第103話 狼は天使を見た


ナショナルバンクの宝石

新ル100回放送記念の特別企画の第四弾。
これもまた原案はファンによるもの。それを大和屋竺氏が脚本としてまとめているだけあって一筋縄ではいかず、見れば見るほど好きになる一作だ。
個人的に、子供の頃は「どうして五右ェ門が天使??」と、ちょっと気恥ずかしいような印象を持っていたのだが……その辺の考察というか妄想は追々書いていこうと思う。
また、この話、始終ルパンと次元が行動を共にしており、二人のやり取りがたまらなく美味しくて(笑)、それだけでも十二分に楽しんでしまうミーハーな私なのであった。


さて。
ルパンが今回狙うのは、世界宝石フェアに出品される宝石の数々。
それがロサンジェルスのナショナルバンクの特殊金庫にしまわれている間に、盗み出そうという計画。
予告状を出した形跡はないのだが(銭形の独り言より推測)、銭形はさすがの直感で見事ルパンの狙いを見破っており、早々にナショナルバンクへと到着していた。
ルパンの盗みの趣味嗜好を知り尽くした銭形ならではの冴えた勘といえるだろう。

だが到着早々、警備員の顔を抓り上げるという暴挙に出る銭形。
「ヤツは悪魔のような変装の天才だ! ヤツの面の皮を剥げ、むしりとれ!」と言い、身をもってルパン対策を叩き込んでいるわけだが、冷静に考えると、突然こんなことするなんてとんでもなく非常識な態度。
ルパンのような常識にとらわれない神出鬼没の怪盗を相手にしていると、おのずとそうなってしまうのかも(笑)

そこへ、突然銀行強盗が現れ、周囲はたちまちドンパチで大騒ぎに。
なんでも、ナショナルバンクは銀行強盗の名所になっており、日に6回も起きるのだとか。銭形に顔を抓られ驚いていた警備員も、手荒な銀行強盗に対しては慣れた様子だ。
(ちなみに、この警備員に銭形は「ジェニー警部」と間違えて呼ばれており、12話の『ゼニガメ』、40話の『ジョニガタ』に続いて三度目。まあ今回の場合は、即興でつけられたアダ名かもしれないが、以後106話でも「ドルガタさん」と呼ばれており、呼び間違えられ率たぶんナンバーワンの銭形)

突然出会った銀行強盗にも完全と立ち向かっていく銭形は、ちょっとカッコイイ。後半いいところがないだけに、貴重なシーン。
強盗の車に飛び乗る相変わらずの無茶のせいで、警察側のミサイル発射(街中でミサイルですよ!)に巻き添えを喰らい、吹き上げる水道の水の上でふてくされる。
そして「こんなハードボイルド的やり方は間違っとる! ルパン三世はあくまで生かして逮捕せねばならんのだ!」と言うのだった。

本編全体から考えると、銀行強盗云々のくだりはなくてもいいのでは?と感じたこともあったのだが、この銭形の台詞が、この作品を通して訴えかけて来るモノと通じているように私には思える。
もちろん生かして捕らえるというのは、『ルパン三世』という作品を通じて断固銭形が貫く姿勢ではあるのだが、この後の展開が「戦争のプロ」VS「泥棒のプ ロ」であって、そして五右ェ門の「天使」のくだりがあるわけで……そう思うと結構重要な台詞なのでは、と考えている次第。


そんな銭形の様子を、ルパンはカメラを通じて、銀行の地下から見ていた。「銭形斎とっつあんの水芸でござーい。ア、ホーラ」の名調子が気持ちいい^^
ルパンは今回、特殊金庫を地下から攻略するつもりなのだ。
銀行の金庫真下までの穴掘りが終了したのだろう、あとは決行日を待つばかりと、ルパンと次元はアジトへ戻ってきた。
頑丈そうな鉄扉があり、プールも完備、庭も相当広そうな、豪華なアジトだ。(基本的にルパンのアジトはこうであって欲しいv)
仕事に参加していない五右ェ門は一人で修行中。なんでも、見切りが甘くなってることを気にしているのだとか。
次元が、五右ェ門の腕試しに付き合うことになる。

ここで披露する二丁拳銃姿の次元もレア。
次元のマグナムが立て続けに火を噴き、五右ェ門の頭上に鉄塊を吊り下げるロープを次々と切ってゆく。落ちてきたそれを、五右ェ門は目にも留まらぬ早業で断ち斬る。
斬った鉄の塊が、五右ェ門の「五」の字に並ぶようにするほどの余裕すら見せた。
ルパンですら、一瞬言葉を失うほど、見事な出来。少し間を空けてから、ルパンは大袈裟なくらい褒め称える。
「さーすが五右ェ門、無敵の斬鉄剣! 並みの剣豪と大違い。達人、天才!」として、「現在、過去、未来〜を通じて一番の使い手」と賛辞は続く。
この「現在、過去、未来」はご存知のように渡辺真知子の「迷い道」の一節なのだが(当時流行ってた)、何となく「現在」が「天才」にも聞こえ、山田さんの遊び心なのかと思ってしまうのだけど、これは私の聞き違いかしら。

そんなにルパンに褒められて、まんざらでもなさそうな五右ェ門だったが、木から落ちてきた林檎が頭を直撃する。
落下してくる林檎一つの気配にすら気づかぬ程、油断をしてしまった自分を恥じたのだろう、ついにアジトから出て、一人修行に赴いてしまう。
それがまた、この辺の台詞が実にイイ。この回、好きな台詞がてんこ盛りなので、一つ一つ取り上げていったらきりがないことはわかってるのだけど、やはりここは書いてしまおう(笑)

五右ェ門「剣の乱れは心の乱れ。心眼が開かれるまで、星を友とし草を枕とする所存」
ルパン「ザ・ベストで気取りやがって」
次元「生憎の曇り空じゃ、友とする星も見えねえな」

なんかツボー!!(笑)
結局は、勝手にしろと、ルパンは次元と二人でナショナルバンクへ向かうのだった。


その途中、車内電話(?)で不二子からの連絡を受けるルパン。
ルパンたちの計画を知っているが、今回行動は共にしない様子の不二子。
成功したら飲む祝いのシャンパンを用意しておいてくれよと言うルパンに、不二子は今日はアラン・ドロンとデートなの、とつれない返事をする。
不二子がアラン・ドロンとデートするのは、23話以来。相変わらず不定期に交際が続いているようだ。不二子とアラン・ドロンのデート話の脚本は、両方大和屋氏であることもポイントか。

アラン・ドロンを持ち出されたルパン。「こっちはベルモンドだ!」と切り返す。
これはご承知の通り山田康夫さんの洋画吹き替えの持ち役が、ジャン・ポール・ベルモンドであるところから来ており、脚本にこの台詞はなかったそうなので、山田さんのアドリブなのだろう。
元の台詞は何だったのかわからないが、当時いい男の代表格のアラン・ドロンに敵対心むき出しのルパン。不二子は、仕事前のルパンを焚きつけてやる気を出させようと、わざとアランとのデートを教えたのかな、と妄想したくなってしまう。
……が、後に判明するように、不二子はハリーと手を組んでおり、ルパンを奮起させてもあまり意味がないようにも思えるが、ハリーとやり合うのが彼女にはわかっていたから、頑張ってもらって怪我して欲しくなったのかもしれない。

そのハリー・ザトラーの名前を、不二子は敢えてこの時点でルパンに告げている。
ハリーがルパンらと同じく宝石フェアのお宝を狙っているとの噂がある、と。やはり彼女なりに、ルパンの身を案じ、物騒な男ハリーとの対決の前にヒントを出しておいたのかも。
ルパンはハリーを知らなかったようだが、次元はさすがに彼を知っていた。不二子との通信を切った後、ルパンは次元にハリーについて尋ねる。

かつて「マシンガンのハリー」と異名を取ったガンマンだった男。ベトナム戦争に従軍した後は、すっかり銃とは縁を切って、農園を経営しているという。
不二子には(知らないくせに)「どうせザコに決まってる!」と言い切ったルパンだが、次元がその名を知っていたことで多少気になったのか、ハリーの農園までわざわざ車を飛ばすことにするのだった。

余談だが。
ここの会話をしている時、次元が吸っていた煙草を、途中でルパンが取って一口吸うのが、何とも相棒チックで大好きなシーン(^^)
ルパンはそれを車内の灰皿にきちんと捨てているのに対し、ハリー訪問後再び煙草を吸った次元は、川へ煙草を捨ててる。灰皿あるのに(笑)!やっぱり二人を比べた時、ルパンの方が三代目の坊ちゃんだったからマナーが良いのかなぁとか妄想すると、なかなかオツだったり。
さらに余談をすると、この時期、茶色い煙草を吸ってるのが目立つ時期である(92、94、101、当103、104、111、112話等。ちなみに茶色い 煙草初登場は、絵柄上葉巻との区別が難しいので断定はしにくいが、52話でルパンが吸った時。銘柄は判明していないので、自由にあれこれ推測するも楽しい かと思う)


天使

ああ、余談が長くてすみません。好きな話はちっとも進まない(笑)。
さてさて、ハリーの農場までのかなり長めのドライブシーン、ここもすごく良い!BGMの「ルパン三世のテーマ’80」もカッコイイし。
そうしてようやく着いた農園で二人が見たものは、すっかり「耄碌」したハリー・ザトラーの姿であった。
ルパンの直球の質問「近いうちロスのナショナルバンクへ行く用事ある?」というものにも、田舎の老人然と「ない」と答え、「日に6回も銀行強盗があって危ない」と脅すと、朴訥に怖がって見せる。
その隙に、次元が銃を向けて彼を試すが、ハリーは無反応だった。いや、無反応を装った。
次元の、そしてハリーの様子からも、かなり殺気をこめての銃口だったと思われるが、ハリーはどうにか堪えた。
目利きの二人が「耄碌してしまった」と結論付ける程に、ハリーの演技は完璧だった。(視聴者として見ると、ハリーが汗かいてるので『何かある』と感じてしまうけど^^;)

10年前マシンガンのハリーとして名をはせていた彼、そしてメリーという10歳程度の娘の父親である彼、「耄碌した」で済まされるような老いた年なのだろ うか?と、少し不思議だったのだが、ベトナム戦争に従軍していた経歴の持ち主であれば、戦地で辛い経験をして人柄が変わったり、心を病むことも充分考えら れると、ルパンたちも納得したのだろう。
また、仮にこんな状態の男であるなら、ナショナルバンクを狙っていたところで、警戒するに値しないと踏んだのだ。
安心して、二人はナショナルバンクへと向かうのだった。


一方五右ェ門は、案外近くで修行を続けていた。
襲い掛かろうと忍び寄る毒蛇に「哀れな、何故殺気を慕う」と呟き、大きく跳んで蛇を避けた。と、その弾みで崖が崩れ、落下してしまう五右ェ門。
しかしさすがに忍者の修行済み。落下中でも体勢を整え、無事に着地する。
着いたそこには、墓があった。墓銘碑を読むと、スーザン・H・ザトラー。
五右ェ門は知る由もなかったが、ハリーの妻の墓なのであった。

そこへ、ハリーとスーザンの娘メリーが、愛犬ジョンと共に歌いながら墓参りにやって来る。
よっぽど用心深い犬なのか、ジョンは五右ェ門に襲い掛かった。
五右ェ門は、慌てず騒がず、林檎を犬の口に突っ込んで難を逃れる。不覚を取った、あの林檎なのだろうか。懐に入れて、己への戒めにでもしていたのかもしれない。
この回、五右ェ門はよく動物に襲い掛かられているが、「殺気を慕う」と自ら言っているように、五右ェ門がどこか殺気立っていたためなのだろう。

しかし、盲目で無邪気なメリーは、そんな五右ェ門を天使だと言い出す。
ずいぶん唐突ですね!?とビックリするようなメリーの発言なのだが、そう思い込んだ理由は、ジョンを静かにさせてしまったことと(日頃からよっぽど他人に 心を許さない犬なんだうな^^;)、亡き母が「いつか天使が迎えに来て幸せの国へ連れて行ってくれる」と言っていたから、らしい。
「天使はそなただ。あの歌声」等、少女と五右ェ門の短いやり取りに、心が和む。五右ェ門がこんな台詞をさらりと言ってのけることに少々驚きつつ。盲目で無邪気な少女に対しては、五右ェ門も素直に自分の思いを口にすることができるのか。
昔は、ちょっと…いやかなり気恥ずかしいシーンだったんだけど。私も少しは大人になったから?(笑)

「天使」も自分と同じように目が見えないと思い込み、彼女は自分の打ち明け話をする。
ごく近いうち、父に大金が入り、ロスの大きな病院で目の手術が受けられるのだと。成功すれば、彼女の目は光を取り戻す。

さらに無邪気に五右ェ門に触れはじめるメリー。
彼の着物の袂を、天使が羽根をたたんでいるところだと言い、ますます彼を天使扱いする。
それ以上一緒にいては少女の夢を壊しそうでまずいと思ったのか、飛んできた鳥(猛禽類?)の気配に何か感じたのか、五右ェ門は唐突にメリーの元から飛びのいて去る。
その直後、鳥の羽が一枚、メリーのところへ偶然、落ちてきた。その羽根で、メリーは彼が天使だったのだといっそう信じ込んでしまう。
名前を聞こうと五右ェ門の後を追うが、完全に気配を消した彼のことを、愛犬ジョンですら、もう見つけることは出来なかった。

夜になっても、メリーは「天使の羽根」を大事に握り締めたまま、父にその話をしていたが、やがて眠りについた。
娘の部屋を出て、一人になったハリーの元に、不二子からの連絡が入るのだった。


不二子は、実はハリーと手を組んでいた。ルパンの同行やナショナルバンクの情報をハリーに提供していたのだろう。
自分は直接手を汚さないのに、しっかり分け前はフィフティフィフティで要求しているのが、彼女らしいといえるかも?(^^;
わざわざハリーと手を組まなくても、ルパンと一緒に仕事すればいいのに…と思うのだが、ルパンと盗めば分け前は三分の一、ハリーとなら半分ずつに出来ると計算した。そう考えるのが妥当、と言うか、辛うじて彼女の行動に辻褄を合わせることができるのではないか。
ここで気になるのは、「約束して、殺し合いはダメよ」とハリーに釘を刺している事。
ハリーが根っからの兵士であり、ルパンたちとぶつかれば派手な戦いになることを予測していたらしい。
だったらハリーと組まないでルパンと……と、またまた思ってしまうのだけれど(笑)、個人的趣味からすれば、ルパンに「宝石を盗んできて〜」とおねだりするだけの不二子よりは、あれこれ策をめぐらせて一番自分が得しようとする不二子の方が好きだ。
それでいて、ルパンの命に関わるような事態にはなって欲しくないから、「殺し合いはダメ」と釘を刺しているのかと妄想すると、欲張りだけどやっぱり可愛い!と思わずにいられない。

不二子が半分の分け前を要求した時点で、ハリーは怒りに任せて通信機を叩き壊す。
なかなか不二子に応答しなかったことといい、彼女と組むのはハリーの本意ではなかったのだろう。すべては娘のために、気に食わない女とも手を組み、捨てたはずの銃を再び手にしたのだ。

耄碌した老人のようだった顔を覆っていた髭をそったら、そこには精悍で鋭い目をした兵士が居た。
身づくろいの仕方も、盗みではなく、まるで戦場に赴くかのような重装備。
そして呟く。「天使なんかいないんだぞ、メリー」と。彼は戦場で、そのことをイヤという程思い知ったのだ、と。
それでも、娘のためなら再び「戦場」に立とうと、夜、ナショナルバンクへ向けて車を走らせた。彼の心境を思うと無性に辛い。


戦争のプロvs泥棒のプロ

一方その頃の銭形は、警備状況をチェックしていた。
声紋チェック、電子ロック、コンピューターセンサー、さらにはタイムロックと、四重に守られた金庫室だったが、銭形に言わせると「子供騙し」なのだとか。
そして突然、説明していた頭取の顔をつねりあげる。負けじと頭取も銭形の顔をひん剥こうとする。
ルパンではないとハタと気づき、手を離す二人のタイミングがちょっとおかしい^^

正面からの警備状況を聞き終えると、ふと地下に思い当たる銭形。
金庫自体が特殊金属で出来ている上、コンクリートで固めていると説明されるが、「地下だ!」と飛び出していく。大正解。さすが長年の付き合い。
「ルパン三世は並みの泥棒とは違うんですぞ」という台詞も嬉しい^^←ルパンスキー

まさにその時、ルパンは特殊金属が氷点下100℃の液体水素に弱いことを見抜き、それで穴を開けつつあったのだ。
さらに次元がドリルで穴を広げていく。
そこへ銭形が、ルパンの名を呼びながらやって来る。嗚呼、銭形警部ったらどこまで真っ直ぐなお方なの(笑)
黙って近づいて隙を突いて逮捕しようとは思わないのか。はたまた、真正面からぶつかっても逮捕できるとの自信ゆえなのか(本気を出せば実際可能なのは、57話や97話で証明済みだが)。

しかしルパンのほうも銭形が現れることは予測していたようで、まるで銭形のために用意してあったかのような丸い穴の二つ開いた壁へとおびき寄せる。
穴から手錠を差し出してきた銭形から、あっさりそれを奪い、逆に手錠で拘束してしまう。

邪魔者を片付け、次元が開けた穴から金庫室に飛び込むルパン(「よくやった、次元!」の台詞も何気にツボ^^)
金庫一杯につまったまばゆい宝石を見て、ルパンは一言、「しびれるね、この一瞬」。
いかにもルパンらしい台詞。危険や面倒、難関を乗り越え、お宝と対面するこの一瞬のために、ルパンは常に挑戦を続けているのだろう、と思わせてくれる。
嬉しそうにカバンに宝石を詰め込む二人の様子がこれまたイイ! お尻がぶつかっても、楽しそうに笑い合う様子がさらにイイ!!


しかし、そこにハリーが乗り込んできた。突然、バズーカ砲をぶっ放す派手な登場の仕方だ。きっと金庫室へ入ってくるまでも、武器にモノを言わせた力尽くの手段を取ったに違いない。
すかさず次元はハリーに応戦するが、マグナムが効かない。「くそー、当たらねえ」と僅かに動揺してる(?)次元に対し、「見えねえのかよ、防弾ガラスだよ」と、まだ冷静なルパン。
ハリーは自分の前に防弾ガラスの盾状のものを取り付けて、バズーカを撃ちまくってきているのだった。
「戦争でもやらかす気か?」とルパンが言う程、問答無用の荒々しさ。当然、二人は逃げ出した。ハリーはそれを冷徹に追う。

地下に銭形を放置したまま(笑)、ビルの屋上まで上がり、ヘリで脱出したものの、ハリーもすぐに追跡してくる。
見るからに軍用ヘリっぽいハリーのヘリコプターと、一見普通そうなルパンのヘリコプター。はじめハリーから撃ちまくられてヒヤリとするのだが、ルパンの乗ってるヘリも「普通」のはずがなく、操縦する次元は巧みに後ろへ回りこんで、攻撃し返した。
ハリーのヘリを撃墜し、「ザマアミロってんだ」と得意そうな次元。
泥棒でもあるけれど、やはりガンマンな次元としては、如何なる撃ち合いだろうとも、負けるなどプライドが許さなかったのだろう。

ルパンは「よくやったよ、兵隊さん」と、ダイヤを一粒地上へ投げてやる。
泥棒の流儀も知らない男が、泥棒のプロである彼らにここまで迫ったことに皮肉な敬意を表しているのか、はたまたジャンル違いの無粋な「兵隊さん」にわざと勝ちを誇示したものか。

しかし、ハリーはダイヤ一粒になど目もくれず、準備してあった自分の武器の元へと走っていく。
次元が言っていたように、ルパンたちはいつのまにかハリーによって意図的に砂漠へ追い込まれていたのであった。そこがハリーが選んだ戦場だったのだ。
飛び去ろうとするルパンたちのヘリに撃ちこまれたのは、「レッドアイ」。次元の説明によると「地対空ミサイル」なんだとか。
本当に、たかだか宝石の奪い合いに出してくるような武器じゃない。

墜落するヘリからパラシュートで脱出する二人へ、遠慮なくハリーの弾丸が襲い掛かる。
ジタバタして慌ててるルパンに比べ、「パラシュートを切れ!」と冷静な次元。マグナムが効かずに焦っていた時と今度は立場が逆になっているのが面白い。
以下、ハリーとの戦いの最中の二人のやり取り、すべてがツボで大好きなシーンと台詞のオンパレードだ。相棒スキー必見^^

物陰に隠れ撃ち合いながら、次元は「見くびったのが間違いだった。ヤツは戦争のプロだった」と、悔やむ。
しかしルパンは「戦争のプロがなんだ。こっちは泥棒のプロでしょ」と返す。が、それは次元には「負け惜しみ」に感じられたようだ。
私としては負け惜しみではなく、この頃からルパンは手持ちのアイテムで、なんとか逆転できないかと、チャンスを伺っていたのではないかと思うのだが…これはルパンスキーの贔屓目?(笑)
あくまで力尽くで、二人を殺してでも宝石を手に入れようと、バズーカ砲をぶっ放してくるハリー(でもそれは愛娘のためなのだから切ないといえば切なく、ハリーを憎めない;)。
二人はなすすべもなく吹き飛ばされ、次元は足を痛めてしまう。
一度砂に埋まってしまった時、顔を出したルパンが「じ、次元?」と相棒を呼ぶのだが、この時の声の感じも激しくツボ!←こればっかり(笑)

次元を助けつつ、逃げる二人に、容赦なくハリーはバズーカで追い討ちをかける。
再び物陰に隠れ、座り込みながらハンカチを持っていないかと尋ねる次元。ルパンは「傷は浅いぞ」なんて励ますのだが、次元は白旗として白いハンカチを探していたのだ。
次元が持っていたハンカチは、縞模様がついているから使えないのだ(笑)。ルパンのハンカチもよりによって同じく縞模様。二人とも、パンツも縞々が多いし(次元なんかシマシマのブリーフはいてたこともあったし!/60話)、縞模様が好きなんだろうか(笑)。
白旗を揚げる代わりに、次元は宝石の入ったカバンをハリーに渡して降伏しようと言い出す。
当然、ルパンはそれを拒否する。
言わずもがなだが、ルパンが宝石に執着しているわけではない。だが、「しびれる一瞬」を味わって手に入れたばかりの獲物を、己の意に反して、しかも単なる武力の差で奪われるなど、ルパンの誇りが許さない。
愛娘メリーのために目の手術代がどうしても必要なのだと、もしもルパンが事情を知っていれば対応は変わっていたかもしれないが、この時点でハリーは単なる野暮な戦争屋が泥棒のテリトリーに侵入してきたのだとしか思えなかったはずだから、この意地の張り方もやむを得ない。

しかし武力の差は圧倒的で、再び吹き飛ばされ、追いつめられていくルパンと次元。
その時、ルパンが「わかった!」と声をあげる。ハリーが使うだろう最後の武器を、見つけたのだ。やっぱりルパンは、どんな時も諦めたりしないのだ(燃え&萌え・笑)
どうして見つけたかと言うと、腕時計型の金属探知機を持っていたから。それで、左30°の物陰に鉄の塊があることがわかったのだ。
……金属探知機なんか持ってて、新ルお得意のご都合主義?と思っていたのだが、考えてみればルパンは地下を掘り進んで特殊金属でできた金庫を探していたのだから、持っていてもこの場合それほど不思議ではない。
むしろ、泥棒としてのアイテムを使ってそれを見つけ出し、さらには敵の武器でやられたようにやり返してやろうという、いかにも彼らしい手段なのではないだろうか。


切り札の戦車を見つけられたことをまだ知らないハリーは、ルパンたちへ向けて、再びバズーカを発射しようとする。
と、その瞬間、天使が舞い降りた。(書いててちょっぴり恥ずかしい・笑)
それは、五右ェ門だった。ハリーの目から見た五右ェ門は、メリーが「見た」のと同じく、袂の羽根を広げて舞い降り、キラキラと輝いていた。
そして、ハリーの放ったバズーカ弾を、いとも簡単に一刀両断してしまうのだった。

慌てるハリー。それも当然だろう。自分の武器、圧倒的な破壊力が、まるで効かないのだから。
だからこそ、人間離れした剣技を見せた五右ェ門が「懲らしめにやってきた天使」に見えたのだろう。
いや、現れた瞬間からハリーは五右ェ門を天使として見ていたのだから、理由はそれだけではないはずだ。

ここからはかなり個人的な妄想なのだが……その時の五右ェ門が、純粋に雑念なく、ルパンと次元を守るために剣をふるおうしていた事と関係があるのかもしれない。
五右ェ門自身、毒蛇が寄って来たり、犬に襲い掛かられたりするほど、自らの出す殺気を抑え切れなかったり、さまざまな雑念に悩んでいたようだが、(たぶん)唐突にルパンたちがピンチの場面に遭遇して、考えている間もなく無心で助けに降り立ち、剣をふるったのだろう。
また彼は、ただ己の腕と、一本の日本刀だけを頼りに、強力な破壊力を持つバズーカに立ち向かっていったのだ。
そんな五右ェ門の姿が、かつては身ひとつ、得意のマシンガンだけで戦う「ガンマン」であったハリーには、「天使」と見えた。
娘のためと苦悩しつつも、大量の兵器に身を固め、力にモノを言わせて相手から目的物を奪取する――それは、隠居するほどに嫌悪していたはずの戦争屋そのも のだ。すっかりそうやって戦うことしかできなくなっている自分に、ハリーは気づいてしまったのではないだろうか。五右ェ門の無心の戦いっぷり、己の腕だけ を頼りに戦うその姿に、失ったものを見たのかもしれない。
そして冒頭の銭形の台詞「ハードボイルド的やり方は間違っとる」というのも、単なる武力だけで押しまくるやり方への批判に通じているのではないか。

等等、この辺は妄想がいろいろ沸いてきて、きっと見る人それぞれに感じ方が違うところだろう。ぜひとも楽しんでいただきたい。


一番のオイシイ場面に現れて、カッコイイところを持っていかれたルパンは、五右ェ門登場を喜ばずに(笑)、「いいところに出てくんだよな、五右ェ門は!」と口を尖らせる。(可愛い〜^^)
すかさずルパンは、発見したハリーの戦車を奪い、一方「天使」に動揺したハリーもまだ戦うことを止めず、手榴弾で迎え撃とうとする。
が、足を取られ転んでしまうハリー。辛うじて、ルパンに投げそこなった手榴弾を自分から離れたところへ放り投げたが……その後作中にハリーの姿が出てこないので、どうなったのか不明だが、さすがに死んではいないと思う。というか、メリーのためにそう思いたい。


ルパンと五右ェ門がお互いの話をし合って、ハリーとメリーの関係そして事情がわかったのだろう。
結局ルパンは宝石をすべてお金に変え、メリーの手術代にと渡していた。粋だなぁ^^
手術の成功率は100%だそうで、ルパンが言うように万々歳。
のはずなのだけど。五右ェ門の姿が見えない。

彼は、病院内でメリーの手術が無事終わるのを待とうとしていた。
いまだに「天使の羽根」を握り締めて手術室へ入っていくメリーから、彼女にはまだ見えないというのに身を隠すような仕草をする五右ェ門。
待合室で、じわりじわりと彼の苦悩が高まっていく。彼は、目が見えるようになったメリーに再び会おうとしていたのだろうか?会いたい、せめて手術の成功を見届けたいとは思っていたはずだ。
しかし……もしも会えば声で彼が「天使」だと気づかれ、きっとメリーの夢を壊すことになる。見えるようになったメリーの目には、一体自分はどんな風に映るのか。
と、様々な物思いが、きっと五右ェ門の中にあったことだろう。
ふと苦笑いらしきものを漏らして席を立ち、手術終了を待たずに五右ェ門は病院から出て行った。

そして、再びルパンと次元の元からも去っていく。
「天使を探しに行く」と言い残して。
ルパンが言う通り、「少女マンガじゃあるまいし」のような状況だが、五右ェ門としては、本気で本物の天使を探しに行った訳ではなくて、メリーの前に(自分 がたとえどう見えようと)堂々と立てるよう、そのために己をさらに鍛えようとでも思っていたのかなぁ、などと愚考するのだが、これはあまりにも蛇足の感 想。
再び去っていく五右ェ門を、「勝手にしろ〜」とルパンと次元と共に見送り、この作品の余韻に浸っているのがきっと一番良い。


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