第6話 雨の午後はヤバイゼ


アンニュイ

個人的に、3話の次くらいに解説が難しいと思われる作品。
次元の偽者が登場したり、ルパンが大胆できわどいトリックを使ったりと、なかなか派手な要素があるはずなのだが、ミステリアスで、どこかアンニュイな雰囲気が作品全体を支配する。
そう、まさに雨の雰囲気が…。
ルパンの「恨むんなら雨を恨め。お子様ランチの現れた、あの雨の午後をよ」という台詞がすべてを象徴しているようだ。

始まりは、雨の午後。
どこへ行っていたものか、ルパンは土砂降りの雨の中をアジトへ帰ってくる。びしょ濡れになりながら。
「またふられたな」
という、「雨に」と「女に」を掛けたと思われる次元の台詞からすると、女の所へでも行っていたのだろうか。

帰ってきたルパンの背中には、女の文字で「助けて、ルパン」とのメッセージが貼られていた。ルパンに心当たりは、ない。
それとほぼ同時に、アジトには「お子様ランチ」と称する男がルパンを迎えにやってくる。通称お子様ランチ。名前を名乗る程のものではないそうだ。
次元は彼を見て「なるほど、まずいツラだ」と一言。次元、座布団一枚(笑)…とふざける雰囲気の場面ではないのだが(^^;
後に彼が死んだ時、ルパンは「もう好物のお子様ランチも食べられない」と言っているが、この愛称はやはり彼の「好物」だからついたものなのかもしれない。

それはそうと、この回のゲストキャラは全員本名は不明のままである。通称カマイタチ、お子様ランチ、ハンマーのガン鉄、マンダラの辰……
いかにも暗黒街の面々といった感じがよく出ている(ような気がする)。
と、同時にやはりどこか現実離れした、ミステリアスな雰囲気を醸し出すのに、一役買っているようにも思える。

お子様ランチは、女がルパンを呼んでいると言う。助けを求めるメッセージはその女からなのだ。勿論、ルパンは行く気だ。
それを見計らったように次元は「どうした、行ってやりなよ」と言う。それに対してルパンは「いいのか?」。
次元はその問いに、こう問いかけ返して答えとする。「行くなと言わせたいのか?」
カッコイイ〜vvこのやり取りは、実はこの話の中で1,2を争うほど好きだ。
ルパンは普段次元の忠告をあまり聞かないくせに、今回次元が「行け」と勧めたら急に「いいのか?」と尋ねるところがもう最高に可愛い!(笑)
行くと決めているくせに、相棒にとめてもらえないと調子が狂うのだろうか。
一方次元は、ルパンがもう完全に行く気になっていて、止めても無駄だということをすっかり承知していたからこういう態度をとったのだろう。
いかにも長年付き合ってきた相棒同士という感じがにじみ出ていて良いのであります(^^)

余談だが、お子様ランチが乗ってきた車はルノー。それを窓越しに見ていた次元は「なるほど、似合いだ」というようなことを言っている。
これ、どういう意味なのだろう?(話の本筋とは全然関係ないが)
「マズイ」車という意味なのか、それとも「お子様」っぽい車なのか??車に疎いので、この台詞はいつも「?」なのだ。

さて、案内されて到着した屋敷でルパンを待ち受けていたのは、峰不二子。いきなりルパンの背中に銃を向けてのお出迎えである。
「冗談はよしなよ、ブローニングは背中に感じやすいんだ」
く〜ッ!シビレる〜ッ!(壊)
「さすがはルパン」と言ってるところを見ると、不二子はちょっとした悪戯気分で銃を向けたか……もしくは銃を向けられていても気づかない程度の男は使えない、という彼女のシビアな確認の行為だったのかもしれない。まあ、ルパンを今更試さなくてもって気もするので、単に、謎の女流の物騒なご挨拶なのかもしれない。


解説が難しくなるのはここから。
というのも、何だかいろいろと腑に落ちない点が多くあるからなのだ。それは追々考えていくとして……

不二子は、ルパンにこの館の主人である男の過去を調べて欲しいという。半年前までの記憶しかない男の。
不二子はここの「メイド」らしい。不二子がメイド!全然似合わない(^^;
それにしても、ルパンも言っている通り男は「ヒデェ顔」である(笑)。

アジトに戻ったルパンが、次元にこの話を説明すると、次元は満足していない様子。
「お前の魅力はどこにある?」「でっかい事をするところにあるんだぜ」次元はそう言う。まさに本音だろう。「ルパン三世」に心酔している相棒としては。
が、ルパンは「不二子の心」をいただくつもりになっていて、ルパン的にはメリットのあるヤマらしい。

何だかんだいったところで、次元はルパンに付き合うもの(笑)。2人揃って外出しているところを見ると、一緒に調べてくれるようだ。
そこへ、いきなりの襲撃。車からルパンたちに向かってマシンガンをぶっ放つ。
ルパンと次元はナイスなコンビネーションを発揮して、あっさり敵をやっつけた。「次元!」とか「行くぞ!」しか言ってないのに、どうして伝わるんだ〜(笑)もう最高!
その襲撃でかすり傷を負ったルパンは、病院へ。
そこで偶然、ルパンが過去を探ろうとしている男の身元が判明する。

通称カマイタチ。彼は暗黒街のボスだという。
ルパンや、ましてや色々と暗黒街に顔が広そうな次元も知らないところを見ると、それほど大した「ボス」ではないのかもしれない。もしくは、ここ最近急速にその地域で力を伸ばしてきた人間か。
カマイタチは、半年前にある手術を受けており、それを請け負った医者は行方不明になっているという。
カマイタチが記憶を失ったのも半年前。いかにも、におう。
ルパンたちは早速カマイタチの屋敷へ向かった。

が、そこには遺体となったカマイタチの姿があった。昨日心臓マヒで突然死んだらしい。
何か掴んでいるはずの不二子を問い詰めるルパン。だが、ちょうどその時、次元は一人の男が様子を伺っているのを発見し捕らえる。それは、さっきルパンたちを襲ったマシンガンの男だった。
名は、マンダラの辰。カマイタチの部下である。
彼の出現により、カマイタチの記憶喪失のわけが判明する。

半年前、カマイタチは「手術」を済ました後、記憶喪失装置というモノに入り、半年間記憶を失うことにしたのだという。その半年の間、カマイタチのことをかぎまわる人間がいたら始末するよう、辰は命令を受けており、そのためルパンたちを襲った、とこういうわけらしい。
行方不明の意志は、記憶喪失装置に入ることを拒んだ為、カマイタチによってすでに殺されていた……。

そして、そろそろ昨日辺り、カマイタチの記憶は戻るはずだった、というのだ。
そこに居合わせたはずの、不二子。そして今、骸となって横たわっているカマイタチ……。
不二子は「何も知らない」と言って、泣きながら部屋を飛び出す。ルパンは不二子に泣かれ、ちょっと弱腰になってしまう。慰めついでに迫ろうとしていつもの如くひっぱたかれてオシマイなのだが。

ここで、よくわからないこと・その1。カマイタチはなぜ半年間記憶を失わなくてはならなかったのだろうか。
物語の最後でわかることだが、カマイタチの秘密、不二子の狙いは「キリマンジャロの星」という半年前に盗まれたダイヤだった。
勿論、盗んだのはカマイタチだろう。それを自らの体に縫いこむ、という形で隠した。半年、というのは、そのダイヤを売りさばくために、ほとぼりが冷める頃は半年くらいだと考えていたのかもしれない。
ダイヤを縫いこむ手術をした医者を、記憶喪失にするのはまだわかるのだが、なぜ自分まで?
自分は喋らなければいいだけなのだから、そんな装置に入る必要はないと思うのだが……(ご意見、お待ちしております(^^))

そして、わからないこと・その2。カマイタチは本当に心臓マヒで死んだのだろうか。
あまりにもタイミングが良すぎるのではないか?ましてや、死因に不審な点があるから、ということで警察で解剖されることになったのだから……。
と、なると怪しいのはいうまでもなく不二子である。カマイタチの死ぬ前日、ちょうど記憶の戻る頃、一緒にいた不二子。
自分だけがカマイタチの秘密を聞き出して、彼を亡き者にする。外傷はなさそうだから、毒殺だろうか。旧ルの不二子ならそれくらい平然とやってのけそうな風情がある。
ん?だが、待てよ……

ルパンに問い詰められた時点では、カマイタチの遺体は荼毘にふされようとしていた。遺体にダイヤが隠されていることを知っている不二子は、それを聞いた途端に「火葬はやめて!」と慌てて飛び出している。
それを追いかける辰。ルパンは辰にぶん殴られて気絶してしまい、次元に「一人じゃ何も出来ねぇんだから」と、保護者のような台詞を聞かれている。(この台詞もツボv)
この後偽次元の騒ぎがあり、ルパンが不二子の元へ乗り込んだ時に、警察が死因に不審な点があるとしてカマイタチの遺体を解剖することになっていた。

こういうタイミングを考えると、こんな風にも解釈できないだろうか。
火葬を取り合えずやめさせる為に、自ら警察にカマイタチの死に不審な点があると密告する。
ルパンがカマイタチの秘密に気づき、ダイヤを盗んでくれるまでのほんの時間稼ぎに……。
ルパンなら、遺体に何らかの秘密があると気づくだろう。そして彼なら、見事その秘密を盗み出すに違いない…そう考えて。
こんな風に見ていくと、「火葬はやめて〜」と言って飛び出していった不二子の態度すら、ルパンにヒントを与えているようにすら勘ぐってしまうのだが、いかがだろうか。


雨のせい

話をあらすじに戻すと、辰にぶん殴られたルパンは、目を覚ますとさっそく次元に「腕の立つヤツを集めてくれ」といい、行動を開始する。
そして集ったルパンの手下たち。
図体がデカイのにすばしっこさが売りのハンマーの岩鉄。カマイタチの部下だったのにルパンの手下に突然仲間入りしたマンダラの辰。そして、次元大介。
ご承知の通りこの次元は偽者である。本物は、不二子の部下に捕らえられているのだ(そのシーンは描かれずじまいだが)
あまりにもルパンの相棒という立場に化けたことを過信しすぎてか、それともルパンの目の確かさ、シビアさを甘く見すぎていたか、偽者は自分から「合言葉を言わせよう」と持ちかける。
新入りの部下だけでなく自分も言わされるハメになり、偽者とあっさりバレる。
こんなことを言い出さなくても、ルパンが次元の偽者に気づかぬはずはないだろうが。
偽者もわかっていても、「次元」が撃たれて死ぬるシーンは結構衝撃的だ。

その偽者の死体を証拠に、ルパンは不二子の元へ乗り込む。不二子は喪服に身を包み、妖しく色っぽい。(5話に続く和服姿、必見(^^))
ルパンがカマイタチの遺体に何か秘密があることを掴んだ、と告げても不二子は「思い通りに行くかしら?」と、余裕なのかとぼけているのか…そんな態度を崩さない。
ルパンにニセ次元=お子様ランチの死体を見せられ、部下に本物の次元を解放するよう電話しろと迫られ、ついに不二子は「負けたわ」と言う。
この頃不二子には、ルパンシンジケートとは無関係と思われる、独自の部下たちを多数持っているように描かれている。
お子様ランチや次元を捕らえていた人間は、そうした部下だったようだ。

ところで、不二子は「負けたわ」と言いつつ、全然負けたわけではなく、本人も負けたとはまったく思っていなかっただろう。

ルパンは、警察へ移されるカマテタチの遺体を、警察にはまったく気づかれずに調べる作戦を立てる。
作戦の詳しいことは実際6話を見ていただくのが一番手っ取り早くてわかりやすいと思うので詳細は省略するが(^^;)、一端二手に分かれる道、それが再び合流する卍型の地点…それらの地形を生かし、遺体を運ぶ車と警察の護送車を引き離す。
道が分かれている短い間に、護送車から引き離された車で運ばれているカマイタチの遺体を調べる、という手筈だ。

ルパンは見事成功する。
カマイタチの遺体から、半年前に消えたダイヤ・キリマンジャロの星が見つかったのだ。
それにしても、体のどこにあんな大きなダイヤを隠していたのだろうか。
何はともあれルパンたちがその成功を喜んだのもつかの間…
バイクで現れる不二子。「あなたって本当に三枚目なのね」などと言いつつ。
その瞬間、ダイヤを持っていた辰が不二子にそれを投げ、同時に不二子のバイクに飛び乗ったのだ。

辰は、不二子が「火葬はやめて」と飛び出して行った時、単身彼女を追いかけている。どうもその時に不二子に仲間に引き入れられ、ルパンの動向を探らせダイヤを手に入れようとしていたと思われる。
お子様ランチを次元に化けて潜入させただけでなく、さらに部下を潜り込ませておくとは…用心深いというか、ダイヤへの執念が半端じゃないと言おうか…。
こうなってくると、今回のすべては不二子が仕組んだ通りに動いていたようにも思えてくる。

「裏切った」辰の背に、次元は遠慮なく発砲した。倒れる辰。だが、不二子は気にする様子もなく、一度も振り返らずダイヤを持ったままバイクを走らせ、去った。
まるで、次元が女を決して撃たないことを承知しているかのように平然と。
辰のことも、まったく気に留めていないらしい。
まさに魔性の女。今回の不二子は特別ミステリアスで、いかにも悪女である。

さらには、遺体を護送していた銭形にルパンの存在が気づかれ非常線を張られてしまう。川を車で強引に渡り事なきを得るのだが…(笑)
次元が「これもみんな、雨のせいかい?」と皮肉るのに対し、ルパンは「気取るな!」と叫ぶ。
完全に不二子にしてやられた形となったのだから、怒鳴りたくもなるだろう。
当初目的(?)だった不二子の心も手に入らず、せっかくルパンらしい「デカイこと」をしたと思ったのに、あっさりその獲物を不二子に奪われてしまったのだから。
何もかも、あの午後の雨のせい。不二子の部下、お子様ランチがルパンを招いたせいなのである。

手に入れたダイヤを、入浴しながら嬉しそうに全身に滑らせる不二子。
戦利品に酔いしれるその妖艶な姿は、一度見たら本当に忘れられない。


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