第152話 次元と帽子と拳銃と


帽子なしでは拳銃を撃てなかった男

某雑学番組のせいで、やたらと有名になってしまってるエピソード。
早撃ち0.3秒のプロフェッショナルであり、世界一のスナイパーである次元大介が、あのトレードマークの帽子がなければ、拳銃がロクに撃てなくなるという…かなり衝撃回なのだから、知名度が高くなるのは当然といえようか。
個人的な感想からいえば、この話は「あーあーあーやっちゃったよ」としか思えず、作中の次元のトホホっぷりは、涙なしには見られない(苦)
笑えるトホホと笑えないトホホがあると思うのだけれど、この話は“私にとって”明らかに後者である。

次元がいつもかぶっている帽子に秘密があった、あの帽子は次元の命とも言える物だった…という話の切り口自体は、面白いと思う。
だけど、あんまりじゃないか、あの撃てなさ加減は。あの情けなさは(涙)
いくらなんでもそんなに命中しないはずはないだろってほど、帽子のない次元の銃の腕前は、素人以下に成り下がってしまっている。
ピンチを盛り上げるためには、あれくらい落差があった方が、「わかりやすかった」のかもしれない。
でも、個人的にはこんな次元、イヤだ。
帽子なしでは撃てない(命中しない)という設定そのものが私はあまり好きではないけれど、それはそれでありだと考えたとしても、もう少しまともな描き方は出来なかったのだろうかと思う。
「本気で命を狙いあうプロ同士の戦いにおいては」「苦戦を強いられる」くらいの命中率低下だった方が、戦いのシーンの燃え度は高かったのではないか。
いくらなんでも、真正面の至近距離で何発撃ってもかすりもしない、なんて……偶然だってもう少し狙った近くに弾が飛びそうなもんだと、ハラハラするどころか私は妙に冷めてしまうのだった。

ただ、皆様はすでにご承知のことと思うが、一応念のため書いておくと、「帽子がなくては拳銃が撃てない」という設定は、この回だけのものである。
実際、同じ新ルシリーズにおいても、34話、75話、81話等で、帽子なしの状態で立派に撃って戦っていたり、目を閉じたまま命中させたりというシーンがちゃんと存在していることを、野暮は承知で証拠として挙げておくことにしましょう(笑)


さてさて。
世界の名ハスラーであり、その実殺し屋という裏の顔を持つミネソタ・ファッツ、彼が今回次元の命を付けねらう男だ。
彼は、ドン・ハゲロという男に雇われており、何やら目的があって世界有数の拳銃の名手らを次々に倒している様子。
ドン・ハゲロに呼び出されたファッツは、次に狙うべき男として次元の写真を渡され、報酬は30万ドルを約束される。

その頃の次元はといえば、アジトでのんびりお洗濯。大事な帽子をひとつひとつ大事そうに手洗い中だった。
拘るところには、マメなのね〜とも思うが、本当にマメな人だったら一気に洗濯しなくてはならないほど汚れた帽子をためたりしない(笑)。やっぱり次元は、私生活ルーズなんだろうなと感じるのはこんな時だ。
珍しく、ジャケットじゃなくてベスト着用しているという点も見どころか。
とはいえ、私はこの回の絵柄が非常に苦手なので(特にルパンと不二子の顔;;)、もっと好きな絵柄でベスト姿の次元が見てみたかったなぁと思う。

アジト内では、五右ェ門が「西洋遊戯」トランプ(しかもやっているのはババヌキらしい!)に大ハマリ中で、ルパン相手に真剣勝負を繰り広げていた。
洗濯する次元の方へよそ見していたルパンにせっつき勝負に戻らせる五右ェ門。それに答えるルパンの「はいはい」という言い方が、いかにも「仕方ないなぁ」と言わんばかりで地味ながらツボ^^
まんまとルパンにババを引かせた五右ェ門は、「やーい、ババ行った!あははーあははははー」とかなりすっ飛んだご機嫌っぷり。よっぽどこの西洋遊戯がお気に召したのだろう。
世界一の拳銃の名手と世界一の剣の達人が、こんな風に過ごしていると、ルパンでなくとも平和だなと呟いてしまう。

が、その平和は当然長くは続かない。
次元の大事な帽子が、すべて焼かれてしまったのだった。
この時の次元の動揺はすごい。「大変だーー!」と叫んでルパンを呼んだかと思うと、濃硫酸で焼けて使い物にならなくなった帽子の残骸の前でひどく落胆。
「くっそぅ、俺の帽子が……帽子が……」と、二度の繰り返しが妙に切ない。
「ひどい悪戯」と言った五右ェ門に対しては、「悪戯?違う!俺の命を狙っているやつがいるんだ」と感情を昂ぶらせてみたりする。
直後にはもう「なんでもねぇ」と平静を装った(でも暗い)トーンになるのだが、肩を落としてアジト内に戻るその背中の煤けっぷりは、ただ事じゃないことを露骨に示している。
ちなみに、次元の帽子の秘密を知っていたのはルパンだけで、この時点では五右ェ門は何も知らなかったらしい。
この辺が、仲間になってからの長さや付き合いの深さの違い、だろうか。
(個人的には、次元がルパンにだけは秘密を打ち明けたというよりは、だいぶ以前に鋭いルパンが勝手に気づいてしまったのでは…という妄想をしてみる。モチロンこの妄想もこの回限り。笑)

自室の箪笥を覗いてみても、やはり帽子はもうひとつも残っていなかった。…だから一気に洗濯なんかしなきゃいいのに;
その時部屋に入って来たルパンに、銃を向けてしまうほど、ビクついてる次元。誰かが殺しにやって来たのかと思ったらしい。旧ル13話のルパン並みにピリピリと警戒しまくっている。
この余裕のなさも、なんだか切ない(旧ル13話のルパンのピリピリ具合は好きなのに、なぜだろう)
挙句の果てには、美しい空を見て「こんな空見られるのも、最後かもしれねぇ」などと、率直な弱音を吐く始末。
この回の次元は、本当に「帽子が命綱」だったんだと、しみじみ思い知らされる。
……またもや個人的意見で申し訳ないのだが、やっぱりこの回の次元は「あの帽子がなくちゃ何も出来ない。自信に満ちた態度も余裕も、すべては帽子“だけ” が支えていたのだ」というように見えてしまって、どうにも情けない。後半、土壇場でようやく死ぬ気で立ち向かう心構えをするけれど、この前半の動揺っぷり が…。
大事な帽子以外にだって、長年数多くの修羅場をかいくぐって生き抜いてきた男の度胸や経験や知恵だってあるだろう!と、言ってやりたくなる。

こんな相棒見てしまったら、ルパンだっていても立ってもいられないだろう。
実際、ファッツからかかってきた次元への電話を取ったルパンは、次元の代わりにその挑戦を受けるため、ロイヤル・ホテルへと出向くのである。


ビリヤード銃

電話では、「次元大介を殺しに来た男」としか名乗らなかったファッツ。
わざわざやって来たルパンに、相変わらず名乗りもせずにビリヤードを続けているが、その姿を見てルパンは彼が名ハスラーのミネソタ・ファッツだと気づく。ビリヤード界では有名人らしい。
裏では殺し屋も営んでいる彼、次のターゲットは次元なわけで、当然帽子を焼いたのもこの人だ。
ファッツは知っていたのだ、次元が帽子なしでは拳銃が撃てなくなることを。
次元が銃を撃つ時、帽子のつば先で狙いを定めているということを。

なぜその秘密を知ったかというと…情報源はナント次元本!!
「次元百科」「次元大介のすべて」「次元アズナンバーワン」という本が、出版されていたらしいのだ。それを読み研究することで、ファッツは次元の弱点を見抜いたというわけ。
ここで気になるのは、なんと言ってもこの3冊の本だろう。ものすごく読んでみたい。
世界の名ガンマン特集とかに載っているわけじゃなく、次元個人を取り上げた(らしい)本が三冊も。すごすぎる。
見たところハードカバーのようで、ちゃんとした装丁の本だ。一般本?それとも、どこかのガンマンマニア、特に次元マニアによる自費出版?ホントに気になる〜(笑)

まあ、名残惜しいけど本のことはこの辺にしておくことにして。
ルパンは「そこまで知られてんならしょうがない。抜け!」と、ファッツと戦闘モードに。次元の秘密を知ってる者は生かしちゃおけないって感じなのかしら(なんか違うか)
しかし、ファッツはルパンを「素人」呼ばわりして、戦おうとしない。完全になめきった態度をとって、見下してみせるのだ。
確かにルパンは「泥棒」が本職ではあるけれど、ワルサーP−38を抜かしたら「ナンバ〜ワン♪」なわけで(笑)、少なくとも帽子のない次元よりはずっと手強いと思うのだが。
とはいうものの、ルパンはこの後、なすすべもなくファッツに撃退されてしまう。
彼の、「ビリヤード銃」((C)ミネソタ・ファッツ)によって。

それは、発射された弾が壁を幾度もはね返り、狙ったところに飛んでいくというとんでもない銃だった。まさにビリヤード。
最初まるきり狙いが逸れているように見えた弾丸が、壁を乱反射して迫り、ついにはホテルの外まで追いかけて来、プールに逃げ込んだルパンの頭部に命中する(!)
どういう仕組みなのか…。なんだかいろいろとスゴイ。
彼が発明したというくらいなのだから、諸々特殊な手法がとられているのだろう。
が、少し気になるのは、ルパンの頭に当たった弾。特に怪我を負わせることなかったようだが、これは「素人」のルパンだから手加減して怪我をしない弾を使ってやったということなのか、それともビリヤード銃の弾は跳ね返る特性上、柔らかいものなのか?
…たぶん、前者なんだろう。実際、後半の次元との対決では、次元の肩をちゃんと撃っているように見えるし。
ルパンはとことんなめられた、といえるかもしれない(く、悔しい←ルパンスキーの呟き)

その時、プールサイドで待機していた五右ェ門は、ルパンが撃たれたのを見て、すぐにファッツの部屋へ飛んでいく。
だがそこにファッツの姿はなく、「次元大介にヨロシク!ミネソタファッツ」という置手紙があるだけだった。素早い。
五右ェ門は、怒りに任せてビリヤード台ごと手紙を叩き斬る。彼が真っ二つにしたビリヤード台は、新ルで2つめだろうか(一度目は24話


次元もただぼさっと落ち込んでいたわけでは、当然ない。
涙ぐましい、初心者のような拳銃のお稽古をしていたのだ(ホントに涙)
大した距離でもないのに、的の缶にはただの一発もかすりもしない。天下の名ガンマン次元大介ともあろうものが!!
絶望した次元は、「墓石にはこう刻んでくれ。『帽子なしでは拳銃が撃てなかった男、ここに眠る』ってな」と呟く。
ホントにその通り。と、突込みまで冷たくなってしまう(だって当たらなすぎなんだもの;)
だが仲間であるルパンも五右ェ門も、次元を叱咤激励する。「バカヤロー、つまらないこと言うな!」とルパンが叱り、五右ェ門は「弱点を克服してこそ真のプロ」と言い聞かせる。

帽子くらい、また買えばいいじゃんと誰もが当然思うのだが、あいにくそうはいかない。なんでも、次元の帽子には事細かにコダワリがありすぎて、今までのと同じ帽子をすぐに用意することは出来ないのだった。
そのコダワリとは、サイズ58.25センチ、つばの長さ8.6センチ、厚さ1.5ミリ、材質はゾウアザラシのおなかの皮で、しかも牡4歳のものじゃなくてはならない。
……そんなにこだわっているのなら、これほどまでに切実に必要とするのなら、まとめて洗濯なんかしないでおくれ(またもや涙)

だからといってあきらめるわけにもいかず、お次は別の帽子で挑戦ということに。
アジトにあったのか、買って来たのか、さまざまな帽子を次元にかぶせて撃たせてみる(どの帽子もわりと似合って可愛い。さすが被り物王次元)
が、どれも結果はさっぱりだ。
帽子なしの次元がこんなにどうしようもない状況というだけでも大ピンチなのに、相手はヘンテコなビリヤード銃の使い手なのだ。ホント、頭の痛いところ。

そこへ不二子が車で登場。すごい儲け話があるから、次元の力を貸して欲しいと言ってきたのだ。
不二子がいつもと違う帽子を被っていた次元に気づき、「どうしたの?」と笑うと、ナント次元は赤面してルパンの後ろにこそこそと姿を隠してしまうのだ。
ああ、帽子がなくて自信喪失していると、ここまで弱腰になってしまうものなのか。
赤面次元を素直に可愛いvと見ていればいいシーンなのかもしれないけど、私はここも「あらら…」と拍子抜けしてしまう。

その時、車のトランクから、銭形警部が登場。
「不二子をマークすれば、必ず貴様に接触する。ズバリ推理が的中したな!」と大満足のご様子。
これはわりと銭形定番の推理方法で、すぐに思い出せるところでは39話126話でも不二子をマークしてルパンを捕らえようとしていた。確かに、かなり確率は高いといえよう。

しかしその時のルパンたちは、銭形の相手をしている場合ではない。
ルパンは「いい帽子かぶってんじゃん」とハマっ子風に声をかけ、銭形の帽子を強引に借りる。銭形いわく「高い」帽子なんだとか。ルパンに帽子を褒められた時、一瞬まんざらでもない顔をするので、自慢の帽子なのかも^^
その隙に、「代わりに…」とルパンにきつめのシルクハットをかぶせられてしまい、脱ごうとしている間に、4人には逃げられてしまった。
しかしこの時の銭形は、発信機を車に仕掛けており、さらにルパンを追跡するのだった。

アジトでは、不二子にこれまでの経緯を説明していたらしい。
その話を、銭形も窓の外から盗み聞いている。

不二子のもってきた儲け話と、今回のファッツの件は、実に密接に絡んでいた。というか、事の発端は、ある意味不二子のせいなのだった。
怒る次元に、不二子はまるで悪びれた様子はなく、事情を説明する。
一ヶ月前、世界でも5本の指に入るほどの貿易会社ビックマック・カンパニーの社長ガッポリーニが、おかしな遺言を残して世を去った。
彼は拳銃マニアだったので、会社の後継者は世界一の拳銃の上手い男にする、という突拍子もないもの。

副社長のドン・ハゲロは納得いかず、自分が会社を譲り受けたいがためにファッツを雇い、世界中の名ガンマンを次々に殺していた。
ファッツはプロなので、報酬以外は受け取らない主義で、ファッツが世界一になればハゲロがビックマック・カンパニーの後継者になれるというわけなのだった。
が、ここで不二子が、株だけでも100万ドルを超えるという資産に目をつけ、まだ次元という名ガンマンが残っていると、弁護士に告げた。だから焦ったハゲロがファッツを差し向けてきた……
これが、今回の経緯なのだった。


対決

次元は「余計なことを」と呟いていて、確かにその通りなのだが、まさか次元がこんなとんでもなく致命的な弱点を抱えているとは夢にも思っていない不二子に、そう悪気はなかったことだろう。
いつもの次元なら、ファッツくらい楽に倒せるはずだという信頼感と、その次元を利用して(笑)100万ドルのおすそ分けを頂こうという、不二子らしい計画だったのだ。
ルパンも、100万ドルには魅力を感じている様子。「何とかななんない?」と次元に尋ねてみたりする。
いずれにしても、ファッツに勝たねば、次元は殺されてしまうという状況になっているのだ。

ここで次元は決意を固める。
あれだけビクついて、自信無げな様子になってしまっていたが、土壇場まで来てようやく腹をくくったのだ。勝算はなくとも、やらねばならない。そう覚悟を決めるにいたった。
「やる時にはやる!たとえ殺されるとわかっていても」
次元の決意に、ルパンも五右ェ門も心動かされた様子。特に五右ェ門は潔い態度を好むだけあって満足そう。「それでこそ真のプロ」と賞賛している。
感動していたのは彼らだけじゃない、盗み聞きしていた銭形もだった。というか、誰よりも激しく心打たれている(笑)
次元の不屈の闘魂に感動したあまり、今回だけはとルパン逮捕を見送るほど(!)。
次元にエールを送った銭形は、「巨人の星」のテーマソングを歌いながら去っていってしまった。
…いいのか、これで。いいんだな、きっと。だって帽子がなくちゃまるで銃が撃てない次元に比べたら、銭形のテキトーさくらい全然なんでもない。

次元の決意が固まったのはいいが、勝算は相変わらずない。あのビリヤード銃をどう攻略するかという大問題が残っている。
が、それもルパンによって解決する。
柔らかいソファの背もたれを掴んだルパンは、その手触りから何かひらめいた様子。
ひとりで満足そうにクスクス笑ってる(いいアイディアがひらめいた時の、ルパンの楽しげな様子は実にイイv)
そして明日にでも、正々堂々とファッツに決闘を申し込め、とルパンは次元に告げるのだった。


決闘は、ガッポリーニの弁護士立会いで、夜の街角で開始された。
自信満々のファッツに対して、やはり次元はどことなくイッパイイッパイな感じ。まあ、街中にいる間は手も足も出ないのだから、仕方ない…(哀)
決闘が始まると同時に、次元はすぐ「逃げ」に入る。もちろんこれは作戦なのだが。
ビリヤード銃が追いかけてくるが、どうにかかわして車に乗り込み、空港まで走り続ける。むろんファッツも(そして立会人の弁護士も)追いかけてくる。

空港では、ルパンがプロペラ機を用意して待機しており、次元を乗せてすぐに飛び立つ。
ルパンと次元が目指すのは、スイス国境付近、まだ雪深い山中だ。
飛び続けているうちに、夜が明けてくる。
しかしファッツも戦闘機を用意して、さらに追跡。この執念深さも計算済みなんだろうけど、彼があきらめないタイプで良かった。私がファッツなら、これだけ逃げられ続けたらいい加減イヤになって引き返すかもしれない(笑)
そのしつこいファッツに攻撃され、ルパンの飛行機は煙を上げる。ちょうど、目的地上空に差し掛かっていたため、二人はパラシュートで脱出した。

雪山では、五右ェ門がスキーで登場(ちゃんと道具をつけているけど、着てるのはいつもの着物。笑)
そのスキー一式を次元に渡し、健闘を祈る。
スキーでさらに逃げ続ける次元を、スノーモービルで追い詰めるファッツ。最後は次元を撥ねて(!)強引に次元の足止めをした。
帽子のない次元は、それでも正面からファッツと対峙せず、岩陰に隠れる。
隠れても無駄だと、ファッツは得意のビリヤード銃を発射するのだが、深く積もった雪に阻まれ、弾が跳ね返ることはなかった。

逃げたと見せかけていたが、実はファッツのビリヤード銃を無効にするために、わざとこの場へ誘い込んでいたのである。
高らかに笑って、そう次元は言い放った。…岩陰に隠れつつ(や、仕方ないんだけどさ)
しかしファッツは動じない。跳ね返らせることが出来ないなら、正面から撃てばいい、と。

ここにいたって、次元とファッツはようやく真正面から対峙する。帽子なしの次元をなめきっているファッツは、余裕たっぷりで次元の方から撃たせ、平然と立ち尽くしている。
実際、なめられるだけのことはあり、真正面・至近距離という状況にありながら、次元の弾はまるっっっきり、ただの一発も、当たるどころかファッツの傍をかすりもしない。
このシーンは本当に、本当に情けなくって泣けてくる。こんな次元、見たくない。当たらないにもほどがあるだろう〜〜!!!

……と、うっかり興奮してしまうシーンだが、それももう終わりだ。
次元がサイレンサーをつけて撃っていることに、ファッツは気づかなかった(あるいは気にも留めなかった)。
次元の弾が尽きたとき、いよいよファッツが撃ってくる。彼の弾が次元の肩を掠めただけで済んだのは、たぶん長引かせてもっといたぶってやろうと思ってのことではあるまいか。
その余裕が、命取りになる。
ファッツの撃った銃声のせいで、雪崩が発生!
そう、次元がここまで逃げ込んできたもうひとつの理由は、これだったのだ。
ルパンの計画では、次元の弾がまるきり当たらないこともちゃんと考慮に入れて(この思いやりに泣ける;)、必ず発砲するはずのファッツが墓穴を掘るように仕組まれていたのである。

ファッツは自ら引き起こした大きな雪崩に飲み込まれた。
次元は(ついでに弁護士も)、危ういところでルパンのヘリから降ろされた縄梯子に掴まって、難を逃れる。
ちゃっかり次元の足にしがみついてついてきた弁護士を見て、不二子は「あなた誰?」と尋ねる。
不二子は「まだ次元が残っている」と弁護士に教えた、と言っていたはずだが…その時は電話か何かで連絡をとっただけだったのかもしれない。

その弁護士によって、ビックマック・カンパニーの全財産は世界一の拳銃の名手と認められた、次元に譲られることになった。
不二子は自分の持ってきた儲け話がうまくいって、「おめでとう!」と嬉しそうだ。
そして、プレゼントとして次元にあのお馴染みの帽子を贈るのだった。
「お金を積んで作らせたの」と不二子。
この際、「だったらこの帽子ができてから決闘すれば良かったのでは?」という突っ込みはしてはいけないのだろう(笑)
もう、すべて済んだことなのだから。

大事ないつもの帽子を被って、すごく嬉しそうな次元。すっかりいつもの調子に戻っている。
帽子を被れば、遥か下方に見える街の教会の鐘すら、鳴らすことが出来るのだ。
その鐘の音は、まるで次元を祝福するかのよう…とかなんとか、綺麗にまとめて終わりたいところだけど、やっぱり帽子ひとつでここまで一喜一憂し、命すら危うくなるガンマンはどうなんだと思わずにいられない。
クラシカルな次元のアイデンティティの象徴として、彼に帽子が欠かせないのはいい。
ただそれは、あくまで「象徴」であって欲しいと、そしてこの設定は今回限りのもので二度と復活しないことを切に願う次第である。


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