次元大介の恋愛観を探る

「女嫌い」で「独身貴族」として売っているという次元。
だが、女嫌いだというわりには、わかっているだけでもわりと恋愛している。
原作ではレッディ。TVではキャサリン、アンジェリカ、バーバラ等等。利用されたりしたけれど、次元が心を動かされたらしき女性をあわせればもっと増える。
こう見ていくとそれほど「女嫌い」には思えない。
かといって、ルパンのように「女好き」とも言えない。
次元が好きになるのはどういう女性なのか。この際徹底検証してみたい。

女嫌い?

次元を裏切ったリンダ(新26)、昔の恋人アンジェリカ(新76)、キャサリン・モロ(新111)、心動かされたらしきモニカ(新58)、サンドラ(新129)、かつての相棒クーガーの妻・バーバラ(V−26,7)、なぜか面倒を見てしまったアニタ(V−41)……
原作ではレッディ。
次元とかかわりがあった女性は決して少なくない。
しかも皆美人である。
ルパンの恋愛観の項で少し書いたが、次元の好みの外見は、明らかに「綺麗」「猫」「キツネ」系の女性だと思われる。
アンジェリカは、顔立ちがカワイイタイプの方かな、という気もするが、あとはだいたい面長で目元の美しい女性が多い。
リンダやカレン、アニタなどは、美人だがかなりきつい顔立ちの部類に入るくらいだ。

恋人と呼べるような存在の女性の年齢層もそこまでばらつきがないように見える。
ルパンや五右エ門ほど、極端な年下、いかもに「少女」っぽいタイプには興味がないのかもしれない。(レッディだけは、その話し振りからかなり若いという印象だが、「少女」という雰囲気ではない)
次元の好みは、ルパンよりかなり絞り込まれているようだ。
れっきとした「好みのタイプ」があるように思われる。
そもそも、次元は本当に女嫌いなのだろうか?


次元は、「罠にかかったルパン」(旧17)において、月影銀子に対してものすごくデレデレした態度をとる(笑)。
女性と飲んで遊ぶ気のないストイックな五右エ門は、怒って帰ってしまったと言うのに。
もしもこれが新ル、Vの時期だとしたら、五右エ門と同じく帰ってしまうか、もしくは、どんなに美人のママが出てきたところで鼻の下を伸ばすことなく、あくまでルパンの相棒としてお目付け役的役割を果たしたことだろう。(結果的に罠にかかってしまう展開だったとしても)
若気の至りなのだろうが、そう考えると次元は若い頃「女嫌い」ではなかったのではないかと思われてくる。
旧ルにおいて、次元は不二子絡みの話の時は「女なんて」という態度を取っていたものの、「仕事」に女が絡むのを嫌がっていた面が強く、女性全般を毛嫌いしていたわけではないのだろう。
実際、ルパンと組む以前は「恋人」と呼べる人がいたのだから(アンジェリカやキャサリン)、嫌いなはずはない。

次元が明確に「独身貴族」で売っているという事と言い始めたのは、新ル27話「シンデレラの切手はどこへ行った?」からだ。
そして55話「花吹雪 謎の五人衆 後編」で口上を述べる際、「女嫌ぇで売り出し中」と言っている。
以後、58話「国境は別れの顔」ではモニカに「裏切らない女がいたらお目にかかりたい」と女性不信を明らかにし、110話「激写!これが不二子だ」では、ついに「女性恐怖症」の烙印を押されてしまうのだ。


私はここで、26話「バラとピストル」のリンダという女性に注目してみたい。
次元は、リンダにかなり惚れ込んでしまい、その時のテンションの高さといったら新ル随一ではなかろうか。
「男らしくて、ハンサムで、強くそうだから」というリンダに対し、「見かけだけじゃない。中身もそうなんだ」とのたまう次元。「まあ、素敵!」と持ち上げるリンダにすっかり骨抜きにされ、リンダをずっと守ってやると約束する。
が、ご承知のとおり、この話で次元はリンダにまんまと利用され、危うく相棒のルパンと殺し合いをさせられそうになるのだ。

これまで、いつも捨てる方で捨てられたことがなかった(であろう)次元。
女に裏切られるルパンを常に間近で見ていて、裏切る女がいることなど分かっていたはずなのに……
その時受けた次元の心の傷は案外大きかったのではないだろうか。
次元は、恋愛に対して極めてロマンチストで、普段クールなわりには熱くなる時はめっぽう熱い。
そんな次元が惚れた女に裏切られて、ショックを受けないわけはない。勿論、いつまでも「リンダ」という女性を引きずるほど女々しい次元ではないとは思う。が、この裏切りが多少なりとも次元に影響を与えたのではなかろうか。
もともと、不二子のような魔性の女を身近で見ていて、女は油断ならないと考えていた次元が、リンダの件以来いっそう女性に対して警戒心を抱くようになったとは考えられないだろうか……?
次元の女嫌い発言が27話以降に多いのも気になるところである。

好み

何度も言うようだが次元はロマンチストである。
こういうタイプには、弱いシチュエーションというものが存在する。
それは、「劇的な出会い」というものである。
ロマンチックで、波乱を含んだ運命的な出会い。
リンダやモニカ、サンドラ等は劇的な出会いのいい例である。
劇的な出会いで始まる恋には、どこか非日常の香りが漂い、次元のようなタイプには好ましいと思われる。

そして、リンダの例でもわかる通り、次元は言い寄られるとわりと弱いような気がする。勿論、言い寄ってくる女性が好みのタイプからそう外れていない場合なのだろうが。
出会いに関しては何も描かれていないが、レッディとの付き合い始めも、多分彼女の方から積極的に言い寄った結果なのでは、などと想像される。

さらに次元は、多少冷たい、というか、気の強い女性の方を好む。
モニカとの会話で、「俺の相棒はまだこんなところでぐすぐすしているほど間抜けじゃないさ」という次元に対し、モニカは「あなたは別だけど?」と皮肉を言う。
そんなモニカに対し、次元は「おーおキツイ女だぜ」とはいうものの、その声は決して不愉快そうではなく、むしろ楽しげであった。衣装ケースに入っていたせいでその時の次元の顔が見えないのが残念だ。
そして、決意の強さや行動力など、モニカの腹の据わった亡命ぶりに、次元はきっと惹かれていったのだろう。

キャサリンも気の弱いタイプではない。
裏に悲しい思いがあったにせよ、もともとの性格が勝気だからああいう挑戦を思いつくのだろう。
いくら金と暇があり、死ぬ前に次元の顔が見たいと強く願っていたところで、根がナヨナヨとして弱い感じの女性では、ああいう形での再会をしようとは思わないはずだ。

かつての想い人バーバラも、芯は強い女性だった。
安易に次元に甘えず、もう銃も使えず、組織から追われ続ける身になったクーガーの元へ行こうとするバーバラ。弱い女性ではない。
無鉄砲ではあるが、自分一人で行動しようとするサンドラやアニタも、なかなか強い女性であると言えるだろう。
次元が死んだらストーンマンの睾丸を食いちぎって自分も死ぬと啖呵を切れるレッディもまたしかり。
こう考えると、やはり次元はいかにも女性らしい、色気とか涙を無意識に使いこなす粘着質系の女性ではなく、果敢で強い(内面の強さも含む)女性が好みだと考えられる。
劇的な出会いといい、気の強いタイプといい、次元はある程度刺激的な退屈しない恋愛が好みのようだ。


そうだとすれば、不二子はなかなか次元の好みだと言えるかもしれない。
色気を多用するけれど、それはあくまで目的のため。本来は多分ドライな性格の不二子である。
アニメの企画書には、次元が不二子に片思い中とあるらしい。
が、やはりそうは思えない。(オフィシャル設定に対して、私如きが文句をつけるのもおこがましいが^^;)
相棒のルパンがあれだけ惚れこんでいる女性だから遠慮している、との考え方もあるだろうが、どうもそう言う感じがしない。
かつての相棒だったクーガーとは、次元はわざと負けたとはいえ、きちんと対峙してケリをつけているのだ。
次元が不二子への片思いを隠しつつ、ルパンに義理立てするほど弱気で、恋々とした男とは思えない。
個人的には断じて思いたくない(笑)。

あくまでも自分の恋愛対象としてではなく、一人の女性あるいは暗黒街に生きる者としての不二子の魅力や腕前・実力を認めてはいるとは思う。
しかし、次元がいくら刺激がある恋愛の方を好むとはいえ、あそこまで男を利用し裏切る、割り切りの良すぎる不二子を、自分の女にしたいというような意味合いで好きになるとは考えられないのだ。
次元はルパンほど恋愛にドライではない。
恋愛に求めるものも、ルパンとは全然違うだろうから……

男の美学?

次元は、とにかく去り際が素晴らしくカッコイイ。
また、ものすごく罪作りな去り方とも言える。
アンジェリカやキャサリンとの恋人としての別れ方。あんな風にされた日にゃ、とても次元を忘れられたものではない(笑)
アンジェリカと別れた理由ははっきりしていなかったようだが、次元はある日突然消えてしまったようだ。
ある日突然、付き合っていた男に黙って消えられたって、そうそう納得できるものでもない。自分の中では「あれが原因かな」と懸命にその理由を探り納得させようとするだろうけど、いつまでたっても「でも、どうして次元は黙っていなくなってしまったの?」と考えてしまうだろう。
ある意味残酷とさえ言えるかもしれない。「お前のこういうところがイヤなんだ」とハッキリ言ってもらえれば、一時は激しく傷ついてもいずれ乗り越えられるだろうに。(私だけ??^^;)

また、キャサリンの時もそうだ。
ニューヨークのスラムでどんなトラブルに巻き込まれたか分からないが、次元はキャサリンに一方的に別れを告げて争いの中へ去っていくのだ。
次元にしてみれば、ダンサーになるというキャサリンの夢や将来を考えて、自分のような物騒な男と付き合うべきではないと考えたのかもしれない。
が、置いていかれたキャサリンから見れば、あれほど忘れがたい男も絶対いないだろう。自分を思っていてくれた故の行動だとわかっているだけに、一方的に去られてしまっても恨むに恨めない。寧ろ愛おしさは募るばかりなのではないだろうか。実際、キャサリンが死ぬ前に会いたいと願ったのは次元だったわけだし。

こういう去り方を見ると、次元の恋愛に求めるものが少しだけ分かるような気になる。
自分がこうしたい!と強く主張するのではなく、相手にとって何が幸せなのかまず考えているような次元の態度。
とにかく次元はドロドロとした修羅場や、互いに自己主張ばかりするような醜くなっていく恋愛が許せないのだろう(勿論そんなのが好きな人はあまりいないと思うが)。

アンジェリカの元から去った理由ははっきりしないものの、やはり貴族のお嬢様と殺し屋というあまりの境遇の違いが、アンジェリカのためにならないと思ったのかもしれない。
また、次元がアンジェリカのようないかにもお嬢様という平凡な女性、そしてそこに見えてくる二人の平凡な人生が物足りなくなったのかもしれない。
いずれにしても、それを口に出してしまうとろくな事はない。
しなくてもいい喧嘩をしてしまうかもしれない。相手を不必要に傷つけてしまうかもしれない。
そんなことは次元の本意ではなかったのだろう。

そういえば、バーバラを巡ってクーガーと争っていた時も、次元はわざと負けている。
相棒だった男を倒してまで、自分とクーガーを選びかねている女を手に入れることに躊躇を覚えたのか……
三角関係というドロドロとしたものは、次元には苦手なのだろう。

あくまでも美しく……野暮でカッコ悪い男になってはならない。
次元の(無意識の?)美学のようなものが感じられる。
刺激的で日常化しない恋愛が好みなのも、別れ際があまりに見事なのも、その美学ゆえなのだ。
恋愛そのものも、心の奥ではきっと裏切りや打算、妥協のない美しいものを願っている。
それを、ルパンや周囲の人間は「ロマンチスト」と称するのだろう。

(2001.5.17)


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