第3話 ヒトラーの遺産


銭形の捜査方法?

この回も、まだどこかキャラクターが定着しきれておらず、なかなか面白い場面が見られる回である。

舞台はベルリン。
まだ、東と西が冷たく対立しており、その間には「ベルリンの壁」が確固として立っていた時代の話である。

この回には、銭形警部と行動を共にする、東大卒のエリート刑事が登場している。
お勉強はできそうだけど、なんだか冴えない、捜査力も行動力もなさそうな、官僚チックな雰囲気の男である。
どういうつもりでこの男を、銭形警部とともに出してきたのか、今ひとつピンとこない。
彼の絵柄と同様、扱いもぞんざいで、結局名前も出してもらっていないのではない(ちなみに脚本の段階では名前がついており、北大路警部補)。

まあ、面白いのは、銭形警部と正反対の男を出したことにより、銭形警部のいつもの行動ぶりが窺えることだろう。
この男が「まず地元警察に挨拶に」などと、常識的に考えればもっともな行動を取ろうとするのに反し、銭形警部の方はそんなことよりもまずルパンの足取りを追おうとする。
地元警察がルパンに関してはあまり役に立たないことを、幾度も経験した結果、こういう行動を取るようになったのかもしれない。
この話以降も、時には地元警察と連携することもあっても、やはり基本的には自分の勘と経験だけを頼りに、一人で突っ走ることの多い銭形警部である。
ルパンのように神出鬼没な相手では、常識的にいちいち挨拶なんかをしていては、取り逃がしてしまうというような場合も多いのだろう。

それにしても、銭形警部は相棒に恵まれない。
原作の方では刑事メロンという同僚は登場するが、「相棒」という存在からは程遠い。
テレビシリーズでも、TVSPでも、時々相棒らしき刑事が登場しても、すぐにいなくなってしまう。
ルパンが、彼と同じくらいの力を持つ頼りになる相棒を2人も持っているのに対し、銭形警部はいつも1人。圧倒的に不利なのも頷ける。


斬鉄剣が!

キャラクターが安定していないせいか、この頃まだ五右エ門と斬鉄剣の扱いが、かなり違っている。
1話では、斬鉄剣ではなく空手で敵を倒しているし、2話ではマシンガンをぶっ放すレアな五右エ門姿も見られる。
今回は、のちに「武士の魂」だとか「命」等と称し、盗まれたら自殺しようとまでするほど大切にしている斬鉄剣を、ルパンの足場に提供してしまう。

今回のルパンたちのターゲットは、題名どおりヒトラーの遺産。
ヒトラーは莫大な財宝を大戦中に、どこかに隠したといわれている。
その財宝のありかを知る人物・元秘密補佐官のクロイツェン・ゲンハルトから、場所を聞き出そうとするのだが……
そのため彼を、東ドイツから、西ドイツのルパンのアジトへ連れ出す。

それには壁を越えなくてはならない。あのベルリンの壁を、だ。
ルパンは言う。
「壁なんてのは、越えるためにあるんだ」
……カッコイイ〜!!これぞルパン! 挑戦だけに生きる、いかにもルパンらしい台詞である。
この話は、ルパンのこの台詞を聞くためだけにでも、見る価値はある(笑)

かくしてルパンは、大胆にもグライダーで壁を越えようと試みる。
ルパンだけはゲンハルトを抱えて。見るからに何か起こりそうな体勢。
案の定ルパンはバランスを崩し、あわや地雷を踏みそうになるのだが……

そこへ、差し出されたのが斬鉄剣なのだ。
五右エ門は「これを使え」と斬鉄剣を壁に投げつけ、刺さった斬鉄剣を足場にしてルパンは、再び空へジャンプし事なきを得る。

ルパンの命を救うためなのだから、あながち粗雑な扱いとは言えないかもしれない。
が、気になって仕様がない! 斬鉄剣はどうやって回収したろだろう!
まあ、新ルは時々、あまり深く突っ込んではいけないという時があるので、今回もそうするが(笑)
…にしても、新ルの回が進んだ時期であれば、斬鉄剣のこういう使い方は、されなかったのではないだろうか。そんな気がする。


有名人の遺産

苦労して連れ出したゲンハルトは完全に耄碌していて、ヒトラーの遺産の隠し場所などまったく覚えていなかった。
どうにか白状させようと、ルパンは頭を絞ることになるのだが……

この時気になるのはやはり五右エ門(笑)
あんなヨボヨボの老人を脅し、挙句の果てに(白状させるには)「そんな生ぬるい手ではダメだ」というような過激な発言をしている。
年長者は大切にするのが五右エ門なのではなかったのか?
老人相手にすごむ五右エ門の姿は、今となっては超レア。ファン必見である。
それとも、五右エ門はナチス嫌いなのだろうか。

老人の記憶をよみがえらせるために取った手段。
それは映画セットを借りきる大掛かりなもの。
ルパンがヒトラー、不二子がその愛人エヴァに変装し、老人を過去に戻ったように錯覚させる。ヒトラー・ルパンが宝の場所を問いただすと、ゲンハルトはルパンの思惑通りに即答した。

そういえば、新ルにおいて、ルパンの完全な変装はこのヒトラーが初めてだろう。
実際にヒトラーに身近に接していた老人(いくらボケているとは言っても)を相手に、怪しまれることなく、ヒトラーに化け遂せたルパンは、やはりさすが。
あの時代だと、比較的音付きの映像も残っているので、それらを見たりしてヒトラーに変装する研究でもしていたのだろうか(^^)。
何より不二子のエヴァ・ブラウンの変装がすごくカワイイ。この後新ル初期では、不二子の金髪姿が多く見られる。

ロゴス島沖40海里。
白状させた場所から、箱を引き上げるルパンたち。
一時期、ヨーロッパのほとんどを席巻したヒトラーの遺産だから、相当なお宝を期待しても無理はない。
が、そこから出てきたのは子供時代のヒトラーの成績表だった。それも最低な成績ばかり。
こんなところにご大層にとっておかずに、焼却してしまえばよかったじゃないか!という突っ込みは、しちゃいけないんだろうな(笑)
人に見せたくはないけれど、どうしても個人的思い入れか何かで、捨てがたい成績表だったのかもしれない。

この後も、ルパンワールドにおいて、有名人の遺産にはロクなものがない。
ナポレオンがジョゼフィーヌに贈ったワインだの、キリストの哺乳瓶だの……
有名人の隠された莫大な遺産。ロマンあるものには違いないが、現実にはこの程度のものなのかもしれない。
某番組でお宝鑑定に出される有名人モノも、欲しい人には価値があるのだろうけれども、その有名人に興味がなければただのゴミ、というものも多いことだし(笑)


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