第71話 ルパン対新選組


また三代目

「ルパン」には歴史上人物・架空人物を問わず、よくその子孫というものが登場する。
ルパン、五右エ門、銭形はもちろんその筆頭で、ライバルキャラクターにも「有名人子孫」は多い。実際に子孫がいるかどうかというのは、まるで別の話だ。「ルパン」に関しては、それは考えてはいけないことなのである(笑)
今回登場するのは、新選組の子孫。三代目の近藤勇と沖田総司だ。
…私、史学科で学んでいた人間なのだが、高校時代から選択していたのが西洋史だったこともあり、日本史は完璧な守備範囲外。特に、現代に近くなればなるほど、知識が少なくなっていく。新選組関係は、恥ずかしながら、多分日本人の一般常識レベル以下しか知らないと思う。
なので、ここでは歴史に絡めての考察・ツッコミは一切しないことにする。
ちょうど昨年、新選組を取り上げた名作大河ドラマが登場したようだし、興味をもたれている方は、ネットでも書籍でも、情報は豊富に出回っているだろうから、ご自分でお調べになれば楽しいかと思う。


さて。その三代目近藤勇と、ルパン三世が手を組むこになった。仲介役は、不二子。
目的は、かつて新選組が所有していた黄金大砲。
この黄金大砲は、戦い続け追いつめられた幕府側が、津軽海峡に万臨丸とともに沈めたのだという。海流に乗って、永遠に漂い続けるように。
それを、ルパンと近藤が手を組み、引き上げようとしているのだった。
見るからに俗物で、油断ならない雰囲気プンプンの近藤が機嫌良さげに喋っているのに対し、次元はどこか嫌そうに煙草を吹かして、一言も喋らない様子が笑え る。ましてや、五右エ門など一緒の部屋に居るというのに、同じテーブルについてすら居ない。日本なのに食事が洋風(多分)だったのが気に入らないのかし ら?(笑)

不二子が仲介したのは、「報酬」が目的だったからだ。
紫真珠がもらえて嬉しそう。(その様子を見てこっそりと、宝石なら何だって好みじゃねえかと呟くルパンがイイ^^)
かつて、ダイヤ一つでルパンと五右エ門を殺しあうよう仕向けた、あの旧ル時代よりよっぽど可愛い(笑)今回、特に近藤と組んでルパンを陥れるような企みは一切なく、仲介役としての報酬と、黄金大砲の分け前を受けようとしていただけだった。
そして、推察するに、ルパンがこの話に乗ったのは、黄金大砲に興味を持ったからであり、かなりきな臭い近藤の危険は承知していた。が、とりあえず組むことにして、子孫に伝わる黄金大砲に関する古文書を見るのが目的だったのではないだろうか。
もちろん、危険を承知で話にノッていく、そのこともルパンには楽しいのだと思う(^^)
古文書を持って登場したのが、沖田総司(多分、三代目)。
部屋の隅に座る五右エ門と、互いに意識しあっている。特に沖田の方。剣の使い手であることを、それだけで察知しあっていたのか。

総司がその後、夜の海に向かって草笛を吹いて、「守り神」の(だったのね!)蛸を呼び寄せている時。
背後に人の気配を感じて振り返ると、そこには立ち去っていく五右エ門の姿が…
五右エ門も、沖田をかなりの使い手と見極め、様子を伺っていたのだろうか。五右エ門は、近藤よりよほど沖田に注意を向けているようだ。


早速黄金大砲を積んだ万臨丸を引き上げるため、海に潜るルパンたち。
この回では、ウェットスーツに身を包んだ四人の姿が堪能できる(一回目では不二子は潜っていないが)。
特に五右エ門は、ルパンと次元がウェットスーツ着用の時も、褌で通すこともあるわけで(笑)、そういう意味で今回はややレアかも。今私が確認しているものとしては、遠くにちょっとだけ見えるものも含めて、五右エ門のウェットスーツ姿は新ルで三回登場している、と思われる。
閑話休題。
この海の中で、ルパンたちはアザラシの影のようなものを見かける。
「津軽海峡にアザラシなんかいたか?」「さあな」というルパンと次元の会話は、後半のちょっとした伏線になっている(別になくてもどうってことのないモノだとは思うが。笑)
ルパンらは、万臨丸の通り道になっている海溝で船の到来を待ち受けるが、海流は予想外に激しかった。
ルパンは、通り過ぎていく船と、そこに積まれた黄金大砲を見つめるだけで、その時はそのまま陸へ戻るのだった。

近藤には、この仕事から降りると告げるルパン。あの大砲を引き上げるために、18人ものダイバーが犠牲になっているのだが、ルパンは19人目になりたくない、と言う。
ルパンが去った後、そこに現れたのは、何やら物騒な男。殺し屋のジョン、だとか。
彼はどうやら近藤から「仕事」を請け負っているらしい。ルパンが去って不満そうだ。そう、狙いはルパンたちなのだ。
しかし、近藤はさすがに老獪(笑)ルパンの性格をよく知っていて、あの黄金大砲を見たからには、必ず引き上げずにはいられないだろうと読んでいる。
その時に……と、悪人二人は笑い合うわけであった。お主も悪よのう。


天才

全155話もある新ルの中で、わりと地味で忘れられがちだと思われるこの話だが(笑)
個人的には、非常〜に好きなシーンがある。それが、黄金大砲を引き上げる方法を考え続けるルパンの様子から、万臨丸をキャッチするまでのシーン。
ルパンがひらめきを得るまで、仲間たちの元から離れて一人きりになり考え続ける様子は、ものすっっごく好きなのだ。
89話「ドロボウ交響曲を鳴らせ」でもそうだったように、ルパンは本格的に何かを考える際、とにかく根を詰め、没頭し、一人きりになりたくなるようで。
この回はまだ山篭りするほどではなかったけれども(笑)、とてつもない集中力と創造・想像力と計算力を駆使して、猛烈な勢いで頭の中が回転しているのだろうルパンを見ると、とにかく問答無用で惚れ惚れしてしまうのである^^

本に囲まれながら船の図を描いては丸めて捨て、一人バーで飲みながらも、目がいってしまうのはKUTTY SARKのラベルに描かれた船の絵。
雨降る中、車を止めて、海の見える場所で一夜を過ごす。少しは眠ったようだが、その時も休まず頭脳は動き続けていたのだろう。
次に向かうのは、図書館。そこで何やら本を借りたらしいルパンは、公園へ。
疲れたのかそれともまだ考えているのか、ベンチに寝転び休んでいるその時。
子供の遊ぶ輪投げを見て、ついにひらめくルパン!!
ルパンのこぼれる笑いが、次第に高まっていく様子に、つい観ている私も引き込まれて笑ってしまうほどv
…周囲の人からすればルパンは、何もないのに唐突に高笑いしはじめたオカシナ人だったろうけど(笑)
その後、輪投げでことごとく「船」に命中させるルパン。子供の「すげーなおじさん」という素朴な褒め言葉が微笑ましい(笑)
そしてルパンは、お札を取り出し、気前良く「これで子供たちに遊ばせてやってくれ」と行って、立ち去る。
う〜ん、カッコイイvv
あっさり、さり気な〜く、天才的名案が浮かぶルパンも素敵だが、時にこんな具合に考えに沈む姿(でも一見表情は飄々としてるのがまたツボ)も、とても魅力的なのである。

ちなみにこの回、銭形は自らそういう通り(!)お休みなのだ。
輪投げの的に銭形人形としてちらりと顔が映るのと、その後のシーンに一瞬出てくるだけなのだ。
ご機嫌なルパンは、車で帰る途中も大いに笑い続けて目立ちまくっている。
すれ違ったパトカーを運転する警官が、「怪しいやつ」として捕まえて尋問しようかと問うのだが、同乗していた銭形は、「ほっとけ。今回わしはお休みなの!」と言い放ち、寝てしまう。
基本的に、レギュラー五人を登場させるという方針が新ルにはあったようだが、ここまで無理やりだと笑うしかない(笑)

本筋に戻ろう。ルパンは、ようやく思いついた案を実行すべく、早速行動に移る。
海底の船の通り道に、巨大な鉄柱を二本打ち立て、その間に網を張る。さらに、鉄柱の中ほどまでに巨大な輪を重ね、いつでも落とせるようにしておいた。
そうして、再び海底で万臨丸が漂ってくるのを待ち受ける。
やがてやって来た船は、その網に掛かって動きを緩める。不二子が急くのを制し、よくタイミングを見計らって、ルパンは輪を次々に落としていく。
すると、落とされた輪が作る円柱の中に、船はしっかりと捕らえられたのだった。
こうなれば急激な海流も関係ない。巨大な「輪」にあらかじめつけてある出入口から中へ入り、ゆっくりと黄金大砲が戴けるというわけだ。

不可能を可能にしたルパンを目の当たりにした不二子は、嬉しそうに「あなたって天才だわ!」と叫ぶ。
それを受けるルパンがまたイイ。「みなさんそう仰るよ」
くーーー(壊)素敵!!ルパンにしか似合わないこの台詞!!このシーン、大・大好きvv

ルパンらが黄金大砲を引き上げるべく行動していたその裏では、近藤に雇われた殺し屋ジョンが、準備万端整えていた。
何でも近藤は、二億ものギャラを払ってまで、ルパンを亡き者にしようと企んでいたのだとか。
黄金大砲が、コレクターの間で70〜80億の価値があるとされているのなら、ルパンとの契約通り5:5で分けるより、殺し屋に2億払って他はすべて独り占めした方が、遥かに利益は大きい…と、浅はかにも考えたのだろう。
ルパンがどれだけ抜け目ないかも知らずにv(←ちょっと嬉しげに。笑)

黄金大砲をしっかりとワイヤーにくくりつけ、後は引き上げるだけとなった時、ルパンは大砲の中で何やら細工中。
問いかける不二子には「何もしてないよ」ととぼけるものの、これは発信機。奪われる可能性もちゃんと考えていたのだ。
さらには、大砲を引き上げに掛かった近藤一味は、それとすれ違いにジョンら刺客を放つわけだが、その襲撃に対しても準備していた。
バズーカ抱えて襲ってくる殺し屋たちに対し、最初は水中ガンで応戦している次元(それでも命中率の高さが伺えて、さすがv)
「何とかならんか」とルパンに訴えかけると、「準備は怠りないよ」とさらりと答える。さすが〜!
準備してきたモノでガスを発生させ、その間に脱出してしまう。
殺し屋は船ごと爆破させたが時は遅く、当然ルパンたちは無事であった。
こんなルパンになら何があってもついて行き甲斐があるだろうなぁ(妄想中。笑)

こんな具合にルパンらは助かったものの、黄金大砲は引き上げ役をやっていた近藤が、そのまま持ち逃げしている。
が、先ほどの発信機でちゃんと後が追えるとわかると、不二子は「好きよ」とルパンに抱きつき、積極的なキスv
といっても、いまだぴっちりとウェットスーツを着込み、口元には酸素ボンベ…じゃなくってレギュレーター(とか言うんでしたっけか?)を装着したままなので、直接触れ合うキスではないのだけれども。そこがまた何となく色っぽくて乙。


巨大タコ

すっかりルパンを倒して大砲を独り占めした気になっている近藤は、自分の船の上で「ルパンの冥福を祈って」とほざきながら、乾杯などしていた。
するとその時、船が座礁。操縦していたはずの沖田が、船を放置したのだ。
沖田は、黄金大砲のそばへと赴き、それを売り払おうとしている近藤に異議を申し立てるのだった。
「先祖の恨みを忘れたか」と。彼は、新選組を再起し、北海道を独立国とする野望を抱いていたのだった。
黄金大砲はそのシンボル。売らせるわけにはいかないのだ。
一方、完全に「実業家」である近藤は、先祖の意思云々には関心がなく、沖田の夢を「時代錯誤の妄想」と言い捨てる。
が。命も惜しまぬ沖田の同志が、武装して取り囲むと、急に態度を変えて「引退する」と逃げ出そうとする。
それは本心でなく、その隙に銃を取り出して沖田を狙おうとするのだが……しっかり見抜かれており、近藤は沖田にって倒される。
絶命する時の言葉は「世の中金が全てだ」だった。
うーーむ。(あくまで個人的には)沖田も近藤も、どっちもどっちだな。
沖田の野望は、確かに現実味の薄すぎる妄執に感じるし、同時に、志や夢などにまるきり縁のなさそうな俗物すぎる近藤にも共感は出来ない。
やはりここは、ルパンたちに頑張ってもらおう^^
あ、そういえば、前半で出てきた「アザラシの影」。これの正体は、沖田の同志だった次第。ルパンたちの動向を、彼らなりに見張っていたというわけなのだろう。

近藤の船にすでに潜り込んでいたルパンら四人は、その様子をこっそり見ていた。
黄金大砲を手に入れて、男泣きする沖田たちに、ルパンは「ああいうの見るとトリハダ立つ」とクールなお言葉^^
そんなことはお構いなしに、大砲入手を目論むルパンたちは、二手に分かれて事に当たる。
ルパンと不二子は操縦室に、沖田たちと戦うのが次元と五右エ門の役割になった。
舵取りを任されたルパンに、船乗り風帽子が乗ってるお遊びシーンがあり、これがまた可愛い(うちのレビューはこればっかだな、ホント)

人数では不利だが、実戦経験では圧倒的優位であろう次元と五右エ門。二人の勢いに押されてるのを感じたか、沖田はついに守り神を召還する。
そう、例の大蛸登場!
船が大きく揺れて止まったことに文句を言いに、ルパンの元へ行った不二子だが、窓の外に巨大蛸を発見し、硬直する。
続いてその存在に気づいたルパンは、操縦室に不二子を置いて逃げ…それどころか、不二子を閉じ込めるようにドアを外から閉めてしまうのだった(笑)
それはもちろん、大蛸に慌てたからなのだけれど^^

やはりルパンは、まだ蛸が苦手であるようだ。あの巨大さに驚き、不二子を閉じ込めるほど動転したとも考えられるが、やはりそれだけではないだろう。
なんせ、ネッシーだって見たことのあるルパンなわけだから(笑)大きさだけに慌てたわけでもなさそう。
旧ル2話の頃のように、見ただけでジンマシンが出るほどのアレルギー反応は示さなくなっているものの、後の新ル84「復讐はルパンにまかせろ」でも「血を 見るのが好きな殺し屋とタコは嫌い」と言い切っているように、やはりこの時も、よりによって大嫌いな蛸が、巨大な姿で現れたからこそ、あれだけ動転したの ではないか。

我に返ったルパンがドアを開けると、不二子の抗議が待っていたが、そんなことしている場合でもなく、二人は揃って逃げ出す。
この時、ルパンが「次元ー、大タコー」と言いながら走っている姿が、何となく微笑ましい(ふふ)
「タコがどうしたって?」と尋ねる次元の肩を、タコがちょんちょんと叩くのも、お約束だけどやっぱりおかしい^^
ピストルも効かないとんでもない無敵タコに、ルパンたちは大ピンチ。

そんな中、五右エ門と沖田がついに対峙。お互い、ようやく手合わせをする時がきた、という感じだったか。
弾丸すら見切る五右エ門の着物の肩口を斬るなど、沖田の腕前もなかなかのもの。しかし、打ち合った時に剣の差が出て、沖田は武器を折られてしまう。
五右エ門の圧勝…と思われた時。なんと、巨大蛸が、沖田のピンチを察してか(??)五右エ門に襲い掛かったのだ。
水中に引き込まれ、かなりのピンチ。敵はあまりに巨大で、斬ってもなかなか手ごたえもなさそう。
だが、斬鉄剣を投げつけ、その隙にどうにか絡まる足から逃れると、あとは五右エ門の独壇場。斬って斬って、蛸をやっつける。
水中でも長く息が続き、冷静に戦える五右エ門だからこそ、助かったのだろう。海から顔を出した時、ルパンの安心したような声がイイ。

立会いでは五右エ門に破れ、味方も傷つき、このままでは黄金大砲をルパンに奪われてしまう……沖田は「もはやこれまで」と、腹に巻いていた爆弾で自爆を決意する。
ルパンが銃を向けて阻止しようとするも、次元曰く「完全に狂ってる」とのことで、結局爆発に巻き込まれぬよう、逃げ出すしかなかった。
こんなシリアスシーンでミーハーに騒ぐのもナンなのだが(笑)船から遠ざかろうと、泳いで逃げるルパンたち。次元がクロールなのに対し、ルパンが可愛く犬かきしている。泳法の違いがちょっと楽しい^^
えー。そんなことは目に入ってもいなかったであろう沖田は、大砲に飛び込んで、自ら打ち上げ花火と化す。
新選組の再興の象徴である黄金大砲ごと、海に散った。あまりに時代錯誤な夢を抱いた男の末路に相応しいといえば相応しいか…
その花火を見上げながら「黄金の花火か、儚いねぇ。ドドーン」というルパンの台詞で終わるこのお話。
かなりあっさりとした幕切れなので、いっそう「儚い」感を感じるような気がする。


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