ルパン三世の恋愛観を探る

ルパンは「女」が好きである。
改めてここでこんなことを書くまでもなく、ルパンが「女好き」ということはあまりにも有名だ。
ルパンは、女性には声をかけなくては失礼だと思っている節すらある。
好みの女性を見ると、まったく躊躇せずナンパするルパン(新45、III−33等)。時には不二子の目の前ですら、デレデレしたり(新41)、時に声をかけさえしている(III−26)。
だが「女好き」とは言っても、女なら誰でもいいのとは違うはずだ。
目の前にいるのが好みでない女性の場合は、当たり前だが声をかけたりしない(新36)。(あまり美人ではないその女性に、「まあベッピンさんだこと〜」と呟いてみるのは、さすがルパンらしいという感じがするが)
ルパンにも女性の好みはあるのだ。(当たり前?)

このページではそんなルパンの女性の好みを探ってみたい。

ルックス

ルパンは一見「ちょっと綺麗な女なら誰でもいいんじゃないの?」と思えるほどに、付き合った女性や関わりの深かった人を見るとタイプにばらつきがある。
不二子、リンダ(旧3)、昔の恋人・コーネリア(新50)、未亡人・ザクリーヌ(新49)、ポアロの孫・エマニエル(新52)等等。
そしてリーサ(旧11)、クラリス(カリ城)、ニーナ(新68)、フローラ(III−3)、ローリー(III−15)ジェニー(III−18)……

(非常に強引だが)一般的に、女性の見た目を大きく二つに分けるとするなら、「可愛い」系と「綺麗」系に分けられる。
別な言い方をするなら、「犬」系と「猫」系、もしくは「タヌキ」系と「キツネ」系とでも言えるかもしれない。
普通、好みのタイプはどちらかに偏るものではないだろうか。
次元はちょっとした例外はあるものの、明らかに「綺麗」「猫」「キツネ」系を好むと思われる。

が、ルパンは特にどちらかが好みというわけでもなさそうだ。
多分、どちらも好きなのだ(笑)。
不二子、コーネリアなどは「綺麗」タイプだし、リーサ、クラリスなどの美少女たちの多くは「可愛い」タイプ。
(ルパンと美少女が惹かれあうというシチュエーションは、やはり「宮崎ルパン」の影響が大きいと考えられる。原作から考えればルパンは「少女」にはほとんど関心を示さない。その方が「ルパンらしい」という気はするけれども、ここではそうした考えは一応脇へ置いておくことにする)

すごくきつい顔の美人でも、いかにも優しげなカワイイ女の子でも、ルパンは同じように好きなようである。

性格

ルパンが惹かれた女性の性格にも、それほどの共通点はない。
まあ、本気とちょっとした気まぐれという違いもあるのかもしれないが、ルパンは実にいろいろな性格の女性に惚れている。
不二子はとりあえず後に述べるとして別格扱いしておくが、それにしても一見、どういう性格の女性がいいのか良くわからない。
「裏切りは女のアクセサリー」と考えるルパンだけあって、いかにも怪しいザクリーヌやエマヌエルなど悪女っぽい女性にもデレデレになり、彼女たちの怪しさを逆に魅力にさえ感じているらしい。
ジュディというどうしようもない女と同棲し、結局は裏切られたこともある(TVSP)。

そうかと思えば、コーネリアのようにルパンを身をもってかばうような、真剣で一途な女性を愛したりもしている。
クラリスに惹かれたのも、彼女の一途で純真な思い、そして内面に秘めた芯の強さ故だろう。
公女の身分まで捨て、泥棒になってルパンについて行こうとしたクラリスを、ルパンがとてもいとおしく思っていたのは明らかである。
またクラリスの原型ともいわれるリーサも、最後の「ルパンさんじゃありません!」の台詞から察するに、か弱いわりに内面の芯の強さが窺われる。

一方では、リンダのようにいかにも男の保護欲を誘う、無力極まりない女性に恋したりもする。
リンダは不思議で、はかなげな魅力でルパンを虜にするが、結局自分では何も出来ずに、第三の太陽とともに死んでしまった。
リンダなどは、ルパンが常に追い続ける不二子とは正反対のタイプではないだろうか。

さらには、一方的にルパンに好意を寄せる年下の女の子にも弱いらしい。フローラやニーナはそのタイプだろう。
(余談:完全に私個人の感想だが、ルパンが好きになった女性の中でニーナが一番理解に苦しむ。あくまで、私は、だが(笑)。特に官能的でもないし、そこまで純真でもないし、不二子のおねだりを完全に無視できるほどに、いつルパンがニーナを好きになったのかが今ひとつピンとこない。この件は新ル68話を解説するときにでも考えるつもりである)


年齢

さらにルパンは、かなり幅広い年代層までカバーしている。
わずかな年の差はあるだろうが同世代らしき不二子やコーネリア、年上の女性らしきザクリーヌ、明らかにかなり年下のリーサ、クラリスやニーナ。
別に年齢で好きになるかならないかを決めるわけではないだろうから、多少バラつくのは当然かもしれない。
だが、ある程度「恋愛対象の守備範囲」みたいなものは、誰にでもないだろうか?
ルパンはその守備範囲がわりと広いように思われる。
だが「ロリコンの趣味はないぜ」とIIIの予告で言っていたし、ファンクラブ加入条件ですら「18歳以上のグラマーな女性」(III−33)なのだから、あまりにも年下ではきっとダメなのだろう。
ルパンの性質からしても、年上よりは年下の方がどちらかと言えば好みのような気もするが、勿論美人であればかなりの年上でもOKであろうとも思う。

こう考えていくと、ルパンの惚れた女性たちに共通点はあまりないようにも思われる。
原作では、ルパンの好みのタイプを「美人であること」「プロポーションがいいこと」「敵であること」としている(原59)。
だが、アニメでは必ずしもそれに当てはまらないようだ。
本能を直撃するような色っぽい女性には間違いなく弱そうだが、ロリコンすれすれと思われる女の子も好きになっているし……
敵であっても一向に構わないが、一途で命がけでルパンを愛する信用できそうな女性もタイプのようだし……
性格でも見た目でも、共通項は少ない。

数少ないが、明らかな共通点は「美人」というところだろう。
ルパンは綺麗タイプでも、可愛いタイプでも、とにかく顔の整った美人が好きなのだ。
(といっても私としては「ザクリーヌって美人か??」とかなり疑問がないわけではないが(笑)、これはまあ私個人の好みの問題。作品中でもかなり「美人」ということになっているし)
ルパンは間違いなく面食いである。
確かにルパンは圧倒的に一目惚れが多い。
最初、ルパンはスタイルから入っていくタイプか、とも思っていたのだが、どうもそうではないらしい。
リーサやクラリスは、スタイルは勿論悪くはないのだろうが、不二子やエマニエルなどのようにフェロモン発散しまくるグラマータイプではない。どちらかといえば華奢で小柄なタイプだろう。
スタイルも大事かもしれないが、ルパンにはやはり「美人」であることが重要なのだ。ルパンが付き合ったり思いを寄せたりした女性はすべて美人である。
これはルパンが好きになる大前提と思われる。
多分ルパンほど目が肥え、モテそうな男は「美人」じゃない時点で「恋愛対象」にはならないのかもしれない。

かといって、内面はどうでもいいのかといえば、決してそうではない。
むしろ、ルパンが惹かれる女性は、よく考えてみると内面にこそ、より共通点が見出せる。ごくわずかなポイントではあるけれど。

テレスペの例を取り上げるのは当サイトでは異例だが、興味深いので触れておくと…TVSP「ルパン暗殺指令」において、ルパンは不二子に「インテリ女はあなた向きではない」と言われている。
カレンは初めて連れて来られたときから、次元に対してただならぬ感情を見せ、次元とカレンの間に妙な雰囲気が漂っていた。
ルパンはどう考えても相棒に関心をもっている女性を口説いたりしなそうだから、カレンに興味を向けなかったのかもしれないが、不二子の言葉とあわせて考えると、もともとインテリ系の女性は好まないのだろう。

そういえば、上に挙げた女性たちはみんなインテリ然としたタイプではない。
「1$マネーウォーズ」のインテリ系女性・シンシアにキスしたりしているけれども、ルパンのちょっとした気まぐれ、プレイボーイ流のご挨拶だと思う。(プレイボーイってイマドキ言わないか^^;)
ルパンにとってキスすることがそれほど重要な意味を持つとも思えないし、シンシアを愛したようには見えない。


ルパンはきっと、性格に関しては「可愛い」タイプが好きなのだ。いかにも「女」を感じさせるタイプが。
次元や五右エ門などから見ると、信用が置けないだけ、もしくは愚かなだけの女も、ルパンのような自信家で遊び人からすれば、そんな危険な部分も、欲深さも愚かしさも、みんな「可愛い」のだろう。
女がもっているとされる悪い部分を、ルパンのような男は愛せる度量がある。
勿論、一途で真摯な女性も「可愛い」と思い、心惹かれるのだ。
いかにも無力で女性らしいタイプも「可愛い」から好きだし、男性と対等に張り合う女性や、愚かしいながらも懸命に策を弄したり、色仕掛けで迫ってくるタイプもみーんなルパンにかかれば「可愛い」ということになる。女性ゆえの「可愛らしさ」である。
逆に、インテリ系の女性は、あまり女性性を感じさせないのだろう。女性らしさよりも知性が先立つ人にルパンは惹かれない。
知性に「性別」はない。「女らしさ」はない。だからルパンはあまり触手が動かないのだ。
クールな知性派よりも、感情や欲望に溢れている人間くさい方がルパンの好みなのだろう。

さらには、ルパンにも「嫌いなタイプ」というのが存在する。
ルパンは「自信過剰な女」が大嫌いなのだ(III−4)。
不二子のことを考えてみれば、「自信家」は多分嫌いではないのだろうが、「自信過剰」だと嫌らしい。あのルパンが女を「嫌い」だというのだから、相当なものである。
それはきっと、自信過剰な女は「可愛くない」からに違いない。
また、見た目は綺麗でも、次元や五右エ門に害を及ぼしたラビーナには、最初から物凄く攻撃的な態度をとっていた(新62)。
敵であることはそれほどルパンにはマイナス要素ではないはずなのだが、相棒を巻き込んだりしては話が別なのだ。
それにやはりラビーナも心理学者でインテリ系だ。
インテリで、しかも相棒たちを洗脳した、可愛げのない女だと、ルパンはいつもの女好きの様子はどこへやら。非常に冷たい。
何の躊躇もなくあっさりとラビーナを天のかなたへ飛ばしてしまっている。
こんなルパン、わたしはかなり好きである。


最後に不二子について触れてみたい。
不二子は明らかにルパンにとって特別な存在である。
敵であり、味方であり、恋人であり、仲間である不二子。
原作では、ルパンは不二子に惚れているが信用していないとしている。確かにその通りに違いない。
不二子を「信用できるから」惚れているわけではない。
ルパンは女性に「信用」や「安心」「安らぎ」を多分それほど求めてはいないのだ。(そういうものを与えてくれる女性も「可愛い」から好きだとは思うが)。
不二子の価値は、そんなところにないことを、ルパンは誰よりもよく承知しているのだ。
いつになっても正体を掴ませず、時にルパンを出し抜くほどの力を持ち、女性としての魅力も申し分ない。欲深くて、ドライなわりに感情豊かな部分もある。ルパンが手に入れたと思ってもすぐに身をかわす不二子。
ルパンのように、不可能だといわれることにチャレンジし続けるタイプの男性にとっては、不二子のような手に入れる価値のある魅力を備え、かつなかなか手に入れられない女性は、たまらない存在なのではないだろうか。

あ、余談を一つ。
ルパンの方は美人で性格が可愛いなら大抵の女性はOKだろうが、ルパンと長く付き合える女性の方はそうそういないだろう。
女性に関してはマメそうだし、プレゼントするのも大好きだというルパンだから、付き合ったばかりの頃は楽しいだろう。
が、何しろ神出鬼没のルパン。警察に追われたら瞬く間に逃げていってしまうし、殺し屋からも四六時中命も狙われているらしい。
自分の身も守れず、ルパンの足手まといになるような女性だと、敵対する人間にすぐ利用されたり、誘拐されたりして怖い思いをすること確実だ。

そして何よりルパンのあの性格だから、絶対に浮気するはずである(←断言。笑)
浮気の一つや二つにいちいち動揺したりせず、且つ毅然とした態度をとれるタイプの人でなくては、とても神経が休まらない。
ルパンと何日も連絡が取れない日が続いても、どんと構えていられるくらいでなくては、常に生きた心地もしないだろう。
あまりにも女の子らしい性格で、ルパンの浮気に対してウジウジしたり、行動を詮索しすぎては、ルパンからさりげな〜くすぐに飽きられそうだ。
自由を尊ぶルパンを束縛することなど出来そうもない。初めのうちこそやきもちを焼く女の子を可愛いと思ってくれるだろうが、あまりに度重なると次第に面倒になってくるのではないだろうか。いくら女好きのルパンとはいっても。
やはりルパンを「罠にかかったウサギちゃん」呼ばわり出来るくらいの不二子でなくては、あのルパンと長期間付き合いつづけるのは至難の業だと思う。
ルパンは、やきもちを焼く女性よりも、ルパンにやきもちを焼かせるくらいの「いい女」の方をきっと好む男である。

(2001.4.24)


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