第6話 ピサの斜塔は立っているか


ドクター・パオロ

4話に続き、またしてもマッドサイエンティストの登場である。
地震兵器…なんて、ニコラ・テスラがヒントになっているのだろうか?(仮にそうだったとしても、オカルティストらに誤解・捏造されたニコラ・テスラ「像」が元になってるような気がするけど…。??)
それはそうと、どうしてこうも新ルのマッドな科学者は逆恨み系が多いのか。誰かを逆恨みする前に己の行動を振り返れと言ってやりたくなるが、一切他人の言葉に耳沸かさないのがこの手の人種の特徴なのであろう。
ドクター・パオロは、そういう意味でまさに典型的なマッドサイエンティストであり、あまり深く追求したいとも思わないゲストキャラである。
ルパンたちも、どことなくパオロをまともに相手にしていないように感じられなくもない(笑)


イタリアのとある村の様子を伺うルパンたち四人。その村は、国の退去命令により、すでに無人と化していた。
イタリア政府に、脅迫状が届いたことが原因らしい。何でも、思い通りの場所に地震を起こすことが出来ると称する人間(パオロ)からの脅迫状で、それをこれから証明することになっている現場に、物好きにもルパンたちは立ち会おうとしているのであった。
そして、現実に地震は起こった。脅迫状の通りに。
シェルターカーなるものを用意し、大きな地震に備えていたルパンたち。だが、あまり効果はないように見える。
だって……地面が大きく揺れるのが地震なのに、その地面にいくら支えをしてもやっぱり揺れるだろうなぁと思えるわけで。それとも、車の脇から出ていたあの補助があったからこそ、ルパンたちはあれだけ揺さぶられても無傷で済んだのだろうか。

この時点では、ルパンたちがどうしてこの事件に関わっているのかよくわからないからつい見過ごしてしまうのだが、よくよく考えれば、ルパンたちの目的は政府が脅迫犯に払うであろう10億リラの強奪なのだから、わざわざ地震の起きる場に立ち会う必要はなかったはず…
しかし、好奇心旺盛であり、また安易に物事を信じないタイプのルパンであるから、実際自分の身をもって、地震が起きるのかどうかを体験してみたかったのかもしれない。

脅迫が単なるハッタリでなかったことを知ったルパンたちは、ピサの斜塔へやって来る。
パオロからの脅迫状では、世界的な建造物であるピサの斜塔を地震で倒されたくなければ、10億リラを払えということだったのだ。
ガリレオが実験をしたことでも有名なピサの斜塔。そこでの四人の会話がまたgood。
「綿1キロと札束1キロ、どっちが重いか」なーんて尋ねるルパンに対し、あっさりと「札束」と断言する次元・五右エ門・不二子。泥棒だなぁ^^
ルパンは「あーあ」と頭を抱えるものの、彼もまた同様の信条なのでは…と思う。反面、場合によっては「札束だろうがどれだけ高価な財宝だろうが、1キロという重量の物質に過ぎない」という思考の切り替え方が迷わず出来るのもルパンだろうと思う。

ピサの斜塔の後は、アジトへ戻る四人。
イタリアの地震対策本部に仕掛けた盗聴器を通じて、対策会議の内容を聞こうという寸法。
ここで不二子が一人で白ワイン(?)を飲んでいる。後半、ルパンたちを船上で待つ際も同じ酒を飲む。ちょっと酒飲みで、まだ旧ルの雰囲気の残る不二子である(実際、絵柄も旧ルをふと思い出させる箇所があったりもする)

当初盗聴器の受信の具合が悪かったのだが、五右エ門が刀で殴るととたんに聞こえるようになる。←昭和の薫り!(大笑)
ようやく聞こえるようになった途端、スピーカーからは銭形の声が響く。
なんと彼は、この脅迫劇の犯人をルパンだと思い込んでいたのである。

この回の銭形は、とにかく猪突猛進。それもあまりにも盲目的な突進ぶり。しかもあきれ返るほどのポジティヴ思考。
一人だけ話の根本がわかってないような行動を取り続ける。
ルパン逮捕以外まるで目にないその様子は、ある意味「ルパン対複製人間」の銭形にも通じる部分があるにはあるのだが、この回では滑稽な面ばかりが強調されて凄みがないので、単なる道化役になってしまっている。
とはいえ、銭形が絡んだお陰でルパンの予定が狂ったりと、存在感はかなりある(笑)

銭形は会議で証拠もないのに「ルパンの仕業」を訴えかけるが、地震対策会議の面々からは相手にされず、しまいにはつまみ出されてしまう。
…実際、銭形の勘は今回、大いに外れていた。
ルパンは脅迫者などではなく、政府が脅迫者に払う金を強奪することを企んでいたのである。(ルパンも悪!)


受け渡し

パオロから脅迫のメッセージが届いているので、銭形の「ルパン犯人説」が受け入れられなかったのも当然のこと。
そのパオロ。
彼は、地震研究所にいた科学者だったが、おかしな研究ばかりをしていたため、科学アカデミーを追放になったという過去の持ち主。…60話のバサラと似たような前歴である。
追放されたことを逆恨みして、イタリア政府を脅迫しているようだ。セコイ男!
だが地震を起こすことの出来る装置の効果だけは本物ゆえにたちが悪い。「世界の命運を握っている」と豪語するほど付け上がっている。マッド・サイエンティストっぷり炸裂である。
地震の巣だらけのイタリアは、彼の要求を飲むしかなかった。

お金の受け渡し場所(エルバ島海上南100キロの地点)、時刻(明後日正午)を盗み聞きしたルパンは、もちろんそこへ赴くことになる。
余談だが、受け渡し場所を聞いていたルパンが、「地図」と不二子に言葉少なに指図するシーン、地味ながらもツボ(^^)

受け渡し当日。
不二子は空港に、次元は受け渡し場所に近い陸地の灯台に、ルパンと五右エ門は海上に、それぞれ待機して時を待つ。
お金が飛行機に積み込まれ、それが目的地に現れたことを知らされると、ルパンと五右エ門が身を隠していた海上のセスナの覆いを五右エ門が一閃。
投げ込まれたトランクをルパンが釣竿で釣り上げようとする。かなり古典的というより、原始的な(笑)強奪方法。

そこへ、銭形がルパン逮捕に現れる!その執念だけはさすがのもの。
ルパンと銭形は、お金の詰まったトランクを釣竿で引っ張り合っている。ちょっと子供同士の喧嘩のよう(笑)。その間に、海の下にはイルカが泳ぎ寄って来、銭形のボートに爆弾を仕掛けているのだった(!)

そんなことに気づかぬ二人は、トランクの引っ張りあいを続けるが、激しい奪い合いのせいかトランクが開いてしまい、お金は海にばら撒かれてしまう。
ちょうどその時、爆弾が水中で爆発。
わけがわからぬまま、一旦ルパンと五右エ門は用意していたセスナで撤退することに。
逃げる最中、お金の入れてあったトランクが、消えたのを目に留めるルパン。だが、その時はまだイルカのからくりには気づかなかった…

このイルカは、もちろんパオロの手下(笑)。彼が仕込んだ通りに、爆弾仕掛けたり、トランクをアジトまで持ってきたり出来るようだ。さすが哺乳類。
後にパオロのアジトには、イルカがたくさんいることもわかる。
ただどうも個人的には、パオロがイルカの面倒を見る人間とは思えないので、パオロの部下が、世話したり訓練したりしていたのではないかと、勝手に推測していたりする。

…こうして銭形の乱入のせいで、お金の受け渡しは失敗に終わった。
まあ、銭形が現れなくてもルパンが奪う予定だったから、この受け渡しはいずれにしても失敗することになっていたのだが(政府関係者、ちょっと気の毒^^;)
空のトランクを掴まされて、パオロは当然激怒。要求金額を倍の20億リラに跳ね上げ、しかも次に金を渡さなければピサの斜塔ばかりでなく、イタリア全土を壊滅させると、再度脅迫してくる。

イタリア側は銭形のせいで…と思っているところへ、ひとり事態を把握してない銭形は、対策会議の場で能天気なことを言って、またまたつまみ出されるハメになる。
どれだけ事態を説明されても、どれだけ皮肉っぽく問いかけられても、「はい、もう一度ルパン逮捕のチャンスがあるわけですな」や「お任せください、今度こ そルパンを捕まえてみせます」等、あまりにトンチンカンな受け答えをする銭形の様子は、面白いんだけど、ちょっと頭が痛くもある(笑)
彼には、イタリアが壊滅することもどうでもよくって、ひたすらルパン逮捕しか眼中にない様子だ。
次に邪魔したら国外追放とまで言われるのに、それにも動じずその後「ルパン逮捕のためなら、国外追放もエンヤコラだ」と言い切って、懲りずにお金の受け渡 し場所へ行ってしまうのだから、もういっそのこと天晴れと言ってしまってもいいような気すら、してしまう…(ちょっと呆然)

その頃のルパンたちは、パスタで食事をしていた。
失敗に終わったというのに、余裕で食事するルパンには、やはり勝算があった。銭形との奪い合い、その後の爆発とあれだけ慌しかった中で、いつの間にやらルパンはトランクに発信機を取り付けていたのだ。
脅迫者・パオロの本拠地さえわかれば、慌てることはない。受け渡し場所へ行かずとも、本拠地でお金を強奪してしまえばいいわけだ。
この時次元でなく、五右エ門が「さすがだな」と褒めるのがなかなか印象的。旧ルの頃よりずっと素直になっているよう^^
また、不二子に「惚れ直した?」とキスを迫るが、パスタを口の中に突っ込まれて「いけなかったかしら〜?」と言うルパンの言い回しが可愛くて好きv

さて。食事を済ませたルパンは、発信機を頼りにナポリへと移動。
そこにある海洋研究所というのがいかにも怪しいと睨み、夜を待って潜入することに決める。
またまた余談なのだが、ナポリへの移動中及びラストで、ルパンたちの乗車位置は、運転席・ルパン、助手席・次元、後部座席・不二子、五右エ門という具合になっている。
定番の座り位置のような気もするが、不二子が居る場合は彼女が助手席というパターンも多い。←こういうデータ、集めてみたいですねぇ(誰に言ってんの?笑)
さらに余談だが、海洋研究所を眺めながら「俺たちは月影のナポリとしゃれ込もうぜ」と余裕を見せるルパンがカッコイイv


島沈没

夜、ルパンたちはパオロのアジトの海洋研究所へ海から潜入する。不二子はクルーザーでお留守番。
ルパンと次元はちゃんとダイバースーツを着ているというのに、五右エ門は相変わらず褌一丁である。しかもこの回は、前に垂らした部分がないので、ちょっと目のやり場に困る(笑)…五右エ門ファン、必見(?)

建物の中にもぐりこむものの、入ってきた通路が閉ざされ退路を塞がれる三人。
ルパンたちを監視カメラで見ていたパオロの指示で、三人は人工的水流に飲み込まれてしまう。
気がつくと、椅子の上で両手両足を固定され、捕らわれていることに気づくルパン。
先に目覚めていた次元の「お目覚めかな、ルパン」、答えるルパンの「どうやら捕らわれの身ってことらしいよねぇ」という、どことなく呑気なやり取りが素敵!
ここでようやくルパンは、自分たちが入ってきた抜け道がイルカのプールに通じるものであったことに気づき、それがキッカケで先の「トランク喪失の謎」もイルカが運んでいたものだと、解くのだが…
五右エ門は「いまさら解けても仕方ない」と冷めた様子。

そして、パオロがルパンらの前に姿を現す。パオロと対峙する際のルパンの様子が、一貫して余裕なのが、ルパンスキーとしては嬉しいところv
パオロは、いかにも心理的視野の狭そうな人物っぽく、ルパンの話をまるで聞こうとしない。一切口を挟ませず、彼らをイタリア政府の送り込んだスパイだと勝手に決め込み、一人で怒り狂い、早合点のままついに地震発生装置のスイッチを押してしまう。
ハァ〜ア、まったくもう。個人的に、他人の話を聞かない人物って苦手なので、笑うところなんだろうけど、この辺のパオロを見てるとちょっと苛々してくる。

装置のスイッチが入ってしまったのに、ルパンは「あーあ」と比較的平静。
どうもルパンはピサの斜塔を守らねばという気持ちが薄いらしい(だからこそ、現金を横取りしようと考えるのだろうし)。ルパンらしい拘らなさ、あるいは冷めた虚無感とでもいうべきか?
さすがのルパンも、この地震発生装置のせいで、ピサの斜塔が「真っ直ぐ」になってしまうということまでは予想できなかっただろうから…(笑)
個人的には、「世界的遺産を守らねば」なんて立場を取るルパンよりは、この回のように立ち位置が悪党であるルパンたち、いいなと思う。パオロに狙われている地域の住人は政府が避難させているのだろうし…ルパンたちのこの手の無責任さ、私は許容できる。
ただもちろん、これはフィクションであると重々認識している、という前提での話ですけどね^^

で。怒りの収まらないパオロは、「世界中を壊滅させてやる!」といよいよマッドぶりを全開させる。
「じゃあ自分はどこに住むんだよ?」というルパンのツッコミが冴えている(笑)
が、その時イルカがトランクと共に戻ってくる。…銭形付きのトランクではあるが。
ちゃんとトランクが投下されていたこと、要はイタリア政府が要求を呑んでいたということに気づいたパオロは、ようやく、よ〜うやくルパンたちが何者であるか、話を聞く気になった(遅いっつーの)
「ルパン三世ってケチな泥棒」という自己紹介が、カッコイイ〜vv
さすがのパオロもルパンが何者であるか聞き知っていたらしく、うろたえる。そのパウロを尻目に、ルパンはあっさりといましめを解き、自由の身になる。
すかさず、銃を取り出そうとしたパウロに向けて、円盤状のモノを投げつけて撃退する。
その時、パオロの腹心の(そして唯一の?)部下が、ルパンに狙いを定めていたが、次元のマグナムによるナイスフォローで事なきを得る(惚)

そして、五右エ門はイルカのプールと彼らのいる部屋を仕切るガラスを斬り、室内に水を溢れさせる。
その時の褌姿でのアクション、やっぱり気になるわ〜(大笑)。新ル後半の五右エ門よりもまだ痩せ型で、若々しい体型をしている(いや、邪眼で見てないっ て!笑)しかもこのシーンだけ妙にロングヘアな五右エ門。着地した際、背にかかる黒髪は、なかなか風情がある(かもしれない)。
溢れる水に、慌てて高い場所へと避難する三人。パオロは腹心の部下に助けられつつ、上階へ逃げる。

大量の海水と共に部屋に流れ込んできた銭形に、ルパンは手を差し伸べて助ける。自分を心配してくれたことに、一瞬ホロリとする銭形だったが、ルパンの狙いは銭形が抱えているトランクの方(笑)
トランクを奪うと、あっさりと水流に乗って銭形から逃げていく。
例の地震発生装置は、やはりデリケートな精密機械だったのだろう、水に浸されたことでどんどん壊れていった。(五右エ門ナイス!)

自棄になったパオロは、「みんな滅びよ!」と何やらスイッチを押してしまう。…悪役っていつも最期は人を巻き添えにしようとするんだから〜!!
途端に島に地震が起きる。何とかルパンたちは逃げ出し、銭形もルパンを追うことによってどうにか脱出する。
不二子の待つクルーザーに戻る時、ルパンが次元に引き上げてもらっているシーンも、好きなポイント。
しかし、島はパオロと共に海中に沈んでいった。

せっかく盗ってきた20億リラのお金だが、ルパンがトランクの中身を海にぶちまけてしまい、結局手に入らずじまい。
…と。不二子の様子を伺うと、彼女は必死になって海面に散らばった札を網で拾っていたのだった。
その後姿を見て、ルパンが一言「100年の恋も冷めるようなお姿」。
これから、不二子のこんな姿は慣れっこになっていくというのが、新ルルパンのの運命なのだが(笑)改めて初期作品を見ると、ところどころ初々しい面があって、新鮮な印象を受ける。

さてさて。ラストは銭形が、イタリアからピサの斜塔を救ったと感謝状を受けるシーン。緊張した面持ちの銭形、それを楽しげに見守るルパンたち。
不二子だけは「感謝状なんてもらっても一銭の得にもならない」とクールで彼女らしい発言をする。
で、パオロのせいで「斜塔」でなくなっていた元ピサの斜塔(笑)は、銭形のくしゃみ一発で元の斜塔に戻る、というオチがついてジ・エンド。

それはそうと。10億リラってこの当時は日本円にしてどの程度の価値だったのだろう。私がイタリア旅行を時々していた頃は(90年代)インフレがすごかった記憶があるがこの当時はそうでもなかったのかしら。
脅迫はコレ一回限りだと、パオロは端から考えておらず、だからこそ国家を強請るにしてはこの程度の金額で抑えたのか。それともこの当時はそこそこの金額に相当したのか。はたまた、パオロは意外に控えめだった…?(まさか!笑)



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