まくりした上、エプロン着用。どうみても台所仕事の途中だった様子。
87話でもひとりで台所に立っていたし、ルパン一味の厨房は、基本的に次元が与っている?!(笑)
台所仕事して忙しい次元がせっかく取った電話なのに(笑)、ドラマに夢中のルパンは「うるっせーな、聞いといてくれよ」と素っ気ない。
とにかくこの時のルパンのつっけんどんで億劫そうな物言いが、激しくツボ。そんでもって、そんなルパンに慣れているのだろう、まったく動じず「そっちで取ってくれ」と当たり前のように言い返してる次元も良い。
些細なシーンなのだが、ドラマ観賞〜電話までのシーン、大好物である。

さて。電話の主はどうしてもルパンと話がしたいとのことで、仕方なくルパンは受話器を取ることになった。
そこから聞こえてきたのは、見知らぬ男の声と、不二子が助けを求める声。
不二子を助けたければ、命令を聞くように脅迫してくる。
直後、アジトの窓ガラスが割れ、りんごが飛び込んできた。それが破裂すると、中から一枚の写真が落ちてきた。

りんご型爆弾の破裂音に素早く反応して、マグナム片手に部屋へ飛び込んでくる次元。
エプロンかけた微笑ましい姿と、いかにもプロっぽい素早い反応のギャップが素敵^^
次元の手に落ちてきた写真は、イララン王国に伝わるホメサン国王の王冠。
それを五日以内に盗み出さないと、不二子の命はないという。

早速、ルパン、次元、五右ェ門の三人はイララン王国へと飛ぶ。
ルパンが不二子の身を心配せずに、「人のために盗みをするなんてよぅ」と不満そうなのに対し、五右ェ門は「不二子のためだ、仕方あるまい」と比較的穏やかな態度。
不二子に対する言動に彼女への感情が露骨に出る五右ェ門のこと(笑)、この時期不二子との関係はわりと良好だったようだ。
(時に「危険を冒してまで助けるほどの女とは思えぬ」とまで言う事もあるので・笑)
どうでもいいことだが、飛行機の座席、珍しくルパンと五右ェ門が隣り合わせで、次元とルパンも隣ではあるのだが通路を挟んだ位置に座っている。(ホントにどうでもいいな)

盗まなくてはいけない王冠は、イララン国立美術館にある。
観光客に混じって美術館へ訪れてみると、王冠は噴水の上に飾られていた。
ガイドによると、噴水の水はなんと濃硫酸。王冠は金とダイヤで出来ているので、溶けることはないのだという。
硫酸の流れの上に鎮座した王冠を見上げ、次元は「手も足も出ない」と悔しそうに呟くが、ルパンはすでに打開法を思いついていたようで、「ところが出しちゃうんだよね」と気楽な調子であった。
……またもやどうでもいいことだが、硫酸の噴水、観光客に水滴がはねたらどうするんだろう〜と、子供の頃から気になって仕方ない。

下見を終えたルパンたちが立ち去った後、銭形が姿を現す。彼の行動をすっかり把握していたようだ。
が、今回はなぜか「現行犯逮捕」を目論んでいるらしく、この時は三人をそのまま見送った。
その時、回し損ねた手錠が噴水の中へ。瞬く間に溶けた手錠を見た銭形は、ヘタヘタと腰砕けになって一言「おそろしや」。
その動きが何となくおもしろかわいい(笑)

夜になり、ルパンたちはタンク車に乗って美術館へやって来る。
警備員らを素早く眠らせ、美術館の中へホースを引いていくルパン。彼の合図で、次元と五右ェ門がタンクのバルブを開けた。
用意してきた液体を、噴水の中に大量に注いでいき(なぜか溢れない!)、頃合を見計らってルパンは水の中へと無事入っていった。
台座に乗って軽々と王冠を奪う。
そこへ、ルパンらの侵入音を聞きつけて、飛び起きた銭形が駆けつけてくる。
硫酸の中へ入っていても、ちっとも痛痒を感じていないらしいルパンと次元の姿を目の当たりにし、銭形は逮捕することも忘れて「大丈夫なのか?」と問いかける。
頭に王冠を載せて不敵に笑うルパンと、「どーだ」と言わんばかりにニヤリとしてる次元が何だかイイ。

ルパンが注いだ液体は、水酸ナトリウム。アルカリ性のそれと、酸性の硫酸を混ぜて中和させた、というのが今回のタネ。
中性になった無害の液体なら、浸かったところで大丈夫というわけ。理科の勉強はしておくものですなぁ(笑)

ルパンは、水酸ナトリウムのホースを銭形に向け噴射。銭形がたじろいでいる隙に、三人は逃げ出すのだった。


スパイダー

美術館の外へ出ると、ライトが三人に向けられる。そして、空には何発もの打ち上げ花火。周囲には、大勢の人々がつめ掛けている。
ポカンとするルパンの前に恭しく進み出たのは、この国の大臣・カシム。そして、誘拐されていたはずの不二子だった。
「あなたが王冠を盗めるかどうか、試した」と悪びれることなく白状する不二子。またもや、不二子の仕組んだことだったのだ…。
それに対して怒る間もなく、ルパンの元にイララン国の指導者・ギアーナ姫が現れた。まだ幼い、おてんばな少女だ。
彼女はいきなり、ルパンたちを国賓として迎えると言う。
あまりの展開の早さに、内心驚いていたのではないかと思うのだが、さすがにルパン、姫の前では紳士的に挨拶する。
ちょっと気取った「光栄です、ギアーナ姫」という言い方と、ギアーナの手にキスするその仕草がカッコイイ^^

事情の説明もないまま、ルパンたちはオープンカーに乗せられ、人々の喝采を浴びつつ、王宮へと向かうのだった。
すべてを理解してる不二子は堂々と、よくわかってないルパンは戸惑いつつ軽く手を振っており、次元と五右ェ門に至っては、苦々しい顔をして車に乗っていた。

あ、そうそう。銭形は当然ルパンらを逮捕しようとするのだが、(イララン国はICPOに加盟していないのか)逆に銭形が衛兵に連れ去られ、牢の中へと入れられてしまうのだった…
何のために出てきたのか、この回もよくわからない銭形なのだった(哀)
それにしても銭形は、警官だというのにしょっちゅう牢に入れられている。総計何回くらい入れられたもんだろうか(今度数えてみよう・笑)


王宮でようやく、ルパンたちに今回の経緯と目的が説明された。
ナント、ギアーナと結婚してルパンにイララン国を継いで欲しいというのだ。
ギアーナ姫は以前からルパンを慕っていたのだとか。
わざわざ不二子がさらわれたと芝居を打って、王冠を盗ませたのは、国民に広くルパンが如何に大物であるかを知らしめるためだった、と。

不二子は、やたらと乗り気でルパンに結婚を勧めている。イララン王国は石油資源を持っている豊かな国だと囁きながら(結末を知ってからこのシーンを見ると、よくまあみんな揃って嘘ついてたもんだと呆れてしまう^^;)
だがまだ少女のギアーナ。普通だったらロリコンの気はないルパンが結婚を同意するはずはないのだが…
カシム大臣が言う事には、ギアーナは不治の病にかかっており、余命一月あるかどうかという状態。元気に見えたのも、大好きなルパンを迎えようと張り切ったためなのだと。

カシムは渾身の名演技、涙の熱演でルパンにすがりつく。
事情を知らないルパンには、姫思いの大臣が、幼い命を散らそうとしている彼女の最後の願いを叶えて欲しいと、ひたすら懇願しているように映ったのだろう。
ルパンはわりとあっさりと、ギアーナと結婚することを同意した。
……騙して王冠を盗ませたことについて怒りもしないし、あまりに簡単に結婚に同意するので、びっくりしてしまうのだけれど(笑)、「余命いくばくもない少女の最後の願い」となると、無碍に突っぱねるのは忍びないものがある。
とはいえ、普通なら断っても当然の、恩も義理もない人間からの唐突かつ多大な願いを、あっさりと叶えてやろうとするルパンは、さすが大人物といったところか。

早速ルパンはタキシードに身を包み、あくまで紳士的に病床のギアーナの元を訪れ、そしてプロポーズするのである。
くくっ、ギアーナ、羨ましい子!(笑)
そんでもって、この後ルパンに対する態度がすべて演技だなんて…ギアーナ、恐ろしい子!!

ギアーナは、ルパンのプロポーズを無邪気に受け入れることなく、「無理しなくていいのよ」と寂しげに答える。
どうせ大臣からプロポーズするように言われたのだろうと、真相に気づいていることを示す(当たり前なんだが)。
もうそれほど長く生きられないらしい少女から、こんな態度を取られた日には、何かしてあげようって気になろうというものだ。
うまいのは、「最後に一つお願いがあるの」と、はかなげな様子で言いかけた後、「やっぱりいい。ルパンといえども無理だろうから」的な思わせぶりをすることだ。不二子の入れ知恵なのだろうか。
ルパンは「あなたには無理」だと言われたことほど、挑戦してみたくなる。そんな性質をよく利用している。

案の定、ルパンはお得意の「ルパンの辞書に不可能の文字はない」と宣言し、ギアーナの願いを聞き出そうとした。
彼女の願いとは、一度でいいから雪を見ること、であった。
砂漠に雪が降り積もったら、どんなに綺麗だろうと目を輝かせる。
当然、カシムは「絶対に無理」と嗜めるのだが、そうなればなるほど、ルパンはその願いを叶えずにおくものかという気持ちになってくる。
「やったろーじゃないの」と勢い良く、砂漠に雪を降らせてみせると約束するのだった。


ルパンの作戦その1:舞台よろしくギアーナの部屋の窓から紙ふぶきを降らせて、雪だと思わせようとする。
結果:ふぞろいな形の紙ふぶきだったため(手抜きしたな!笑)、ギアーナに見破られる。
ルパンの作戦その2:雪が降ってる映像を、映写機で窓に映す。
結果:古い映写機だったため、壊れて映像が逆向きに。地から雪が降っている(!)状態になってしまい、ギアーナに見破られる。
(ついでに、ポンコツ映写機をぶん殴ったせいで爆発し、次元と五右ェ門はボロボロに)

あまりに幼稚な誤魔化しだったので、ルパンたちはカシムから叱られる始末。
ショックのあまりギアーナの病状は悪化してしまった、とまで言われてしまう。
まあ、ルパンもずいぶん安請け合いしてしまったし、さらには二度目の作戦時には「ルパンは嘘つかなーい」と言ったそばから嘘ついていたわけで、お粗末といわれればその通りなのだが…
このシーン、カシムに「嘘で誤魔化そうなんてセコイ」と言われ、「はい、そう思います」としょげてるルパンは可愛くて好きだ(笑)

そこへ、不二子が「いい方法が見つかった」と部屋に飛び込んでくる。
秘密組織スパイダーが開発した、スノー・カノンという武器があるのだという。
暗黒街に詳しい次元の解説では、スパイダーというのは、発明家崩れの薄汚い連中で、特にリーダーのイブタンピンは蛇のように執念深い男なのだとか。
スノー・カノンはどこでも好きな場所に好きなだけ雪を降らせることが出来るというシロモノで、スパイダーはこれであちこちの国家を脅迫しているのだった。
確かに、スパイダーの思惑のまま本来降るべきでない場所や季節に雪を降らされてしまったら、どんな国家でも様々な面でとてつもない打撃を受けるだろうから、脅迫するための武器としてはかなり有効だろう。
このような組織が相手であれば、遠慮なく奪えるというもの。ルパンは早速、スノーカノン奪取のため、スパイダーの本拠地、アフリカのキリマンジャロ周辺へと飛んだ。


砂漠に降る雪

仰々しい基地を構えるスパイダー(さすが秘密組織・笑)。
ルパンは、夜になってから潜入しようとしていたのだが、そこにカシムから連絡が。ギアーナの容態が急変し、もってあと三日だと告げられる。
そこでルパンは、夜になるのも待たずに、真正面から乗り込むことに決めた。
次元は俺の命も今日限りかと、縁起でもない台詞を呟いたりするのだが、文句一つ言う事なくルパンと行動を共にする。もちろん五右ェ門も。
スパイダー側から発射されるミサイルを、ルパンは巧みな運転で避けつつ進み続け、ゲート付近に来ると車をぶつけるぞと相棒らに伝える。
次元は「好きにやってくれ」とぶっきらぼうに答えるのみ。
三人は息ピッタリに車を飛び降り、無人のジープが敵本陣に突っ込んでいった。その混乱に乗じて、三人は潜入を果たす。

この辺、次元も五右ェ門もルパンの良き相棒という感じで、とても好ましい。
言い出したら聞かないルパンに対して諦めているようだけど、実際そんなに投げやりになってるわけでもなく、「任せた、ついていくから好きなようにやれよ」と、ルパンに命を預けたような信頼感が感じられて、いいなぁと思うのである(妄想混じりすぎ?笑)

ルパンらを迎え撃つイブタンピンは、横柄で乱暴な、いかにも組織のボス的な男。
女に囲まれ爪を切らせてるのだが、粗相をした(爪切りすぎただけ)女を足蹴にしたりしていやな感じ。
ミサイルで簡単に片がつかず、あっさり侵入されてしまったため、自ら動き出すことに。
この組織の目玉(笑)、目ぼしいブツはスノー・カノンくらいなのか、侵入者が泥棒のルパンだとわかると、狙いはすぐにバレる。

目的のスノー・カノンは、第四倉庫にあることがわかっている。(不二子がどこかから持ってきた『トップ・シークレット』の書類は役立つなぁ)
ルパンは、次元に大型ヘリを調達するように言い、二人は一旦別行動に。
倉庫を開けるルパンは、爆弾で扉を吹っ飛ばしてしまっていた。この回、侵入方法といい倉庫の開け方といい、とにかく荒っぽいのだが、ギアーナの命が尽きようとしている切羽詰った状況がルパンにそうさせたのだろう。盗みのテクニックに凝ってる暇はなかったのだ。

五右ェ門は倉庫付近で接近してくる兵士らを倒していた。
そこで発見した火炎放射器、これを五右ェ門が鞘に収めた刀でぐいと押し、炎を吹き出させている。ちょっとしたシーンなのだが、この動作が地味にお気に入り^^


スノー・カノンを発見したルパン。無線によると次元も無事大型ヘリを盗めたようだ(次元もやる〜!)
あとはヘリにつないでスノー・カノンを持ち帰るばかり…という時、イブタンピンが武装した部下を引き連れ登場、ルパンを取り囲む。
しかし、イブタンピンの優勢はほんの一瞬しか続かなかった。五右ェ門が背後に忍び寄り、例の火炎放射器をつきつけたのである。
毎度、五右ェ門の登場タイミングはオイシイことこの上ない。ルパンと一緒に「五右ェ門ちゃん、か〜っこいい!」と叫ぼう。(嬉しそうなルパンの顔がイイv)

ボスをバーベキューにされるわけにはいかないスパイダー、ルパンの言いなりになってスノー・カノンをワイヤーに取り付けるお手伝いまでしてくれた。
そしてルパンたちは、悠々とスノー・カノンと一緒に空へと飛び立つのだった。
あとには、全員坊主頭にされてしまったスパイダーの面々が残されるのみ。(五右ェ門の斬鉄剣で剃った?まさか?!)
国家相手に脅迫してる秘密組織というわりに、あまり手ごたえもなく、それほど印象に残らない敵役だった。ルパンはとにかく急いでいたし、特に因縁があったわけでもなく、行きがかり上関わっただけの相手だから、仕方ないか(笑)

イララン国に戻るや、ルパンたちはスノー・カノンを発射させる。
黒雲が立ちこめ、雷が鳴り響いた後、ついに雪が降った。
今度こそ本物の、正真正銘の雪、決して降るはずのない砂漠に雪が降ったのである。

しかし。あれほどまでに急いだというのに……ルパンは間に合わなかった。
部屋に入ると、姫の顔には白い布が。周囲では、ギアーナ姫の死を人々が悲しんでいた。彼女は、雪を見ることなく死んだと告げられる。
その時のルパンの表情!!
悲しみよりも強く、雪を間に合わせることが出来なかった…気の毒な女の子の最後の願いを叶えることができなかった自分への怒りが浮かんでいるように見える。
ルパンのそんな表情がとにかく切ない。
泣きながら走り寄ってくる不二子すらも拒んで、ルパンは扉を閉じて去っていくのだった。

ロンドンのアジトに戻っても、ルパンの顔は冴えないまま。窓辺で一人黄昏ている(うう;;)
が、新聞を読んでいた次元が、イララン王国カシム大臣のインタビュー番組を見つける。テレビではとんでもないことを発表していた。

イララン王国は、石油埋蔵量が殆どゼロになっており、石油産出国から農業国へと生まれ変わろうとしている。
そのため、スノー・カノンを使って砂漠緑化を進めているのだと言う。
雪も溶けてしまえば水になる。砂漠に降らせれば、農業が可能な緑の大地に生まれ変わるということなのだろう。
元々はアンダーグラウンドな組織の持ち物、しかもそれをルパンに盗ませたスノー・カノンを、さも自分の国で発明しましたという顔をされれば、次元ならずとも「チッ」と舌打ちの一つもしたくなろうというもの。

しかも、スノー・カノンの発明者としてちゃっかり不二子が登場し、さらには計画のスポンサーとして、死んだはずのギアーナ姫が元気一杯の姿を見せていたのである。
ルパンたちは当然仰天。
ルパンは「一杯食わされた、効いたぜ、プリンセス・ギアーナ」と言いながら倒れてしまった。
すべて、不二子、カシム、ギアーナの計画・芝居だったのだ。ルパンは、農業国として再出発したいイララン王国に、そして不二子に利用されるだけされてしまったというわけだ。


個人的には、どうしてもモヤッとしてしまう。
たまにはルパンが騙される回があってもいい。不二子側が全面的に勝利しても、面白いと思う。
所詮、ルパンたちの世界では、騙される側が悪いのだ。そういうシビアな世界なのだろうということも、判っているつもり。
ただ。
ルパン贔屓の甘ちゃんな私から見ると、かすかに後味の悪いものを感じてしまうのだ。

自分には何の得にもならないというのに、まるっきり縁もゆかりもない女の子の願いを叶えてあげようと思った、ルパンのその優しさに付け込んでいるというのが、まず気に食わない。
「少女」「余命いくばくもない病人」と、計画にあざとさが感じられる。
そして、ルパンがギアーナに雪を見せることが出来なかったという筋書きになったてるところが、切なすぎる。
ギアーナがルパンのお陰で雪を見ることができ、満足してから世を去ったという設定にしても良かったんじゃないのかいと、この計画立案者に一言もの申したくなってしまうのだ。

見破られる恐れがあるだろうから、息を引き取る瞬間を演じることを避けたのは判るが、ギアーナが雪を見ながら「ルパン、ありがとう」と微笑むシーンくらいあってもいいような気がしてならない。そのシーンを付け加えたところで、それほど筋書きが変わってくるとは思えない。
元々ルパンはスノー・カノンなんか欲しくなかったのだから、ギアーナが一度雪を見たからといって、「満足しただろうから、これ持って帰る」なんて言わないだろうし。
徹底的にルパンの情けに付け込んで騙した上に、不必要な自責の念まで感じさせる必要なんかなかったのでは。
数日後には世界的にこのインタビューが放送されて、ルパンも真実を知るだろうから、ちょっとの間くらい悲しませたっていいやってもんじゃないでしょ?と、ムキになってみたり(笑)
確かに、「雪を見ずに死んでしまった気の毒な姫」→「でも実は元気に生きてて、全部芝居だったんだよ〜ん」のパターンの方が、(作品上)インパクトがあって正解なんだろうということもよくわかる。
ニュースでの種明かしさえなければ、もしかしたらルパンは騙されたことにすら気づかなかった究極の詐欺だったわけで、その辺は敵ながら天晴れとも思うのだけど。嗚呼。

実際にギアーナが不治の病の少女じゃなくて良かったと思うし、こんな芝居をした彼女には国のためという大義名分があるわけだし、幼いので無邪気に大人の言いなりに演じてただけなのかもしれないが……個人的にはあまり好きになれない。
こんな風に捉える必要のない話だとわかっていても、ルパンスキーとしてはついため息をつきたくなってしまうのでした。


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