不二子人間関係・次元編


個人的見解では、この二人は長年の付き合いがあるわりに、程よい距離感のある間柄。その方が私としては心地よい。
不二子側から次元本人に関わる発言が少ないのも、何となく分る気がする。

…以下、こういう立場で書いているので、この二人にロマンチックな関係を想定している方、そういう関係以外は受け入れがたい方は、下記の文章を読まずに引き返すことをお勧めします。


「わからずや!」

(旧ル4話「脱獄のチャンスは一度」より)



旧ルの時点でルパンが不二子と知り合ってから三年が経過していたわけだから、多分次元ともそれに近いくらいの付き合いであるのだと思われるが、旧ルの頃、この二人は思ったより個人的な会話をしていない。
元々、旧ルというシリーズそのものに、キャラクターの余暇的描写や、本筋以外のお遊びが少ないせいというのは大いにあると思うが、それにしても不二子はルパンを意識してはいるが、その相棒である次元はそれほど眼中にないように見える。

旧ル1話では、次元と二人きりになるや、背後からぶん殴って縛り上げるという容赦のない行動をしており、それ以後(というかすでに1話の時点から薄々は)次元の不二子不信は根強く残るわけだが、一方で不二子は、彼からそうした目で見られたところでどこ吹く風といった按配で、次元風に言えばイケシャーシャーとしている(笑)
そもそも、彼女が来たせいで五右エ門が降りると出て行った時も平然と構えていた程、腹の据わってる女性なのだから、次元に胡散臭がられるくらい、どうということはないのだろう。

旧ル8話で共に立てこもった際、愚痴る次元に「いつまでもグチグチと男らしくない!」と一喝。
相変わらず不二子は遠慮ない態度で、しかも淡々としている。(ゴールドの私設警察が押し寄せてきた時は、ちゃっかり次元の背後に隠れる可愛らしいところもあったり^^)
18話では共にテレビクルーに化け、23話では車に同乗し、また弁当屋として潜入するなど、意外に「仲間」としての行動は多いものの、それは仕事上でのことばかり。
一番息が合ってるような気配を感じたのは19話の「どっちが勝つか三代目」だが、不二子側から察すると、ルパンのやる気がなくなっていた(ように見えた)から、やる気満々の次元と組んで動いていた気もする。
結局は銭形の策にはまり上手くいかなかったけれども、この二人、感情抜きのビジネスパートナーならば、なかなかのものかも。
とはいえ、それも次元側が「不二子と組んでもいい」気分になっている時だけだろうけど(笑)

旧ルでは不二子が次元について語る台詞が、殆ど見当たらないので、彼女が次元をどう思っていたのかはよくわからないのだが…彼女のことだから、ビジネスライクなクールさをもって接していたのではないか。
次元が不二子に向けてくる不信感を気に留めもせず、時に利益のために組むときはきっちり仲間として動き、だからといってプライベートでの付き合いはなく、というような。
(17話で不二子からプライベートでルパンらに「遊ぼう」と誘った時は、罠だったわけだし)

この時期、そこそこお互いの存在に慣れて来て、「仲間」として行動することにいちいち異論はない程度に安定した関係だったのだろう。
が、作戦立案・指示するルパンとしては、不二子を五右エ門と組ませられないから次元と…という風に調整していたのでは、なんて勘ぐってしまったりする(笑)

そんな旧ルでこの二人が「個人的に」一番よく関わったのは、4話だと思う。
そこでは、ひたすら救出を急ぐ不二子と、ひたすらルパンを信じて待つ次元…という具合に、この二人の考え方・行動はきわめて対照的であることが浮き彫りになる。
彼女としては実はお宝以上にルパンの命を危惧しての行動だったのだが、それをことごとく次元に妨害され、さすがに動じない不二子も、上記の台詞で怒ってみせる。

新ル104「もっとも危険な黄金ベッド」のラストで、次元(と五右エ門)にベッド独り占めを阻まれ、「何なのあの二人、ヤな感じ!」と怒るが、こういう場合の反応は、本気でルパンを裏切ろうとしていたのを、見咎められ阻まれた気まずさからの憎まれ口。
一方、旧ル4での抗議は、ルパンの命が掛かっているから真剣だ。
素直になれない彼女としては、お宝の鍵を欲しがっているよう見せてはいたが、内心は相当イライラしていたのではないか。
ルパンを助けに行かない次元(曲がりなりにも相棒だというのに!)に対して、さらには彼女を妨害までしてくる理不尽なやり口に、ほとほと頭に来ているように見える。
実際のところ次元には解っていたように、下手に手出しをせず、悔いのないよう好きにやらせることが、あの時のルパンにとって命よりも大事なことだったのだけれども、この時不二子にはまだ、こうしたルパンの心情、相棒同士の信頼感の奥深さまで思いが到っておらず、次元の存在は面白いものではなかったはずである。
次元の方も、彼女の真の目的がルパンの命だとわからなかったのだから、次元と不二子は、特にこの時点ではまるきり互いを理解し合ってない。

基本的にこの二人は、ルパンが好きで彼に関わりたくて仕方ないという点を除けば、対照的といえる人間同士だから、なかなか解り合えなくても仕方ないかもしれない。
もちろん男女という性差による違いもあるだろう(例としては、新ル51「私が愛したルパン(後)」での不二子が次元に向けて呟いた台詞「男ってどうしてそうカッコつけたがるのかしら」を挙げたい)。
だがそれ以上に、二人は「ルパンに魅かれる」という点では非常に近く見えがちだが、彼らの気質や尊ぶものは違っている点が多い。
また、ルパンの傍での心情的立ち位置、ルパンにとっての存在の意味合いは、「義理堅く頼りになる」として信頼される次元と、「裏切りは女のアクセサリー」として愛される不二子では、何から何まで違うのである。(これは五右エ門にも、銭形にも言える事ではある)


「ムッツリスケベ」

(パートIII・19話「裏切りの荒野を走れ」より)



それが新ル以降になると、7話「ツタンカーメン三千年の呪い」の時のように、不二子の態度・言葉端から次元が彼女の真意を汲み取れるようになったり、
56話「花吹雪謎の五人衆(後)」では、タバコを差し出し「放っときな」と言う次元に、不二子が一応大人しく従うなど(ちょっとふくれっ面しているけれど^^)、互いにある程度、気持ちを察し合える間柄になっている。

そして、さすがに腐れ縁が長く続くと、いい具合に砕けてくるようだ。
旧ルの頃から、不二子は五右エ門よりに対してよりは、次元に遠慮なく言葉を返していたが、それがもっともっと砕けてくるのは、パートIIIの時期だ。
その代表例が、上記。二人の喧嘩時の名台詞(笑)
以前なら、不二子は大抵何を言われても、あまり次元を相手にせず、無視するかあしらっている感があったが、この時期は面と向かって喧嘩するようになっている。長年の付き合いの賜物だろう。
いつも余裕を見せて男をあしらう不二子には、珍しい態度だ。

次元に、「男」を見ているというよりは、「腐れ縁の仲間」という遠慮のない人間(自分を取り繕って演出する必要がない、あるいはその価値がない。←笑)と、認識しているのではないか。
ルパンに対し怒った時は、殆ど彼が宥めてくれるわけだから、正面から「素」で彼女を罵倒し、遠慮なく喧嘩が出来る男・次元、というのは、不二子にとってある意味新鮮で、貴重な関係かもしれない。

また、「あ〜ら、意外と冷たいのね」という不二子の台詞も、面白い(パートIII・24「友よ深く眠れ」)。
青龍が谷山に利用されるだけされたら消されるだろうという話をしている際、「よくある話だ」と言った次元対してかけた言葉だ。何となく皮肉な、からかうような口調。
「意外と」というところが、ポイントである。
自分とは違い(笑)、「裏切り」に関してはもっと抵抗感をもっているかと思ったけど、「意外と」冷たく突き放すのね…とでも言ったところか。
時に仲間に冷淡な不二子を、遠慮なく責める次元に対する、ちょっとした嫌味だろう。
次元が淡々と「お前が言うな」と応酬しているし、こんな調子で付き合うことに、慣れている様子が感じられる。
この時期ならではの、二人のやり取りなのではないか。

それ以前であれば、不二子の方からわざわざ次元にこうした言葉を掛けることそのものが、わりと珍しいような印象がある(もちろん皆無ではないだろうが)。
基本的にこれまでは、次元が彼女に苦情を言い、不二子が受け流すというものが、一番良く見るパターンに思える。


「でもルパンと次元は親友よ、いいえそれ以上の仲よ……!!」

(原作「ルパン日記」より)



次元の方は、仕事に不二子が関わるのを嫌がり、時にはルパンに文句を言ってみたりするが、不二子側は、ルパンに決して次元の悪口を言ったりしない。
次元に責められた時はルパンに弱々しく助けを求めたり(新ル35「ゴリラギャングを追っかけろ」)、何を言われても沈黙を貫いたり(劇場版「ルパン対複製人間」等)、甘んじて制裁を受けたりしている(新ル135「毒薬と魔術とルパン三世」、122「珍発見ナポレオンの財宝」等)。
そもそも裏切りを働く不二子が悪いわけだから(笑)、次元を責めるいわれはないとは言え、ここまで一言も「ルパンに対して」相棒の悪口を一切言わないというのは、非常に見事で、不二子のクレバーさを物語っていると思う。

ルパンは、殊相棒のことになると、自分がターゲットにされた時以上に敵に冷たく容赦がなくなる一面がある。(新ル62「ルパンを呼ぶ悪魔の鐘の音」、84話「復讐はルパンにまかせろ」など)
不二子は多分、こうした面をよく知っているのだ。
だから普段から、次元の悪口を彼本人に直接言うことはあっても、ルパンに陰口という形で言うことは慎んでいる。(元々、陰口なんか好まない性質という可能性も高いが)
次元について非難がましいことを言ったとしても、「本当に友達なの?」(新ル151「ルパン逮捕ハイウェイ作戦」)程度の可愛らしいものである。

ルパンにとって、次元がどのような存在であるのか、不二子はきちんと解っている。
それをよく表している台詞が、上記のものであるように思える。(この時期の原作不二子は、まだ各回ごとに同じ名の別人なのかもしれないが…この回では「ルパンと旧知の不二子」であるようだし、興味深いので取り上げてみる)
ルパンにとって、「親友以上の仲」であると認識している男――次元に対して、不二子が下手なちょっかいを出さないのは、当然のことだろう。
裏切りを楽しんでくれるルパン相手なら、手酷いことをするけれども(そんなルパンに付いていき「巻き込まれる形」で次元が被害に遭ったとしても、それは次元側の問題なので、きっと不二子にはどうでもいい)、次元本人をターゲットにした裏切りはしないし、手酷い陰口すら言うことはない。

こんな不二子が、次元とその手の関係になることも、ないように思う。
これに関しては、次元人間関係考察(対不二子編)でたっぷり語って言いたいことは言い尽くした気もしてるのだけれど(笑)、そこで不二子側からも考察すると書いていたので一応ここでも触れておく。

TVSPの「ファースト・コンタクト」では、不二子が次元を誘惑するようなシーンがあったはず(すでにうろ覚え;;)。
だが、あれはルパンのホラ話だと認識しており、個人的にはあまり重きを置いていないのでスルー。

不二子が、ルパンとは別の男に損得勘定抜きで心を動かされたりすることも、当然あるだろうけれど(代表例・旧ル2「魔術師と呼ばれた男」)、その相手が次元になるとは思えない。
不二子の男性の趣味はあまり一貫していないのでよくわからないけれど(笑)、あえて彼女の心が動いた男の共通点を挙げるなら、自分よりうわてのどこかミステリアスで危険な男、なのではないか。(詳細は、「不二子恋愛観」にて)
不二子にとって、次元はあまりそういうタイプではない気がする。
扱い方によっては危険もあるだろうが、その辺はすでに心得ているだろうし、不二子が彼に謎めいた何かを感じることはないように見える。

不二子らしい気まぐれを起こさないとも限らない、かもしれない?
だが、不二子はよっぽど深く惚れてしまった時以外は、色恋で己を失うことの少ない女性だし、決して「女」を「安売り」することもない。
(余談だが。パートIIIの一部後期作品や某テレビスペシャルで、不二子がどうでもいい男と気安く関係を持つ描写があるけれど、これが不二子らしい行動だとは「私には」感じられない。だからといって…言うまでもないことだが…別に私は不二子に尼僧のような潔癖さを求めているわけでも、そうであるだろうと考えているわけでもない)

基本的には感情「だけ」に突き動かされることが少なく、理知的、悪く言えば損得勘定に長けた女性である。
「欲」に目がくらむことはあるだろうが(笑)、それは主に金銭や財宝絡みの「欲」であり、色恋沙汰とはまた違う話。
彼女は実際、それほど極度に気まぐれな性格ではないのではないか。
(ふいにやってのけるルパンへの裏切り、敵対行為は「ちょっとした気まぐれ」とはまた少し違うものだろう)

ましてや、不二子と次元の間には、まずルパンありきなのだ。
ルパンが両者の間に常に大きく存在すること、そのルパンにとって次元が特別なポジションに居ることを、不二子は良く理解している。
そんな彼女が、敢えてルパンの相棒にちょっかいを出すとは、私には思えない。
時として、それなりに不二子が次元の人間的魅力に気づくこともあるだろうが、イコール惚れる、関係がある、には結びつかない。

もしもルパンがこの世に居なければありうる話だとしても、「ルパン三世」にルパンが居ない仮定などしても、ルパンスキーの私にとっては無意味なので(笑)割愛する。




不二子にとって次元は、やはり第一に「ルパンの相棒」であり、彼女の「女」オーラに誤魔化されず、遠慮なく食って掛かってくる珍しい男であり、なりふり構わず子供のような応酬すら出来る、腐れ縁の喧嘩仲間なのではないか。

当然、腕を認め合うプロ同士でもあるだろう。
彼の腕前を非常に信用しているからこそ、新ル152「次元と帽子と拳銃と」では、本当に悪気なく、弁護士に「名ガンマン」として次元の名前を挙げたのだろうし。(ビッグマック・カンパニーを手に入れた場合の多少のおこぼれは期待してたかも?笑)
そして、次元が不二子を助けることがあるように、不二子も次元のために特注の帽子を手に入れてあげるという優しさを見せることもある。(同152話)

適度な距離感と緊張感を保つことが、やはり一番魅力的な関係の二人であるように思える。


(2005.4.1)

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