第100話 名画強奪ウルトラ作戦


汚れなき青春

「ルパン三世」放送100回を記念した特別企画の第一弾。
視聴者からアイディアを募集して、それを元に作られた作品を放送するという企画だった。(103話まで)
リアルタイム放送時のアイディア募集の告知について、私はかな〜りおぼろげな記憶しか残っていない。こんな状況なので、アイディア募集!と言われた時にどう感じたのかは、すっかり忘れてしまった。
まだあまりに子供だったので、「私も応募したい」とは考えなかった気がする。考えたとしてもいいアイディアが浮かんだとは思えないけれど。
ただ、せっかくこの企画に関われる時代に生きていたのだから、何かしら送ってみてもよかったのに〜、と今頃になって勿体無い気がしてきたりする^^


さて、この話発端は、フランス大統領がマキシム・ド・フランスで食べ過ぎて、お金を支払えなくなってしまったことから始まる。
全編ギャグ色が強いだけあって、発端からしてバカバカしい(笑)
大統領の飲食代を支払うために、ルーブル美術館の館長は、絵を売ってお金を作らなければならなくなった。
一体、いくら飲み食いしたんだか。この時代、カードだってあったはず?だけど。
お金を支払う約束をしても、そのまま帰してはもらえない。まさに「大統領であろうとも女王陛下であろうとも」、マキシムの決まりなのだそうだ。
大統領は泣きながら皿洗いをさせられていた。……ルーブル美術館の絵を売ってまで払わなきゃならないほどの飲食代、皿を何万枚洗っても追いつかなそうだ。

館長は、なるべくスキャンダルにならない絵を競売にかけようと物色する。
選ばれたのは、アルセーヌ・ルパンが描いた「汚れなき青春」という絵だった。
かつて一世がルーブルで盗みを働いた後、代わりに自分の絵を掛けて来た、その時の絵なのだとか。
二輪のチューリップと太陽の絵。まるで幼稚園児が描いたような、あどけない絵画(笑)
幼い頃に描いたのか、はたまた単に絵が下手だったのか。あるいは題名通り人間の汚れない時代の心を表現したものなのか??
不二子は素早く情報をキャッチして、ルパンに絵が競売にかけられることを知らせている。
話を聞いたルパンが「爺様の名誉が台無しだ」と言ってることから考えて、素で下手だったんだろう(笑)

それはそうと、知らせに来た不二子がヘルメットをかぶって、スクーターに乗ってくる。
不二子のスクーターは結構珍しいだろう。81話でクロード王子と乗った時とこの回くらいだろうか。
(※追記:この他、106話でもスクーターに乗っている。池本さん、情報ありがとうございましたv)

競りでは、「斬新」「シュール」「天才」「芸術」と、大絶賛されている。俗物が無理やりわかったフリをしているようだが…それにしてもみんな褒めまくってる。やっぱり少しはいい絵なの?(笑)
さすが人気のある絵、値段はどんどん上がっていく。
その時、銭形が会場に入ってきて、その絵をルパン当人はもちろんのこと、ギャングたちも狙っていると警告する。
なぜギャングたちまでアルセーヌ・ルパンの絵を狙うのかというと、その世界で箔がつく・一目置かれるということらしい。アルセーヌ・ルパンの影響力いまだ衰えずといったところか(個人的には、その孫のルパンが大活躍してるから、だとも思うんだけど^^)

その話を聞くと、ますます「そんなに価値のある絵なのか」ということになり、値段はうなぎのぼり。競売を中止させようとした銭形の警告は、完全に逆効果になってしまった。
50万ドルで競り落としたのは、アリババ・ナイババというアラブの大富豪。
銭形は、その場のどさくさでナイババの護衛を仰せつかり、彼が村長を勤める村まで絵を送り届けることになるのだった。


まずは美術館からマルセイユの港まで、ナイババの車で絵が運ばれていく。護衛の銭形は、当然同乗している。
豪華な車について感想を訊かれた銭形は、「ヘッ、成金趣味め」と素っ気ない。
素っ気なくなるのも当然で、このナイババ、ことあるごとに銭形に話しかけ、いやらし〜い目で彼を見つめたり、時にはセクハラそのものの発言・行動をして困らせる。
特に、銭形のお尻が好みらしい。
だからといって男性にしか興味がないわけじゃなく、故郷に12人もの妻と、大勢の子供たちがいるのだから、女性も好きであるらしい。そういう意味では印象に残るゲストキャラだ。
銭形からすれば、「いい尻をしている」「そこに尻があるから」「夕日も君の尻の美しさには敵わない」「ホントにチャーミングな尻」と、しょっちゅうお尻がどうのこうの言われちゃ落ち着かないだろう。
「バカなこと言ってるんじゃねーよ」を初め、銭形の素っ気なく、時に焦ったような受け答えが、可愛くてこの回の見所だろうか。←邪道な見方(笑)


チェックポイント通過

その車を追っているのは、ルパンたちだけではなかった。絵を狙うギャングたちも大挙して押し寄せてくる。
ルパンたちはギャングらの車に阻まれて、絵に近づくことも出来ない。そのうちに、銭形とギャングたちは撃ち合いを始めた。
それを眺め、次元が「とっつあん大丈夫か?」と、面白がりつつ心配してる(心配しているようで面白がっている、のほうが正解だろうか)。
絵の方を気にかけている五右ェ門とは対照的だ。五右ェ門は、やはりご先祖がらみの物品に対するルパンの思いに共感しやすいのだろう。

車内では、尻に対するセクハラ発言を受け流し、銭形は「例のモノ」をナイババから受け取り、窓から放り投げた。
それを次元がナイスキャッチ。ギャングたちは、アルセーヌ・ルパンの絵だと思い込み、一斉にルパンたちへと方向転換させて来た。
だが、それは贋物の絵。
銭形のメッセージは「あとはまかせたぜ!ルパン」だった。しかも、銭形の似顔絵つき!
ルパンが「とっつあんも考えたもんだぜ」と笑ったように、銭形はギャングの相手をルパンに任せて去っていったのだった。
こんな風に、時にルパンを利用するくらいしたたかな銭形、魅力的だと思う。

それはそうと気になるのは、贋の絵に描かれた銭形の似顔絵である。これって自画像!?
確かに銭形は、似顔絵を描くことができる。(93話で銭形がルパン一味の似顔絵を描いていた。この回とは絵の感じが違うけど)
もし銭形本人が自画像を描いたのだとしたら、かなり面白い。結構、絵の心得があるということになりそうだ。
それとも、ナイババが取り出して銭形に渡したところを見ると、ナイババが気を利かせて自分で描いた・あるいは誰かに描かせたのだろうか??


閑話休題。銭形の作戦のせいで、ギャングたちに追われるハメになったルパンたち。ルパンにはまだまだ笑顔を見せる余裕があったが、次元は後ろからバンバン飛んでくる銃弾に辟易した様子で、帽子を脱いでポツリと呟く。
「あーあ、せっかく新調したっていうのによ」
(ルパン仲間に言われて気づいたのだが)この台詞、前回の99話で帽子がボロボロになったことを受けての発言とも取れる。もしそうだったら、面白いなぁ^^
「どうにかならないのかよ」との相棒のリクエストに応え、ルパンはマキビシをバラ撒くことでギャングたちを撃退。
こうして、ルパンたちだけが、「汚れなき青春」を追うことになった。


絵は、マルセイユから地中海を渡り、鉄道でナイババの村まで運ばれることになっていた。その後、らくだ小屋を改装した美術館に飾る予定だとか。
「絵ならなんでもいい」というノリで持ち帰られては、ますますルパン家の面目丸つぶれ、なのかもしれない。
たくさんの絵を買い捲ったナイババに呆れ、「よく金があるな」と銭形が言えば、「砂漠に石油があるから」との答え。
続いて、ジロジロと銭形の尻を眺めて咎められると、「そこにお尻があるから」。この辺の台詞の呼吸が、うらさわチック(笑)

駅から護衛に着くことになった大勢の男たちを見て銭形は、変装の名人であるルパンが紛れ込む恐れがあると心配するのだったが、ナイババは自信ありげにそれを退けた。
ナント、そこにいる男は全員ナイババの息子。変装してもぐりこもうとしても、すぐに判るということなのだろう。
村に帰れば、さらに17人の息子、20人の娘、そして整理して12人となった妻たちがいるのだとか。
そんなナイババに、息子はいるのか、娘は、妻は?と尋ねられる銭形が、小声で「ない」「ない」「まだ」と答えるシーンがツボ。
マモー編ではトシコちゃんという娘がいたが、やはりその時だけの設定らしい。
新ルの銭形は、妻も子もなくひたすらルパン逮捕に邁進しているということのようだ。

金にモノを言わせて作った鉄道で(笑)、ナイババらは出発した。
その列車の最後尾にルパンが乗り込むが、銭形はすかさず切り離し、その車両は海へと消えた。
当然、ルパンはまごまごとその車両に乗っていたりはしないし、また銭形の方もこれでルパンを撃退できたとは思っていない。お互いのことを良く分かっているのだ。
この回の銭形は一人で奮闘している。お尻を狙われたり(!)何かとコメディテイストの作品のためあまりそうは感じないかもしれないが、新ルではなかなか活躍している回に入るような気がする。


銭形が予想していた通り、ルパン一味は諦めていなかった。次々と、列車に潜入を試みようとするのだ。
まずは不二子。らくだに乗っての登場。
窓から入り込もうとするが、銭形にハエ叩きで手を叩かれて、仕上げには防虫スプレーを吹きかけられ、撃退される。
そのあしらい方は、余裕たっぷり。さすが「女は殺さない主義」の銭形、不二子に対しては、かなり余裕だった。

続いては、五右ェ門。線路に立ちふさがり、列車の接近とともに飛び上がり、攻撃しようとしたかに見えた。
が、銭形があらかじめ蒸気に混ぜておいた「スカンクのオナラ」を、タイミングよく噴射され、あっさりと撃退される。
これも五右ェ門の手口を良く知ってるからこそ、準備できたのだろう。……かなりシュミの悪い撃退法だけど。
五右ェ門が「く、くさい……」と呟いて倒れるところが可愛い^^

その次は次元、ジープに乗って列車に接近。最後部から、「よう、とっつあん」と大胆に入り込んでみせた。
が、すぐに銭形によって締め出され、お前にそのドアは開けられないと言われる。
この時、次元が「やってみなきゃわかンめぇ?」と、かなり砕けた口調で言ってるのがツボ。入ってくる時の陽気な挨拶とセットで、個人的には地味なお気に入りポイントだったりする。

銭形が言うとおり、そのドアは鋼鉄製でマグナムでも歯が立たないものだった。(カッコつけて撃った後、弾が効いてないのを見て「イッ!?」とばかりに驚く顔がオカシイ)
さらに銭形は、次元が立っていた足場を落としてしまう。ドアにしがみついて何とか列車から落ちまいと奮闘するものの、幾重にも重なったドア(!)の前に、ついに次元も力尽きる。
何枚ドアが重なってたんだ(笑)
三人とも失敗するごとに、列車のポイント通過をルパンに報告するのだが、次元がその報告をしてる姿を見ると、本当の“目的”は達していたものの、銭形にしてやられたことがとても悔しそうだ。


感謝のベーゼ

三人が撃退されるシーンの合間合間に、列車の中の様子が描かれており、時に銭形とナイババの掛け合い(『いいコメディアンになれたのに』)あり、時にいつの間にか落ちてた酒で、みんなが次第に酔っ払っていくシーンあり。
…ご承知の通り、この酒がポイントなのである。
いつの間にか酒があったら、しかもアラブ人には見慣れないだろう日本酒なんかが転がっていたら、誰か一人くらい警戒しても良さそうなものなのに。
そこはさすがにみんなナイババの息子ということか。お気楽すぎるぞ(笑)

さて、次元たち三人が撃退されたところで、いよいよ真打・ルパンが登場。
トレーラーを運転して、「NAIBABA」駅へと先回りし、ホースで砂を撒き、駅そのものを隠してしまうのだった。

その頃列車の中は、大宴会状態になっていた。
どこからともなく湧いてきた酒(笑)を、ナイババも息子たちも、しこたま飲みに飲んでいる。
その様子は結構スゴイ。多くの酒を一気に酒をラッパ飲みしていたり、何本ものストロー使って大量に酒をすすったり。凄まじいはじけっぷりである。
銭形も勧められるが、さすがに飲むことはなかった。
ちなみに、その時ナイババが勧めた酒は、「MOONTORY」。サントリーのもじり?
飲みまくってべろんべろんに酔っ払った息子たちは、ついに眠り込んでしまった。

夕方、ついに列車は「NAIBABA」駅に到着(したと思われた)。…余談だが、前の駅は「SHIRAN」だ(笑)
慎重に駅のホームを調べた後、銭形は無事に到着したことをナイババに報告する。
感激したナイババは、酔ってるせいか涙もろくなってたようで、泣きながら銭形に抱きついて感謝の意を示す。
最初、イヤそうだった銭形だったが、「君は真の友人だ」との言葉についほだされたのか、ナイババを抱き返す。
と、ナイババは「友人以上に大事な人」と言って、ちゃっかり銭形のお尻を触っていた。エロオヤジめ……
その手を、銭形が摘みあげた時、“駅”が揺れる。

ここでルパン登場、種明かしをする。
本物の駅は砂で隠してしまい、今銭形が立ってるのは、駅のホームに見せかけたルパンのトレーラーなのだということを。
ルパンは、このアイディアを考えたファンに、感謝のベーゼを送ろうとする(この時の「ん〜」って感じの顔が最高に好き^^)。
銭形から「そのファンは男だぞ」と言われ、「あら女の子じゃなかったの?」と、投げキスを思い留まるというメタなやり取りも見られる。
さすが100回記念、ファンサービスがてんこ盛りだ。
それにしても、ルパンに投げキス送ってもらえそうだったファンの方、羨ましいなぁ。ルパンから言葉をかけてもらえるなんて!
昔からそう思っていたが、今回改めて観て、ますますそう思った。
ちなみに、男性ファンだったからとキスを止めたルパンと違い、ナイババは、「男だって構わんじゃないか」と呟いている。

肝心のアルセーヌ・ルパンの絵は、といえば、銭形に抱きつく時にナイババが落としていたのを、ルパンがすかさず拾い、奪っていた。
慌てたナイババは息子たちを呼び寄せようとするが、彼らは車内でぐっすり眠っている。
言うまでもなく、車内に落ちてたたくさんの酒は、ルパンが仕組んだもの。
次元たちが攻撃を仕掛けたのはダテではない。隙をついて、酒を車内に差し入れしていたのである。
邪魔になりそうだった護衛の息子たちを酒を飲ませて眠らせる……こちらの方が目的だったというわけだ。

やや余談となるが、列車に差し入れた酒が、不二子・五右ェ門・次元が自分好みの酒だったのも興味深い。
五右ェ門は日本酒、次元はウィスキー、不二子の酒は種類は判然としないけれど、ボトルからしてワイン風(それともブランデーとかかしら)
これならナイババたちも大喜びで飲むに違いない、というお勧めの酒を持ち寄っていたなら面白いなぁと妄想してみたり。


さて。よくよく考えてみると、一番の見せ場である、「砂で本物の駅を隠し代わりにトレーラーで贋の駅を作る」という事が、面白いアイディアなのに話の中で上手く消化しきれてない感があって残念。
ナイババがたまたま絵を落としたから盗めたように見え、贋の駅である必要性があまり感じられなくなってしまうのだ。
でも、作品全体的にユーモラスで大らかな雰囲気なので、何だか細かいことなんか突くのは止めて、笑って見ていたくなる^^

こうして、絵を手に入れたルパンは、トレーラーで去っていく。
最後の最後でやられてしまった銭形は悔しがる。
が、ルパンを追う前に、逆にナイババに追いかけられる。彼には、元々「汚れなき青春」に執着する理由もなかったし、絵のことはどうでも良くなったようだ。銭形の尻の方が、ダンゼン魅力的だったのだろう(^^;
ナイババに追われ、銭形はルパンどころではない様子であった。
迫るナイババに、「よ、よ、よさねえか!なんてこと言うんだよ!」と慌てて逃げる銭形、気の毒なような可愛いような(笑)
無事に逃げ切れたことを祈るのみである。

30話でも、目元だけ出した女装で「美人」と絶賛された銭形、アラブ地域ではモテ運が急上昇するように見受けられる。
いずれも男性からなのが、そちら好みじゃない銭形としては、残念なところだろうか(笑)


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