第45話 コンゲームに乾杯


タイトルに偽りあり

タイトルだけ聞くと、ものすごーく面白そうな回なのだが、正直「タイトルに偽りありでは?!」と思ってしまう(^^;
そもそも「コンゲーム」というのは、「コンフィデンス・ゲーム(Confidence Game)」の略で、「信用詐欺」のこと。(小林信彦「紳士同盟」新潮文庫版の巻末解説より)
やや広い意味でも「策略による騙し合い」という感じで使われているわけで…。
「コンゲーム」と聞くとどうしても、映画「スティング」とか、ジェフリー・アーチャーの「100万ドルをとり返せ」とか、上記「紳士同盟」のような名作を思い出すから、もっと頭脳をフルに使ったこいきな戦いを期待してしまう。
確かに、作中では「騙し」が(主に後半)行われているわけだが、その騙し方もあまり洗練されているとは思えず、また「やっぱりね」と先が読めてしまうので、日頃「騙し合い」系の作品が大好きな私だが、この回にはトキめかないのである。
「コンゲーム」を前面に押し出そうとした(多分)、話のコンセプトそのものは、やりようによっては非常に魅力的になりうると考えられるだけに、とても残念。

辛口ついでにもう一つ。
この回後半部分の不二子の顔、あまりに酷すぎるように思える(涙)。パースリ晩期の不二子は概ね「私の好み」の顔ではないが、そうした「好み」云々を差っぴいても、この回後半は「ちょっとどうなの」感イッパイに見えるのだが……


では本筋へ。
話は、監獄に潜入した(ように見える)ルパンの様子から始まる。
快調に進んでいくものの、ある扉の鍵を開けようとすると、そこに流れる電流にやられて倒れてしまう。
実はコレ、練習。こんなセットまで作って挑もうとしているのだから、今回潜入しようとするサンテ刑務所というのは、なかなか手ごわいところの様子。
潜入することは出来ても、例の電流監獄に手も足も出ない。
電流を止められればいいのだが、スイッチはその内側にある時計に仕込まれており、毎日朝六時になると自動的に開くが、それ以外の時間に止めるには中に入るしかない。ルパンは、途方にくれる。

そもそもは、ルパンがピンカートンの残した金庫を手に入れたことが発端。それを開けようとしているのだが、よりによって鍵がサンテ刑務所の獄中に隠されていることから、そこにもぐりこむ必要が出てきたというわけだ。
ピンカートン金庫は、NASA開発の特殊合金製。斬鉄剣でも斬れなければ、バズーカ砲も効き目なし。
鍵を使って開ける以外にないのだった。

そこへ現れる不二子。計画が頓挫しかかってるせいか、みんな素っ気ない。
次元の「ご親切はありがたいが」というのが、ちょっと皮肉っぽく聞こえるような、三人のテンションの低さ(笑)
不二子は、ドロンという男を連れてやって来て、「金庫を開ける手伝いを…」と申し出るのだが、最初は当然相手にされない。
が。先ほどの監獄セットに改めて電気を通し、ドロンがそこに触れてみると、三人はようやく反応を示す。
ドロンは、ルパンが倒れた程の電流をものともしないのだった。その上、鉄格子の隙間からするりと身体を滑り込ませて、あっさり内側に入り込んでしまう。
どうやら彼は電気の効かない、特異体質のようだ。
ルパンは、ドロン・不二子と手を組み、鍵を手に入れ、金庫の中の宝を山分けすることにした。

サンテ監獄には、ルパンとドロンが一緒に忍び込む。
……余談だが。仕事着好きの私だが、この回はあまり食指が動かない(笑)
何だか、ドロンとルパンで一緒に着ていても、楽しくないわけで。
たまにはこうした状況も新鮮なのかもしれないが、やはり仲間以外の人間と一緒にどこかに潜入している(しかもお揃いの仕事着で!)ルパンには、何となく違和感がある。(相棒スキーの勝手な思い込み;)

二人は順調に潜入し、問題の鉄格子にまで辿り着く。
ドロンの特異体質で、彼は問題なくすり抜ける。「監房の番号さえわかれば、一人で行ってきてもいい」なんて、明らかに怪しい感じ(笑)
そんな簡単に知り合ったばかりのドロンを信用しないって。
当然、ルパンはやんわり拒否。内側に居るドロンに時計を進めさせ、柵の電流を止めると、再び一緒に先に進む。
ピンカートンの入っていた104号監房に辿り着くと、現在そこにいる囚人を眠らせ、鍵を探す。
鍵は、一つ外れるようになっている壁のレンガの奥に隠されていた……


カルロス

鍵を手に入れたルパンとドロンは、潜入がバレて看守たちに追いつめられるが、外から五右エ門が塀を切り倒したので(!)、どうにか脱出することが出来た。
パトカーに追われるが、街の狭い路地に無理やり車を押し込む(!)という、次元の運転テクでどうにか振り切る。
どうでもいいけど、五人も車に乗ってると重そう(笑)

しかし、その時彼らのいく手を強引に塞いだのは、カルロスという男。
ピンカートンの弟なんだとか。マシンガンぶら下げた手下を連れているところを見ると、どこぞのギャングのボスなのだろう。
彼はなんと、留守中のルパンのアジトに忍び込み、金庫を「返して」もらったのだとか。確かに、兄貴のものは弟のものという理屈は、わからなくもないが(笑)
…それにしても、迂闊すぎない??ルパンのアジトって、そんなに容易く入れるものなのか。

カルロスは、金庫の鍵も要求するが、拒否するルパン。
すると力ずくで奪おうとするカルロス一味との間に、銃撃戦が始まる。
さらにはそこへ、ルパンを追ってきた銭形も登場。カルロスは「ついでだ、やっちまえ!」と警察にまで喧嘩を売る始末。
警察とカルロスたちが撃ち合っている隙に、ルパンたちはさっさと逃げ出していく。当たり前。付き合っちゃいられない。
ルパンたちが逃げたことに気づいた警察は、銃撃戦をやめて後を追う。
カルロス一味は、いったん鍵を諦め、「金庫は叩き壊すか」と言って、去っていく。
…うーん。正直、あまり粋じゃない展開。「コンゲームに乾杯」というタイトルを完全に忘れたとしても、何となく疲れを感じるのはどうしてなのだろう。
あまりにも絵が好みでないから、話に入り込めない、というのもあるだろうけど。
ここまでで、あえてツボなシーンを挙げるのならば、監獄から車で逃げ出したルパンと次元が笑い合ってるところくらいだろうか。


で、どうでもいいことで注目すべきは(笑)、次のシーン。
アジトに戻ってきたルパンたち三人が、金庫を取られたことについて話し合っているシーンで、次元のシャツの色が違っており、帽子のリボン部分と同色に塗られている。
ホントどうでもいいのだが、こんなところに目をつけて「珍しいモノ見〜ちゃった」と遊びたくなるのだ。不思議と。

逃げる際、ルパンたちはドロン・不二子と(なぜか)別々に行動したようなのだが、二人の到着を待っていると、傷ついたドロンが部屋に倒れこんでくる。
不二子を拉致されたのだと言い、その際預かった手紙をルパンに手渡す。
拉致したのはカルロスらしく(実は違うんだけど)、その手紙には鍵を持ってセーヌ街の35番地へ来いと書かれていた。
そういう手紙を受け取っても、いつもより淡々としているように見えるルパンたちに比べ、ドロンは「不二子が心配だ。アウーッ」とばかりに気絶してみせ、一人だけ妙にテンションが高い(笑)
芝居に熱がこもってしまったのかもしれない。うん。

ルパンが呼び出された場所では、カルロスが金庫を開けようと悪戦苦闘していたが、当然ビクともしない。
そこに現れたルパンと次元。余裕綽々の態度。オツムが悪いカルロスに、あまり重きを置いてないようだ。
確かに実際その通りっぽいし、またルパンの「どうしても開かないんだろ?」との問いかけに、揃って素直に頷く手下たちも、あまり手強い感じはしない。
それでも、不二子が捕らわれている(ということになっている)ので、人質を返せば鍵で金庫を開けてやっても良い、と持ちかける。
だが、カルロスは「人質なんかとらん!」と言い切る。
最初は信じないルパンだが、「字も読めないんだから、手紙なんか書けない」というカルロスの説得力ある(笑)言葉に、事態のおかしさを感じ始める。
さらには、カルロス側に、ルパンから「鍵を返す」と約束した手紙が届いていることを知り、ますます怪しい雲行きに。
長居は無用とばかりに、次元の吸っていた仕掛け煙草で煙幕を張り、一旦姿をくらますルパンと次元。
そして、クレーン車とシャベルカーでカルロスたちを玩び(笑)、やっつける。そして金庫を奪い返すのだった。
・・・ツッコミどころとしては、防弾クレーン車なんて、いつ用意したのよ〜と、その辺で笑っておくくらいだろうか。

どちらにしても、取引場に「金庫そのもの」を持ってくる必要などない(カルロスは「鍵を返してもらえる」と信じていたのだから)のが、ちょっと解釈に苦しむところ。まあ、ああいうカルロスだから、何とか誤魔化したのかしらん。


ドロン

鍵も金庫もルパンのものになったと思われたその時、二人の足元から電流仕掛けの檻が、土の中から(!)現れる。
閉じ込められたその時の弾みで、ルパンは金庫の鍵を落としてしまった。
鍵を拾い上げたのは、拉致されていたはずの不二子と、ドロン。
二人は、ルパンとカルロスをぶつけて戦わせ、どちらが勝っても最終的に二人が金庫・鍵を手に入れられるよう最初から計画していたのだとか。
「ドロンって頭がいいでしょう?」という台詞が、ちょっと癇に障ってしまうコドモな私(笑)「ルパンの方が頭いいもーん」と言いたくなるのだ(ホントに子供;)

ところで。邪魔者同士を戦わせ、両者とも排除し、「漁夫の利」的にお宝を手に入れようという発想そのものは、面白いと思うのだが(よくあるパターンとはいえ)、何となく「あーっやられた!」という感じがしないのだ。
唐突に現れたドロンという小悪党、最初から胡散臭さに溢れていた。だから、だろうか。

さらには、ご丁寧に「別荘暮らしが出来るよう」にと、ドロンは銭形を呼び寄せておいたのだとか。
答える次元の「ありがたいこっちゃ」という言い回しがツボ(^^)。
去っていく二人と入れ替わりにやって来た銭形は、檻の中に居るルパン(と次元)を見て、ようやく逮捕できる感激に打ち震えるのだが、当然そうはいかない。
檻に流れる電流に銭形はやられてしまう。わざと触るよう仕向けるようなルパンの誘導勝ち?(笑)
そして、五右エ門の登場により、その檻はバラバラにされ、ルパンと次元は金庫と鍵の後を追うことになる。

一方。セーヌ川を、金庫を積んだクルーザーで下っていく不二子とドロン。
そこで不二子は、ドロンに拳銃をつきつけ、船から飛び降りるよう促す。彼女は、ドロンともお宝をわける気がないようだ。「山分けなんて、大嫌いなの」という台詞が似合いすぎ。
しかし、彼女の拳銃から弾を抜いておいたドロンは、当然動じず、不二子の手から鍵を奪い取る。
逆に、川へ落とされるハメになる不二子。

そこへ、ルパンと次元がやって来る。五右エ門が用意したという、赤いスクーターに乗って!
…個人的にはこのシーン、つくづく「パースリの中で好きなタイプの絵」で見てみたかった!!
スクーターに二人乗りという、あまりにレアかつツボなシーンにだけに、本当に残念である。(シーンとしてはツボに変わりないのだが^^)
ちなみに、テレビシリーズでは、ルパンと次元がバイク類に二人乗りしているのは、ここだけだっただろうか。
マモー編での二人乗りが非常に印象的なせいか、もっと二人乗りシーンはあったようにも感じるのだが、よくよく考えてみるとあまり見当たらないことに気づく。(バイク&サイドカー四人乗りなら、「老婆とルパンの泥棒合戦」にあるが)
さらにテレスペにもあったよう記憶しているが、テレスペ詳細は私の守備範囲外なのでここでは触れずにおく。

不二子には「ハーイ不二子、ご苦労さんでした。あとはお任せ」と言い残し、スクーターでドロンの船を追いかけるのだが。
橋に車が溢れていたせいで通り抜けできず、結局ドロンのクルーザーを見送ることに……

そして、自宅(別荘?)で、お宝を前に祝杯をあげるドロン。
「ルパンを手玉に取った最良の日」なんて言いつつ。召使い三人と一緒に乾杯するところをみると、日頃から仲の良い関係なのか。
とはいえ、この三人、正体はルパン・不二子・次元。
ついに鍵で金庫を開けるドロンを見守る。
ドロンが開くと、金庫からはボクシンググローブが飛び出してくる。新ル第一オープニングの不二子のベッド状態(笑)
実はその金庫、鍵を右回しに開けたのでは、お宝は出て来ない仕掛けのようだ。
グローブに殴られて倒れたドロンの後ろから、正体を現したルパンが「左巻きっていうのがあるの!」と言いながら改めて鍵を回すと、金庫内側の壁が崩れて、大量の宝石類が流れ出てきた。
ドロンを踏み潰して(笑)大喜びでお宝に飛びつく不二子。
最後に笑ったのは、やはりルパンたちなのだった。


という具合に、わりと淡々と(これでも。笑)あらすじを追ってみたのだが、これだけだとつまらないので、ちょっと考えてみよう。

そもそもこの話、どこまでが意図されたものなのだろう?
ピンカートンの弟、カルロスが登場してくるタイミングが、あまりにも良すぎはしないか。
まるでサンテ監獄から鍵を盗む日・時間を知っていたかのような登場。そして、あまりに簡単にルパンのアジトから持ち出せた金庫。
もしかしたら、不二子・ドロン組が何気なく情報を流したのでは…と勘ぐってみた。

カルロスが登場せず、あのまま五人でアジトへ辿り着けたなら、鍵を開けてすぐその場で山分けということになっていたはず。
不二子とドロンがあらかじめグルだったわけだから、山分けの場で何か仕組んでルパンたちを出し抜く可能性はあっただろう(成功を祝っての乾杯に一服盛るとか。笑)。
だが、「頭の良い」(←たっぷり皮肉)ドロンのことだから、薬作戦では失敗する可能性も高いし(一人にでも気づかれたらオワリだし)、
腕の立つルパンたち三人相手に、面と向かって金庫と鍵を持ち去る危険を回避したのかも。
そこに、元々ピンカートンの金庫を手に入れたがっていたカルロスを、敢えて噛ませた。
荒っぽいだけであまり知恵の回らなそうなカルロス相手に、ルパンが奪われっぱなしになるということはまず考えられないから、いったん金庫を渡す形になっても、その辺は安心していられたのではないか。
そして狂言誘拐で、邪魔者二組を戦わせて、そのどさくさで両方手に入れるという計画だった……

こんな具合に考えていくと、今度はルパンがドロンの企みによって引き起こされる数々の出来事に翻弄…とまではいかなくとも、その場その場で対応させられ続けたという形になるので、どうも面白くない。
そこで、ドロンと組んだ振りした不二子だが、実はルパンを最初から裏切っていなかったのだ、と考えてみた。

話の発端となるサンテ監獄攻略に、特異体質のドロンは不可欠だった。
見つけてきたのは不二子だろう。
ルパンたちがあれほど念入りにリハーサルをして、かつ煮詰まっていたので、ルパンがドロンの存在を知ったのは、あの時が初めてと考えて間違いないと思う。
問題はその後。裏でルパンと不二子が共闘を約束し、同時に不二子はドロンと組むふりをする。
もちろん、もしもドロンが誠実な人間だったなら、そのまま五人で実行・山分けになったのかもしれないが、読み通りドロンはルパンを出し抜こうと不二子に持ちかける。

カルロス登場の件は多分ドロンの独断。狂言誘拐を思いついたのも彼。カルロス襲撃から逃げる時にわざとルパンたちと別行動して、不二子に話を持ちかけたのではないか。
不二子は、ルパンならアドリブも平気だろうと、ドロンの味方モードで行動。
カルロスとのやり取りの中で、ルパンが多少予想外の事態に慌てているように見える箇所もあるが、あれはシナリオにはない出たトコ勝負のシーンだったから。
ドロンの仕掛けた檻につかまった時、大袈裟に悔しがったのは、当然芝居(説が強引になってきたな。笑)

一方不二子は、二人きりになり、もしドロンが指示通りセーヌ川に飛び込んでくれたなら、そのまま宝を独り占めしちゃえ、くらいの気持ちはあっただろうけれど(笑)結構ドロンが抜け目なくて、自分が川に落ちることに。
その時ルパンのかけた台詞「ご苦労サンでした」は皮肉やからかいでなく、言葉通りの意味だった…
だからその後、「裏切っていた」はずの不二子とあっさり合流して、お宝を共に手にすることになっているのだ。

な〜んて。
あまりに的外れ、妄想しすぎだろうか。
まあ、これではルパンが不二子と手を組んでいた「意味」が見当たらないわけだけれども。
ただラストでルパンが「バーカ。そう簡単に騙されるはずないでしょうが」という意味のことをドロンに言っているので、「騙されていない」のではあれば、最初からお見通しだったのかな、と考えられる気がする。
(それにしても、「バーカ」って。山田ルパンだからこの台詞も楽しく聞けるけど、もっと気の利いた台詞はなかったのかしら;)

それとも、これって深読みでもなんでもなく、普通に見ていればわかる当たり前のこと??
…実は、この話いつも「不二子の顔が〜」などぶつぶつ言いつつ、流し鑑賞していたので(ごめんなさい^^;)、じっくり考えたのはこれがはじめて。
なので、解釈の加減が、心の底からよくわからない(笑)
当たり前のことを長々と、と思われたり、あるいは見当違いのことを長々と、と思われたら、どうぞご容赦の程を。

いずれにしても、カルロスの存在がもう少し物語の中で有意義に機能してたり、ルパンがラストで宝を手に入れる時、「コンゲーム(もどき)をしかけて来たド ロンの罠を逆手に取る」とか、もっと「頭を使って取り返した」感が強かったりすれば、この話はタイトル通り「コンゲーム」として面白いお話になったのでは ないだろうか。


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