第150話 ピアノ交響曲「動物園」


惜しい話

個人的に、この話はすごく「惜しいな〜」と思ってしまう作品。
(B級視点で楽しめる箇所はわりとあるものの)正直全体的にあまり面白いとは思えないんだけど、もっとやりようがあったのではという気がして、残念なのである。
最初に展示するものありきで建物が作られ、どこからもそのままの形ではピアノを運び出すことは出来ないという状況設定は、ルパンの挑戦としてとても面白いのに…と思ってしまう。
分解しなきゃ出せないのは当然だとしても、ルパンたちがピアノに近づく過程をもっとひねったり、警備に当たってる銭形とのスリリングなやり取りがあったりと、盗む場面で盛り上がってくれたらなぁと、つい欲が出てしまうのだ。
タイトルでクローズアップされているように、ルパンの「不思議な動物園」がこの話の見所なのかもしれないが、その辺のトホホっぷり…というか、あまりに子供騙しのトリックは脱力を誘う。作品全体が弾けたコメディになっていれば、動物園のシーンも面白かったかもしれないが。


話の発端は、またもや不二子。
カーネギーホールで、天才ピアニストケレンスキーの演奏をうっとりと聞き入っていた彼女は、ルパンたちの元へ盗みの話を持ちかける。
が、最初のうち、ルパンたちはやって来た彼女に全然関心を払わない。
ルパンと次元は二人でポーカーに興じているし(1ゲームで掛け金200ドル!)、ラジカセからは「浪曲子守唄」がガンガン流れている。
あからさまに、クラシックに浸ってた不二子とは相容れない雰囲気(笑)。まあ音楽は、ルパンと次元が五右ェ門の趣味に合わせてあげてたんだろうけれど。
ちなみにルパンと次元のポーカー勝負は、ストレートに対してフラッシュを出した次元の勝ち。200ドルは彼のものになった^^

ようやく不二子の話に耳を傾けてみると、こういうことであった。
時価数億ドルとも言われる、世に二つとないジョビッチのピアノを、プラハにある「音楽の殿堂」から盗み出して欲しいというのだ。
が、最初、次元と五右ェ門は仕事を下りると言う。
いくら高価なものだとはいえ、楽器類は興味がない人間にとって盗む価値など最も見出しにくいものの一つだろう。
ましてや不二子が持ってきた話となると、尚のこと(笑)

だが、今回の不二子は一味違う。次元の乗せ方が、非常に上手いのである。
「音楽の殿堂」というのは、ケレンスキーが3年前に設計した建物であり、ピアノをまずホールの中央に設置した後、壁、そして天井を作っていったという代物で、入口はたった一箇所。防犯設備も充実している上、周囲は狙撃兵に固められている……
そうやってターゲットの難攻不落ぶりをさんざん吹聴し、「あななたちでも無理ね。他を当たるわ」という、これ見よがしな挑発をしてみせる。
次元は、不二子の手であることを百も承知で(これがツボ)、それでも挑発に乗らずにいられなくなって、結局OKしてしまうのである。
挑戦好きのルパンとは微妙に違い、次元の場合は負けず嫌い魂に火がつけられた(男の意地!)、といったところだろうか。
五右ェ門も同じような気持ちだったのか、次元が了承すると何だかんだで彼も頷く。

なぜか今回、ルパンが最後に話に乗るかどうか確認されるのだが、不二子にとってルパンは自分の味方であることは自明だったからか。加えて、毎度お馴染みの奥の手、「ルパンの言うこと何でもきいちゃうわ」攻撃も忘れない。
元々、ピアノの一つや二つすぐ盗んでやるといったスタンスだったルパンが、より乗り気になったのは言うまでもない。
不二子を抱き寄せ、「(何でも言うことを聞くという約束を)忘れないでくれよ!」と迫るルパンに、不二子が「うん」と答える。この「うん」が、すごく可愛い!ついでに水玉のワンピースも可愛い!

その不二子の望みは、チェコから亡命してきたケレンスキーにそのピアノを盗み出してあげて、カーネギーホールで彼がジョビッチのピアノを弾くのを聴きたいというものなんだとか。
自らもピアノを嗜む不二子だし(127話)、 クラシックを好んでる様子も以前にあるので(79話)それについては納得がいく。また新ルの不二子は時折妙にミーハーなので、素晴らしい演奏をする上、何 となく二枚目系のケレンスキーにポーッとなってしまい、彼の演奏を最高のピアノで聴いてみたいという気持ちになったとしても不思議はない、のかもしれな い。……うーん。

どうでもいいことだが、最初に不二子の依頼を断る次元が「俺は芸術家なんて大嫌いだ」と言っている。
クラシック音楽は好きだが、それを創造・演奏した(する)人は嫌いなのか。まあ「芸術家」という自意識に凝り固まってるタイプは、確かに次元が苦手としそうだ。

不二子は早速、ケレンスキーにルパンがピアノを盗むためにプラハへ向かったことを報告。
元々親しかったのか、演奏を聞いた後知り合いになったのか。(後者だったら不二子ならではの素早さ!)
作曲しながら不二子の報告を聞き、私が設計した音楽の殿堂から盗むなんて不可能だ…と答えているケレンスキーは、いかにも芸術家然とした、傲慢で気取った感じの男。
不二子とケレンスキーがこうして二人で会う仲だというシーンがあるので、最後で二人がグルになってルパンを騙すのかと思いがちだが、そういう展開にはならなかった。意外といえば意外!?


一方、プラハへ向けて、ルパンら三人は車を走らせる。
すれ違う戦車を見て、チェコの国境警備隊の厳しさについて呟くルパン。そして難関はそれだけでなく…例によって例のごとく、銭形が追ってくるのであった。
わらの巨大な山に車ごと突っ込み姿を隠すことで、銭形をやり過ごす三人。
再びあわられた時、ルパンは口の中のわらを「プラハ!」とダジャレと共に吐き出し、こんな時でも笑いを忘れない。

ところで、この回のルパンたちの顔、あまり私の好みではないのだけれど、一箇所激ツボなシーンがある。それがこのわらのシーン。
ダジャレ後、「(銭形のしつこさには)頭が下がるよ」と言い、困ったような顔で次元をちらっと見つめるところ。
他愛のないシーンなんだけど、ルパンがすごく可愛い顔していて、この1コマだけ大のお気に入りである。興味のある方は、ぜひ一時停止してじっくりご覧になってみてください(笑)


音楽の殿堂

プラハについたルパンたちは、地図を見ながら音楽の殿堂に向かっている。
街中で地図を見ているルパンたちというのは、何だかレアな感じがするような。チェコには土地勘がなかったのだろう。
たどり着いてみると、音楽の殿堂の警備の厳しさは一目瞭然。易々とは近づけない。
…かと思いきや、五右ェ門がいいもの発見。下水道へ入るマンホールだ。
ナントナント、それはまんまと音楽の殿堂まで伸びており、潜入に成功する(早)

だが、その後はまたもや簡単にいかず、ドアに触れようとしただけでも危険が一杯。五右ェ門に制止されなかったら、ルパンは黒こげになっていたかもしれない。試しに五右ェ門が投げた針が触れただけで高圧電流が流れ、警報装置が鳴り響いてしまう。
やはりまだまだ準備不足。プラハに来たその足で潜入したのだから無理もない。
ルパンたちは、一旦引き上げることになった。

翌日、銭形も音楽の殿堂に到着。その様子を、ルパンと次元は隣の建物の屋根の上から眺めていた。
銭形が、現地の警官(あるいはガードマン)に警備状況を説明されるのを、ルパンも一緒になってどこかから偵察する(あるいは銭形に化けて直接見聞きする)というのは、ルパンが良く使う手。しかもかなり有効。今回も、それでピアノの警備状況がわかった。
ピアノに安易に近づくと、殺人レーザーが発動し、接近しようとしたものは穴だらけにされてしまうのだ。
それを見たところで、ルパンたちは警備兵に発見される。
次元が銃で応戦し、二人はあっという間に逃げ出した。(この次元、ちょっとカッコイイ^^)


作中でははっきりしないが、たぶん最低でも数日は準備期間を設けたのだろう。(文化大臣の許可書やニセジョビッチのピアノの用意、またピアノを分解する練習に、数日くらい要りそう)
再度、ルパンたちはジョビッチのピアノに接近する。今度は、ピアノの反響板の補修作業員として入り込むのだ。
銭形は「聞いてないぞ」と不審そうにするもの、大臣の許可書でなぜか大人しく二人を通してしまう。確認もせずに。この回の銭形、権威に弱いのかも。
ルパンが自信ありげに電話して確かめろと言っているので、もしかしたら本当にどうやってか「本物の許可証」を手に入れているのかもしれないが(ハッタリの可能性も高そうだ。笑)

作業時間は30分だけ与えられた。その間、殺人レーザーは切られている。
銭形が見張っていないことをいいことに(ピアノから目を離すなんて迂闊すぎない?!)、ルパンと次元は素早くピアノを分解。
それを反響板で包むようにして隠すと、「30分以内では作業が終わらないので、工場に持って帰る」というニセ作業員ルパンの言葉を、銭形はそのまま信じて、荷物ごと通した。
当然、ピアノに異常がないか銭形がちらっと確認するのだが、置いてあるのがゴム風船で出来た贋物ピアノであることには気づかない…

運ぶ途中で、ピアノのペダルが銭形の前に落ちてしまう、というちょっとしたヒヤリ場面はあるものの、ルパンのいい加減な説明ですぐに銭形は納得してしまうのだった。
あ〜惜しい。銭形がもう少し強敵で、盗む過程が面白かったら!
ルパンと対決するゲストキャラがいないのだから、銭形にもう少し手ごたえがあった方がいいと思うんだけど。(と、繰言;)

ペダルを見ても気づかないのだから、銭形はピアノそのものにあまり馴染みがないのだろう。
ゴム風船のジョビッチのピアノを前にして(しかも至近距離)、やはり輝きが違うなんて言っているし。
が、触ってしまえばさすがにゴムだということがばれる。
銭形は、作業員がルパンだったことにようやく気づき、追跡を開始する。

あれだけ警備が厳しかったはずの音楽の殿堂だが、ピアノという人質(モノ質?)を取られているためか、あまり激しく銃弾を浴びせられることもなく、ルパンたちは正面から逃げ出した。
銭形はジープで追うものの、飛び出してきた車とぶつかってしまい、その隙にルパンたちを見失う。
すぐに国道をすべて閉鎖させ、積荷を片っ端から調べることにした銭形、この辺はさすが手馴れたもの。
こうして、ピアノを分解して運んでいるトラック探しが始まった。


動物園

銭形は、チェコ警察(?)に指示しつつ、自分でもルパンたちを見つけ出そうと必死になっている。
見るからに怪しい(笑)山のようなわらを積んだトラックを止めて調べてみるものの、見事に銭形の勘は大はずれ。
この回は、いつものような野生の勘まで鈍らせているんだから、銭形が手強くないのも当然なのかもしれない;
そんな中、いよいよルパンたちが化けて検問にやって来る。

彼らが化けているのは、移動動物園ご一行様。
大きく「ZOO」と書かれた派手なトラックに、これまたびっくりするほど派手な変装をしている次元と五右ェ門が乗り込んでいる。
見世物的な動物園のスタッフという設定だからなんだろうけど、とにかく派手。
次元の茶髪&サングラス&真っ赤な服、というのも相当なインパクトだが、助手席の五右ェ門の、赤と黄のボーダーシャツに眼帯と髭という格好も、要チェックかも(笑)
パスポート(モチロン偽造)を無言で提示したまま、五右ェ門は銭形からそっぽを向き続けているので、画面上あまり映ることがないのが非常に残念だ。
不思議な動物園に納得しない銭形の相手は、次元がつとめることに。この次元の演技がまたいい感じ^^

扉を開けるごとに、違う動物が見られる不思議な動物園という触れ込みのトラック。百聞は一見にしかずというわけで、次元は“動物園”の扉を開けて見せた。
そこには一匹のゴリラが。覗き込んだ銭形の顔を、思いきり引っかく暴れっぷり。(サルのやることですからご容赦をと、シレッと言ってのける次元が妙におかしい)
ご承知のように、このゴリラは、ルパンの変装。
次に次元が、ライオンをお見せすると言うと、ライオンに変装してみせる。扉を開けるわずかの時間で早変わりしているというわけだ。

ルパンならば動物に化けることも朝飯前で、人間の時と同じくらいハイレベルな変装が出来ることは、40話でも証明済みだが…
それにしても、どうして動物園?しかもこんなトリッキーな。
コンテナの扉を開けるごとに違った動物が見られるなんて、余計に中を調べてみたくなるような気がするのだが。
しかし、この回の銭形は、是が非でも中を見せろなどという野暮は言わなかった。
ただ「パンダが見たい」というリクエストをしただけだ。

突然のパンダリクエストは、ルパンを慌てさせるに十分だったが、そのピンチも白熊の着ぐるみに黒ペンキで模様を描く(!)という荒業で難なく乗り切り事なきを得るのだった。
ナンなんだ。
まあこのシーンは、唐突にパンダなんて言い出されたにも関わらず、ルパンを信用してちゃんと扉を開けた次元、その信頼関係が良いということにしておこうか。
……なぜだか妙に疲れるシーンである。

結局、この動物園にいたく満足した銭形は、ろくろく車の中を調べることもせず、次元と握手し「世界中の子供たちを喜ばせてやってくれ」と餞の言葉まで添えて彼らを送り出してしまった。例のピアノのペダルがひょいと飛び出したアクシデント(?)もあったというのに…
ちなみに五右ェ門は、この時もそっぽ向いたままだった(笑)


こうして、チェコからジョビッチのピアノを盗み出したルパンは、不二子との約束通り、カーネギーホールにそれを運び込んだ。
自分のピアノとご対面したケレンスキーは、大感激の様子。
不二子に「さすがね」と称えられたルパンは、早速不二子を言うとおりにさせようとするのだが、演奏を聴いてからと、またもやおあずけ。

その時、ケレンスキーが本性を現す。
彼は、カーネギーホール中に、ピストルを構えた警官隊を、そして銭形警部を“招待”していたのだ。
不二子は最初から、ピアノを手に入れるためだけに利用されたようだ。
約束が違うと、ルパンと不二子は怒るのだが、視聴者側としては不二子とケレンスキーがどういう約束をしていたのかそもそもよく判らないので(ピアノを盗んであげるから、生演奏を聞かせてね…という約束だけだったのだろうか??)、「こやつ裏切ったな」という感じがあまりしない。
また、ケレンスキーがそうまでしてこのピアノに執着している気持ちもよく判らないので、せっかくのクライマックスだというのに、このシーンは気分的にあまり盛り上がらない。
いずれにしても、ケレンスキーは自己中心的な悪い人のようだ(笑)

それをルパンは事前に察知していたからなのかどうか…
ケレンスキーがピアノを奏でようと両手を鍵盤に叩きつけた瞬間、それはバラバラに壊れてしまう。
組み立てる際、ルパンがネジを一本、わざと締めずに置いたせいだ。
分解していく過程で、ピアノは壊れてしまったように見える。ついでにケレンスキーも少し…(「お前はどうしてこんな姿にーーー」という叫びはナイス)

ルパンはそのネジを銭形に「返す」として放り投げると、その隙に不二子と共に逃げ出した。
警官隊らは発砲するものの、ルパンが配電盤に一発お見舞いすると、ホールは停電状態に。真っ暗闇の中、ルパンを追う途中で舞台に取り残された銭形は、発砲をやめるよう叫ぶのだった。チャンチャン。

ラストも想像通り、ルパンは不二子に約束を果たしてもらえず終い。
ルパンが呑気に「浪曲子守唄」なんか口ずさんだのがお気に召さなかったのか(あんなに聞きたがってたジョビッチのピアノでのケレンスキーの演奏はきけなかったし)、あなたって音楽のセンスがないとかなんとか言われ、あえなく車からポイされてしまう。
ルパンは一人、その歌を口ずさみながら去っていく。
ちなみに、「未練は…あるよ!」と歌詞を変えたのは、山田さんのアドリブらしい(DVD解説書より)。

何というか、もう少し盛り上がる箇所があったら良かったのに…と、またしても、しつこいくらいに言いたくなってしまう話なのだった。
(せっかく安原義人さんがケレンスキー演じてたのに、つくづく残念!←個人的趣味丸出し発言)


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