第43話 さらばシンデレラ


モナカ国王

女優が一国の王妃へ、そして交通事故による最期、という設定は、言うまでも無く、モナコ公国の今は亡き王妃グレース・ケリーがモデルであろう。
それはさておき。

決して嫌いな回ではないのだけれど、どうも作品のトーンにチグハグ感を覚えてしまう一作。
うまく言えないのだが……「場違いなコミカルさ」とでもいったものを感じてしまうのだ。
関西弁を喋り、かなりがめつい商人風のモナカ国王、その愛人の利に敏いジュリア。二人のやり取りだとか、宝石を守る防犯システム(袋に入れられ檻が飛んでいく!)などはコメディタッチなのだけど、個人的に素直に笑えない引っ掛かりが、長年あるように思っていた。
レビューを書くのがいい機会なので考えてみたところ……

モナカ国王は、別の女を新たに妻に迎えたいからと、王妃のグレンチェンを亡き者にしようと企む、かなり身勝手で残酷な男。
それなのに、本編ではお気楽に愛人とイチャついたり、胡散臭い関西弁で(や、もちろん作中のモナカ語なんだろうけど)ユーモラスな様子を見せられたりして も、「妻を暗殺したのに呑気すぎ」という感じを受けてしまい、私は軽妙な(?)作品のトーンが合わないように思えてしまうようだ。
結果から言えば、グレンチェンは死んでなかったから、別にいいのかもしれないが。
まあ、パースリ後期っぽい、ハチャメチャトーンの一作と考えて、深く考えずに観ていけばいいものなのだろう^^。


冒頭、モナカ国の王妃が車のブレーキに細工され、崖から転落死するというシーンから始まる。
「彼女」の「やはり」という言葉から、すでに暗殺される危険を感じていたのだろう。

その知らせをニュースで聞いたルパンたち。
その時、ルパンはテレビゲームに熱中していたのだが、「グレンチェン王妃死す」の報を、テレビを見ていた次元から聞くと、思わずゲームをミスるくらいの衝撃を受けていた。
後の葬儀のシーンで、ルパンの台詞によると、ハリウッドスターだった彼女の大ファンだったとか。
ルパンは、そのモナカ王国へと向かう。

ここで、個人的にとても気になる小ネタについて(笑)
ルパンが遊んでいたゲーム(「ゼビウス」というらしい)の、一瞬だけ映るスコアランキングに注目。
一位は、「G.ISIKAWA」……五右エ門なのである。
スロットマシーンといい、ババヌキといい(それぞれ新ル10話152話)かなり熱中するタチの五右エ門だから、きっとテレビゲームにも熱くなったんだろうなぁと想像すると、おかしくってたまらない^^
ちなみに二位が次元、三位が不二子、四位がルパンという結果。がんばれ、ルパン!(笑)

モナカ王国では、王妃の葬儀が執り行われていた。
グレンチェンの親友だったという不二子は、国王が怪しいと怒りをあらわにしている。
王妃に捧げる花を売りに来た女(王の愛人・ジュリア。花売り娘が元々の仕事?)から花を買うことを拒否してみたり、かなりご立腹だ。
親友を暗殺されたのだから(この時点ではそういうことになっている)、腹立ちももっともというものだが…
不二子に女の友達がいた、というのが、リアルタイムで観ていた頃、ものすごーーく意外というか新鮮な感じがしたものだった。今も、ちょっと不思議な感じがしなくもない(不二子に失礼?笑)

それはそうと、葬儀の時だから地味なジャケットに衣装変えしているルパンと、これまた地味な服を着た不二子。
イレギュラーな衣装大好き人間を自認する私だが、どうもこの辺には食指が動かない。
パースリ後期の不二子の服って、「微妙;」な感じがするんだけど、気のせいだろうか。

で。ついでに小ネタをもう一つ。
葬儀中の教会でルパンが読んでいた、グレンチェンの記事の載った雑誌「SCREEN」。
背表紙の方に「バビロンの黄金伝説」の広告が載っている。「7月公開」…あ、合ってる(笑)←公開日確認してみた

葬儀中はしおらしく涙していた国王だが、人目を憚る必要がなくなると「演技」を止め、途端にケロリとした態度になるのが、ちょっと小憎らしい;
まだ葬式しているそばから、次の愛人用に、国宝のダイヤで出来たハイヒールを彼女の足に合わせて作り直させたりしている。
何だか、やっぱり個人的に好きになれないオッサンである。
いっそのこと、作風をドシリアスにして、女癖と性格がものすごーーく悪い国王としてでもえがかれていれば、逆に悪役として魅力的だったかもしれないのにと思ったりもする。


シンデレラの靴

小ネタと所感ばかりでちっともあらすじが進まない今回のレビュー(ごめんなさい〜;)だが…気を取り直して、GO。

不二子は、殺されたグレンチェンの仇を討つため、モナカ王国の全財産を奪って破産させてやろうと企んでいる。
その話に乗り気なのは、ルパンだけ。
次元は「証拠がないから」、五右エ門は「敵討ちなど御免こうむる」という理由で、それぞれ降りてしまう。
証拠とかなんとか言いつつ、次元は不二子の友達の敵討ちなんかに興味がなかったんだろう(笑)が、五右エ門が降りたのは少々意外。(でもないか?)
仇討ちというキーワード、昔の五右エ門なら好きそうだという気がするのだが、歳を経てそういうことの虚しさでも感じてしまったのだろうか。それとも、やはり内心次元と同じく、不二子の友人の仇討ち、ということに気が乗らなかったのか。
少なくとも「不二子殿」という呼びかけをしていることから、この時期の五右エ門が不二子に「悪感情」は抱いてないと推察してもいいように思う(呼び方が対不二子感情のバロメータだったり。笑)
次元も五右エ門も不二子に対して、「仇討ちといってはいるが、財宝が目当てなんじゃないか?」という邪推でもしたのかも(笑)
……というわけで、モナカ国王に対しての復讐は、ルパンと不二子のペアでやることになる。

その頃、国王と愛人は、金貨のプールに泳ぐという悪趣味な(笑)遊びに興じていた。
その金貨はモナカ王国の主要な収入と思しいカジノの売上金だ。こんながめつくて趣味の悪い国王の治める国ってなんかいや〜んな感じがする(笑)

妻を亡き者にした王は、早くもジュリアを口説き落とそうとする。場所を変えて、国宝のダイヤのハイヒールを彼女らに履かせてみようとする。その靴がピッタリならば、王妃にしてやる、というのだ。
実際は、ジュリアの足に合うよう作り変えているのだから、ピッタリで当然なのだが、まるでシンデレラのようなシチュエーションに、ジュリアは(そしてかつてのグレンチェンも)酔ってしまうものらしい。
ちょうどいいムードのその時、グレンチェンの幽霊が現れる。
彼女の恨み言に、国王はブレーキに細工したことを告白する。←人のせいにしている所が浅ましいが(モナカ国王に厳しい私)

だが、その幽霊の正体は不二子。変装を解き、国王に宣戦布告をすると、ルパンとともに去っていく。
カッコイイシチュエーションではあるが、不二子の「キャッツ・アイ」風味のレオタードに、ちょっと怯む(笑)いや〜80年代だなぁ。しみじみ。
ちなみに私としては、新ルの時のような普通の仕事着が好きだ。

ルパンと不二子に挑戦されたというのに、自信ありげな国王。
さらには「グレンチェン王妃遺品展」などというものまで開き、彼女の死でまた儲けたりしている。さ、さすが大阪商人(違;)
その遺品展をルパンと不二子が下見しているとき、銭形が登場。
銭形とのニアミスに慌てたルパンが、メチャクチャな関西弁をまくしたてるところが、笑える。

遺品展の目玉である「シンデレラの靴」の警備体制を、銭形に説明する国王。
ちょっとでも靴に触ろうとすると、床下からズタ袋のようなモノが飛び掛ってきて身体を拘束し、さらには上から小型の牢が落ちてき、それごと城の外へポーン と放り出されるという……ちょっとハチャメチャな、パースリっぽい警備装置が用意されていた。このせいで、国王は自信満々だったよう。
だが、ルパンはその警備システムを陰から抜け目なく見ているのだった。


その日の遺品展が閉館する時間に、ルパンは執事のカシムに変装して現れる。
ダイヤのハイヒールに触ろうとする「カシム」に銭形は抗議しようとするが、閉館後はいったん片付けると言い訳しつつ、ルパンはあっさりハイヒールを盗ってしまう。
仕掛けをすでに承知しているルパンは、床下から現れる袋をことごとく身軽に避け、反対に銭形を牢に押し込め飛ばしてしまう。
あっさり財宝を盗み出したルパンと不二子…に思えたが、その靴は贋物。
仕掛けられた爆弾で、ドリフチックにボロボロになる二人(ちょっと哀;)

そんな様子を物陰から見ているのは、もちろん次元と五右エ門だ。
「あ〜見ちゃいられねぇな」と言い、結局二人を助けに赴く次元。五右エ門も少し考える様子を見せている。
何だかんだいって放っておけないんだから〜(←嬉しそうに)
最初から、一緒に来てくれればいいのにーと言いつつ、この回のように「やれやれ」というポーズで助けに来てくれる次元と五右エ門も、実は大好きなのでもちろん不満はない^^


生きていた王妃

自分の仕掛けた罠にルパンがかかったことに、国王はご満悦(なんだか悔しい;)
しかもルパンを「三流」呼ばわりまでする。銭形が反論してくれることが、すごく嬉しい。
油断を戒める銭形は、役に立たなくなったこれまでの警備装置の代わりとして、赤外線装置の設置を要求する。
が、それもルパンにはお見通しだったようで、電話線に細工し、警備会社の人間としてルパン本人が赤外線を取り付けることになる(笑)

自分で仕掛けた赤外線なのだから、どんな風にも細工できる。ルパンは忍び込む際、それらをすべて消してしまい、警備のゆるくなったところへ不二子とともに侵入する。
が、今度もまた簡単にはいかなかった。
ルパンの知らないところで、国王がレーザーのようなモノを仕掛けてあったのだ。あちこちから攻撃されて、ピンチなルパン〜と思いきや、そこに登場するのが次元v
ナイスタイミングの美味しい場面に現れ、次々と装置をマグナムで撃ち、壊していく。カッコイイー。
それに比べて今回、正直ルパンがあまりいいところナシなので、ルパンスキーとしては寂しい回なのであった(笑)

次元登場で助かったのも束の間、続いて天井が落ちてくるという仕掛けが作動。またもや大ピンチに陥るのだった。
しかし!さらに美味しいところで颯爽と登場するのが、そう、五右エ門である^^
ルパンら三人が居た床を斬り、彼らを危ないところで助け出すのだった。「サンキュー、五右エ門」というルパンの言い方が可愛い。
この時、天井でルパンらをつぶそうとしている国王の残酷そうな様子が、またまた腹立たしい。ジュリアの方は、わりと普通の女らしく、目をそむけている。ちょっとだけ好感が持てる。

五右エ門に助けられ、ルパンたちが落ちたその場所は、なんとモナカ王国カジノの制御室。
その部屋にあるコンピュータ(?)で制御し、カジノで莫大な利益を得ているのだそうだ。
……ナンか、五右エ門に床を斬ってもらって偶然制御室にたどり着いちゃった結果オーライなノリのように見えるのだけど、ルパンが「制御室さ」とあらかじめ 知っていたような発言をしているので、この制御室にももぐりこんで、国の財政基盤をメチャクチャにする計画は、ルパンの中であったのか…と想像も出来る。 (強引?)
ま、いずれにせよ、モナカ王国中枢部ともいえる場所に入り込んだ彼らは、カジノの制御装置を壊し、わざとコインを大放出したりして、モナカ王国に大打撃を与えるのだった。
城からあふれ出すコインの量など、「まさか」感が強く、思わず新ル124を思い出したりもする。


こうして、モナカ王国は破産してしまう。
ジュリアも、あっさりと王を見限り、去っていく。お金が目当ての、ドライな女だったようだ。
入れ替わりに王の元に現れたのが、グレンチェン。
彼女は幽霊でもなければ、不二子の変装でもない。彼女は生きていたのだ。
事故の時、車に乗っていたのは、身代わりを務めていた不二子なのだった。不二子だから、海にダイブした車からも無事脱出。
また葬儀の時の死体は、蝋人形だったとか。

暗殺される危機を感じたグレンチェンは、多分不二子に相談して、殺される前に死んだことにして姿を消し、国王から財産を奪い取ってやることを目論んでいたのだ。
「最初から騙していたのか」とグレンチェンに言う国王だが、図々しい言い草にしか思えない;
財産もなくし、愛人も去り、空になった元・金貨プールの穴の中に、王は一人で落ちていくのだった……。

モナカ王国の財宝は、二人の女が持って去っていった。
次元はいいのか?と尋ねるが、ルパンはあまり気にした様子もない。グレンチェンの死そのものが嘘だったわけで、不二子らに利用された形になるわけだが。
「元々、グレンチェンのはなむけにやったことだ」と笑っている。
この辺のルパンの態度は、大人でカッコイイv

ラストは、またまた銭形が現れて、ルパンたち三人を追うところでおしまい。
逃げる時笑ってる三人の表情が、いいなと思う。
去っていく女たちのシーンで終わったほうが、綺麗なラストって気もするけど、お約束ってことで、これもありか。


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