第7話 狼は狼を呼ぶ


斬鉄剣

なんていいタイトルなんだろう。見るたびにいつもいつも感動してしまう。
タイトルランキングをするとすれば、間違いなく第1位にしたい。
と、余談はこのくらいにして…

五右エ門がついにルパンの仲間になるお話。
そして、「斬鉄剣」という名称が初めて使われた回でもある。

五右エ門の愛刀・斬鉄剣は、ストーリーやシリーズを重ねるごとに、新たな設定が付け足されていくので、その成立過程はなかなか複雑である。
この第7話では、斬鉄剣は19世紀に開発され、その製法は秘伝書全3巻に記されたことになっている。そして、その秘伝書を元に、示刀流により斬鉄剣が何本も作り出されつつあるという設定。
5話では、名刀を3本溶かして打ち直したはずの斬鉄剣なのだが…
斬鉄剣誕生についての私の推論(というかこじつけ?^^)を述べるのは、いずれCharacterの五右エ門のページで取り上げる予定なのでここでは省略したい。

ただ7話の設定を簡単に書くと、斬鉄剣の製法は、
 日本で開発される(五右エ門の祖先と近しい名匠の手によるのだろうが…)
→アルセーヌ・ルパンによってその製法盗まれる
→ルパン2世と示刀流総帥の戦い
→示刀流総帥、ルパン二世の部下を通じて斬鉄剣の製法奪う
→秘伝書にまとめられ、黒鳥山で斬鉄剣の大量生産中
という具合になるだろうか。

ルパンは、父・ルパン二世が奪われた斬鉄剣の製法を、示刀流から奪い返そうとしていた。
そのためには、示刀流の入門試験で合格して潜り込む以外に手がないらしい。ルパンが珍しく真面目な顔つきで、日本刀や空手の鍛錬などを始める。ケガだけして終わってしまったが(笑)
次元は、示刀流には、強敵・五右エ門がいることを知り、今回だけはやめておいた方がいいとルパンを止める。が、勿論聞き入れるルパンではない。
「ルパン家の誇りの問題なんだ」
さらに、こうも言う。
「ヤツとは、いずれ対決する運命なんだ」と。ヤツとは無論、石川五右エ門。

そうしてルパンは、次元すら連れずにたった一人で示刀流総本山へと乗り込むのだった。

示刀流総本山・黒鳥山では、五右エ門はどうやら武道の指南役をしつつ、斬鉄剣の試し切りをし、斬鉄剣の大量生産に一役買っているようだ。
一人示刀流に乗り込むルパンは、安中の半次という上州国定組の幹部になりすまし、まんまと潜り込むことに成功する。
そして、そこで「先生」と敬われている五右エ門の様子を伺い、「乙に澄ましやがって」とこっそり皮肉る。
どうあっても無視できない……この時点で既に、五右エ門にとってもルパンにとっても、お互いはそんな存在だったのではないだろうか。


藤波吟子

入門希望者は、そこで一人ずつ武術の試験を受ける。
赤鼻獅子兵衛、北海道のシシャモ、堀野海金など一癖ありそうなヤクザものが揃っている。
その中に、一人女が混じっていた。…藤波吟子。言うまでもなく不二子の変装である。
この吟子がとにかく可愛いのだ(^^)。
めったに見られない不二子の黒髪姿。凛々しいのに色っぽい。不二子の変装の中で、文句なく一番可愛い変装だと思う。
ところで、ギンコは「吟子」なのだろうか、それとも「銀子」??
ここでは一応カルトブックに従って「吟子」としておく。

吟子は小太刀を使い、見事入門試験に合格する。
そしてついにルパンの番となるのだが…そこには、五右エ門の脇にはべる、吟子の姿が!!(笑)
この頃の五右エ門は、まだ女嫌いではなかったらしい。
5話で、清楚だと思っていた不二子に騙されたショックで、この時は逆に免疫をつけようと(笑)女を身近に置くようにしていたのだろうか? それとも、よほど吟子が気に入ったのか…??

ルパンが「ヘッタクソな変装だな」と評した不二子の化け方。ルパンは変装の第一人者だろうから一目で見破れるのは当然かもしれないが…
五右エ門は、吟子が不二子だと全然気がつかなかったのだろうか。
気が付かずに、またしても不二子を近づけてしまったのだとしたら、いい加減自分の未熟さにうんざりするだろうし(真面目な五右エ門のことだから)、女が嫌いに…特に不二子が嫌いになっても当然のような気がする。
余談だが、8話では一応4人揃っての初仕事をしているがほとんど五右エ門と不二子の会話はないし、9話では不二子が来ると聞かされていなかったせいか、不二子の姿を見ただけで怒って仕事を降りてしまっている。

ルパンは入門試験の一撃目こそどさくさでかわすが(笑)、不意をついてきた五右エ門の刀を受けとめきれずに、気絶する。
が、その時てんとう虫型盗聴器を、五右エ門の裾につけておくことは忘れなかった。
気絶からさめたルパンは、五右エ門と総帥の話を盗み聞く。

示刀流総帥は、五右エ門に対して彼に足りないものを「非情」だとする。非情に徹する心。またしても五右エ門は、これが己に欠けているものとして指摘されたのだ。
五右エ門はそれを振り払うかのごとく、入門者の中に紛れ込んでいる怪しい人物…それがルパン三世であったなら、自分が必ず斬る、そう断言している。
その時飛び立つてんとう虫。斬ってみれば盗聴器だ。
五右エ門は、ルパンが潜り込んでいること、そして自分がルパンを斬るつもりでいることを、ルパンが聞いていたと知ったはずだ。

さて、あの不二子が何の目的もなくこんなところに潜り込んでくるはずもない。彼女の獲物も斬鉄剣の秘伝書である。
邪魔をさせまいと、夜、不二子の元に忍び込もうとしたルパンだが、マキビシに撃退されてしまい、さらには不二子の手下(あの入門希望者達3人)に殴られ、気絶させられてしまうのだった。
「おやすみ、ルパン」
不二子、やることはめちゃくちゃ酷いんだけど、どうにも可愛い!

ルパンを片付けた不二子は、早速秘伝書強奪に取り掛かる色々準備をしてきたというだけあって、もう一人いるらしい部下に、示刀流ではご法度の飛び道具を空から投げ入れさせ、完全武装。そのまま秘伝書のある洞窟へなだれ込む。
しかし、秘伝書の前には五右エ門が立ちふさがる。
飛び道具は五右エ門に効かない。あっという間に部下三人を殺された挙句、不二子の咽喉元に刀が突きつけられた。
今回は不二子の完敗である。
が、五右エ門は「女は斬らない主義」といい、不二子を逃がす。
斬らぬと言われた時、あっさりと「ありがと」と言う不二子の可愛らしいふてぶてしさ。そして「後で面倒なことになるかもしれなくてよ?」という負け惜しみとも、不敵な予告ともとれる捨て台詞。(実際、再び秘伝書を奪いに来るのだが)
旧ル不二子の魅力、ここにありといった感じである。


やっかいな仲間

そうしている間に…その背後ではルパンが秘伝書を手に笑っていた。
ルパンは不二子の部下に殴られても気絶などしておらず、不二子たちを逆に利用し、おとり役をさせていたのだ。さすが〜!(笑)
だが、ルパンが手にとった秘伝書は偽物、ダイナマイトだった。慌ててそれを投げ捨てると、そこは秘密の扉(?)。
爆風で五右エ門が気を失っている間に、ルパンはそこから示刀流総帥のもとへ忍び込んだ。

そこで総帥から、上に記した斬鉄剣の由来を聞きだす。元はルパン二世のものだった斬鉄剣の製法…。
それを知った五右エ門は、秘伝書を守るためにルパンを斬ることはせず、かといってルパンに秘伝書を渡すこともしない。総帥とルパンを立ち合わせ、勝った方が秘伝書を取るということにする。元々は、総帥とルパン二世の立ち合いから始まった話なのだ。
あまりにも律儀で公平な男、五右エ門。この時ルパンに五右エ門はどう映っていたのか。

総帥との戦いは、あっさりとルパンが勝つ。
ルパンはゴツイ鎧に身を固め、無駄だと知りつつ銃を撃っては逃げ回る。それは全部ルパンの作戦で、総帥をむきにならせて後を追わせ、落とし穴に落としてしまうのだった。
狭い穴の中では刀は振るえない。穴の上から撃たれればお終いである。勝負あったのだ。

その時不二子が空から秘伝書を吊り上げて奪っていくが、それは偽物。
不二子の捨て台詞を覚えていたのだろう。用心してか、五右エ門は自分の懐に本物を持っていたのだ。
それを、勝者であるルパンに渡す。
敵対する立場であるルパンに対しても、義理堅く筋を通す五右エ門…。卑劣さを知らぬ男。
そういう男だからこそ、簡単に和解はできなかった。秘伝書のことと、いずれルパンと決着をつけると決めたこととは別問題らしい。
改めて、決闘状をルパンに送りつけたようだ。

この時の「ハナをかむにゃ固すぎる。飛行機作るにゃデカすぎる。風呂の焚き付けにでもするんだな! ゴエモン風呂のよ!」というルパンの名台詞は、忘れられない。
ルパンには最早五右エ門と殺しあう気はなかったのだろう。
5話の時点からすでに、自分とは正反対なくせに、どこか自分に似た男・五右エ門を「なんとなく気に入って」いたのだから。
だが、この男に「逃げ」は通用しないともルパンにはわかっていた。
そして、ルパンがとった手段は…

総帥を負かした時とまったく同じ手段。落とし穴に五右エ門を落とすことだった。
まんまとそれに引っかかってしまった五右エ門。穴の上から、笑いながら手を差し伸べるルパン。

穴の中で、五右エ門はどんな思いでルパンを見上げていたのだろう。
五右エ門と違い、あくまでも非情に徹することもできるはずなのだ。かつての師匠・百地をためらいなく殺したルパンを見て、五右エ門はそのことを誰よりも知っていた。
己にない非情さを持つ男、ルパン。
それなのに、今自分に向って銃ではなく、手を差し伸べる不思議なほどの懐の深さ。
殺し合いでなく、こうした手段で勝利を得る余裕。遊び心。
五右エ門は、自分の未熟さを知ると同時に、自分にないものをあまりに多く備えたルパンに惹かれ、心服していることを自覚したのだろう。

一人目の師匠・百地は、五右エ門を裏切りルパンによって殺された。二人目の師匠は、ルパンに敗れ去り、秘伝書もまたルパンの手に渡ったため、もはや示刀流にいる必要もなくなった。
この時の五右エ門は、もしかしたら初めて自由になったのかもしれない。
師匠をなくし、自分の行き場を考えた時。浮かんだのはルパンの元だったのではないだろうか。
西洋的なものを好み、享楽的。自分とは正反対。そのくせ不思議と通じるところがあるルパンの。
……まさに「狼は狼を呼」んだのである。

だが若く頑なな五右エ門は、原作のように明るく「ルパンくん!」とルパンの元へ駆けつけることは出来なかったようだ。
次元と二人で車で走って来るルパンの前に、五右エ門は立ち塞がる。
ルパンも意図を察したのか、ムキになって五右エ門の元へ車を飛ばす。
五右エ門は、車を一刀両断にする。
これが、彼なりの不器用な意思表示、だったのかもしれない。ルパンは、それを受け止めた。
半分になった車で笑いながら追いかける。逃げる五右エ門も笑う。
五右エ門のこんな笑顔は、初めてだろう。

肩を組んで大笑いする二人。それを見つめながら「厄介な仲間が一人増えたようだぜ」と呟く次元。
彼らの、長い長い付き合いの始まりである。


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