第21話 さらば黄金伝説


耕運機カーチェイス

この作品は、冒頭の耕運機によるカーチェイス(耕運機チェイス?笑)がスピーディーで痛快そのもののシーンなので、前半はかなりのハイテンションで見ているのだが、後半にいくにつれて勢いも失速し、何となく退屈になる話である。ごく個人的感想。
なぜ後半が盛り上がれないんだろう?と考えた事は後述するとして。
それを差っぴいても、この話は美味しいシーンが諸々あり、中でもルパンの3種類の姿(テレビクルー・人民工作員へのちょい変装、及びパンツ一枚!)が楽しめるので、ルパンスキー的に好印象の1作。


物語の舞台はまず日本。とある古墳に、ファイバースコープが入り、その内部をテレビ中継しているシーンから始まる。
外見上、典型的な前方後円墳に見えるが、実況者によると「飛鳥時代のものとも、紀元前1世紀のものとも言われている」のだとか。…って、紀元前1世紀と飛鳥時代じゃ大違いすぎ!!(笑)と、ちょっぴりツッコミたくなるコメント。学者同士の意見が対立してたのかしらん。
いずれにしても、「日本のルーツがわかるかもしれない」という重要な古墳であることには間違いないようだ。周囲は物々しく警戒されている。
…モデルとしては、高松塚古墳やキトラ古墳なのだろうが、時期的に考えると、1983年にキトラ古墳から彩色壁画(玄武)が発見されて話題になったので、よりキトラの方がイメージモデルなのかな?という気がする。
作中の古墳は、「西ノ大路の古墳」と呼ばれている。

ファイバースコープが古墳の奥深くに入っていく様を、テレビ中継車の中で葉教授と銭形が見守っている。
葉教授はどうやら中国人のようだが、日本の古墳は中国(思想)の影響を受けているためか、この古墳についても造詣が深く、銭形にいろいろと解説を施している(本当はライフワークの崑崙発見のために詳しいんだけど)。
この貴重な文化遺産のために、掘り返したりせずこうしてカメラを入れ、石室内部を観察するのが保存のために良いのだとか。

さてさて。物語の本筋からは脱線するのだが、以前からずっと気になっていたのは、教授が古墳壁画を解説する時の言葉なのである。
古墳を四神が守ってきたとして、その名前を挙げる際、通常の四神とは違っているのだ。
玄武・青龍・朱雀・白虎を四神とするのが普通だが、この古墳では違っている。朱雀の代わりに「ショウコ」という名の神獣が描かれているのだ。その見た目はたてがみのようなものが顔部分を縁取り、その尾は蛇になっている。
初めて見た時「ショウコ??」と一瞬だけ不思議に思ったような気もするが、その時は特に気に留めずに流してしまっていた。

やがてパースリのDVD-BOXを入手し、何度もこのシリーズを見るようになると、この回の「ショウコ」がものすごく気になりだしてきた。調べようにも、 漢字がわからないのでまるでお手上げ。見た目からして「コ」の字は「虎」なのかなとか、古代中国の墓には魔よけに虎を飾る習慣があったそうだからその辺と 関係があるのか等、いい加減な想像をしていたくらいだが…。とにかくどういう存在なのか、不思議でならなかった。

が。2004年に、池本剛さんが大発見を教えてくださいました!!以下、当時池本さんにお聞きした「ショウコ」についての情報の引用。
“肝腎の正体ですが…麒麟でした。麒麟には数種類あって、明の董斯張撰『広博物志』に曰く「鱗が青いものを聳孤(しょうこ)と言い、赤いものを炎駒(えん く)と言い、白いものを索冥(さくめい)と言い、黒いものを角端(かくたん)といい、黄色いものを麒麟と言う」とあるようです。”

すっすげーー!!と、すっかり大興奮。まさか麒麟の一種だったとは(絵からはとても麒麟に見えない)。
ただ、まだ謎が残っていて、なぜ朱雀(赤)の代わりに「青」の聳孤があてられたのか。
もしもこの古墳が、四神でなく「四霊獣」と呼ばれるものを壁に描いていたのだとしたら、麒麟がいても不思議ではないのだが、その場合「龍・鳳凰・麒麟・亀」にならねばおかしく、白虎が入っていることがネックになってしまう。なぜ麒麟なのか、聳孤なのか、ホント謎。
この辺、個人的に調べてみようと思い、機会があるごとに気に留めてはいたものの、近所の図書館レベルではロクな成果も上がらず、ゆえにレビューも書けず5年の月日が立ってしまう事に。
池本さん、せっかくの世紀の大発見を、長い間溜め込んでいて申し訳ありませんでした。(私信)

で、改めてあれこれ調べてみても、大したことはわからず終いだったが、Wikipediaにも同様の文章発見。「麒麟は鬣や鱗の色の違いによって呼称が変 わることがあり、紅いものを炎駒(えんく)、青いものを聳孤(しょうこ)、白又は白金のものを索冥(さくめい)、黒いものを角端(かくたん)、普通の黄色 いものを麒麟と呼ぶことがある」との記述があり、これは、朱国禎『湧幢小品』巻三十一「龍鳳名状」に記されているとの事。
……愚考するに、朱雀と麒麟の共通点といえば、天下泰平の時、聖人君主の治世に限って出現する「瑞獣(鳥)」とされている点。
また、麒麟は(五行思想に当てはめると「中央」「土」になってしまうが)邪悪な者を炎と化す声で焼いたり、炎で出来た翼があるとも言われてるそうなので、やや炎属性も持ち合わせており(←ゲームじゃないんだけど^^;)、朱雀と被る点がなくもない(強引)。
だから朱雀の代わりに宛てられた可能性はある。が、結局なぜ「青」の聳孤だったのか、という謎は解けなかった(2009年5月現在)。


えー。長々と聳孤の謎について語ってしまいましたが、本題に戻ります。ご安心を。
葉教授が青龍までを説明した時、テレビモニタの中の龍の目が光る。それまでよくわからないなりに(笑)「神秘的ですな」と感心して眺めていた銭形が驚く。だが、さらに驚愕すべき光景が映し出された。
ファイバースコープとして入っていったモノが、突如青龍の目にはめ込まれた宝玉を抉り出したのだ(手荒;←歴史好きとしては遺跡が傷つくのが嫌い・笑)
何事が起きたのかと怒鳴る銭形に、それまでモニタの前に座っていた二人のテレビクルーが振り向いた。「ちったあ、静かに見れないのコトか、とっつあん」と(葉教授の口調真似た言い方も好きv)。
それはモチロンルパンと次元v この時のテレビクルーのお揃い姿、二人とも似合う(ちなみに次元は最初、つけてもつけなくても大差ないようなチョビヒゲを鼻の下につけていたが、銭形に正体を現した時にはすでにそれはなくなっていた)
こんなに近くに二人がいたのに、銭形が気付かなかったとは。よほど古墳の中を見ることに集中してしまったのか。

ルパンと次元は、即座に葉教授を二人で抱え上げ、さっさと中継車を逃げ出す。
転んだ銭形は出遅れてしまうが、古墳の警戒に当たっていた機動隊員らに「何をしとるんだ、早く追え!」と怒鳴り飛ばす。…ポカンとする機動隊員の気持ちもわからんではないが、非常事態に棒立ちになってるようじゃ、役に立つとは言い難い。つくづく部下に恵まれない銭形。

「エッホ、エッホ」という可愛い掛け声(笑)をかけつつ教授を連れ去り、耕運機のところまで辿り着く二人。この時、次元がニヤッと歯をむいて笑うのも、いかにもパースリ次元らしい顔つきだ^^
次元がエンジンを掛けてる間に、ルパンがハンドルを握り、一気に突っ走り始める。
その耕運機の速いこと速いこと!!次元が「耕運機がこんなに速いとは知らなかったぜ」というのも尤もな、ものすごい走りを披露する。
さすがルパンのドライビングテクニックってところでしょうかv
走って追っていた銭形はどんどん引き離されるばかり。途中からパトカーに乗って(でもボンネットの上!)追跡するが、なかなか捕えることはできない。
それでもさすがに耕運機では限界で、パトカーに追いつかれるのも時間の問題だと思われた頃、ルパンは「ナァニ、まだまだこれからよ」と余裕の一言をもらすと、崖下を走る列車に目をやり、そちらへ向けて斜面を下っていく。

銭形も無茶して追撃するが、ルパンは走る列車の前を、ギリギリのタイミングで横切るという神業(!)をやってのける。
ルパンの想定通り、パトカーの一団は列車に阻まれ追跡を断念せざるを得なくなった。
この、列車の前を横切る瞬間、次元が「ウワアアアア(やや裏声)」というような悲鳴を上げてるのと、そんな状態なのに脱げた帽子をパッとキャッチしてるしころが非常にツボ(笑)。
教授だけは耕運機酔いしてたが、「やったぜ次元」と喜ぶルパンも、「命が縮んだよ」と言いつつ、笑顔である次元もこんな逃走劇は手慣れたもの。二人とも最高vv このスリル好きめーっ(笑)
悔しがる銭形に、次元は手を振る余裕すら見せて、三人は去っていった。


崑崙へ

葉教授を連れてきたルパンたちは、クルーザーの上にいた。いつの間にか不二子、五右ェ門と合流している。
だが、せっかく作戦成功したというのに、ルパンは不機嫌丸出しの顔をしている。
というのも、不二子が葉教授にべったりとまとわり付き、さんざん色気を振りまいているからなのだった。(こんな老人にまでヤキモチやくことないのにね!笑)
ただ不二子としては、女好きそうな教授から、あらゆる情報を引き出そうという魂胆だったのだろう。彼が知る「黄金郷」について、質問をしている。

古代中国について50年研究してきた葉教授、ある古文書に「黄金郷は崑崙にあり」と書かれていることを教える。
さすがに歴史系に詳しい五右ェ門は、「崑崙とは古代中国の神話に登場する地名で、どこにもないはずでは」と異議を唱えている。さすが。
だが葉教授はあくまで信じているらしい。三つの水晶を集めると、崑崙への地図が隠されている、と。
今回入手した西ノ大路古墳の青龍の目、そして一ツ目の千手観音像の手にあった水晶、三つ目はラマ教総本山にあるのだという。

そこまで話が進んだとき、突如潜水艦が浮上してくる。ラーメン丼によくついてるあの模様つき(笑)の潜水艦だ。
乗っていたのは、人民工作部長・陳妖令。葉教授と西ノ大路で手に入れた水晶を、引き取りに来たと言う。
次元は銃で抵抗を試みるも、多勢に無勢、結局ルパンたち三人は背中合わせに縛り上げられ、クルーザーに置き去りに。この話は不二子が持ってきたものだった なと確認した次元は、「相変わらずロクな話をもってこねぇ」と愚痴る。最初から不二子は自分たちを利用したのだと思ったのか?それともいつもトラブルを引 き起こす仕事ばかりもっているという意味合いか。(後半パートの様子からすると後者かも)

一方不二子と葉教授は、人民工作部の潜水艦に乗って、本国へと行ってしまった。
距離を取った後、潜水艦からはミサイルのお見舞いがあり、船を失ったルパンたちは、必死に泳ぐしかなくなってしまった。(縛られたままの状態だったせいで、必死に足だけで泳いでいるのがルパンと次元であり、五右ェ門は冷静な顔のまま乗っかってる図が非常におかしい^^)


さて、人民工作部の本拠地(?)では、すでに一ツ目の千手観音は入手してあり、取り戻した葉教授に対して陳妖令の尋問が始まっていた。
クルーザーでも「人民裁判にかけられる」と怯えていたり、ここでも水晶に光を当てると見える地図についての解説を拒んだり、どうも教授はこの時点で黄金郷を国に見つけられるのを快く思っていない様子(に見える)。
そこへ登場するのが、シンガポール華僑の大ボス・王大全だ。さすが不二子、裏社会の大物についての情報はしっかり把握しているらしい。一目見ただけで判っている。
彼は酒を飲みながら、地図がゴビ砂漠である事を言い当てる。
それでも答えを言い渋る教授に、陳がコンクリートブロックを頭突きで割り、王が薄ら笑いを浮かべつつ「この男は短気だから」と脅しにかかる。

不二子はすかさず、手なずけた教授に対して「黄金郷を発見できるなら誰と組んでもいいんでしょう?」と間を取り持つ。
葉教授は不二子に頬をなでられ、渋々といった感じでようやく同意した。
この時点では、崑崙が本当にあるとこの目で確かめられればいいのだからと、学者らしい発言をしている。……ラストでの展開を考えると、ホント「狸オヤジ」の名演技といったところ。ルパンの仲間である対不二子向けの演技だったのだろう。
ただゴビ砂漠のどこにあるのかは、三つ目の水晶を手に入れなければわからない。それはチベットのラマ教総本山にあるとの事。
一行はチベットへと向かった。


険しい山道を登った果てに、不気味な寺院が姿を見せる。中へは、李伍長に率いられた人民工作員らが乗り込み、三つ目の水晶を手に入れようと試みる。
だが、寺院の中はさらに不気味であり、様々な像がうっそりと並び影を落とす。入口からして古典的な落とし穴トラップが仕掛けられており、早々にみんなを怯えさせる。
そうしてびくびくしながら進む一行の、一番後ろにいた人物を、音もなく素早く捕まえたのは──ルパンだった。
紛れ込むため工作員の制服を着たルパンのかわいいこと!!この帽子や、ちょいとめくったズボン丈など、可愛い要素たんまり。必見。

主に落とし穴だが侵入者を排除する仕掛けはあちこちにあり、大勢いた工作員も次々と減っていき、ついには李伍長と工作員一人(ルパンv)を残すのみとなった。
最後の大罠・大玉が転がって侵入者をペチャンコにしようとするが、懸命な疾走のお陰で寸でのところで別室に逃げ込め、二人は命びろいするのだった。
……それにしても、大玉が転がってくるというシチュエーションに、よく遭遇するルパンである。すぐに思い出せるのは、新ル14話126話くらいだが。(もっとなかったっけ?)

逃げ込んだその部屋には、魔神シヴァの巨大な像が安置されていた。ルパンは像に杭をひっかけロープで登り、三ツ目のうちの一つにはめ込まれた水晶を入手。
次の瞬間、ルパンに向けて仕掛けが作動し、ヤリが幾本も飛んでくるが、抜群の反射神経で避け、ルパンは無事だった(さすがーv)。
伍長に水晶を差し出すと、それを渡すように言われるが、「残念ながらそういうワケにはいかないんだよね〜」と笑うルパン。


外で一隊の帰りを待っていた陳、王、葉教授、不二子らの元に、李伍長が水晶を携えて戻ってきた。教授が本物と太鼓判を押す。
王が差し出す箱の中には、すでに集めた二つの水晶玉が入っている。これで三つ揃ったわけだ。
そこでルパンは、「これはも〜らい」っと変装を解く。待機組みの工作員が慌ててマシンガンを向けるが、先ほどのお返しとばかりに、姿を現した次元が見事な早撃ちですべて叩き落してしまった。
「ようやく俺の出番だ」と次元が笑うと、追跡されないよう彼らの乗ってきたトラックなどを叩き斬った五右ェ門が「右に同じ」。カッコイイー!
ルパンは水晶だけでなく、ついでに不二子と教授ももらっていくぜと言い放つと、持参していた煙幕弾を爆発させ、そのドサクサで逃げ出すのだった。
ちなみに、またしても次元と二人掛かりで教授を抱えてる。よっぽど重たいんだろう(笑)。また、不二子が自主的にピョンとジャンプして逃げる姿もユーモラスで可愛い。
煙幕に遮られて何も出来ない陳は、ただ悔しがるばかりであった。


…これまたどうでもいい事なんだけど、チベット仏教(ラマ教)、しかも総本山でシヴァ神をこんな風に祭ってたりするもんなんですかね。
もちろん仏教そのものがヒンドゥー教をも吸収しようと、シヴァを大自在天としているし、チベット仏教はインドからも多大な影響を受けてはいるけれども。
と、これは単なる素朴な疑問でした。(確かに怪しげな寺院に祭られているのは、アジア圏だとシヴァがよく似合いますよね^^)


黄金郷

三つの水晶玉と、古文書を読み解ける葉教授を手に入れたルパンたちは、砂漠をジープで走りながらご機嫌で大笑いしている。
不二子も一緒になって笑っており、何らお咎めもなかったようなので、どうやら不二子はそもそも人民工作部と組んでいたりしたわけではなく、連れ去られたのも単に教授が彼女に抱きついていたから、なのかもしれない。

これでお宝を入手したも同然と楽天的な面々とは違い、五右ェ門だけは砂漠の中に湖があるとは信じられんと懐疑的。だが古文書にそう書いてあると教授が太鼓判を押すと、ルパンもすっかりその気で喜んでいる。
「ほらみろ、疑り深いぞぉ、五右ェ門」というルパンに、「さようか?」と答えるこのやり取りもいい!(この「さようか?」が絶妙v)

やがて砂漠の中で嵐に巻き込まれた一行は立ち往生する。そろそろ湖に着いてもいい頃なのに、と教授。見間違えってことはないの?等ルパンとのやり取りを、 最後部座席で聞いている五右ェ門が、何となく不満げな顔をしているのが、無性に笑える。本当だったら「だから言っただろう」とでも言いたかったのかもしれ ないが、また疑り深いと一蹴されると思い賢明にも沈黙を守っている(笑)
どっちにしても砂嵐が止むまで身動きはとれない。従って待つしかないわけで、どうやらみんなは車中で夜明かしをしたようだ。

翌朝、ルパンは一番最後まで寝ていて、次元に起されるのだが……この寝顔がメッチャクチャ可愛い!とんでもなくいい寝顔!!(笑)大好きな1シーンだ。
さてルパンが目覚めて外を見てみると、そこには湖が現れていた。ラストで次元は「オアシス」と表現していたが、個人的には「さまよえる湖」のようなもの?と思ったりもする。
(でもさまよえる湖は、千数百年周期で移動するものだから、さすがにこの場合だといきなり目の前に現れるのは都合が良すぎかしら)

黄金郷は、その湖の中に横たわる釈迦像の首元にある三つの穴に、水晶を戻すと出現するのだという。
ルパンはここでパンツ一丁になって(お馴染みの青系縦縞のルパンツ^^)、張り切って湖の中へ入っていく。そして、二つまで水晶を戻した時、釈迦像が水面へと浮かび上がった。
ラスト1つを入れると、横腹辺りに入口が開いた。そこから黄金郷へと行けるのだった。一人乗り込んでいくルパン。
その時、残りの面々の上空にヘリコプターが現れた……


釈迦像の入口から降りてみると、広大な黄金の街が広がっていた。何もかもが金で出来た街なのだ。あまりに途方もない光景に、ルパンは思わず頬を抓るほど(この仕草も好き^^)。
それにしても。野暮だと承知でツッコむけれど、黄金郷の建物が、あまりにタージ・マハール的な建築様式なので、ちょっぴり苦笑い。年代的なおかしさはさておくとしても、せめて仏教系建築様式にすればいいのに。
まあ、ここはゴチャゴチャいわずに黄金郷の雰囲気を楽しむべきなのだろう。

ルパンは街の中に置かれた一つの巨大な水晶玉に気付く。すると、後ろから「崑崙の玉(ぎょく)アルよ」と葉教授の声が。
崑崙の玉とは、「当時金銀よりも尊く、清純と高貴、洗練の象徴」であり、それを手にしたものは、「天下を取る」と言われているのだという。
ここで葉教授の顔つきが一変。人が良さげでややスケベな学者とは違って、悪者面になっている。そして「これを手にする、ワタシに相応しいアルね」と言うのだ。

そう、葉教授は最初からルパンを利用するつもりだったのだ。そして、人民工作部の陳、そして華僑のボス・王と最初から組んでいたのだ。
笑い声にルパンが後ろを振り返ると、次元・五右ェ門・不二子が縛られて、陳と王の人質になっている。
ルパンは再度教授から玉を奪い返そうと試みるが、仲間に銃を突きつけられては、思うようにならない。

結局玉は教授の手に渡るが……今度は教授に王大全が銃を突きつけ、玉を渡すように迫るのだった。天下を取るに相応しいのは自分だと言って。
玉は教授と王が奪い合い、陳はなぜかルパンに素手で襲い掛かってくる。

正直、この話がトーンダウンするというか、個人的にノリきれなくなるのはこの辺からなのである。
教授が「実は裏切ってました」という展開も、どことなく取ってつけたようだし、さらにそこから仲間割れが発生したり、それとは別にルパンが陳に追い掛け回されたりと、ゴチャゴチャしすぎの感が否めない。
教授すらも「天下を取る」などとありがちな悪役の動機を持っているのが、何より興ざめ。もっと典型的な学者バカみたいなキャラにして、学者の好奇心なり研 究心ゆえに突飛な行動に出て、場をかき乱すというのなら、まだ気分的には納得できたのだけど…。途中まで面白いゲストキャラだと思っていただけに、陳腐な 悪役に成り下がってしまったのが残念。


カンフーバカみたいな陳に追い掛け回されたルパンは、逃げる最中に、玉を奪い合っている二人の間を通り抜け、その時弾みで玉が落ちて割れてしまう。
すると、割れた玉から強烈な光が放たれ、黄金郷の崩壊がはじまるのだった。
そのドサクサで、縛られていた仲間を助け出し、その場から逃走を図る四人。しかし、登っていた階段も壊れ、ルパンだけが逃げそびれ、再び崩壊最中の黄金郷へ転がり落ちてしまうのだった。

この期に及んで、陳はまだルパンを執拗に付け狙い、あくまで拳でやっつけようと襲い掛かってくるのだが、これも妙に興ざめ。状況わかってんの?
そもそも、工作員に変装したルパンに出し抜かれたとはいえ、教授がハナから仲間なのだったら、別にそれほど恨む筋合いはないだろうし、黄金郷に入ってから のルパンの抵抗が面白くなかったにしても、周囲がどんどん崩れ落ちている中で、ルパンをやっつけようと追い掛け回す神経がよくわからない。
このしつこいKY男と争っているうちに、黄金郷には湖の水が流れ込んできて、いよいよ危なくなってきた。

大量の水にあわや押し流されそうになったルパンだったが、先に逃げた三人は当然ルパンを見捨てるはずがなく、工作部のヘリを強奪して、ナイスタイミングでルパンを助けに戻ってくるのだ。(なんか嬉しいv)
ヘリから身を乗り出し、救いの手を出す五右ェ門に対して、嬉しそうに「ごえもーん」と呼びかけるルパンがイイ。こんな時でも笑顔^^
激流の中、投げ出されたロープに掴まり、どうにか助かるルパン。
ヘリの中で「助かったぜぇ」と言っているので、かなり危ういところだったのだろう。

黄金郷は見つけたものの、あっという間に崩壊してしまった事態に、不二子は「どういうことなの?」と不満そうだ。
「神の怒りか?」といういかにも五右ェ門らしい問いかけに、ルパンですらも「かもしれん」と答えている。どこまで本気かはわからないけれども。
結局発見した途端に崩壊してしまったがゆえに、黄金郷を作ったのは、そして三つの水晶の仕組みで隠したのは、何者だったのか判明することはなく、伝説は伝説のまま終わった。
ヘリを操縦していた次元に促され、下の様子を見てみると、水はすっかり地中へと流れ込んでしまい、砂漠に横たわっていた釈迦像すらも、その中へと没してしまった。
ルパンがいうように、まさに「さらば黄金伝説」なのであった。
ラストは、不二子が「少しくらい黄金持ってきたんでしょ」という欲を見せたのに対し、ルパンが「いんや、全然」と答えて怒られる、というある種の定番パターンでシメとなる。


全体的に、神話伝承を元に、あちこち舞台を変えて冒険を続け、最後に伝説のお宝を目の当たりにするという…ハリウッドの冒険映画的な一作で、十二分に面白 くなりそうな題材だったのに、クライマックスの無駄な仲間割れ・ドタバタがどうにも安っぽかったのが個人的には惜しまれてならない。王か陳、どちらかは不 必要だったのでは?という気もする。
耕運機チェイスという名シーンがある回だけに、惜しさも倍増。
とはいえ、楽しいシーン、可愛いシーンが散りばめられてもいて、決して嫌いにはなれない作品でもある。


最後に。この回のゲストキャラ名の正しい表記がわからなかったのだが、現在開催中のPARTIII祭りを参照させていただきました。ありがとうございました!
(PARTIIIのDVDについてるブックレットには「楊教授」とあるのだが、青木悠三のキャラ設定画に書き込まれた表記は「葉教授」だそうなので、こちらに従ってこのページも書かせてもらいました)


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