第13話 サンフランシスコ大追跡


人造ダイヤ製造法

いつもならば地の果てまでも、ルパンを追って追って追いまくる銭形が、この回ではルパンに追いかけられるという逆パターンが、コメディタッチで楽しめる。
13話にして、定番設定の逆シチュエーションが出てくるのは、早め…のように感じられるが(そうでもない?)、それは旧ルですでに「逃げるルパン追う銭形」の形が定着浸透していたせいもあるのだろう。


話は、NASAの研究所に、ルパンと次元が潜入するところから始まる。
たぶん偽造した身分カードでゲートを通過。一瞬、嬉しそうに笑う二人が、ツボ。
ツボといえば、この時の二人の格好、揃いのツナギにキャップ姿で、かなり可愛い(笑)

ルパンによる事前調査は正確だったらしく、その後も順調に内部に入り込んでいく。
ちなみに二人は、ルパンが暗証ナンバーAZ2006のボール・マッカートニー、次元がDY7018のオレンジ・スター。言うまでもなくビートルズメンバーのパロディ名前。
また合言葉は「ビートルズなんか知らないよ」と「やっぱりプレスリーが一番さ」というもの。ふざけたネーミングと合言葉が楽しい^^
三つ目の合言葉を求められて慌てるシーンがあるが、それはヒッカケ。咄嗟に「ない」と答えたルパンの当てずっぽう勝ちであった(さすがv←笑)。

こうしてNASAの第七研究所の金庫室に入り込んだ二人だったが、その目的は、石炭からダイヤを製造する方法を記した極秘マイクロフィルム。
何でも、科学者たちの研究中に偶然出来てしまったシロモノなんだとか。次元が「頭のいいヤツにはかなわねぇ」と呟いているが、まったく同感(笑)
さてここで、この話の中で一番好きなポイント。
ルパンがマイクロフィルムを盗むのは、それを使って自由にダイヤを作り出すためではないところだ。
「ダイヤの盗み甲斐がなくなる」という、ルパンらしい理由で、マイクロフィルムを燃やしてしまうことが目的だったのだ。
このルパンの考え方がいかにもルパン的だし、またそれが敵グループのボス(笑)に、先手を取らせることになったのだから、非常に説得力がある。

ルパンの手によって金庫が開けられたが、そこには試作品のダイヤが一つ入っているばかりで、肝心のマイクロフィルムはすでに何者かに奪われた後であった。

一方銭形はといえば。
サンフランシスコの夕焼けに、ルパンの幻を見てしまう。あまりに長いことルパンを追い続けてきたために、精神的に疲れが出てしまったようだ。
海の向こうは日本…と、ほんの一瞬だけホームシックな心境を垣間見せる。ルパン逮捕を諦めて故郷へ帰ろうかと。
が、直後に自らその心を押し込める。
改めてルパン逮捕を誓うものの、どうも調子が今ひとつ。だらりと下げた手錠が、何だか痛々しい。
個人的に、銭形の見せるこうした人間的弱みは非常に好きだ。
いつもは超人的な執念で追ってくる銭形だが、(滅多にないこととはいえ)時には魔が差したように「諦めちゃおうかな」との考えがよぎる事があっても不思議じゃないように思えるのだ。
もちろんそこで断固踏みとどまり、ルパン逮捕への執念を絶やさない銭形だからこそ、一時の迷いが魅力的に映る。
……まあ、この辺も描きようであって、最近の作品トーンのようにベタベタにセンチメンタルにやられたら興ざめするんだろうけど(苦笑)

その頃ルパンは、アジトで先を越されたことを悔しがっていた。不二子は、立派なダイヤが手に入ったのだから忍び込んだのは無駄じゃないと慰めるが…。
ルパンの目的はあくまでもマイクロフィルムだ。
次元の鑑定によると(宝石鑑定できるのね!)、試作品のダイヤはどこから見ても本物。石炭からどんどんこんなダイヤを作りまくられたら、これまでルパンが集めたダイヤの価値も下がるし、何より盗みが面白くなくなってしまうわけだから、彼にとっては重大なことなのだ。
あくまでルパンは、マイクロフィルムを見つけて焼却する意向。
それに対して、不二子は「敵もそんなに馬鹿じゃないと思うけど」とか、「(ダイヤを作らないで破棄するなんて)勿体無い」と呟いている。

「勿体無い」というのは不二子らしい反応だからといって、見過ごしてはイケナイ(笑)
彼女こそ、男たちを使って、マイクロフィルムを盗ませた「ボス」なのだから。
この時点で、ルパンは「ボス」の正体には気づいてなかったが、盗んだ男たちの見当はついていたようだ。
すでに彼らがサンフランシスコに潜伏していることを掴んでいた。


隠し場所

ルパン逮捕を思いつめるあまり、やつれ気味の銭形。
彼は無精ひげをはやし、Yシャツを着替えもせず、寝入っていた。質素な部屋には、寝酒と吸殻とラジオしかない。ホームシックは重症らしく、日本語放送で演歌を聴きながら寝ており、その様子はちょっと泣かせる(笑)
そこへ侵入してくる二人の賊。彼らは、例のマイクロフィルムを盗んだ男たちであった。
ストッキングをかぶって面が割れないようにしているその姿はややマヌケ。

彼らは、銭形を薬で昏倒させた後、歯に穴を開け始める。
ナント、彼の歯の中に、マイクロフィルムを隠そうというのだった。

銭形が普通の状態であったら、そう易々忍び込まれ薬を嗅がされることもなかったのだろうが、多分相当酒を飲んでいて、その上疲れきりノイローゼ気味の銭形は、人の気配に「ルパンー」と暴れるものの、正気に返ることはなかった。
ちなみに、この日の銭形の食事は、チャイナタウンでの餃子だったらしい(歯を削った賊・談)

賊がアジトに戻ると、「兄貴」と呼ばれる男が待っていた。
「兄貴」に彼らは、無事マイクロフィルムを「例の場所」に隠したことを、証拠写真付で報告する。
と、イキナリ驚きの声を上げる「兄貴」…もちろん彼は、ルパンの変装。フィルムのありかを探しにやってきていたのだった。
賊二人は、五右エ門の早業で気絶させられ、お役御免。
ちなみに、この回の五右エ門も見せ場といえばココしかない。五右エ門が目立たない回。

ルパンにとって「俺の一番苦手なとっつあん」という設定は、いまだ健在。この隠し場所にはちょっと参っていた。
フィルムの隠し場所はボス(=不二子)が考えたものなんだとか。
さすが、ルパンをよく知り尽くしている不二子らしい隠し場所だ。ほとぼりが冷めた頃、また銭形の歯からフィルムを取り出す手筈だったとのことで、なかなか抜かりがない。
確かに、この世のどこに隠すよりも、ルパンから安全な場所だろう。……それがいつもの銭形であれば。

だが、銭形はいつもの彼ではなかった。
寝ても覚めてもルパンの幻影に付きまとわれ、食欲もなく眠りも浅く、ついに自ら病院へ赴くことに。
勝手なイメージだが、銭形が病院へ行くなんてよっぽどのことのような気がする。普段なら多少具合が悪かろうとも、気合で治しそうなタイプというか(笑)

そんな様子を、ルパンたち四人は車内から伺い、戸惑い気味だ。
この時不二子は、一円の得にもならないからと、車から降りていく。ルパンが銭形を狙い始めたからには、もう油断は出来ない…そう思い、部下と銭形奪還の準備を整えにでも行ったのだろう。

病院では、テンション高めの風変わりな医者が、銭形のことを「ノイローゼのホームラン王」と診断。
銭形は今も背中にルパンの視線を感じると言い、それを病のせいだとするのだが、実際隣のビルから、診察を受ける銭形をルパンらが覗いていた(笑)
銭形の長年培ったルパンレーダーは正しかったのに^^
医者はわかるようなわかんないような言葉を立て続けにまくしたて、ルパンを忘れろと命じる。最後は銭形をペースに乗せて肩を組んで大声で歌うという…かなりユニークな治療を施す。
ちなみにこの時医者と銭形が歌ってるのは、山口百恵の「禁じられた遊び」(だとか)。

カウンセリングを受けたことで気分が晴れたか、銭形は久々に食欲を取り戻し、上機嫌でレストランのショーウィンドウを覗く。
「食パンでも食うか」との呟きに、「ルパンにすれば?」と答える声が。
振り向くと、そこにはルパンの姿。
ルパンは、マイクロフィルムを奪わんと、「銭形警部を逮捕」しに来たのである。

余談だが、「食パンでも」の台詞を単品で考えると、メニュー選択が貧しげでトホホな感じがするのだが、その後の「ルパンにすれば」の台詞との掛け具合が非ッッ常に好き。どうしようもないダジャレではあるのだけれど、つい「うまい!」と言いたくなってしまう^^

多分、ルパンは飛び掛ってくる銭形を予想し、きっと何かしらの手段で眠らせて連れ去る計画でも立てていたのではないか。が、銭形の取った行動は、ルパンの予想を完全に裏切った。
それまでもルパンの幻に悩まされていた銭形は、向こうから近づいてくるルパンが本物とは思えず、脱兎の如く逃げ出したのである。
そして、立場の逆転した二人の、おかしな追跡劇が始まった。


フィルムの行方

我を忘れた銭形は、停車中のタクシーを奪って逃走。
ルパンを追いかける時は、しばしば法律違反をする銭形だが、彼から逃げるために窃盗したのはこれが最初で最後だろう。いずれにしても銭形は、夢中になると他のことがどうでも良くなるタイプらしい。
次元の運転する車に乗って、銭形を追うルパンたち。
途中、トラックにぶつかりそうになり、思いきり目をひん剥く彼らが、とっても可愛い(要チェックv←笑)

「こんな馬鹿げた追いかけっこはやめにしようぜ」と、運転しながら次元は拳銃を取り出した。その台詞を喋ってる時、一瞬ニヤッという顔をするところが、カッコイイ。
ついでにいえば、狙い定めてる次元を、助手席から見つめてるルパンの様子も、ツボ。どうってことないシーンなのに、ここはやけにお気に入りである。

次元の銃弾は、見事銭形の車のタイヤを撃ち抜いた。さすが!無駄弾一切ナシ。
車は壊れて止まったが、そこで諦める銭形ではなかった。
彼は、逃げて逃げて、逃げまくる。…たとえ病気の最中でも、とことん不屈な男であることには変わらないのだ(笑)
ルパンも負けずに追いすがる。
様々な乗り物を乗り継いで、徹底的に追いかけっこしまくる二人の様子は、ぜひとも作品でお楽しみいただきたい。
中には、ローラースルーゴーゴーも登場していて、かなり懐かしい^^

ついに銭形が「幻」を振り払ったかに見えたが、ルパンと次元は飛行機で追いかけてくる。(この時姿の見えない五右エ門は、トンネルの絵設置でもしていたんだろうか?)
一度は銭形をキャッチしたものの、低空飛行しすぎて小屋にぶつかって逃してしまう。
そんなヒドイ目にあってもめげずに、トラクターで逃げ続ける銭形であったが、ついに捕まる時がやって来た。
トンネルの正しい進行方向には通行禁止の看板を設置し、海へ通じた道へ銭形を誘導。絵に描いた風景でトンネルが続いているように見せかけ、銭形がそのまま走り続けると、看板を突き破り、海に落ちる、という寸法。
旧ル11話で使った手段に似ている。

まんまと海に落ちた銭形を見て、ルパンは一言「WANTED!」。この回はとにかく懐かしの曲のオンパレード…。と、その当時は流行歌だったのだけど。
しかしその時、一隻の船が現れ、トラクターごと海に落ちた銭形を、ロープで引っぱり奪おうとする。
逃すまいとするルパンには、ダイナマイトが投げつけられた。ルパンと銭形は大きく宙に飛んだ。

船の上では、例のフィルムを奪った賊が、ルパンを倒したと喜んでいた。
だが、そこへついにボス登場。不二子である。
彼女は「あれくらいで死ぬようなルパンじゃないわ」と言い切り、今のうちに逃げようとする。
この回の不二子は、徹底的にルパンを知り尽くしたライバル風に描かれているので、かなり好み。
元々この件に関しては考え方がルパンと違っている上に、仲間としてアジトにいる時にも馴れ合いすぎていないし、敵対する理由も納得できて、その行動は魅力的である。

さらに魅力的なのは次のシーンだ。
不二子の言うとおり、ルパンはあれしきの爆発で死ぬはずもなく、素早く海から上がってきていた。
「そこまでわかってて、ルパンの敵に回るとはねえ」と言いながら。カッコイイーvv
慌てて部下たちが取り出した銃を、すかさず次元のライフルがはじく。それも、かなりの遠方から狙い違わず。ここもカッコイイーーvv
「どんな言い訳を聞かせてくれるのか楽しみだなぁ」と余裕のルパン。それでいて、どこかプロ同士の厳しさもあるような気配があって(私の気のせい?)痺れる。
それを見て、観念する不二子の笑顔がこれまたイイのである。

“知”力を尽くした後は、見苦しくジタバタせず、ニッコリ笑って降参してみせる。いい女だなぁ(その後ちょい色仕掛けに走るんだけど、それはそれでカワユイ)
ホント一連のこのシーンは、素敵だったらありゃしない。
ルパンと銭形の立場が逆転というシチュエーションの面白さが目立つ話ではあるが、実はルパンと不二子のマイクロフィルム争奪戦でもある話。この要素のお陰で、この話の個人的ポイントは高い^^

気絶したままの銭形を囲んで、四人が語るシーンも好き。後腐れナシの勝負の後とでも言おうか。
不二子は、どうしてもダイヤを量産できるマイクロフィルムを焼却してしまうことが、勿体無くて了承できなかったのだ。
ポイントなのは、最初から「ルパンに盗ませて色仕掛けで譲らせる」という方法を取らずに、まずは自力で(部下を使ってるとはいえ)盗み出し、ルパンに奪われないよう工夫を凝らしたことであろう。
それでダメな場合、最後の手段として、ルパンに色っぽく「一緒にダイヤを作りましょうよ」と持ちかけるのだ。
自分では何一つせずに盗みはすべてルパンにまかせっきりで、美味しいところを奪うだけの不二子の色気…というか甘えは時にかなり気障りだが、こういうお色気なら私は可愛いと思える。

どうでもいいけど、このシーンで「ダイヤに目がくらむとは、不二子も女だねぇ」と笑ってる次元も珍しくっていい感じ。
不二子に対して目くじら立てておらず、余裕を感じる(笑)。味方のフリした美味しいトコ泥棒じゃなく、ルパンのライバル的に動く不二子になら、敵対行動を取ったとしても多少は寛容なのかも←妄想

不二子にかき口説かれ、ちょっとダイヤを作ってもいいかな…の方に傾きかけたルパンだったが(可愛い。笑)
五右エ門が厳しく注意を促す。銭形がそろそろ目を覚ます、と。
まずはマイクロフィルムを取り戻さないことには、ダイヤを作る作らないという議論も無意味なことだ。
それに気づいたのかどうか、ルパンが銭形の口の中からフィルムを取り出そうとしたその時。
銭形が大きなクシャミを一発。
その弾みでフィルムは歯から外れて吹き飛び、「スーーボチャ」(by次元大介)と、海の中へと消えたのである。

残念がる不二子に対して、「ダイヤは苦労して手に入れてこそ美しく輝くってモンよ」とルパン。
ダイヤそのものが欲しいわけではなく、彼に相応しいスリルと挑戦を、それを乗り越えた証としてのダイヤを求めているルパンらしい台詞である。
次元も同感のようで「それが俺たち盗っ人の哲学ってもんよ」と胸を張る。
黙っているけど、五右エ門も同意見なのだろう。

そこで、ついに目覚めた銭形。ルパンに追いかけられるという体験がショック療法にでもなったのか、すでに彼はいつもの銭形に戻っていた。
ルパンを逮捕するという使命に、改めて目覚め、ルパンたちを追い始める。
これぞ正しい形(笑)。逃げるルパンもとても楽しそうである。


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