第29話 月へハネムーンに行こう


プロポーズ

正直、それほど熱烈に思い入れのあるお話ではないのだが(のっけから失礼^^;)、余裕綽綽のルパンの態度や、ちょっとしたポイントだけ、妙にツボにハマる回でもある。

冒頭、ルパンは旅行パンフレットに囲まれながら、不二子に電話。
「盗んで」と頼まれていたマリー・アントワネットのウェディングドレスと結婚指輪を手に入れたという報告だった。
そして、この時ルパンが何度目かのプロポーズをするのである。

「なぁ、不二子。ついでに結婚しちまおうや」
……キャアア!(悶絶←笑)
このさり気ない口調!!本当にサラッと話のついでのように言い出すタイミング。声のトーン。「ついでに」というルパンらしさ。何もかもがツボ。
照れ隠しかもとも思えたり、いやそうではなくて、ルパンにとっては結婚もさらっと持ち出すようなことなのかも、等等、考え始めると、非常に美味しいシーンである。
新ルの頃のように、「ねえねえ〜」と冗談めかして擦り寄る感じとはまた一味違い、パースリらしい大人の雰囲気がにじみ出ていてとてもイイ。
私にとってこの回は、このプロポーズ聞きたさに観る事が多いので(笑)、冒頭で目的を果たしてしまいがちだ。

それに対して「あら、ご冗談でしょ」と流す不二子もさすが大人の対応。
しかし、受け流され慣れてるルパンはその返答に動じることもなく、勝手に盛り上がって、勝手に結婚することにし、勝手にハネムーンまで決めてしまうほど、「不二子との結婚」にノッてしまっている。
ルパンの決めたハネムーンの行き先は、月。普通の人間では決して行けないであろう場所。こんな時にまで、何かに挑戦せずにはいられないのだろう。
不二子との結婚ですら、挑戦のように見えてきたり(穿ちすぎ?笑)

さて。どうやって月へ行くかというと、すでに目星はつけている様子。
マワルド・グルリット博士の元にあるという、ロケットを借りて行こうというのだ。
ルパンのハネムーン計画を聞いた次元と五右エ門。相手が不二子だと知ると、止める間もなく「降りる!」と車から飛び去ってしまう五右エ門。
続いて次元も「俺も」と助手席から逃げかけるが、ルパンがそうはさせない。
「友達甲斐のないヤツだなぁ。次元が居ない結婚式なんて、考えられるか?」というわけで、次元だけは強引に博士の元へ一緒に連れて行かれるのだった。
…ああ、このシーンも好きv

博士の城を尋ねると、そこには物騒な先客たちが居た。
銃を持って城と博士を取り囲み、人質(?)に取ったロボット・ペペを逆さ吊りにして、脅迫している。
彼らを率いているのは、ノイマンという各国エージェントの下請けといった、汚い仕事を引き受けている男なんだとか(次元情報)
一応名前はついているノイマンだが、不思議と影が薄い。私にはいつも殆ど印象に残らず、今回再鑑賞してようやく「ああ、そういえばノイマンって人いたよな」と思い出したくらいだった。

ルパンは部屋に入っても、そんな奴らには見向きもせず、博士に「ロケット貸してくんない?」と持ちかける。
が、博士としてはそれどころではない。博士の発明を自由にしようと、押し寄せる各国エージェントに嫌気が指し、その「発明品」で次々に彼らを撃退すると、あっという間に空に飛んで逃げていってしまう。
博士の発明品とは、強力ロケット燃料のサンプル。葉巻程度の大きさなのに超強力な推進力を生む装置だった。
目の当たりにしたその威力に、博士がロケットを持っていること、城のどこかにあることを確信するルパンなのだった。

その強力燃料を(もう一つあるのを見つけたらしい)、ノイマンらエージェントたちを縛り上げて乗せたボートに取り付けると、次元は銃で着火させて、一言。
「ノイマンさんよ、二度と面見せるなよ」。
…次元の「さん」付けって、呼び捨てよりもずっと無礼な感じがするのはなぜ(笑)

博士が城から去り、物騒な連中も撃退すると、そこにはロボットのペペが動き回っているばかり。
そのロボットは、ルパンに吸盤式の矢を射掛けたりしてからかい、ルパンとの追いかけっこを楽しむ。
見れば見るほど、あまり緊張感のない空気が漂う作品である。


念力!?

どこからかルパンの居所を突き止めて、城を見張る銭形の前を通り過ぎる車が一台。
そこには、一度は「降りる」と言った五右エ門と、運転する不二子の姿があった。
車には大きなダルマも一緒…(笑)これは、五右エ門への不二子の東京土産。
ルパンにはもらう一方でお土産何もなしなのに、五右エ門にはダルマをわざわざ買ってきているのだ。
新ル26話「バラとピストル」では、五右エ門の為に味噌と沢庵を買ってくることになっていたし、不二子は時々五右エ門には優しい。

それにしても、この時どうして五右エ門は戻ってきたのだろう。
ウェディングドレスと指輪を貰いにやって来た不二子と、途中でバッタリ会ったのだろうがと想像できるが…
ルパンの結婚相手が「不二子」であると聞き、不快そうに車を飛び降りたというのに、不二子に会ったからと同行するのも不思議な感じ。
とはいえ、お土産にダルマを貰って気を良くしたということは十分に考えられる。モノにつられたというのではなく、不二子の心遣いに。(五右エ門はこういうのに弱そう)そして、大人気ない自分の行動を反省して、ついて来たのかも知れない。←妄想、妄想(笑)

城に顔を出した不二子に次元は、ルパンとの結婚を本気で考えているのかと尋ねる。
きちんとイエスかノーで答えない不二子が、いかにも!という感じで、次元が苦々しく思っただろうことを想像するとつい笑ってしまう。
しかし次元は続ける。相棒の為に。
「あいつを傷つける前にここから去るんだな」
な〜んて、珍しくシリアストーンの相棒思いの台詞!!ちょっとドキドキv 
考えようによってはお節介と取れる台詞だけれども、殊ルパンのことになると次元は口数が増えるし、相手が不二子だからあえて言ったのだろう。
今回ルパンの結婚願望が、かなり本気モードだったことを察し、どうせそれを利用するだけに決まっている不二子に警告を発したのだ。
次元の見通しは当たっていて、実際不二子はルパンと結婚する気などまるでない様子。
旧ル13話の時とは、まるきり逆になっている。あの時素直に結婚しておけば、ルパンもこんなに苦労しなくて済んだのに。
と思ったが、どう考えてもルパンは好き好んで彼女の欲しいものを盗んではプレゼントし、口説き落とそうとしている……きっとその過程を楽しんでいるのだろうから、やっぱり外野があれこれ言わなくてもいいのかもしれない(笑)。

一方、ダルマと面と向かって、座禅を組む五右エ門。
そこへ、ペペと追いかけっこをするルパンが通りかかる。「来てくれて嬉しいぜ」と朗らかな様子。
続けて、五右エ門に何をしているのかと尋ねると…なんと、彼は「久しぶりに念力を試してみようと思ってな」と、言っている。
…ね、念力?! 久しぶりに?!?
この言葉から考えれば、以前も念力修行をしたことがあるのだろう。
新ルの五右エ門は、ややエスパーじみた活躍をしたこともあったし(新ル59話)、そういう修行をしていたとしても不思議はないのかもしれないが。何だか、すごい(いろんな意味で)

五右エ門が大真面目にそう答えた時には、すでにルパンの姿はなかった(大笑)
自分から尋ねておいて、まったく話を聞いてないルパン。おかしすぎる(笑)
「くっ、やはり降りるべきであった」と悔やむ五右エ門が可愛い^^このシーンもツボ。

追いかけっこの最中、城の中にある教会に辿り着いたルパンとペペ。不二子との結婚式をここで挙げようと、ますますルパンは乗り気に。
大きなパイプオルガンを見上げ、ペペに「ウェディングマーチを弾いてくれよ」と言うルパン。
ためらいを見せるペペ。
その様子から、ルパンは何やら察しをつけたようであった……

不二子はといえば、ルパンからもらったドレスと宝石の数々を身につけ、うっとり中。
どうでもいいけど、マリー・アントワネットのウェディングドレスなんだから、もうエレガントなデザインにして欲しかった〜(いや、ベルばらファンとしては、気になって^^;)
まあ、パースリのポップさとマリー・アントワネットのドレスはトーンが違いすぎてるから仕方ないか(笑)
それに、この頃からすでに不二子の顔の面長傾向は始まっており、ドレスアップしても、「すごい美人」といった感じが薄いのが残念。←あくまで主観
パースリ初期の不二子だったら、もっと似合ったのでは、とないものねだりで考えてしまう。

それにしてもこの話、場面転換が多い、多い。お次はまたもや五右エ門のシーン。
ダルマと対峙し、心の中で「動かぬと斬る!」と脅しかける五右エ門。イメージの中では、すでに叩ききっている。念力ってこんな風にするもの?(笑)
その修行の最中、部屋に紛れ込んできたペペが、なぜか触りもせずダルマを動かしてみせる。
途端に、五右エ門はペペに弟子入り志願。念力について教えを乞い、「ロボット殿」とペペを追い回すことに。
後のテレスペに頻発する「変人五右エ門」の萌芽を見たようで、ちょっとだけ複雑な気分。といっても、この回程度なら、作品がコミカルということもあり、笑って流せるものなのだけれど。

いつの間にか夜になっていて、月の見えるベランダで、ルパンにドレスをお披露目する不二子。
大喜びのルパンが、いよいよ本気で結婚を考えていると知ると「長居は無用」と、立ち去る算段をしはじめる。
ああ、やはり不二子は罪な女(笑)
そんなところへ、ロボットのペペがやって来て、不二子に「なんと美しいマドモアゼル!」と声を上げる。博士の声だ。
どうやらこのロボットは、どこかにいるグルリット博士と通じていて、彼の手足の如く動いているものらしい。

そのペペを連れて、不二子は城を出て行く。
相変わらず張り込みを続ける銭形は、いよいよ城に潜入しようとするが…。
扉のところで合言葉を求められ戸惑う銭形。小声で「開けゴマ」と言ってるシーンがとてもおかしい。こんなベタな合言葉であるはずないよな〜という照れを感じるのは気のせいだろうか^^
案の定暗号は違っており、やけっぱちの銭形が、片っ端から野菜の名前を叫んでいるのも可愛い。


いざ月へ

シーンが一転し、突如大統領の誕生日パーティに。有名人が大勢参列するそのパーティに、不二子も顔を出している。そして、ペペも。
ペペは、遠くに身を隠したグルリット博士の分身的に動いているわけで…
そんなロボットの口から、博士のメッセージが大統領に伝えられる。
今すぐ、武器を外国へ売りつけることをやめるように、と。そうしなければ、博士の開発した技術を提供することはしない意向のようだ。
当然軍事利用したい大統領は答えに惑うが、その時武装グループが乱入し、(なぜか)不二子と、ペペを連れ去ってしまう。

武装グループの前に、唐突に五右エ門が立ちはだかり、斬鉄剣を一閃されるが、その車にはダミー。ニセの不二子もどき・ペペもどきの人形しか乗っていなかった。
「謀られた」と呟く五右エ門を、車で現れたルパンと次元が拾い、後を追う。
この時の五右エ門は、不二子よりロボットを心配していた。…ダルマ土産の感謝はすでに消えているらしい(笑)
そんな姿をルパンに「五右エ門らしい」と言われてるのも、ちょっと笑える。普段の発言が伺えるというものである。

誘拐したのは、えーーーと。あの人。ノイマン!(←実は今本気で名前忘れて、前を見返してきました;;記憶力がやばすぎ)
博士の発明品を是が非でも手に入れようとしての犯行。
しかし、助けにやって来たルパンたちにより、あっさりと撃退される。五右エ門大活躍。
少し遅れて部屋に入ってきた次元など、まるきり活躍する間もなく、終わっていた。ピコピコハンマーで、逃げ出そうとしたノイマンの頭をポコンと殴るだけに留まった。ちょっと残念そう^^
ノイマン、改めてみると雑魚度高いなぁ。
五右エ門は、本当に不二子は眼中になく、ペペの前に恭しく膝をついて無事を喜んでいた。

ルパンの目的は、あくまで月ロケット。博士に会いに行くというと、「塀の中だから無理だ」と言われてしまう。
各国エージェントがうるさいあまり、刑務所の中に逃げ込んでいたのだった。
だが、そこで諦めるルパンではない。
あっさり自首し、しかも「パリの刑務所はドブ臭いから、アミアンの刑務所がいい」などと、リクエストまでしている。それが聞き届けられるのもすごい(笑)
銭形の陰の政治力の賜物なのか、はたまたルパンの爺様のお国許フランスだったし、「自首」が効いて要望が通ったのか。
もちろん、博士がいるからアミアン刑務所に行きたかったに過ぎず、改心したわけでもなんでもないわけだが。

疑わしそうにしつつも、ルパンのためを思ってあれこれ説教じみた演説をする銭形。
勝手にルパンが女にも仲間にも裏切られたせいで自首したのだろうと考えて、元気付けようとしている。まさに親心?!
一方親の心子知らずのルパンは(笑)、銭形の長広舌に退屈そう。手錠を外して遊んだりしている。(可愛い〜^^)
ついに牢の中に入れられたルパンに、何か欲しいものはないかと尋ねる銭形。ある程度なら融通してくれるつもりのようだ。
何だか、銭形の気遣いがイイ感じ。
ルパンは、「ヤスリと上等のワイン」を、おねだり。当然ヤスリは却下だが、ワインなら…と、銭形は調達の為に去っていった。
もちろんヤスリはジョーク。ルパンはちゃんと自分で持参していたのだ。
この刑務所、あまりにもボディチェックが甘い!銭形もついつい油断して、見落としてしまったのだろうか。
ルパンが足の部分の人工皮膚(?)を外すと、ヤスリを取り出し、そこから抜け出す準備を始めた。

銭形に差し入れてもらったワインをもって(本当に調達してくれてる義理堅い銭形)、ルパンは博士の独房へ赴く。
博士と一緒にワインを傾け、語るときの雰囲気がいい。
博士は、自分の発明品を利用すれば、ミサイル技術は向上し、自国が超大国になることも可能だろうとした上で、それは結局、「もっと大勢が死ぬだけの話」と否定的な考えを示す。
ルパンも「違いねぇ」と同意。二人のやり取りは、ごくごくサラリとなされているだけに、印象に残る。
大量破壊兵器、そしてそんな武器を第三国に売る「大国」というものを否定する重いテーマを、こんな具合に混ぜてある辺りが、脚本の大和屋竺氏らしさといった感じだろうか?(個人的にかすかに「狼は天使を見た」に通じる何かを感じるのだけれど…)

博士は、ルパンにロケットは飛ばせないと言うが、実はもうルパンはロケットの隠し場所がすでにわかっていたことを告げる。
そしてロケットを飛ばすために必要なものが、博士のロザリオであることも見抜き、それをちゃっかり盗んでいたのだ。
ああ、やっぱりルパンは泥棒v 油断のならないところが、素敵。
ちなみに、二人が入ったアミアン刑務所の囚人服は黄色に青のシマシマ柄。結構派手で、インパクト強し。

この後、さっさと脱獄したルパンは(その部分は描かれてない。この飛躍もテレビシリーズならではのテンポ)、いよいよ不二子と月を目指す。
結婚する気がなかったはずの不二子だが、なぜかドレスも着て準備万端。あまりのルパンの勢いに押されたのか。
ペペを介して、ワインでいい気分に酔った博士が、オルガンを奏でる(それにしても、獄中からペペを通じて外界が見られる仕組みや、ペペを動かせる仕組みがわからない。深く追求するところではないんだろうけど)。

その曲を背景に、奥に隠された扉が開く。ルパンが見破っていた通り、教会にロケットは隠されていて、オルガンを弾くことで起動するのだ。
そして、奥へ進んだルパンはキー代わりのロザリオをはめ込む。
ロケットは発射準備完了。城が鳴動した。
その時次元は、夜の湖を眺めながら、一目で酒を傾け、五右エ門は相変わらずダルマ相手に念力修行に励み続けている……

地上を離れる段になり、「やっぱり帰らせてもらうわ」と尻込みする不二子。
宇宙に行くことが嫌だったわけでなく(実際新ル53話で宇宙旅行経験済みだし)、多分ルパンとの結婚に踏ん切りがつかなかったのではないか。これもひとつのマリッジ・ブルー?(違)
当然止めるルパン。二人がもみ合っているその時。獄中の博士は、音楽の続きを忘れてしまった。いい加減な人だな〜(笑)

すると、途端にロケットは勢いを失い、湖に不時着してしまう。月へのハネムーンは、夢に終わった。
中からは、怒って飛び出す不二子と、「いいや、ここは月だ」とあくまで言い張り、パンツ一丁になったルパンが現れる。二人とも無事、元気一杯。
それにしても、ロケット内でルパンったらパンツ姿になってるとは、気が早いにも程がある(大笑)
「結婚、結婚」とは言っているが(実際結婚してもいいと思っているのだろうけど)、やっぱり「こういうコト」なのね、とちょっとホッとしてみたり。
やはり独身同士の方が、この二人は魅力的だと思うので。
不二子は唐突に取り出したハンマーで、迫るルパンをぶん殴る。この辺の味わいは、いかにも80年代アニメ^^;

さんざん大騒ぎしたけれど、月へも行けず、結婚もできず、ついでに念力が発動した気配もなく…(笑)
ルパンたちのちょっとした休日のひとコマのような、そんなお話なのであった。
たまになら、こういうトーンも悪くない…かな。


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