第10話 ファイルM123を盗め


女ってヤツは…

新ル初期作品の中で、ルパン・次元・五右エ門の強い絆が見られる作品で、個人的に好きなお話。
話の筋自体は、よく指摘されるように旧ル17話「罠にかかったルパン」と同系列。体に爆弾を仕掛けられ、ルパンたちが不本意な盗みをさせられる、というものである。

ルパンは不二子と共に、パリ社交界の貴公子(笑)マルセルのパーティに出席していた。
後にわかることだが、見ず知らずの人間からの招待に対して、次元と五右エ門はルパンに注意を促したらしい。
が、ルパンは相棒たちの忠告を無視して、このパーティにやって来た。
不二子は、「ハンサム」で「お金持ち」のマルセルにずいぶん好意的。過去はすべて謎に包まれているという、前歴の分からない社交界のアイドルに不二子をはじめとしたほとんどのご婦人方は夢中のようだ。
手にキスされて、不二子はいかにもフツーの女の子らしく胸をドキドキさせていた。


だがそのマルセルはとにかく怪しい。誰も突っ込まないのが不思議になるほど怪しい。
ただ過去が分からないだけではなく、彼の過去を探ろうとした人間は皆、謎の死を遂げるというのだ。それって、誰が考えても……(笑)。
そしてそのパーティの最中でも、しつこくマルセルの過去を探ろうとしていた男が、死ぬ。
飾り物の甲冑が倒れ、持っていた剣が突き刺さるという、きわめて怪しい死に方。なぜだか事故死として処理され、なんとパーティは何事もなかったかの如く続けられる。
ルパンでなくとも、マルセルに対して大いに疑念を持ってしかるべき状況なのだが…。
まったく誰も彼を怪しむことなく(なぜ?)、むしろ「神秘」を感じてしまっているそうだ。勿論不二子も、さらにマルセルにときめいている。

が、ただときめいたままで終らないところが、さすが女盗賊・峰不二子。
謎めいたところが素敵、とか神秘的とか言っておきながら、彼のすべてが知りたくなったのだ。
ルパンは思わず「女ってヤツは」と呟く。ホント、同感(笑)。
そう思ったら即行動の不二子は、マルセルの部屋へと忍び込む。不二子を止めようとしたルパンもなし崩し的に行動を共にする。

二人が部屋の中を家捜ししていると(何を探し出したかったのだろう^^;)、すべての出入り口が封鎖され、ガスが流される。そのガスに意識を失う二人。
気付くと、ルパンと不二子は体を椅子に固定され、しっかりと捕らえられていた。勿論、捕らえたのはマルセルだ。
マルセルはいきなり本性をあらわす。
彼はルパンの体に時限爆弾を仕掛け、さらには不二子を人質に取り、ルパンにあるファイルを盗ませようとする。
ロンドン警視庁に保管されている、M123の犯罪ファイルである。ロンドン警視庁からファイルを盗み出せるのは、ルパンしかいないと目をつけていたらしい。
もともとマルセルは、このファイルを盗ませたくてルパンをパーティに招待したのだった。ルパンはまんまとマルセルの筋書き通りに捕らえられてしまったのだった。
爆弾の仕掛けられたベルトは外そうとすると爆発する仕組み。

ルパンに爆薬の威力を知らしめようと、マルセルはルパンの10分の1人形まで用意している周到ぶり。結構陰険である。
しかも凝り性。パンツの柄まで本人のよく穿くものだった(笑)。
人形は、ベルトの爆弾が赤になった10秒後、粉々に砕け散った……。
その爆弾の威力と、不二子を人質に取られたルパンは、仕方なくそのファイルを盗むことになる。

本当にどうでもいいことなのだが、椅子に捕らえられているルパンが後ろ向きになっているカットでは、その時白のタキシードを着ていたはずのルパンのジャケットの色がいつもの赤になっている。
その後、パンツ一丁のルパン10分の1人形が実験として爆破されると、その残骸に、着てなかったはずの赤いジャケット色が。
ホント、心の底からどうでもいいお話でした(笑)


四人銭形

アジトに帰ったルパンは、次元と五右エ門に事情を説明し手助けを頼んだ。
が、今回2人は手助けに応じてくれない。
さんざん招待状に注意するよう言った筈なのに、彼らの忠告を無視して出かけていったルパンが、こんな時だけ頼ってくるのが面白くなかったのだ。
「最後まで俺たち抜きでやってもらおうか」と次元。
冷たいと抗議するルパンに対し、五右エ門は「冷たいのはお主の方だ」と一言。
爆薬を仕掛けられた位置が胴体だったからか、さすがに旧ルの時のように「斬ってやろうか」とは言わなかったが(^^;、五右エ門も味方になってくれない。
いつもならルパンが頼み込めば、たぶん2人は助けてくれていたのだろう。が、今回はあっさりと2人は退席してしまった。
怒りつつもちょっと困っているルパン、可愛い(笑)。

が、勿論2人の相棒が、ルパンを見捨てるはずはなかった。
単にお灸を据えてみただけなのだろう。
大抵いつも次元と五右エ門の忠告は、正しい。その忠告の有り難さ、正しさを少しルパンに身にしみて感じてもらおうとしたのかもしれない。
もっとも、ルパンは彼らにとってどれだけ好き勝手やって迷惑をかけて来ても、何故だか放っておけない存在なのだろう(^^)。

一人ロンドン警視庁に乗り込んだルパンは、銭形に変装していたものの本物と鉢合わせしてしまう。8話に続くお馴染みパターンではあるが、タイムリミットがあるこの場合だけに焦っている。
そんなところへ、次元と五右エ門がそれぞれ銭形に変装して現れたのだ。何だかんだ言ってても、頼りになる相棒たち(このシーン大好きv)
まずは次元が化けた銭形が入って来、続いて五右ェ門が化けた銭形まで!!

四人の銭形が一堂に集結するさまは壮観(笑)。声がそのまま「次元」や「五右ェ門」のままだからなおさらおかしい(^^)。
周囲はさんざん混乱させられるが、決定的に見破る手段が思いつかなかったのか、4人全員をとりあえず牢へぶちこめ、ということになる。
そこで次元と五右エ門は、「捕まるのはごめんだ」とタイミングよく変装を解き、本物の銭形に「ルパン、逃げよう」とガッシリ腕を掴む。
ルパンも調子を合わせ、仲間が言っているのだからあれがルパンに間違いない、と本物の銭形を陥れる(笑)。
あまりの呼吸にただ「お見事」というしかない。

次元と五右エ門は、たぶん事前に打ち合わせをしていたのだろうが、ルパンにしてみれば突然助けに現れてくれた二人だったはず。
二人の意図をすぐに理解して調子を合わせる辺りは、さすが。
本物の銭形警部と共に、牢屋に入れられている次元と五右エ門の、シレッとした態度がまたいい。
さんざん怒りまくる銭形に、「本当にルパンだと思ったんだ」とか「ルパンの化けっぷりは本当に見事」などと言ったりしている。

相棒に助けられ、まんまと銭形警部として警視庁に入り込めたルパンは、さっそく資料室からファイルM123を盗み出す。
そして、いつものごとく警官に変装し、次元と五右エ門だけを助けて去って行く。
この時、本物は俺だと主張する銭形に、「確かに銭形のとっつあんは、とっつあんデース」と素顔を見せるルパンの名調子がイイvv

完全におちょくられてしまった銭形だが、その後すごい早さでルパンたちを追跡、飛行機でルパンたちを追いつめようとする。
が、銭形警部の乗った飛行機は、五右エ門の斬鉄剣であっさりと両断されてしまった。
そういえば、五右エ門の斬鉄剣が飛行機を斬ったのは、本編ではこの回が初めてではないだろうか。


地獄で会おうぜ

イギリスから、どうにかフランスへたどり着いたルパンたち。
飛行機が燃料切れになり、トラックの上に不時着したのはいいが(ルパンの操縦技術、すごすぎ!)、トンネルのせいで車から落とされてしまう。
どんどん爆破時間が迫る中、ルパンたちは途中走って移動したりもしている。
この時、ルパンと次元が結構くたびれた感じで走っているのに、五右エ門の走り方は特に疲れた様子も感じさせない。さすが忍者の修行の賜物か(笑)。

ルパンに仕掛けられた時限爆弾は、爆発が近づいたことを知らせる「黄色」に点滅し始めた。
マルセルの元に捕らえられている不二子は、時間までにルパンがファイルを持って戻ってこられないかもしれない、と訴えるが、マルセルはそれこそが目的だという。
彼は、ファイルを入手したいわけではない。
燃やすために、破棄するためにロンドン警視庁からルパンに盗み出させたのだ。
ルパンの爆破とともに、ファイルが消滅してくれた方が都合が彼にとっては好都合なのであった…。

一方、ルパンたちは道中性能の良い車を発見。イチャつくカップルから車を盗むと、マルセル邸まで車を飛ばす。
検問も突破し、トラックと正面衝突を起こしそうになりながらも、ルパンはひたすら走り続ける。
だが、黄色の点滅が早くなり、もうすぐ赤になることを知らせた。
爆弾の信号が赤になれば、10秒間で爆発してしまう。

ルパンは、次元と五右エ門に車を降りろと言う。
ルパンは一か八かでこのままマルセルの屋敷に車ごと突っ込むつもりだった。
だが、次元と五右エ門は一向に動こうとしない。次元の表情には、かすかな笑みすらあった。
「おもしれぇ、ルパン一家の壮絶な死に様を見せてやろうじゃねぇか」
五右エ門も言う。「武士道とは死ぬことと見つけたり」の名台詞を。
彼らは、ルパンだけを死なせるつもりなどなかった。何のためらいもなく、車に…このままなら木っ端微塵に爆発を起こすであろう車に乗り続けていた。
ルパンも、そんな相棒たちの心意気を受け入れた。大馬鹿野郎と憎まれ口を叩きながら…。
そして一言「地獄で会おうぜ」。

キャーッ!(壊)こ、これぞ男の美学ッ(笑)!
これぞ三人のある意味理想的な姿。
何度見てもシビレます。ぜひとも繰り返し見てください(笑)

こうして、車は三人を乗せたままマルセルの屋敷へ突っ込んだ。
爆発に巻き込まれることを恐れたマルセルは、思わず時限爆弾のスイッチを切る。
車から降りざま、次元はピタリとマルセルに銃を向ける(カッコイイ!)。そして、不二子は体を固定されていた椅子ごと五右エ門に斬られ、ようやく解放された。
呆然とするマルセルを尻目に、ルパンたちは去っていく。
が、その時マルセルは爆弾のスイッチを再度入れてしまった。

爆発したのは、ルパンの体ではなく、マルセルの屋敷。ルパンは、マルセルが一瞬スイッチを切ったそのスキに、ベルトを外していたのであった。
爆発した屋敷から現れたのは、犯罪ファイルM123に載っていた、前科10犯の泥棒(五右エ門曰く「我々に比べればこそ泥」)のジョージ・マーシャルという不細工な男だった。
マルセルは醜男のマーシャルという過去を捨て、整形して「マルセル」として生きていたのだった。

いくら整形といえども、あんな顔をあれだけ変えることは可能なのだろうか?
それより何より、爆発の衝撃で整形した顔が元に戻ってしまうということはあるのだろうか?
まあ、それは些細なことなのだろうが…
マルセルの本当の顔が、あんなご面相だと知った時の不二子の豹変振りと言ったら!(大笑)
「ハンサムなマルセルさん」の言葉に含まれるすっごい皮肉とトゲ!あれだけ憧れて胸をときめかせていたはずなのに…女ってヤツは(笑)。
勿論、不二子は見た目だけでそこまで手のひらを返すような態度をとったわけではないだろう。
過去を調べようとした人間を片っ端から消したり、人の体に爆弾を仕掛けて脅迫したり…とやっていることが汚い(しかも陰湿でスケールが小さい!)マルセルの本性を軽蔑しての態度であったろうと思う。
ルパンが言う通り「見た目も汚いが、中身も汚い」ということだろう。

さすがにこの事件でルパンは、見知らぬ人間からの招待をうかつに受けることに懲りたらしい。
次元から「招待状が来てるぞ」と言われただけで、招待状は真っ平だといわんばかりにそれを破いてしまった。
が、その招待状は、なんと英国女王からのもの。スコットランドヤードに協力したお礼だということらしいのだが…(ということは、多分あれからマーシャルは逮捕されたのだろう)。
ルパンはひどく勿体ながっていた。
世俗の権力をバカにしそうなルパンだが、エリザベス女王には会ってみたかったようだ。

国際手配されている泥棒に女王から招待状が来るのかは謎だが、10話までの時点で、ルパンはもしかしたらまだ英国内では盗みをしていなかったのかもしれない。


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