第96話 ルパンのお料理天国


グルメール

かつてBBSでも少し触れたが、この話は子供の頃見た時は、正直全然面白いと感じなかった。
「カッコイイ泥棒のルパン」が見られない回は、どんな話であれ物足りなかったようだ(この頃からルパンスキー^^)。
だが、今見返してみるとなんだか不思議と面白い。
で、この回の脚本家を見てみると金子裕さんだった。やっぱり、金子さんの作品っていいですよねv

それにしても、ある意味ものすごい衝撃作である。
ルパンの脳みそを「食べたい」という人物が登場するのだ。その名はグルメール男爵。
…男爵っていうくらいなのだから、ヨーロッパ(名前の雰囲気からするとフランス系??)の、貴族の家柄なのだろう。それにしたって…
勘違いのグルメを極めていくと、おのずとゲテモノや珍味の追求に走りがちだとは思うが、人間の脳を食べたいだなんて、大昔の中国の王様じゃあるまいしとんでもないことを考える人物である。
人類最大のタブー・カニバリズムを犯そうってんだから。
しかも、生きるか死ぬかの真の極限状況ならともかく、単なる嗜好としての食事のために。

全編がコミカルタッチで描かれており、何だか笑いながら見てしまう話なのだが、冷静に考えれば(考えなくても?)結構コワイ話でもある。
グルメールの覆面料理番たちも、どういう奴らなのだろう。パンダとかまで料理していたし。グルメールの命令があれば、人間だって調理する気なのだから!
グルメールが美食を追及するあまり、人としての道を踏み外しているように、この料理番たちも料理の技を追及するあまり、人としての道を忘れた暗黒コックなのかもしれない(笑)

何はともあれ、夜な夜な怪しい紳士淑女たちを集めてグルメパーティーを催しているグルメールは、ちょっとやそっとの珍しい食材では満足できないようになっていた。
彼が欲したのはルパンの脳みそ。
確かに、人類最高の頭脳の一人であることは間違いないだろうが…どうせ食べるなら最高の頭脳とでも思ったのだろうか(ゲンナリ)

グルメール、こんなに珍味を集められるだけあって相当な財力を持っているのだろう。
彼の宝石コレクションは有名らしく、それを目当てに不二子はメイドとして潜り込んでいた。
ルパンを捕らえてきた者にそのコレクションをやる、というグルメールの言葉に不二子の目が光る(笑)
不二子ちゃんたら、本当に目的のためなら手段を選ばないんだから!
が、不二子はこの回ではルパンを殺そうとか、死んでもいいと思っていたわけではないような気がする。それら関しては後述するが。

そんなコトが企まれているとは知る由もないルパンは、不二子と高級レストランでデートだとウキウキ。彼女の企みもしらないで;;
相棒たちが、あんなに粗末なモノを食べているというのに!
次元は、自ら作った「ベーコン豆」なるシロモノだけを、そして五右エ門はインスタントのカップそばを夕食としていた。わ、侘しい(笑)
だが次元たちの普段の生活ぶりが見られて、非常に貴重なシーン。
次元は拳銃まで出して、楽しみながら料理している様子。
一方、94話でインスタントそばを買いにいく様子が描かれていた五右エ門、やはり海外にいる間はそれを食することが多いようだ。
26話では、日本まで不二子をたくあんと味噌を買いにやったりしていたが、インスタントそばの味を覚え、それの方が楽だから愛用しているのかもしれない(^^)
ピタリ三分間でカップ麺のふたを切り落とす辺り、修行もかねているのか、はたまた几帳面な性格ゆえか。

またこの時、「女なんかと食事したらマズくなる」というようなことを次元は言っているが、これは負け惜しみなのか本心か。次元の気質からすると、信用できない女と、気の張るレストランで高級ディナーと洒落こむのは、あまり気が進むことじゃないのかもしれない。
ベーコン豆だけの夕飯というのも、相当寂しい気もするけれど(笑)
超余談だが、かつてイギリスに旅行した時のこと。名もない定食屋っぽい店でメニューがよくわからないので(笑)、適当に注文したところ、メインの脇に豆とハムっぽいのを炒めたものが添えられて出てきたことがある。
ベーコンでこそなかったが、「ベーコン豆ってこんな味かなぁ」と、食べながら一人ニヤついた覚えがある。


デブルパン

マキシムでデートを楽しむルパン。その日の不二子は、髪をアップにしていつもとは違う雰囲気。
かなり不二子にデレデレしていたルパンだが、さすがに異変を感じると、軽やかな身のこなしで逃げていく。このシーン、カッコイイーッ!(笑)
その時グルメールの覆面コックたちが襲い掛かってきたのだった。
簡単に捕まるルパンではない…はずだったのだが、ひらりと飛んだその真下で、網を張って待ち受ける奴らに捕らえられてしまう。
とどめに不二子に注射(麻酔?)を打たれ、ルパンはグルメールの元へ連れ去られる。

ここで、グルメールがどうやってルパンを食べるつもりなのかが、コミカルタッチで紹介される。
栄養をたっぷり与えて太らせ(!)肉をほぐし、脳にもソフトに、ハードに刺激を与えていくつもりらしい。
肉にフルーツに牛乳にビール、さまざまなものが大量に与えられる。多少の運動をさせられても追いつかないくらいの食料なのだろう。
その上、ハードな刺激とはポカポカ殴られることで、これはかなり可哀想(ルパン贔屓発言)
ソフトな刺激というのが、美女に囲まれてキスというのが何とも笑える。ルパン仕様?

ルパンを捕まえた不二子は、約束通りとしてグルメールの宝石を要求するが、「そんな約束をした覚えはない」とあっさりとシラを切られてしまう。
新ルではしばしばこういう騙され方をしてしまう不二子ちゃん。自業自なわけだけど。
グルメールに銃を向けようとするが、コック団に阻まれる。
そんな不二子をあっさりと離し、宝石を見つけられるものなら見つけてみろ、と言い放つグルメール。
宝石の隠し場所に自信を持っていたのはわかるが、それにしても自分の宝石を狙い、あまつさえ銃を向けた女を簡単に解放するあたり、本当に食べることにしか興味がないだなぁ…としみじみ思ったりする。

何といってもこの回で一番の衝撃シーンは、ルパンがデブ化しているところであろう。
一番最初に見た時は本当に驚いた。ルパンは絶対に痩せてなくちゃイヤーッ!と叫びたいくらいに(笑)
グルメールが食べるために、上記のようにさんざん栄養を取らされたルパンは、無残にデブデブになった体を横たえていた。
そこへルパンを助けにやって来た不二子も、勿論大いに驚く。
結局宝石を見つけられなかった不二子は、もうこんなところにいる意味なんかないと、ルパンを救出に来たのだ。
が、デブルパンは「もうダメだ〜」とデブそのものの声で、億劫そうに答えるだけ。
このシーン、本当にショックだったなぁ(笑)
山田さんのデブルパンの声も、今聞くとつくづく上手い。

ところで、ここで不二子はちゃんとルパンを救いにやって来ている。
そもそもルパンを食べたいというヘンテコなグルメールなどにルパンを引き渡したところで、ルパンがやられるはずはないと信用していたのだろう。
ルパンにちょっとの間だけ捕まってもらい、宝石を丸儲けしようとしただけなのだ。
最初から、グルメールから宝石を受け取ったらその足でルパンと共に逃げるつもりだったと思われる。そうでなくては、いつまでも逃げ出さないルパンを救いにわざわざやって来るはずもないのだから。

が、デブルパンは逃げる気すらなくしていた。
「しっかりしてよぉ〜」と太ってしまったルパンの腹をボカスカ殴りつけるが、効果なし。太ったルパンを抱えてちゃ、さすがの不二子も逃げられないだろう…
そこで不二子は、次元と五右エ門に助けを求めに行く。


パイ投げ

そういえば、とっつあんもグルメールに捕まっていた。ルパンを追っていたドサクサで一緒に冷凍され、こういう状況になってしまったのだ。
とっつあんは、ルパンを食べる前の試食に供される。
ルパンの頭を大きなカラクリめいた機械で割り、脳みそを食べる予定らしい。失敗しないように、とっつあんで練習する気なのだ。
とっつあんが何を言ってもグルメールには通じない。ただ「マズそう」と評するばかり。
とっつあんを同じ人間としてもはや見ることができず、食材としてしか認知してない様子なのが、ユーモラスな見せ方をされているが実はとても怖い。
繰り返しになるが、よくよく考えると本当にブラックな話である。文字にしてしまうといっそうグロくなるので、この辺にしておこう。

髪を剃られるものの、あっさり食われるとっつあんではない。
35話に続いて、なぜだかメスゴリラに惚れられてしまうけれど(笑)、どうにか無事逃げられたようだ。

いよいよルパンの脳みそを食べる日がやって来た。
ルパンはまな板の鯉状態で、太った体の上に、脳みそを取り出す機械をつけられて、料理されるのを待つばかりになっていた。
その頃、不二子はコック姿の次元と五右エ門を連れてグルメールの城へ向かう。今回のルパン救出作戦は、不二子の案らしい。
この辺りにも不二子の愛を感じるような気がするのだが、やはり気のせいだろうか(笑)
ルパンを食べるなんて気が知れない、と次元も五右エ門も不気味そうな顔をしている。そりゃ無理もない。
「俺だったらせいぜい蒸し焼きにして、醤油くらいかけるけどな」と…次元は軽口叩いているが、テキは本当にルパンを活き造りにしようとしているんだからコワイ。

ところで次元と五右エ門、2人揃ってのコック姿は旧ル14話「エメラルドの秘密」以来ではないだろうか。
2人とも、やけに可愛い!特に五右エ門!
すねたように「なぜ拙者が…」とブツブツ言いながら、料理している姿は本当に貴重。
案外手馴れていそうな次元の料理姿もいいv
忍び込んだグルメールの城で、三人はパイ作りに励み、ルパンの救助に備えるのだった。

そうしている間にも、ルパンの頭を割る機械は動き続ける。
そして、とうとうルパンがやられてしまった?!…はずもなく、グルメールの食べた「ルパンの脳みそ」は、ただの味噌だった。
ルパンは太ってしまったわけではなく、デブルパンの変装をしていたのだ。
太った着ぐるみを着て、頭の部分には味噌を仕込んでおいたのだ。
よ、良かった〜!ルパンが太ってしまったわけではなくて!(喜ぶのそっち?笑)

こうまでしてルパンが逃げずにグルメールの元に留まったのは、宝石コレクションの場所を探るためだったのだ。
そして、ルパンはついに見つけた。
グルメールの入れ歯が、宝石だったのだ。場所さえわかればあとは簡単、ルパンは口の中から宝石を引っ張り出してまんまと盗み出す。

その時不二子特製のトリモチ入りピザ風パイが完成した。それを次元たちはパーティー会場に次々と投げ込み、場内は大混乱。
珍しく銃を使わない乱闘シーンだ。
楽しそうにパイを投げる次元とは対照的に、「食べ物を粗末に扱うのは気が引けるが……」と呟いている五右エ門が印象に残る。
やっぱり昔ながらの日本男児v
それに答えて次元は「どうせ不二子の作ったパイなんか食えたもんじゃないから、安心しろ」(笑)。

最後は、グルメールのコック長に代わってルパンのお料理番組風ナレーションとなる。
とっ捕まえたグルメールを指し、こんな悪党は煮ても焼いても食えません、というようなオチなのだが…
もはやグルメールって悪党とかいう問題ではないような気がする。


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送