第35話 ターゲットは白銀の果てに


金塊5000キロ

どうも記憶に残りにくい……という印象のある作品だった。
ただ、レビューを書くに当たって再鑑賞してみると、結構ワタクシ好みのお話であることが判明。
展開は地味であるが、銭形まできっちり話に組み込まれた、「騙し合い」のお話って、ありそうであまりないような気がするので、その辺がちょっと嬉しい。(頭を使うルパンって好きなのでv)
銀行のものであった金塊を、銀行側の人間が黒幕となり泥棒に盗ませ、己のものにしようとする…という陰謀の骨子は、新ル5話「金塊の運び方教えます」を思い出させるが、それとは違った「騙し合い」をメインに据えているのが、パースリらしい見所か。
パースリ後半にしてはルパンの顔がたまーに好みのモノになったりするので、その辺を発見する楽しみもあったりする。
ちなみにこのタイトルの響き、非常に好きだ。


ルパン・次元・不二子で5000キロもの金塊を盗みに潜入するところから話は始まる。
この三人で揉め事もなく(笑)仕事しているのって、何だか面白い。三人でのお仕事開始までの経緯を妄想するのも一興。
だが、金塊強奪は空振りに終わる。
金塊と見えていたのは、実は立体映像であり、本物はすでに全部持ち去られた後だった。誰かがルパンらの先を越したのだ。
その結果、ルパンたちはやってもいない金塊強奪犯として、警察に追い回されることになる。
脱出する際、三人揃って警官に化けてるところが、ちょっとレア。
ルパンと次元の警官変装なら(テレビシリーズトータルで考えれば)よくあるパターンなのだが、不二子も含めての警官姿は、珍しいといっていいだろう。しか も不二子の警官服は男物のように見えるので、久しぶりの男装という括りにもなるかもしれない(パースリ7話でのウェイター以来??←未確認)

現場を脱出した後は、モーターボートでの逃亡。追ってくる警官に対してか、次元は「盗んじゃいないよー」と、妙に可愛い口調で反論するが(笑)当然警官たちの耳には届かない。届いたところで、ルパンの言う通り聞く耳持ってはくれないだろう。
仕方なく、追う警官のボートを、次元の銃弾で撃退する。
その時の「さすが〜」「実力さ」というやり取りがツボ(^^)。昔はルパンに褒められると嬉しそうだった次元も(「ターゲットは555M」とか)、こんな風に受け答えする時もあるのねと、ニヤリとしてしまったり。
続いて、追っ手は巡視艇(?)を繰り出し、大砲まで撃ってくるのだが、なんとルパンのボートは水陸両用ならぬ水空両用!空を飛んで、去っていくのだった(すげえ。笑)

盗まれた金塊は、ラインベルグ公国のフォントベール銀行のもの。
この国はスイスやリヒテンシュタインと同じく銀行国家であり、この金塊は国家財産のようなものだったらしい。
それを盗まれてしまった銀行頭取のスポルディングという男は、何としてでも取り返して欲しいと銭形に泣きつく。
が。実はこの男が事件の黒幕。
彼が、世界を股に掛けたアベック強盗であるジョンとメリーに金塊を盗ませたのである。
そしてその罪をルパンになすりつけ、国家のものである金塊を自分の懐に入れる計画だったものと思われる。
但し、この時点ではまだ、事件に黒幕がいたことも明らかにされていない。

ルパンたちの方はといえば。もちろん、そのままぼんやりなどしていない。
世間的にはルパンたちの犯行だとされてしまった金塊強奪、その実行犯がそのジョンとメリーだということを突き止める。
どうやらこの情報は不二子が仕入れてきた模様。やはり不二子の持つ情報網は侮れない。
ジョンとメリーが得意の変装して潜むという場所まで突き止めてきたのだからお見事というしかない。
しかし一番知りたい金塊の隠し場所だけはわからなかったので、ルパンは「彼らの口から聞き出す」ことを決めるのであった。

余談その1。ルパンの予想通り、朝刊の一面を派手に飾った三人の記事。しっかりカメラ目線で、しかも笑顔、この余裕がたまらない^^
余談その2。ジョンとメリーというアベック強盗のことを、次元は知らずルパンは知っていた。このパターンはやや珍しいかもしれない。暗黒街の人間に関しては、次元の方がより詳しく、ルパンに説明するということが多い印象がある。
余談その3。ジョンとメリーの年齢について、ルパンは「24、5、6、7、8、9、30超えてる」と「一体いくつなの?(笑)」とツッコミたくなるアバウ トな説明をしていたが、ジョンとメリーの歳の幅があるかもしれないので、その辺は置くとして。「まだ若いが」と言ってることに個人的には注目。
当サイトのキャラ論にて、パートIIIのルパンの年齢について、33〜4歳と勝手に考えているわけだが、この回での発言を考えると、ジョン&メリーがルパンより年下であると考えても良さそうな感じもする(微妙?)。とりあえずわが妄想説の補強材料にしたい(笑)


アルプスのスキー場にルパンが現れたとの情報をキャッチした銭形。やって来たはいいけれど、見るも無残なスキー姿(笑)
「悔しかったら追いついてみな」と挑発的に姿を現し、去っていこうとするルパンを目の前にしても、思うようにいかないスキーのせいで、なかなか近づくことが出来ない。派手に転んだり、リフトに乗りはぐれたり、いかにも今日はじめてスキー板を履きましたといった様子。
だが、銭形の執念でリフトに乗らずとも、歩いて山を登って追い続ける。ルパンもつかず離れず逃げ続ける。
吹雪の中、ついに力尽きた銭形を、ルパンは「とっつあんの根性には負けたよ」と背負って歩いてあげる……のだが。
ルパンと銭形という、立場を超えた親愛の情を感じさせるシーンだと思ったら大間違い(笑)

ご承知のように、この回の殆どが企みと罠に満ちている(大袈裟?)
ルパンが銭形の前に姿を現したことも、本気で逃げているように見えないことも、優しく背負ってあげることも、彼の計画に銭形の存在が不可欠だったからなのだ。連れて行かないわけにはいかないのである。
また銭形にしたところで同じこと。珍しく「ルパン逮捕」以外も視野に、腹に一物状態でルパンを追っているのであった(これについてはj改めて後述)。

銭形が力尽きて倒れたのは、実は芝居で、雪山の小屋が見えたところでルパンの首に、まんまと手錠…じゃなかった首錠(?!)を掛ける。
「疲れたぶりっ子しやがって、きたねー」とルパンは抗議するが、捕まることは当然計算のうちだったものと思われる。
…またまた話は逸れるが、妄想すると笑えるのが、銭形が逮捕するタイミング。背負ってくれた途端に捕まえても良かったはずだが、山小屋が見えるまでずっとおぶさったまま連れて行ってもらっている。楽したな、とっつあん、なーんて(笑)。


山小屋にて

山小屋には老夫婦が住んでいた。
そう、この二人がジョンとメリー。ルパンは銭形に逮捕された格好で、彼らの元に乗り込んできたのである。
「冷凍ルパンになるところだった」と、さり気なく(それともこれ見よがしに?)名前を名乗ってみせるルパン。その流れで銭形もICPOの警部であることを告げる。
後ろ暗いところだらけの二人にしてみれば、ICPOの登場はヒヤヒヤものだろうし、ましてや罪を擦り付けてたルパン本人が現れたことに、驚いたことだろう。
警察に捕まって現れたりされたら、最初の段階では「罠」だとは思わないだろうし。

混線する電話に苦労しつつ、銭形はICPO本部に応援を要請しようとする。
その隙に、ルパンは老夫婦に化けたご同業に、ポーカーの勝負を持ちかける。「勝った方には金塊5000キロ」だなんて、明らかな挑発。
ルパンが二人の正体に気づいていることを暗に告げるものであったが、彼らは「老夫婦」の芝居を続け、勝負を断るのだった。

銭形の電話がようやく繋がったが、それはICPO本部ではなく、不二子の元に。
ICPO本部の電話に細工したのか、はたまた山小屋の方だったのかはよくわからないが、銭形の電話を受けた不二子は、応援を送るので現在地で待機を指示。
銭形はあと二時間でICPOの大部隊が到着することを、嬉々として宣言するのだった。老夫婦は当然、心穏やかではいられない。

応援が来るまでの時間、銭形はルパンの取調べを開始。
そこでルパンは金塊を盗んだのは自分たちではないと主張。この期に及んでだから言ってるんだというルパンの言葉は、結構説得力がある(笑)今更罪の一つや二つをしらばっくれる必要もないわけだから。
強奪した真犯人ジョンとメリーが聞かせるように、この事件の裏には黒幕がいる、とも言う。ルパンがすべてお見通しであることがわかってくるにつれ、ますます焦りを感じたことだろう。

その時、覆面の二人組が山小屋に乱入してくる。「ルパンを迎えに来た」と言う彼ら……しかも「天国からの迎え」。
「黒幕」からの指示で、ルパンを消すためにやって来たのだった。真相を知るものはすべて消すのだと言う。
ジョンとメリーが聞いていることを思いきり意識しながら、ルパンは「約束が違う」というようなことを訴える。罪をかぶって、逃げ回る約束だったのに、と。
こんな状況でこんな台詞を言われたら、ついつい信じてしまうだろう。ルパンと「黒幕」が実は裏で繋がっていたということを。
また、変装してはいるものの、「真相を知るもの」である彼ら自身も、他人事ではない状況だ。

これは、ジョンとメリーが組んでいた「黒幕」への不信感を煽り立てる、ルパンの作戦。
覆面の二人組の正体は、次元と五右エ門なのであった。
…ちなみに、緑色の覆面をつけて喋ってる方が五右エ門。喋る側の役柄は、何となく次元がやりそうだと思っていたので、ちょっと意外である。
しかし「誘拐ゲームはお好き」でも実況中継するテレビアナウンサーの役柄をやっていたし、五右エ門もルパンらと付き合っているうちに次第に演技派になりつつあるのかもしれない(笑)

その演技はますます加熱。冷徹な殺し屋になりきって、二人はルパンに銃弾を撃ち込む。
先ほどの「天国からの迎え」という言葉だとか、「報酬をケチったな」に対して「鉛の報酬」と受け答えするのが、なかなか洒落ている。あらかじめルパン脚本があったのか、それとも五右エ門の即興なのか。←演技ゴエに興味津々の私(笑)
一発撃たれた時のルパンのちょっと苦しげな声もイイ。や、迫真の演技という意味でね、ええ(笑)

その頃不二子は、「黒幕」=スポルディングの様子を探っていた。すでに彼の正体を掴んでいるのは、やはりさすが。
スポルディングの方も用心していたらしく、ルパンに偵察されていることは先刻承知。不意を付かれた格好で、逆に不二子はスポルディングに捕まってしまう。
…これもきっと、ルパンの作戦(あるいは予想の範囲)だったんだろうけど^^

黒幕は不二子を連れて、例の山小屋目指してやってくる。途中、ガス欠になり歩いて山を登る最中、不二子はさっそく彼にも揺さぶりを掛ける。
不二子が組んでいる相手が、ルパンだとは限らない、と匂わせるのだ。「金塊の在りかを知らないルパンと組んでも何の得もない」と。
この言葉の裏を読めば、在りかを知っている者と組んでいるとも取れる。
要するに、ジョンとメリーだ。
スポルディングの心にも、不信の種がまかれたわけである。
再鑑賞すると、ルパンらと同時進行の、疑心暗鬼をかきたてる作戦は、そうとは明らかにならないまま、実は着々と進んでいる…ということがよくわかって、頻繁な場面転換もなかなか面白いと感じられる。


白銀の果て

山小屋の方はといえば、殺し屋にルパンが蜂の巣状態にされ、銭形は絶叫、そして涙する。
せっかく念願の逮捕ができたというのに、なす術もなく殺されてしまったなんて、さぞかし…と、銭形の心中を察してあげたくなったり、また銭形が何もせずに ぼーーっとしてないで、何とかしたら良かったのでは?なんて苦情の一つも言いたくなったりするのだが、これも間違い(笑)
珍しく腹に一物の銭形は、きっといろいろ考えながら様子を伺っていたのだろう。

何も分ってないのはジョンとメリー。
黒幕の差し向けた殺し屋が、「目撃者」として自分たちのことまで消そうとしていることに慌て、正体を現すのだった。
同じ黒幕に雇われている者だと訴えかけるのだが、殺し屋の方はそんな話には聞く耳持たない。
そのわからずやっぷり(笑)にキレたジョンとメリーは、殺し屋を返り討ちにするのだった。
黒幕に裏切られたと思い込んだ二人は、金塊を運び出そうと、ついにそのありかを明らかにする。小屋の暖炉の炎は立体映像であり、その暖炉から煙突部分と見せかけていた覆いを取る、そこが金塊になっていたというわけである。
逃げると腹をくくったからか、ICPO銭形の前でも、最早取り繕う様子もない。彼すらも消そうとする。
…それにしても、炎が贋物だったら、相当寒かったと思うんだけど(笑)ヒーターでも隠してあったのか(?)

煙突の金塊があらわになったちょうどその時、スポルディングと不二子が小屋に到着。不二子の「そろそろ金塊を運び出そうとしているかもね」という台詞が、俄然現実味を帯びたわけだ。
スポルディングの方も、二人に裏切られたと思い込む。
そのことで頭がイッパイになっていたためか、不二子がそっと手に取った雪の玉には、何の注意も払うことはなかった。

絶妙なタイミングで小屋にやって来た黒幕は、着く早々二人と言い合いになる。両者とも、お互いを裏切ったと思い込まされているのだから、話が通じるわけがない。
二人を消そうとしたスポルディングだが、腕前では勝てるはずなく、あっさりジョンとメリーに銃を叩き落されてしまう。
そうして両者でやりあっているわずかの間に、死んだはずのルパンも、殺し屋も、姿を消した。
当然、彼らはちゃんと生きて(防弾チョッキのお陰で^^)、小屋の中の物陰に隠れていたというわけ。
慌てたスポルディングらの前に、再び健在なその姿を現す。ついでに、殺し屋の正体も明かす。
すべては、金塊の在りかを探ろうとしたルパンの企みだと、ようやく気づく金塊強奪犯たち。まんまとルパンの仕掛けた逆転ゲームに乗ってしまったのだった。
その時、すでにルパンは金塊を運び出す手筈を整えており、不二子の持ってきた雪の玉を、外へ投げている…

だがここでまた一つ別展開が。
今まで傍観者のような立場だった銭形が、急に笑い出し、彼の合図でICPOの警官らがどっと小屋に押し入ってきた。あっという間に、入口付近にいたスポルディングら三人を取り押さえてしまう。
これらはすべて、ICPOの黒幕燻り出し作戦だったというのである。
…えー、頭を整理すると。銭形は最初から、ルパンが何かしら罠を仕掛けていることを承知の上で、ずっといきさつを見守り、黒幕の登場を確信していた、と。
ルパンが死んだと思って涙したのも、何もかも演技だったと、こういうことのようだ。
スポルディングに泣きつかれた時から、かなり怪しいと目をつけていたのかもしれない。また、濡れ衣を着せられたルパンが黙って引っ込んでいるわけもないということを、誰よりも承知している銭形だからこそ、出来た作戦なのだろう。
そう考えると、かなりこの回の銭形は演技派であり、有能で、とても好ましい。

ただあえて贅沢を言うのならば、どこかのシーンで銭形が企んでいることを「さり気なく」匂わせてくれても良かったかも…という気がしなくもない。「ICPOの作戦だった」というのが、ちょっと唐突な感じがするのだが、私だけだろうか。
そうは言ってみたけれど、改めて観直してみると、殺し屋の銃口がルパンに向かっているのに、何も手出ししないということそのものが、ルパンのことに関しては無鉄砲な(笑)銭形らしくないと、いえなくもなさそうなので、それを伏線と見るべきかも??

警官たちに囲まれ、絶体絶命っぽいルパンたち。(次元への「慌てるな」というルパンの台詞が好きv)
だが、実はルパンは「待っていた」だけなのだ。さっき投げた雪玉が、一旦坂をのぼり、そして降りてくる間に巨大化して小屋を押してくれるのを。
いつの間にか外に抜け出していた五右エ門が、雪玉のやってくるタイミングに合わせて小屋を支える柱を切る。
隠してあった巨大スキー(!)に乗って、小屋は山を滑り降りていくのだった。

いろんな意味で「すごっ」と呟いてしまうシーンなのだが、まあ深く突っ込むのはよそう(笑)個人的にはこういうノリ、嫌いじゃない。
それより気になるのは「そういえば五右エ門がいない」と銭形が気づくのが遅いところ(笑)そんなに影が薄いのか。あんなに熱演していたのに!←相当お気に入り
まあルパンしか目に入っていない銭形らしい疎さだろうか。
ちなみに、この回の五右エ門、地声では「心頭滅却すれば雪もまた…」&クシャミしか台詞がない。

小屋の方では、前方に位置した銭形をはじめとした一団は、滑り落ちる力に押されて、なす術がない。
小屋はルパンのノコギリによって、真っ二つに。銭形側は壁に激突して止まってしまい、ルパン側は金塊もろとも雪山を滑って去っていく。…はずだったが、そう上手くはいかなかった。彼らの目の前には崖が!
真っ逆さまに落ちていくところを、辛うじて小屋についたスキーのお陰で免れるが、重みに耐えかね、金塊だけがすべて落ちていってしまった。
まさに白銀の果てに。雪が解けるまで、金塊を探すことは出来なくなってしまった。

そしてラストはいつものように、根性で追ってくる銭形(ちょっとだけスキーが上手くなってる?笑)から逃げ出す三人。
「春まで待とうぜ」と言ったルパンに、不二子が「そうね」とかなり引き際が良く、しかも「うふふふ」と楽しそうに笑っている。
状況もわきまえず欲張ったりせず、この時点では金塊が手に入らなかったのに楽しげに笑える…こういう不二子の方が断然いい女だなぁと思う今日この頃。
たまにだったら、欲張りすぎも可愛いんだけど(笑)


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