第3話 さらば愛しき魔女


リンダ

旧ルシリーズ中、最も難解な話だと、個人的に思っている。
何度見ても不可解な部分が残り、旧ル解説が一向に進まなかったのは、この話のせいである(笑)。

冒頭からどうもよくわからない。
ルパンと不二子がボートの上でデート(?)していいムードだったのもつかの間、現われたボートに突然ルパンのワルサーで発砲する不二子。
撃たれたボートは大破し、ルパンは「無茶なことしやがる」とボヤいてボートに乗っていた人を助けに行く。
このボートに乗っていた人物こそリンダである。
不二子はルパンがリンダの元へ泳ぎ着いたのを見届けると、ルパンのボートで去っていく。
この不二子の行動も不可解だがそれはさておき。

ルパンは一目でリンダに惚れてしまう……
長い金髪の儚げな美人。リンダの台詞が極端に少なかったせいもあろうが、どこか幼な子のような感じのする女性。
まあ、美人好きのルパンが好きになったって不都合はないのだが(^^;、個人的には儚げ系の美少女及び美女が好みではない。(私の好みなどどうでもいい話だが)
リンダの名前だけ聞き出したその時、海の殺し屋「キラーインキラーズ」が襲い掛かってくる。
このリンダという女性、その組織に狙われているようだ。
キラーインキラーズの襲撃は、次元の手助けで事なきを得るが、戦っている隙にリンダは姿を消してしまう。花の香りだけを残して。

登場早々いかにも謎に満ちた女性だが、その後もよくわからない存在であり続ける。
世界的な核分裂論の科学者であるハインライン博士の助手であったリンダ。外見からは科学者の助手など務まりそうもない、というか、あまり知的そうでもない(失礼)女性であるが、ともかく助手だったらしい。
彼女は、博士の人体実験の結果、「第三の太陽」がなくては生きていけない「魔女」になってしまったという。

「第三の太陽」とは、粉末に精製して特殊な液体と反応させるとすごい威力の爆発物となる花のことである。
核物理学者のハインライン博士が研究しているのだろうから、核エネルギーに関わりがあるのだろう。
その「第三の太陽」の平和利用のため、リンダを人体実験したというのだが……
アニメだけ見ていては、とても理解不可能の設定である。
核兵器に匹敵するような威力を秘めた花の「平和的利用」に、どうして「人体実験」がいるのか。

ここで考えたいのは、原作の存在である。
アニメの解説の時は、なるべくアニメ世界の中だけで解説しようとしていたのだが、とてもじゃないけどこの話だけは手におえないので、原作まで引っ張り出すことにした(笑)。
3話の設定の元になっているのは、原作「トブな悪党」。
この中に出てくる「コブラケシ」がアニメの「第三の太陽」であろう。このコブラケシは、第三の太陽と同様、すごい威力の兵器にも使えるのだが、同時にガンなどのどんな病気の治療薬にもなるという、奇跡の花なのである。
この設定を引き継いでいるのならば、リンダで人体実験したというのも、ある程度納得がいく。
リンダは新薬の実験台になったのだろう。

リンダは、第三の太陽がないと生きてはいけない体になってしまった……というのだから、この花には麻薬的効果もあったのかもしれない。


魔女とは

が、最もよくわからないのは、リンダが「魔女」だということだ。
「魔女」とはどういう意味なのだろう。

普通、魔女といえば箒に乗った姿だとか、釜一杯に怪しい秘薬を煮込んでいる姿が思い浮かぶ。
おかしな魔法を使う老婆というイメージや、病や凶作などの災いを運ぶ禍々しい存在というイメージもある。あくまでも一般的でごく単純なイメージだが。

だが、リンダにはまったくその気配がない。特殊な能力を持っている様子も描かれていない。
第三の太陽という麻薬的効果を持った植物の常習者という以外に、リンダには特別なところが見えない。ただ単に、不幸な人体実験の結果、麻薬の常習者(らしきもの)になってしまった女性に対して、その実験を悔いている博士当人が「魔女」などというものだろうか。
どうもリンダには、何かがあるようなのだが、まったくわからない。「魔女」とはどういう意味なのか。彼女に何があるのか。
結局これについては推測もできていない(汗)。(ご意見お待ちしています(^^)

リンダは、第三の太陽がルパンたちの手で焼かれてしまう時、ただ花畑の中に立ち尽くすだけで、一向に何か特別なことをする気配すらない。
「魔女」であるのなら、特殊な力で火を消すなり、敵を一掃するなりすれば良さそうなものなのに、まったく何もしないところを見ると、そんなことは出来ないのだろう。
自分の生命の正念場でもこの様子なのだから、やはりリンダに超能力等があるわけではなさそうだ。
そして博士の銃弾にもあっさり倒れてしまう。

ルパンが言う通り、まさに「花のような」女性だった。
抵抗もせず、風が吹けばそちらに流され、摘まれても踏まれても、自分では何一つできないまま咲いているような女性。
が、リンダは「花」そのものではない。彼女にも行動しようとしたことがある。
それは、ルパンに助けを求めることである。

リンダがしようとしたのは、一体どういうことだったのだろうか。
ルパンと再会した途端に、「鬼ごっこしましょう」と言ってルパンを次元から引き離し、ルパンに身をゆだねる女。
そのお願いは「私を守って」ということだった。
会ったばかりの男に身をゆだねる時に「お願い」するわけで、リンダのこの願いは相当切実のような気がする。

花がなくては生きていけない、というリンダの言葉が、その時のルパンには理解できていないのだが……
彼女はルパンに具体的にどうして欲しかったのだろう。
花がなくては生きられない自分を守れと言うのだから、いくら緊急事態だからといって、博士のように第三の太陽を完全に焼却してしまうことには反対だったはずだ。
だからといって、自分を狙うキラーインキラーズの味方もできない。

もしかしたら、リンダはキラーインキラーズを壊滅させ、第三の太陽の研究結果を知っている博士をも殺して欲しかったのかもしれない。
博士は死後、唯一残った第三の太陽を使った兵器を日本の研究所に届けるようルパンに依頼しているところを見ると、この世紀の大発見をキラーインキラーズのものにはしたくないけれども、そのまま埋もれさせる気もなかったはずだ。
その辺りの考え方がリンダと博士は違ったのではないだろうか。
リンダはもう誰の研究対象にもなりたくなく、静かに、ただ花と生きたい……それだけを望んでいた。
ルパンに、それを助けて欲しかったのではないだろうか?

だが、ルパンは博士の方に肩入れし、というかルパンも事態をよく把握しきれていないうちに話が展開し、どさくさで博士の為に行動しなくてはならなくなっていた。
こうして、リンダは死んだ。ルパンは女との約束を、守ることが出来なかった。ルパンには、非常に珍しい出来事であろう。


もう一人の女

リンダにばかり目が行きがちな3話だが、不二子の行動もよくわからない。
「キラーインキラーズの仲間のふりをしていたけど…」という発言もあるので、どうやら冒頭シーンでリンダのボートを撃ったのはキラーインキラーズに義理立てして、ということだったようだ。
だが、その後組織を裏切り、第三の太陽を独り占めして島から持ち出そうとして失敗している。
その直前、不二子はリンダと出会っている。
どうやら言葉を交わしているようだが、その様子はスターンが望遠鏡で見ているシーンに変ってしまうので、実際どんなことを喋ったのかはわからない。
スターンは、花畑の場所を聞き出そうとしている、と考えたようだが。

リンダは、不二子が自分に発砲した女だと気づいていないのだろうか?
仮に気づいていなかったとしても、非常に重要な花畑の場所を、見ず知らずの女に教えたりするだろうか?
この2人は最初から手を組んでいたとの解釈もあるようだが(「幻のルパン帝国」、高橋実・作、フィルムアート社)……。
不二子の狙いが、第三の太陽を手に入れることであるのは間違いないだろう。こんな貴重な植物を売れば、莫大なお金が手に入る。
リンダの目的は、自分を守ってもらうこと。
2人は共謀して、キラーインキラーズを出し抜ける力を持つ男・ルパン三世を味方につけたとの解釈のようだ。

確かにルパンならキラーインキラーズ以上の力を持ち、彼らを駆逐できるかもしれない。
が、結局不二子が第三の太陽を手に入れ(手に入れたからには売り払うだろうから)、この花の力が公になってしまえば、この島の存在、そしてリンダの存在も知れ渡ることになるだろう。
不二子とリンダの最終的な目的は一致しないような気がするのだ。
確かに2人の女が組んでいたとすれば、リンダと出会った後の不二子が、第三の太陽の場所を知り、持ち出していたことの説明はつくし、冒頭での不二子の唐突な発砲も理解できるのだが。
それとも私の仮定が誤っていて、リンダのルパンへの「私を守って」という言葉は、単にキラーインキラーズから、という意味だったのだろうか。

一番反感を買いそうでしかも安直な解釈は、リンダがあまり深いこと考えられないタイプの人間だという説(リンダファンの皆様、スミマセン!汗)。
不二子の口車に乗って、言われるがままにルパンに会い、思わせぶりに身を任せる……それが自分を守るためだと信じて。
だけど、仮にも科学者の助手だった人間がそんなに頭が悪いとも思えないし……。

いずれにしても、リンダはルパンに助けて欲しいのなら、2人きりになった後すべてを打ち明け、ルパンから離れなければ良かったのに、と思う。
それが出来なかったのか。出来ないわけはやはり「魔女」ということに関係があるのか……
30分にはとても収まりきれない背景がありそうなこの第3話である。
カルトブックには「雰囲気を鑑賞する話」とあったが、それが一番正しいのかもしれない。

未知のエネルギーを秘めた謎の花、それで強力な兵器を作り世界支配をしようとする組織、そして薄幸の美少女。
これは、まさにTVSP向き?!(笑)
解説にならない文章をこんな冗談で誤魔化そうとしたりして(大汗)。


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